2015年7月号Vol.99

【特集】加速する電子自治体

──クラウドの利用拡大で変化の時代を乗り切る

いまや、地方の財政再生の議論でも筆頭テーマに挙げられる情報システムの「クラウド化」。コスト削減やBCPの観点から、中小規模団体を中心にクラウド型システムの導入が進んでいるが、いまだその取り組みには温度差があるのも事実だ。だが、先進的にクラウドを導入した団体では、その活用を通じて「業務改革」や「住民サービスの向上」で成果を挙げる例も登場している。クラウド活用の現状と展望を考える。

クラウドの利用拡大イメージ図

 今年3月、有識者や地方公共団体職員で構成される「電子自治体の取組みを加速させるための10の指針」フォローアップ検討会が報告書をまとめた。これは『電子自治体の取組を加速するための10の指針』(平成26年3月公表)の進捗状況を検証・分析したもので、特に指針で示された1~5、10の6項目(図表)について重点的に取り上げたものとなっている。

 検討会メンバーの一人、地方公共団体情報システム機構・伊駒政弘研究開発部長は、本報告書について「単なる情報提供ではなく、市区町村への実態調査やヒアリングの結果、あるいは検討会での議論を踏まえてクラウドを導入する際のポイントや留意点が分かりやすくまとめられている。ぜひ、一読してほしい」と語る。

クラウド活用は
いまや時代の必然だ

 報告書によれば、主に情報化コストの削減や法改正対応の負担軽減、業務の効率化をきっかけとして、クラウドを導入する市区町村は着実に増えているという。だが、規模別に見ると人口30万人以上ではメインフレーム利用率が60%を超え、大規模団体ほどクラウド化への取り組みが遅れていることも明らかとなった。

 この現状について伊駒氏は、「自治体クラウドはもともと人口10万人以下の団体を主な対象として推進されてきた。だが、番号制度のスタートにあたり、28年1月は現行システムの改修で乗り切っても、情報連携など今後を考えると、このままメインフレームを利用し続けるのはなかなか困難といわざるを得ない。次期システムではオープン化、その後のクラウド化は避けられないだろう。この機に大規模団体でも積極的な活用を考えてほしい」と述べている。

 クラウド導入の障壁の一つに、長年積み重ねてきたシステムのカスタマイズの問題がある。その結果、システムが複雑化し、法制度改正のたびに膨大な改修費がかかっている現状に、政府の財政諮問会議でも「クラウド化による支出抑制を推進する」との考えを示した。「システムの機能は進化しており、いまやパラメーターの活用や業務フローをシステムに合わせることでノンカスタマイズでの導入は十分可能だ。業務が変わることへ職員の不安はあると思うが、そろそろ意識改革が必要」(伊駒氏)といえるだろう。

 さらに伊駒氏は、クラウド化の効果として制度改正への円滑な対応やコスト削減に加え、多様化する住民サービスへの柔軟な対応や業務継続性の確保などを挙げる。特にシステムを共同利用することで、「万一の場合、他団体の庁舎で業務を継続させることもできる」といった付随効果もある。

 近く改訂版が公表されるであろう『日本再興戦略』でも、クラウド導入団体の倍増やシステムの運用コストの削減が盛り込まれるなど、電子自治体の推進は引き続き政府の重要施策の一つに位置付けられることが見込まれる。その意味ではクラウド化は時代の必然といえる。

クラウド導入を
課題解決のチャンスに

フォローアップ検討会の重点指針

 さて、検討会の報告書では先進団体の“声”を数多く紹介している。本誌でも3団体のクラウドの活用事例を取り上げた。それぞれ規模や利用目的は異なるが、注目されるのはいずれもクラウドという技術的な「変化」を積極的に採り入れて、さまざまな課題解決に生かしている点にある。

 長年、基幹業務システムを共同アウトソーシングしてきたが、まちづくりのさらなる進展のためにクラウドサービスの単独利用へ切り替えたのが北海道喜茂別町(人口約2300人)だ。全国の市区町村と同一のパッケージを利用することは、コスト削減だけではない新たな共同利用の姿だという。移行を機に業務の標準化を図り、無駄の改善にもつなげた。まちづくりの中心にICTを据え、マイナポータルの活用も視野に新たな住民サービスを模索するなどその取り組みはとても興味深い。

 メインフレームからクラウドサービスへ大転換し、番号制度への円滑な対応と、職員の意識改革を図ったのが大阪府泉南市(人口約6・3万人)だ。そのために、利用者目線でのシステム選定に徹底してこだわった。21名の担当職員が機能要件や仕様書の作成から、実際にシステムを操作・体感し、システム選考まで関わったという。稼働後は同一のシステムを利用する近隣団体と勉強会を開き、クラウドのより有効な活用法を学ぶとともにシステムの機能研究を重ねている。

 番号制度という変化を住民サービスの向上に活用しようというのが、兵庫県神戸市(人口約153・6万人)だ。老朽化した自動交付機を廃止し、28年1月から証明書コンビニ交付サービスを導入する。政令市として初めてLGWAN-ASP方式を採用したことで、全国から注目されている。コンビニ交付サービスに次いで、公的個人認証の仕組みを活用した電子申請の拡充を図るなど、クラウド活用による市民の利便性向上へさらなる挑戦は続く。

 いまや、法制度やICT、住民の価値観など市区町村を取り巻く時代環境は著しく変化している。この点、変化をチャンスとして、まちの未来を切り拓いていこうとする3団体の取り組みは、他団体にとっても大いに参考となるのではないだろうか。

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