2012年10月号Vol.88

【特集】動き出したマイナンバー制度

──利用開始へ、いま何をすべきか?

総務省自治行政局・住民制度課長 髙原 剛氏

全国47都道府県で、「地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン(中間とりまとめ)」の説明会がスタートするなど、いよいよ待ったなしとなったマイナンバー制度。制度の概要とともに平成27年1月のマイナンバー利用開始に向け、市町村では何をすべきか、総務省自治行政局住民制度課長に聞く。

髙原剛氏

──マイナンバーの付番・通知時期まで2年をきりましたね。

髙原 「マイナンバー法案(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案)」(平成24年2月14日に国会に提出)が秋の臨時国会で成立すれば、いよいよ制度導入に向けて本格的に動き出します。

 マイナンバー制度には、住民基本台帳に記載されている日本国籍を有する人と定住外国人にマイナンバーをつける「付番」という仕組みと、付番された番号をキーとして「情報連携」をするという二つの大きな柱があります。その導入効果は三つあります。

 第一に、マイナンバー制度導入による本人確認基盤が整うことです。これにより、より正確な所得把握が可能となります。

 例えば「マイナンバー法整備法案(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案)」が成立すると税法が改正され、平成27年1月より「法定調書」と、納税者が税務当局に提出する「申告書」にマイナンバーの記載が義務づけられます。これにより、マイナンバーをキーとした名寄せ突合が可能となり、納税者の所得情報をより的確に把握することができるようになります。

 本人確認としては、災害発生時の活用についても議論が進んでいます。現行のマイナンバー法案では、「災害救助法」による事務や「被災者生活再建支援法」による事務など、番号の利用は一部に限られています。しかし、中央防災会議の防災対策推進検討会議では、今年7月末に公表した報告書で、今後、重点的に取り組むべき事項の一つとして罹災証明書や被災者台帳を作成する際にマイナンバーを活用すると提言しています。いずれは、そのような分野でも本人確認基盤として使われていくことになるでしょう。

 第二に、マイナンバーをベースとした情報連携による行政事務の効率化です。例えば、社会保障・税の一体改革の中で年金生活者支援給付金制度が議論の俎上に載っています。これは、市町村側で低所得者の情報を抽出し、日本年金機構がその情報に基づいて低所得の年金受給者に給付金を支給するというものです。市町村と日本年金機構間でのデータ突合も、情報提供ネットワークシステムがあれば効率的に行うことができます。

 第三に、住民の利便性の向上です。国民年金保険料の免除手続きや厚生年金の加給年金の手続き、児童扶養手当の申請時など、現在さまざまなシーンで求められる所得証明書などの添付書類が不要になるといった効果があげられます。

 そして、大きなポイントといえるのが、本人確認基盤と情報提供ネットワークシステムによって、これまでにない新たなサービスが実現可能になるということです。例えばプッシュ型の行政サービスと呼ばれる、特定の所得階層へ「あなたはこういうサービスが受けられますよ」といったことを能動的に住民へ伝えるようなサービスは、マイナンバー制度導入によって初めて実現できるようになります。

番号付番と通知方法

──番号の付番方法はどうなるのでしょうか。

髙原 番号の付番については、まず法律に基づいて新たに地方共同法人(地方公共団体情報システム機構)を設置します。その上で具体的な市町村の作業としては、(1)市町村長が機構に対して住民票コードを通知して、(2)それを受けて機構が住民票コードからマイナンバーを生成し、(3)そのコードを市町村に返送、(4)市町村が住民へ通知する──という流れになります。これを「コール&レスポンス方式」と呼んでいますが、基本的に「出生」のように市町村が住民票コードを付番するタイミングで機構に通知を送れば、それに応じて機構が一つひとつマイナンバーを作って市町村に返すことになります。

──通知方法は?

髙原 ガイドライン中間とりまとめでは、世帯単位で封書により郵送すると示しています。ただ、具体的な通知方法は政省令事項のため、今後の検討で決めていくことになるでしょう。

──情報提供ネットワークシステム上ではマイナンバーではなく符号による連携とされていますが、情報保有機関で保有する符号の生成等はどのようにされるのでしょうか。

髙原 法律上、情報連携の具体的な方式は符号を用いるかどうかを含めて政省令で決定しますので、こちらも今後の検討課題ということになります。これまで、「情報提供ネットワークシステムではマイナンバーを保有しない」という議論がなされてきたことを前提に、ガイドライン中間とりまとめでは一つの考え方として、(1)情報保有機関からマイナンバーを機構に通知する、(2)機構はそれを住民票コードに変換して情報提供ネットワークシステムに通知する、(3)情報提供ネットワークシステムはそれに基づいて符号を生成して情報保有機関に通知する──ことを示しました。

