2014年10月号Vol.96

【特集4】ICTを“道具”に、つながり、くらしやすいまちづくり

──市民カードの活用──奈良県葛城市

いま、奈良県葛城市を中心に取り組みが進められる「新時代葛城クリエーション推進事業」が注目されている。これは、ICカードを活用して住民の生活を支援し、最終的に地域コミュニティーの再生を目指そうというものだ。マイナンバー制度後の住民サービスの一つのヒントとして、この取り組みをレポートする。

米井英規課長

米井英規課長

 総務省の平成25年度補正実証事業「ICT街づくり推進事業」の一つとして、昨年度に続き葛城市など産官学連携グループが共同提案した「新時代葛城クリエーション推進事業」が選出された。

 平成24年度補正事業では、市民共通IDの仕組みと生活者支援情報統合プラットフォーム「かつらぎネット」を構築し、市内2カ所(寺口ふれあい集会所、ゆうあいステーション)に設置した「おたがいさまサポートハウス」を拠点として、市民の買い物や健康管理・増進の支援サービスを行った。今年度は他団体へのサービスの横展開へ取り組むことが予定されている。これについて、葛城市企画部企画政策課の米井英規課長は「昨年度は基盤構築が中心だったが、今年度は個人番号カードの活用も含めて、その成果が試される」と意気込みを語る。

見えてきたマンナンバー後の世界

 葛城市では平成24年8月、大学および情報通信、医療、印刷、流通など多様な民間企業とともに「新時代葛城クリエーション研究会」を発足。ここで協議した新時代の市民サービスを具現化するにあたり国の実証事業に名乗りを挙げた。

れんカード

 24年度補正事業の核となったのが、個人を識別できる葛城市民共通IDカード「れんカード」と「かつらぎネット」。これは市民がカードを端末にかざすだけで認証され、生活支援サービスをワンストップで受けることができる情報インフラだ。今回、実施したのは、買い物困難者がネットスーパーで買い物ができる「買い物支援サービス」と、体重や血圧などを定期的に測定してクラウド上で管理し、健康状態に応じたレシピ相談などを受けられる「健康管理・増進支援サービス」。

 並行して、市民自身が地域の人々の手助けを行う「市民コンシェルジュ」を育成し、「おたがいさまサポートハウス」で二つのサービスを受ける市民のICT利用を支援する仕組みも整備した。

 また、インターネット放送局「かつらぎテレビ」を開設し、市民情報特派員がSNS等を通じて地域レポートを行う取り組みも実施。これにより、市民が自律的に参加する「自助共助型コミュニティによる地域運営」を試行し、実際に買い物支援で212名、健康管理・増進支援で940名など多くの市民が参加した。「健康管理・増進支援では、日々のデータを記録・管理でき、市民からも生活習慣病等の予防に役立つと好評だった。市としても、これにより特定健診の受診率向上や医療費抑制などが期待できる」と初年度の成果に満足の表情を浮かべる。

 今年度は、ダイエットメニューなどレシピ内容の充実やそれに適した食材の買い物支援などを図り、「検診から日常的な健康管理、食生活の最適化、最適食材等の買い物支援、電子決済、健康増進という一連のサービスへつなげていきたい」と語る。また、香芝市内にもサポートハウスを設置し同じサービスを利用できるようにするほか、広島市においては広島地域カードコンソーシアムとの間で課金・決済機能の連携も試行するという。

 加えて、マイナンバー制度を見据え、「れんカード」(フェリカ方式)とともに、国際規格(TypeB)に準拠したICカードによる実証も予定している。

事業の全体像

カード普及のカギは市民のメリット感

 「個人番号カードはいろいろな可能性を秘めている」と米井課長。  現在、図書館カードや印鑑登録カードなどとの一体化を準備するほか、制度開始に合わせてコンビニ交付サービスの開始も予定している。だが、「住民が使いたいと思う魅力的なサービスがなければ、個人番号カードの普及は難しい」との懸念も示す。その点では、政府も健康保険証や運転免許証との一体化に向けた検討を始めているが、やはり「カギを握るのは民間のサービス」(米井課長)だ。

 先述した「れんカード」には電子マネーWAON機能が付いており、さまざまな場面で決済基盤として利用されている。「特に、高齢者にとってはID/パスワードによる認証が不要なICカードは便利」で、個人番号カードの民間サービスへの用途拡大へ期待を寄せる。

 いま、葛城市が取り組む市民と行政、企業が三位一体となったサービスの運営形態が注目され、多くの市町村が視察に訪れる。米井課長が気になっているのは、多くの市町村で職員の意識が時代に追いついていないと感じることだ。

 これについて「業務の洗い出しやシステム改修、条例の見直しなどは必要だが、それ以上にその前提となる『制度をどう活用するか』を考え、議論を深めることが重要だ」と述べる。

 そのため、葛城市では個人番号カードを職員証として利用する検討も開始した。全職員がカードを取得し、先行して利用することで、従来の考え方を大転換していこうというのだ。マイナンバーは、どの市町村にとってもその絶好のチャンスとなるといえよう。

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