2015年10月号Vol.100

【特集インタビュー2】活用で真価を発揮するマイナンバー

株式会社TKC 行政システム研究センター 番号制度対応推進室長 松下邦彦

 10月にスタートするマイナンバー制度は、平成29年7月の情報連携の開始をもって導入がひと通り完了します。しかしながら、これは〝始まりの終わり〞にしか過ぎません。マイナンバー制度は、「社会保障と税の給付と負担の適切な関係の維持」と「国民の利便性向上および行政運営の効率化」という二つの大きな目的を実現するための手段に位置付けられています。導入するだけでなく、積極的に活用して初めてその真価が発揮されるのです。

 そのため、制度自体が順次拡張されます。9月に成立した改正番号法では、銀行の預貯金口座、医療分野の一部、自治体事務等が利用範囲に追加されました。さらに、戸籍事務と旅券事務を追加することと、個人番号カードやマイナポータルの活用範囲を拡大することが検討されています。

社会保障と税の制度改正が続く

 マイナンバー制度は社会保障と税の一体改革を遂行するための基盤として構想され、途中で政権が交代したにもかかわらず継承されて実現に至りました。成熟した経済、多額の政府債務、少子高齢化という状況に直面しているわが国で、この制度が社会保障給付の適正化と課税の公正化のために不可欠な基盤に位置付けられているのです。

 預貯金口座に個人番号を適用する目的の一つは、社会保障の給付要件に所得額だけでなく金融資産額を加えることです。生活保護では、従来から受給者が保有できる資産が制限されていました。また、直近の介護保険制度改正では、低所得高齢者への補足給付の要件に預貯金の保有額が加味されました。資格取得要件や、給付額の算定条件に預貯金の保有額を参照する給付制度は、次第に増えていくことでしょう。税分野でも、預貯金口座への個人番号適用によって、将来は金融資産への課税が可能になると見込まれています。

 自治体は、こうした制度改正を着実に遂行していく必要があります。

自治体が積極的に活用する

 一方で、国民の利便性向上および行政運営の効率化については、自治体が積極的に制度を活用できます。

 まず、個人番号カードです。国は国民の3分の2に相当する8700万枚を平成30年度までに普及させるという計画を示しました。そのため、カード費用を国が負担するほか、公的機関の身分証、健康保険証、民間のクレジットカードやポイント機能を相乗りさせるなどの普及策を検討しています。

 自治体にとって、個人番号カードを活用する重要なサービスは「コンビニ交付」です。住民がマイナンバー制度によって最初にメリットを実感できるサービスとして、多くの自治体がコンビニ交付の導入を計画しています。国は、その普及目標を、導入自治体の人口合計数6000万人としました。

 「マイナポータル」は、インターネット上で住民にサービスを提供するポータルサイトです。官民のサービスを連携させる仕組みや電子私書箱機能が設けられ、引っ越し・死亡等に係るワンストップサービスが提供されます。自治体でもマイナポータルの詳細が明らかになったところで、インターネット上で行政手続きを完結できるサービスを検討する必要があります。

 自治体の内部事務では、他の機関に情報を照会し提供を受ける情報連携が制度活用の中核となります。

 社会保障の給付要件や税の減免措置要件に関する情報を他の機関に情報照会することにより、住民が窓口で申請する際に必要となる所得証明といった添付書類を省略できます。業務を効率化するには、照会条件を手作業で入力するのではなく、業務システムの中に情報照会を組み込んで業務フローを最適化することが欠かせません。

 また、従来にない新たなサービスも可能になります。例えば、来庁した住民が自分でタブレット端末を操作して、証明書の交付や異動手続きを申請するという総合案内のサービスが考えられます。転入等の異動に伴って必要となる他の手続きを、基幹システムや情報連携で取得した情報を元に提示します。このサービスを、庁内の端末ではなく、インターネット上のマイナポータルから利用するように拡張することも構想できます。

◇   ◇   ◇

 マイナンバー制度は、社会的な課題を解決すると同時に、住民の利便性を向上させる基盤でもあります。制度を確実に導入するだけでなく、住民の利便性を高めるための積極的な活用が自治体に求められています。

マイナンバー制度の活用範囲の拡大

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