2013年7月号Vol.91

【巻頭言】全国で活用急がれる「自治体クラウド」

岩手県大槌町長 碇川 豊氏

碇川豊氏

碇川豊氏

 東日本大震災の発生以来、全国の皆さまから物心両面にわたり多くのご支援をいただいたことに深く感謝申し上げます。

 いま岩手県野田村、普代村、大槌町は共同で自治体クラウドの導入を進めており、第一弾として今春より大槌町で新システムが稼働しました。これは①システム運用・管理にかかる労力やコストを削減し、得られた人的リソースや予算を復興業務に充てる、②災害等によるデータの損失リスクを回避し、業務継続性を確保する──ために取り組んだものです。

 昨今、市町村では情報化コストが増加の一途を辿る一方、厳しい財政事情を背景として無駄なコストの見直しが求められています。また、大震災を契機として巨大地震発生に備えた対策検討も進んでいます。確率的には、この瞬間に日本のどこで巨大地震が起きても不思議ではなく、重要なデータを安全に保管し、万一の事態にも業務を継続できるようにすることは市町村にとって喫緊の課題です。これらを解決できる方法は自治体クラウドしかありません。

 加えて、クラウド活用の意義はそれだけにとどまりません。

 第一に「住民サービスの向上」の点では、システム運用・管理の手間が削減されることで生まれた余力を住民サービスに充てることができます。住民サービスで重要なのはフェースツーフェースであり、パソコンに向かう時間の多さではありません。1日に削減できるのはわずかな時間でも積み重ねれば確実にサービスの向上につながります。

 第二に「広域連携の手段」としての期待です。しかも、クラウド環境であれば近隣に限らず全国の市町村と連携することも不可能ではありません。こうした“ネット合併”により、ヒト・モノ・カネといった経営資源の無駄を省くだけでなく、各種施策での連携や行政サービスの相互補完、職員交流の活性化などの面でも市町村合併に近い効果を生み出せるのではないでしょうか。

 第三が、「新制度・新サービスへの対応」です。市町村では今後、社会保障・税番号制度への準備を進めていくことになりますが、クラウドであればシステムなどへの影響を極小化しながら容易に対応することができます。また将来的には、個人番号とクラウドを活用した新サービスの創出も期待されるでしょう。

 大槌町では震災後、人口減が一気に進み少子高齢化など多くの課題に直面しています。これはまさに近い将来の日本の姿です。その意味では単に震災前の姿に戻す復興ではなく、多くの知恵を結集した創造的な復興を目指し、その過程で自治体の将来モデルを示すのも私たちの使命だと考えています。その基盤としてわれわれは自治体クラウドを選びました。

 データ移行費やマンパワーの問題が多少ネックになっているとはいえ、これからありとあらゆる分野でクラウド化が進むことは確実です。早く取り組むことのデメリットは何もありません。自治体クラウドの活用の輪が、一日も早く全国の市町村に拡がることを強く願います。

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

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