2014年1月号Vol.93

【トレンドビュー1】新たな電子自治体の推進を加速化へ

総務省電子自治体の取組みを加速するための研究会 委員 井堀幹夫(東京大学高齢社会総合研究機構特任研究員)

 政府は、平成25年6月14日新たなIT戦略「世界最先端IT国家創造」を宣言し、閉塞を打破し再生する日本へ向けて、わが国が今後目指すべき社会を実現するためのIT利活用の取り組みを示しました。

 これらは、「地域産業の活性化」「適切な地域医療・介護、健康増進の充実」「電子行政サービスの充実、行政情報システムの改革」など、いずれも地方自治体にとっては、深く関わりのある内容となっています。このことは、地方自治体が新たな電子自治体の推進を加速化する大きな使命を担っているといえます。

 総務省では「電子自治体の取組みを加速化するための検討会」を立ち上げ、地方自治体の情報化調査、課題整理、推進指針について、現在検討を進めています。予定では2月にパブリックコメントを行い、3月には指針が公表される見込みです。

 電子自治体を加速化するためには、現状と課題を把握し、どのような取り組みが必要なのか、また、その具体的な施策、事例などから対応を決める必要があります。検討会では、これらを「電子自治体の取組みを加速化するための10の指針」として取りまとめるべく討議を重ねています。

電子自治体を加速化する四つの視点

 これまでの論点については、四つの視点で議論されています(図)。

電子自治体を加速化するために取り組むべき内容イメージ図

 第一の視点は「サービス向上」です。住民にとって利便性の高い電子行政サービスを実現させることで住民満足度を向上するための取り組みです。具体例としては、窓口サービスの最適化やコンビニにおける証明書等の交付が挙げられます。これらは、新たなIT戦略で示された個人番号カードの活用も視野に入れ、住民一人一人のニーズに合わせたワンストップ・プッシュ型サービスの提供や、行政サービスの提供機能を民間にも開放し官民協働により利便性の高い公共サービスを提供する、などと共通する内容となっています。

 また、地方自治体が保有するデータを民間企業が活用することで、住民満足度を向上させる施策の実施の必要性についても取り上げています。

 第二の視点は「評価・刷新」です。住民の満足度を向上させるサービスを提供するためには、電子行政サービスにおける住民の満足度や社会情勢の変化を把握して、必要に応じて業務改善の実施などが必要となります。そのために、PDCAサイクルによる情報化施策のマネジメントの必要性についても取り上げています。

 第三の視点は「適正管理」です。社会保障・税番号制度の導入や自治体クラウドによる情報システムの共同利用といった取り組みの進展により、今後はこれまで以上に個人情報保護や情報資産やコンプライアンスなど情報セキュリティー管理に対する対策強化が求められます。そのため、地方自治体においてはどのような管理体制を講じる必要があるのか、さらに、人材をどのように活用・育成するかなどを考えることが大切です。また、情報システムの調達における適正な品質確保や適正運用のために行うSLA(サービスレベル・アグリーメント)の締結や費用対効果の見極め、共同調達の実施などについては、いずれも専門的な知識や経験を要するため、これにどのように対応するのかについても重要な事項として取り上げています。

 第四の視点は「技術・制度」です。社会保障・税番号制度や自治体クラウドの導入は、地方自治体の既存の情報システムにとって大きな影響があり、対応すべき取り組みです。これらの新しい技術や制度による情報システムを導入する場合は、投資対効果だけでなく業務の効率化や住民の満足度向上、組織体制の見直し、規約や運用方法の見直しなどへの取り組みが必要であることを取り上げています。

 以上、四つの視点をもとに10種類の指針(案)について検討を進めていますので、ぜひ皆さんからもご意見を寄せていただきたいと思います。

求められる三つの対応

 なお、電子自治体を加速化するには、筆者は次の3点について対応すべきではないかと考えています。

1.組織体制のあり方

 電子自治体を加速化するにあたって、何よりも大切なことです。特に、「調達管理」「セキュリティー管理」「資産管理」「運用管理」などの管理体制については、多くの地方自治体がいまだ不十分であるため、その整備は喫緊の課題です。

 そのため、地方自治体では内部組織人材の育成と活用だけでなく、他の地方自治体や国、民間企業、大学、現役を退いた専門的な知識経験を有する住民などとの協働体制を、地方自治体が共同で構築することが有効だと思います。例えば、非常勤の特別職公務員制度を活用し、専従の専門的な知識、経験を有する組織を編成することで、近隣団体への対応も図ることが可能となるなどの効果が期待できます。

2.電子自治体の目的と目標の設定

 電子自治体によって、何を目指すのか、その目的や目標が明確でない、住民や職員に共通の理解がない、優先順位が明確でない、などについて問題と感じることが多くあります。その問題を払拭するには、首長参加の下、全庁体制で施政方針や各分野の個別計画、住民・行政ニーズ分析、地域産業ニーズ、法制度改革、国家戦略などを踏まえた電子自治体の施策、工程表、推進体制、目標を明らかにし、実効性のある情報化計画を策定する必要があります。

3.住民満足度の向上を評価する仕組みの導入

 電子自治体によって所期の目的を達成できているのか、予期せぬ問題が生じていないか、住民の満足度の向上に結びついているかなどを評価する指標(KPI)を明確にし、問題があれば必要な対策を講じることが大切です。そのため、評価する住民や職員のニーズや苦情、提案に関する情報の収集、分析をする評価作業が必要となります。

 いよいよ、地方自治体が社会保障・税番号制度の導入と同時に自治体クラウドを活用することで、わが国が目指す姿へ向けて大きく推進する基軸となる時が来ているのではないかと感じています。

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