2014年4月号Vol.94

【巻頭言】マーケティング思考のまちづくり

流山市 マーケティング課 河尻和佳子

 流山市ではつくばエクスプレスの開業に先立ち、平成16年4月に全国に先駆けてマーケティング課を設置しました。背景には少子高齢化社会の進行があります。

 それまでの流山市は団塊世代の住民が多く、このままでは財政が逼迫するであろうことが課題でした。将来も十分な住民サービスを維持するには若い層を中心に人口を増やすことが必要です。そこで取り組んだのが、マーケティング手法の導入です。

 他自治体と比べて市の強みと弱みは何かを考え、そこから「都心から一番近い森のまち」というブランドイメージを打ち出し、都心で働き緑のある住環境の中で住みたいと考える共働き子育て世代(DEWKS)をターゲットとして誘致に奮闘してきました。

 知名度やイメージの向上を図るため、都内の主要駅で「母になるなら、流山市」という広告を展開しているほか、市外向けも意識し「森のマルシェ」などブランドイメージを生かしたイベントを定期的に開催。現在、これらのイベントには年間12万人が参加し、うち約半分は市外からの集客となっています。

 また、保育所の定員を4年間で7割増やすとともに、駅に送迎保育ステーションを設置し市内の全認可保育所(園)へバスで送迎するサービスを平成19年から開始。最大21時まで延長保育を可能とするなど、働き続けながら子育て・教育ができる環境の整備へ重点的に取り組んできました。

 これらの活動の結果、30~40代の子育て世代を中心に人口が平成17年の15・2万人から16・9万人へと増加し、特に9歳未満の子どもの増加割合は沿線の他自治体と比べ群を抜いて高いなど、ほぼ狙い通りの成果が出ています。

 自治体がPR対象を設定するというのはめずらしいかもしれません。また、世帯所得が比較的高いDEWKS世代の誘致により税収面での寄与が期待される一方、子育て支援などのサービス拡充にコストもかかることから、短期的に効果を判断するのは難しいともいえます。しかし、これは高齢化社会を支えながら将来も発展し続ける仕組みづくりと、まちの価値を上げるための長期的な取り組みです。

 そのため取り組みの"見える化"が必要です。市内外の多くの人から「住みたいまち・あこがれのまち」として注目されるようにメディアなどに働きかけ、取り上げていただく機会も多くなりました。このことにより市民も地元への誇りや愛着を感じるようになり、市民活動の活性化につながるという相乗効果も表れています。

 マーケティング思考は、高いポテンシャルを持ったまちのブランド化に必要な手段だと思います。視察のご依頼も多くいただきますが、こうした取り組みは一朝一夕に進むものではありません。流山市でも10年をかけて、小さな変化を一つずつ積み重ねてきました。

 また、次世代にわたって住み続けてもらうという点ではまだまだ工夫が必要で、現在も試行錯誤の連続です。その意味では流山市も成功事例ではなく、進化の過程なのだと考えています。

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

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