2013年1月号Vol.89

【特集3】ディザスタリカバリ対策にクラウドを活用

静岡県牧之原市 市長 西原茂樹氏

住所
静岡県牧之原市静波447番地1
電話
0548-23-0001
面積
111.68平方キロメートル
人口
49,346人(平成24年12月1日現在)
URL
http://www.city.makinohara.shizuoka.jp/

BCP(業務継続計画)への取り組みが、クラウド利用拡大に拍車をかけている。
そんななか、静岡県牧之原市が「クラウド環境を活用したデータの復旧訓練」を実施した。オンプレミス(庁内設置型)の基幹システムを使いながらクラウドを有効活用する同市の取り組みが、いま注目されている。

西原茂樹市長

西原茂樹市長

 平成24年11月12日、牧之原市は南海トラフ巨大地震により行政情報が消失した場合を想定して、「TASKクラウドサービスの仕組み」と「第3世代携帯電話の通信ネットワーク(3G)回線」を利用したデータ復旧訓練を実施した。

 当日は、西原茂樹市長をはじめ職員20名が参加。TKCのデータセンターへアクセスし、バックアップデータからクラウド上に復元された被災直前の住民情報を使って実際に住民票の写しを発行するまでを体験するとともに、災害初動時における組織的対応の再確認を行った。牧之原市では、これまでにもこうしたデータ復旧訓練を実施してきたが、クラウド環境を活用するのは初めての経験だ。

 訓練を終えて、西原市長は「クラウドの活用で場所を問わず業務の継続・早期再開が可能となることを確認できた。これは大きな成果だ」と感想を述べた。

高まる南海トラフ巨大地震への危機感

 内閣府の発表によれば、南海トラフ巨大地震が発生した場合、被害は東海地方から九州までの広範囲に及び、34メートル級の津波や強い揺れにより238万棟が全壊・焼失し、死者は32万人を超えると推定されている。海岸部に市街地を有する牧之原市も被災は免れない。

 もともと牧之原市では震災への危機意識が高く、災害時に避難場所となるすべての公立小中学校の耐震化を完了した。また現在建設中の消防庁舎は、市庁舎浸水などの際には代替施設として機能できるよう設計されている。さらに、市民との協働により『地区津波防災まちづくり計画』を策定するなど、地域の防災・減災対策の強化へ取り組んでいる。

 加えて、BCP対策の基本として早くから重要情報の保全にも努めてきた。人手によるバックアップに加えて、平成18年7月にはTKCの「第2次バックアップサービス」の利用を開始。これは庁内サーバにある行政情報を、専用回線を介してデータセンターへ30分ごとに送り自動的にバックアップするもので、万一の場合にはこれを使用して行政情報を復旧することができる。また、サービス利用を機に初動時対応をシュミレーションする復旧訓練へも取り組んできた。

復旧訓練サービスの概要イメージ図

 実はこのサービスは当初、データを代替サーバへ復元して陸送で現地まで運ぶことが想定されていた。だが、東日本大震災の教訓から、新たにクラウドサービスの基盤上に行政情報を復元し、これを活用できるよう見直したのである。また、3G回線であれば災害時に早期復旧する可能性が高い。

 今回の牧之原市の訓練はこの仕組みを利用したものだ。この方法であればオンプレミス型の団体であっても、データセンターでデータをバックアップさえしていれば、環境が整い次第クラウド利用へ切り替え、場所を問わず早期の行政サービス再開が期待できることだろう。

重要なのは「その時、何ができるか」

 いま、総務省・災害に強い電子自治体に関する研究会では『地方公共団体におけるICT部門の業務継続計画(BCP)策定に関するガイドライン』の見直しを進めている。昨年夏に公表された中間報告では、東日本大震災の教訓を踏まえ概ね72時間を念頭においた初動時対応の重要性について改めて言及した。ここで指摘されたように、初動時のICTの利用の可否は人命を左右することにもなりかねない。だからこそ、「重要なのは、いざという時に迅速に的確な対応がとれるかだ。そのためには何度も反復し、最終的には組織の文化として定着するまで繰り返すことが必要」(西原市長)なのだ。

 牧之原市では、市庁舎への3G回線の整備を検討している。いずれクラウドへ移行した場合には、これをバックアップ回線として活用することもできる。また、日常での活用も見据えることで、環境に慣れるとともに新たな住民サービスの創出につなげていく考えだ。

 今後、クラウド利用は確実に広まっていく。だが、すべての団体が一気に切り替えられるわけではない。牧之原市でも次期のリプレースではクラウド化を視野に入れているというが、その間は現行システムを使い続けながらディザスタリカバリ対策としてクラウドを活用するという考え方をとった。いわばICTの“減災対策”というわけだ。

 牧之原市ではBCP対策として「初動時対応」と「事前の予防対策」の両面で“いまできること”から始めている。BCPの取り組みに終わりはない。だからこそ「最初から万全な計画である必要はない。走りながら改善する」(西原市長)姿勢が大切なのである。

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