2014年4月号Vol.94

【トレンドビュー2】クラウドの進展を支えるネットワークの新潮流

富士通株式会社ネットワークサービス事業本部先進テクノロジー戦略室 室長 天満 尚二

 地方公共団体においてクラウドサービスの活用が広がる中、これを支える技術として「ネットワーク仮想化」や「SDN(Software Defined Networking)」が、いま注目を浴びています。

 「ネットワーク仮想化」とは、物理的に一つのネットワーク上に複数の仮想ネットワークを構築するものです。各仮想ネットワークは、それぞれが一つの物理ネットワークであるかのように動作します。また、仮想化されたネットワークを構成する通信機器──スイッチやルーターなどをソフトウェアで一元管理するのが「SDN」です。

 これらを活用することで、地方公共団体では情報化コストの削減やネットワーク管理の負荷軽減に加え、業務や組織の変化に合わせてネットワーク構成を柔軟に変更可能となるなどの効果が期待されています。

なぜ「仮想化」なのか?

 クラウドサービスの導入効果として、①複数利用者の共同利用による「コスト削減」、②業務量やデータ量の増大に応じたハードウェアリソースの「拡張性」、③システム障害が発生しても業務を止めない「業務継続性の確保」、などがあります。これらを実現するため、サービスを提供するベンダーではデータセンターへ大規模なサーバー設備を整えてきました。特に、近年ではサーバーやストレージなどの仮想化技術が急速に進化したことで、これを活用してクラウド環境の最適化を進めています。

 これに対してネットワークは、スイッチ等のネットワーク機器で構成された物理ネットワークと、それを管理・運用するネットワーク管理システムで構築されています。そのためサーバー等の仮想化が進んでも、物理的なネットワーク機器の設定変更やケーブルの接続変更などは人手で行う必要があり、これに相応の手間と時間がかかってサーバー仮想化のメリットを十分に生かすことができないという課題が生じていました。

 これを解決する技術として登場したのが、「ネットワーク仮想化」と「SDN」です。

 これにより、通信品質の確保やネットワーク機器の利用効率の向上、ファイアーウォール等をシステムごとに設置することによるセキュリティ面の向上などが可能となります。加えて、ネットワーク設計・管理が容易になることで新たなサービスにも柔軟に対応できるという利点もあり、いま多くのデータセンターで導入が進められています。

 そして、ネットワーク仮想化とSDNは「データセンター内のネットワーク」から、「地方公共団体を接続するネットワーク」「庁内ネットワーク」へと、その適用領域を広げています。

地方公共団体にとってのSDN/ネットワークの仮想化の利点イメージ図

技術を「使う」メリットは?

 地方公共団体がネットワーク仮想化とSDNを活用する利点としては、自治体クラウドの普及や番号制度の導入などの変化へ柔軟な対応が期待できることが挙げられます。

 第一に、クラウドサービスの導入にあたっては庁舎とデータセンターを接続するネットワークの構築が必要です。しかし、データセンター内の機器は仮想サーバーで構成されているため、状況に応じて接続先の仮想サーバーは変わります。災害発生時にはベンダーがサービスをバックアップセンターへ切り替えることも想定され、その場合は接続先のデータセンターそのものも変化することになります。

 そうした場合、これまでであればその都度、接続変更などの作業が必要でしたが、ネットワーク仮想化やSDNの活用により、この手間から開放されます。

 また、さらに技術が進むと、いずれはデータセンター内で仮想化されたネットワークを地方公共団体の庁舎まで拡大できるようになります。これにより、端末の増設に伴うネットワーク機器の設定変更や新たな攻撃に対するファイアーウォール等の防御条件の変更など、日々の庁内ネットワークの維持管理もクラウド事業者へ委託できるようになります。

 その結果、地方公共団体では業務サーバーからネットワークまで、すべての運用・管理をクラウド事業者へ委託できるようになり、これにかかっていた労力を住民サービスへ振り分けることも可能です。

 さらに番号制度に目を向ければ、平成29年7月から「情報連携」が始まり、国の行政機関や地方公共団体が相互に必要な個人情報を照会し合うようになり、それまでに基幹系システムを国が構築する「中間サーバー」へ接続する必要があります。

 この中間サーバーは、地方公共団体情報システム機構が全国2カ所に集約して運用・管理し、全国の地方公共団体がLGWANを介して共同利用することになります。

 しかし、個人情報保護の観点などから、地方公共団体によってはLGWANを電子メールや財務会計等の情報系ネットワークに接続し、住民基本台帳や税等の基幹系ネットワークとは分離していることがあります。その場合、基幹システムを中間サーバーへ接続するために、ネットワーク構成の変更が必要となります。

 この点でも、ネットワーク仮想化とSDNを活用して庁内ネットワークの統合を図れば、情報セキュリティを確保した上で回線・機器の統合によるコスト削減が見込めるとともに、職員の負担軽減が期待できます。

 そのため、番号制度対応と併せて庁内ネットワークの整備や再構築も検討することが肝要といえます。

 さて、富士通ではネットワーク仮想化へ対応すべく、昨年5月に次世代ICT基盤のアーキテクチャー「Fujitsu Intelligent Networking and Computing Architecture」を発表しました。これはICT全体を仮想化し、仮想化されたネットワークを制御するSDNの考え方をICT基盤全体に拡張し、ソフトウェアでICT基盤全体を柔軟かつ最適に運用することを可能とします。

 富士通は、今後も人にやさしい技術の進歩をリードし、より安心して使っていただけるICTの提供を通して、お客さまの良きパートナーとなれるよう努めてまいります。

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

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