2014年1月号Vol.93

【特集】どうなる 社会保障制度改革

──制度改革で地域の役割はどう変わる

厚生労働省 社会保障担当参事官室 政策企画官 込山愛郎氏

平成25年12月5日、参議院において社会保障制度改革の道筋を示したプログラム法案(「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」)が可決、成立した。今後、具体的な検討が進められる社会保障制度改革の方向性や、市町村に求められる役割について、厚生労働省社会保障担当参事官室の込山愛郎政策企画官に聞く。

込山愛郎氏

──平成25年12月5日に参議院本会議で可決・成立した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」について教えてください。

込山 この法律は、「社会保障改革プログラム法」とも呼ばれていますが、その内容は社会保障制度改革の全体像やその方向性、進め方などを法的に明示するというものです。具体的には、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るため医療制度、介護保険制度等の改革について、①改革の検討項目、②改革の実施時期と関連法案の国会提出時期、を明らかにしています。この法律自体は、個別の制度に関して直ちに具体的事項を規定するというものではありませんが、「少子化対策」「医療」「介護」「年金」の四つの分野について、改革の方向性を明らかにし、これに従って改革を検討するという“法律上の義務”を負ったという意味で重要な法律となります。

社会保障制度改革の全体像

──社会保障制度改革が必要となった背景を教えてください。

込山 いま、日本では世界に類を見ない少子高齢化が進行しています。65歳以上の高齢人口の比率は総人口の4分の1近くとなり、これに伴って年金、医療、介護などの社会保障給付費は、すでに年間100兆円を超える水準となっています。さらに、2060年代には高齢化率が40%近くになることも予想されています。10年後を見ても、2025年には団塊の世代の方々が75歳以上となります。これを厚生労働省では「2025年問題」と呼んでいます。この頃になると、例えば大都市周辺部でも75歳以上の人口が2倍近くになると予想され、その膨大な医療や介護に対するニーズをどのように受け止めるかが大きな課題です。また、子育て世代をはじめ若い世代の生活上のさまざまな課題も増えています。こうした課題に向き合い、制度を安心できるものに充実していかねばなりません。

 一方で、日本の社会保障は、保険料と国や地方の税金で賄う仕組みとなっていますが、国や地方が負担すべき費用が税収では追いつかず、公債に依存する比率が高くなっています。ニーズがますます高まる将来においても社会保障制度を安定的に機能させるために、効率化や財源調達がともに大きな課題になっています。

 そこで、社会保障の充実・安定化と財政健全化という二つの目標の同時達成を目指すべく、進められているのが「社会保障と税の一体改革」です。この中で、社会保障の充実と安定化の具体像を検討してきたわけです。

──これまでどのような取り組みが行われてきたのでしょうか。

込山 社会保障と税の一体改革については、平成24年8月に関連法が成立しています。その中の一つに「社会保障制度改革推進法」がありますが、この法律は3党(自民・公明・民主)の協議の中でできあがった法律であり、今後の改革の基本的な考えや各分野の改革の基本方針をきちんと位置づけたものです。

 さらにこの法律に基づき、平成24年11月には社会保障制度改革国民会議が設置されました。ここでは改革推進法に規定された「基本的な考え方」、社会保障4分野(年金、医療、介護、少子化対策)に係る改革の「基本方針」および3党の実務者協議で取りまとめた「検討項目」に基づいて審議が行われ、平成25年8月に報告書がまとまりました。この報告書では、今後の方向性として1970年代モデルの社会保障から、超高齢化の進行、家族・地域の変容、雇用の環境変化などに対応した全世代対応型の21世紀モデルに変えていくこと等が提言されています。

