2013年10月号Vol.92

【トレンドビュー1】平成25年度 自治体クラウド・モデル団体支援事業の概要

──自治体クラウドの推進

財団法人地方自治情報センター 研究開発部長 伊駒 政弘

 近年のICT技術の発展・進歩により、ハードウェア機器やソフトウェア等の情報システム資産を“保有”せずに、業務に必要なサービスを“利用”するという特長を持つクラウドサービスが、民間を中心に広がりを見せています。そのような中で総務省においては、平成21~22年度にかけて「自治体クラウド開発実証事業」を実施するとともに、22年7月には「自治体クラウド推進本部」を設置するなど、自治体クラウドを推進してきており、ここにきて地方公共団体が共同でクラウド化に取り組む事例も増えてきました。

 また、東日本大震災において津波で庁舎が被災し、停電による情報システムの停止や住民データの水没といった事態が発生し、クラウドコンピューティングが災害時の業務継続や情報保全に有効であることが再認識されました。加えて、災害時の広域連携といった観点からもクラウド化を進めていく必要があるといえます。

 クラウド化を進めるにあたっては、自治体固有のシステム改修、標準的なパッケージの対応可否、データ移行ツールの適用、データセンターのセキュリティ等々の課題があり、それらを解決していくには多額のコスト負担も想定されます。

 このような点を踏まえ、当センター(LASDEC)が指定するテーマのうち一つ以上を実施してクラウド化に取り組むモデル団体を選定し、その取り組み過程や成果事例を通じて、クラウド化移行に係る諸課題を明らかにし、また、その解決手段等を示すことによりクラウド化への取り組みを容易にするとともに、開発関係経費等の初期費用の負担軽減を図ることを目的に「平成25年度自治体クラウド・モデル団体支援事業」を実施しています。

図1 中間標準レイアウトを活用したデータ移行への取り組みイメージ

支援事業の概要

 本事業では基幹系業務システムの共同利用の実運用等に向け自治体クラウドの構築へ取り組む市町村に、1グループあたり3000万円を上限として、4グループに助成することとしています。

 取り組むテーマについては、以下の五つを指定しています。
1.総務省で策定した「中間標準レイアウト仕様」を活用したデータ移行の取り組み【必須】
2.IPA文字情報基盤を活用した外字の標準化への取り組み
3.クラウドコンピューティング技術を活用した災害時の業務継続や情報保全のための広域連携などへの取り組み
4.基幹系業務システムに加えて、住民サービス向上に向けた「コンビニにおける証明書等の交付(コンビニ交付)」、「被災者情報に係るシステム(被災者支援システム等)」のクラウド化の取り組み
5.その他、自治体クラウド構築に際し、他団体の参考となり得る取り組み

 なお、「中間標準レイアウト仕様」については、データ移行時のファイル形式にこれを適用することで、新・旧システムの両ベンダーは事前にデータ移行に必要な準備を行えることなどから、自治体におけるシステム導入経費の削減と移行作業の軽減が期待できます。本事業では、これらデータ移行に係る諸課題を明らかにし、その解決手段等を示すことにより、中間標準レイアウト仕様の利用の促進を図るために必須のテーマとしました。

モデル団体について

 本事業で選定したモデル団体は以下の四グループです。

1.いばらき自治体クラウド基幹業務運営協議会(4団体)

 構成団体の3市1町には、同じ県内であっても40~80キロメートルと離れている団体もあります。大規模災害時にはこの距離を生かすことを想定。安全なデータセンターで運用される基幹業務システム(自治体クラウドサービス)に、どこかの自治体が被災した場合でも他の自治体から接続し業務間連携を相互に行うことで住民票や税証明発行などの住民サービスの継続ができる仕組みを構築する予定です。

2.埼玉県町村会(18団体)

 埼玉県内の18町村が参加する埼玉県町村会のクラウドでは、カスタマイズ、運用を統一する「共同運用方式」を採用しています。これは、機器等の調達を共同で実施する「共同調達方式」、事業者クラウドを共同で利用する「共同利用方式」に比べ、合意形成の難易度は上がるものの、費用削減効果が大きく期待できる方式です。

3.新潟県長岡市、三条市、見附市、魚沼市、粟島浦村

 本グループの特徴は、人口格差が非常に大きい団体による自治体クラウドとなる点です。これまで、自治体クラウドは類似自治体によるグループが成功しやすいといわれており、人口格差の大きいグループは全国的にもまれで先行事例がほとんどありません。今回の共同化で作り上げるシステムは、人口規模が約330人から28万人まで利用可能なため、これからクラウドを導入する県内の多くの団体が参加することも期待できます。

4.大阪府高石市、忠岡町

 高石市および忠岡町はいずれも大阪湾に面し、今後発生が懸念されている南海トラフ巨大地震に対する災害リスクを抱えています。

 そこで、大規模災害時や庁舎火災など不測の事態に対するデータのバックアップ体制および業務継続性を実現するために、災害に強いデータセンターを利用したシステムを共同で構築し、被災者支援システムについてもクラウドで導入するとしています。

図2 平成25年度自治体クラウド・モデル団体支援事業選定団体

 私どもLASDECでは、自治体クラウドの促進のほか、コンビニ交付の推進等も行っており、今後も、このような事業を通じて市町村における電子自治体の取り組みを支援してまいります。

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

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