2013年4月号Vol.90

【トレンドビュー】「域学連携」による地域活力の創出

総務省 地域力創造グループ 地域自立応援課長 牧 慎太郎

人口減少と少子化の中で

 我が国では平成16年以降、人口減少社会が到来しています。人口減少は地方圏にとどまらず、かつては人口が大きく増加していた千葉県や兵庫県でも人口が減り始めており、東京都においても流入による社会増で人口は増加しているものの少子化で自然減に転じています。

 実はこの少子化が深刻な問題で、かつては国内で年間200万人以上生まれていた子どもが100万人余りしか生まれなくなり、学生数が減少する中にあっては、現在ある大学すべてが今後生き残っていくのは難しい状況となっています。

 子どもを生み育てる環境に恵まれた地方では、合計特殊出生率は大都市より高くなっていますが、地方の問題は高校卒業後に進学や就職で若者が都会に流出してしまい、なかなか戻ってくることが難しい点にあります。

 こうして若者の流出が続けば、今度は子どもを生み育てる若い親世代が減少してしまい、人口の自然減にも歯止めがかからなくなります。このため、地方では大学の誘致や公立大学の設立に力を入れてきましたが、現実には多額の財政負担を背負った挙句に定員割れを起こしかねない状況が生じており、今後は大学新設の審査基準も相当厳しくなることが見込まれます。

地域に若い学生の力を

 そこで、地域活性化の切り札として期待されるのが「域学連携」です。大学生と大学教員が地域の現場に入り、地域住民やNPO等とともに、地域の課題解決や地域づくりに継続的に取り組み、地域の活性化や人材育成に資する活動により、地方に不足している学生たちの若い力や大学教員の専門的なノウハウを導入する効果は大きいと考えています。加えて、若者の流出に悩む過疎地域や離島は、実は豊かな地域資源に恵まれているので、むしろ創造的人材を育成するフィールドワークには適した場所と言えるでしょう。

 学生たちの滞在拠点としては、過疎による少子化で廃校となった小学校の活用なども考えられます。地方で4年間同じキャンパスに通うとなると学生も尻込みするかもしれませんが、数カ月程度の滞在なら、むしろ自然豊かな地域で実践的に学んでみたいという若者も多いのではないでしょうか。

 そこで地域住民とも交流しながら、若者の目、よそ者の視点を生かして地域資源を掘り起こす実践活動に熱心に取り組んでいるうちに、その地域が気に入って将来そこで起業しようという若者も出てくるかもしれません。

創造的人材の育成

 一方で、これまでのような大学教育だけで、本当に社会のニーズに合った人材を育成できるのかという問題もあります。

 終身雇用が当たり前の時代には、入社してからじっくり社風に合わせて人材育成するほうが良いという企業も多かったかもしれませんが、現在のように雇用が流動化する中にあっては、大学には卒業と同時に即戦力として使える創造的人材の育成が期待されるようになっています。しかし、受験勉強を経て大学に入学し、そのまま座学や研究室にこもり切りで卒業しても果たして一人前の社会人として自立できるのか甚だ心許ないといえます。世の中には机上の理論や知識だけで解決できない問題がたくさん存在することを地域における実践活動の中で学んだ上で、改めて大学で学びを深めることも大切なことではないでしょうか。

 いま、大学の秋入学導入も話題になっていますが、そのギャップタームを活用して地域実践活動に取り組んだ経験は将来きっと役に立つと考えられます。地域にとっても、学生や大学教員が入れ替わり立ち替わり地域に一定期間滞在して地域住民とも交流しながら地域実践活動に取り組むことは、元気な地域づくりに大きく貢献すると考えています。

 このように域学連携は、地域と大学の双方にとって大きなメリットが期待できるといえます。

総務省の支援

 総務省では、大学が組織として単位認定するような地域実践活動を盛り込んだプログラムの構築を支援するため、このたびの平成24年度補正予算および25年度当初予算(案)に「域学連携」地域活力創出モデル実証事業として合わせて2億3000万円を計上しています。

 総務省のモデル事業では文部科学省のCOC(センターオブコミュニティ)構想と棲み分けを図るため、地元大学が日帰りできるようなエリアで行うフィールドワークは対象外とし、過疎、離島など大学のないような地域に首都圏や京阪神等の大学からアウトリーチで学生たちが一定期間滞在し、地域実践活動に取り組むタイプの域学連携を対象としているのが特長です。

 また、国費によるモデル事業に加えて、総務省では継続的な域学連携の取り組みに係る自治体負担部分について原則8割(財政力調整あり)の特別交付税措置も講じています。

 いずれは複数大学の連携による単位互換や入学前単位認定制度の活用により、四半期で8単位程度が取得できるようなフィールドワークの拠点が全国各地に形成されるようになれば、地方から都会へ一方的に若者が流出する現状を変える契機にもなるのではないでしょうか。

 各自治体におかれましても、こうした「域学連携」に積極的に取り組むことにより、活力ある地域づくりを力強く推進していただきたいと思います。

※所属は平成25年3月31日現在のものです。

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