 そして、この報告書の内容に沿って、このほど概ね平成29年度までの道筋が定められた社会保障改革プログラム法が成立したということになります。

──そこでは、どのようなことが規定されているのでしょうか。

込山 社会保障改革プログラム法では、改革推進法における「自助、共助及び公助の最も適切な組み合わせ」という基本的な考え方を踏まえつつ、講じるべき社会保障制度改革の措置として、①人が持てる力を最大限発揮できるよう応援するための、自助・自立のための環境整備、②少子化対策、③医療制度、④介護保険制度、⑤公的年金制度、の5点について示しています。

 詳細は別表(下記)を確認していただきたいのですが、それぞれの項目について、講じるべき措置をいつまでに実施し、そのために必要となる法律案の国会提出をいつまでに目指すのか、その際に検討すべき主な事項としてどのようなものがあるのか、を示しています。

 例えば医療制度では、医療機関等の役割分担や連携が一層重要になりますが、そのために必要な措置を平成29年度までを目途に順次講じることとし、必要な法律案について平成26年通常国会への提出を目指すとしています。また、医療保険では、必要な措置を26年度から29年度までを目途に順次講じることとし、必要な法律案については27年の国会提出を目指す──としています。

 それ以外にも、社会保障制度改革の推進体制の整備として社会保障制度改革推進本部(関係閣僚)、社会保障制度改革推進会議(有識者)を設置することとしています。

社会保障プログラム法の主な概要

高まる市町村の役割

──社会保障制度改革により、今後ますます地域の役割が高まりそうですね。

込山 そうですね。これからは地域づくりとして医療、介護、福祉、子育て支援の問題を合わせて考えていかなければいけないと思います。そのためにも、特に市町村の役割が重要になってくると考えています。

 例えば医療・介護分野であれば、今後、個々の病院で完結する医療ではなく、地域全体で支える地域完結型の医療に変えていかなければならないでしょう。住み慣れたまちで、安心してその人に応じた適切なサービスが受けられるよう、生活にも寄り添える提供体制を構築する必要があります。そのための受け皿、基盤として地域包括ケアシステム(医療・介護・介護予防・住まい・生活支援が包括的に確保されるシステム)の構築が重要となってきます。そこで大切なのは、市町村等が中心となって医療も含む地域資源をつなぎ合わせ、地域の実情に応じた仕組みをつくり上げていくことです。そのためには、地域の凝集力となる拠点機能をいかにするか、市町村や関係機関が自ら意識的に考えていかなければならないでしょう。

 さらに、社会保障改革プログラム法では、地域医療ビジョンの作成についても提案しています。これは、地域の医療需要の将来推計や病床機能報告制度等により医療機関から報告された情報等を活用し、二次医療圏等ごとに各医療機能の必要量等を含む地域の医療提供体制の目指すべき姿を示すというもので、都道府県が作成することになっています。しかし、地域医療ビジョンを作成するためには、市町村レベルで在宅医療なり地域包括ケアシステムがどのように組まれているかを前提にしなければならないと思っており、その意味でも市町村の主体的な関与が必要になると考えています。在宅医療を含む地域包括ケア、さらには川下までの医療連携にとって、これからは市町村の分析能力や立案力も重要になってくるのではないでしょうか。

 そして、大事なのが少子化対策です。 国民会議報告書やプログラム法では、子育て支援、少子化対策が一番前に記載されています。これには、社会保障の基盤がまさに少子化対策にあるというメッセージが込められています。なお、この分野については、すでに子ども・子育て支援関連三法が平成24年に成立しており、平成27年の本格施行に向けて市町村や都道府県においても準備を進めていただいています。今後も内閣府や厚生労働省の情報を注視しながら、対応を図っていただければと思います。

 健康や福祉、そしてネットワークがこれからのまちづくりのキーワードです。つながり溢れるまちづくりができるかどうかが、健康・福祉政策の大きなポイントになると感じています。恐縮ですが、今後、市町村や都道府県の役割はより一段と高まっていくことになります。地域生活を支えるためにはどうすればよいのか、皆さんのお知恵も拝借しながら、国と地方が協力してこの改革を進めていきたいと考えています。

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