個人番号カードの概要

──マイナンバー制度では、国民一人ひとりに番号が付番されるとともに個人番号カードが配布されますが、個人番号カードと住民基本台帳カードとの違いはどのようなものでしょうか。

髙原 住民基本台帳カードとの最大の違いは、個人番号カードの券面にマイナンバーが記載されることです。また、住基カードは自治事務ということもあって、その様式は自由度が高く、顔写真の有無などバリエーションも豊富でした。しかし、個人番号カードは基本的に顔写真付きの一様式となります。これは、マイナンバーは全国一律で確認するという用途があるためです。

 次にその作成方法ですが、住民基本台帳カードの現状を考えると、各自治体にカード発行機を置いて個人番号カードを発行するという運用は現実的に難しいと考えています。費用面でもカード一枚あたりの単価が高くなりますし、市町村の事務負担もかなり大きなものになると考えられます。これらについても、今後の検討となりますが、最終的には全市町村が共同で委託するという形になるのではないでしょうか。

 手数料についても、これから各関係機関と調整することになりますが、総務省としては無料化したいと考えています。

──住民基本台帳カードに比べてその利用範囲は拡がるのでしょうか。

髙原 そうですね。住民基本台帳カードの用途は4情報(氏名・住所・生年月日・性別)の確認のみでしたが、個人番号カードは積極的に「自分のマイナンバーはこれですよ」と証明していくものとなりますので、利用する機会も格段に拡がります。また、公的個人認証サービスを標準搭載し、マイポータルへのログイン手段としてご利用いただくことも考えています。

 この公的個人認証サービスについては、これまで行政機関等に限定していた署名検証者の範囲を拡大し、総務大臣が認める民間事業者を追加します。そのため、例えばオンラインバンキングなどで活用していただき、個人番号カードの普及につなげていきたいと考えています。そのためにも、総務省としては積極的に民間事業者に働きかけていく考えです。

社会保障・税番号制度の導入に向けたロードマップ

平成25年度中のシステム改修が必須

──市町村側の準備としては、今後どのようなことが想定されますか?

髙原 臨時国会での法案成立が条件となりますが、平成26年10月から一斉付番を開始し、平成27年1月からマイナンバーの利用を開始することとなります。そのため各自治体の皆さんには、システム改修とマイナンバーをどのように業務へ活用するのかの検討を急いでいただきたいと思います。

 現在のスケジュール感でいくと、平成25年度の当初予算に一定のシステム改修経費を計上することが必須と考えています。特に、住基と地方税に関しては平成25年度中にシステム改修をしないと間に合わないと考えられます。法案が成立していない段階で、検討作業をお願いするのは心苦しいのですが、ガイドライン中間とりまとめをもとにベンダーと改修内容を協議し、平成25年度当初予算への計上に向けて準備を進めていただきたいと思います。

 国としては、そのシステム改修について補助の検討を進めています。具体的には、マイナンバー関連法案が成立してからの話にはなりますが、詳細が確定次第お伝えします。

──ガイドラインでは、住基・税システム以外に中間サーバの構築についても触れられています。

髙原 中間サーバは情報連携のために設置します。機能的に共通部分が多く、国として共通のソフトを開発することも考えていますので、実際に各自治体に設置するのは平成26年度となる見込みです。そのため中間サーバの設置に関する予算計上は、平成26年度予算でお願いすることになります。

 また、ガイドラインでは、クラウドサービスの利用についても触れています。これを機に全庁のクラウド化についても検討してみてはいかがでしょうか。

──マイナンバーの導入に向けて、これからは市町村側の役割が大変重要となりますね。

髙原 そのとおりです。今回のマイナンバー制度の導入により、本人確認基盤と情報提供ネットワークシステムが整えられることになりますが、市町村の庁内での情報連携が不十分であれば本末転倒となってしまいます。そのため、総合窓口の導入など庁内における情報連携を、ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。

 電子政府・自治体の推進に関し、ほかの先進国と比べると日本は遅れていると言わざるを得ない状況でしたが、マイナンバー制度の導入によりやっとスタートラインに立つことができると思います。これからは、「マイナンバーをどう利用して行政事務を効率的に実施していくか」ということを自治体の皆さんと一緒になって考えながら進めていきたいと考えています。

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