2018年7月号Vol.111

【コラム】止まらないデジタル化への流れ

 電子データを活用した税務手続きの電子化への対応が始まる。ポイントは、“事業者目線”で「デジタルファーストの原則」「ワンスオンリーの原則」「書式・様式の統一」を実現することだ。
 折しも6月8日に開催された「デジタル・ガバメント閣僚会議」(議長・菅義偉官房長官)の初会合で、「デジタルファースト法案」を年内に国会へ提出する方針が打ち出された。電子データ活用の動きは、これまでにないスピードで進むことは間違いない。

事業者視線で考える

 グラフに、法人市町村民税の電子申告利用件数と利用率の推移を示した。これを見ると、利用件数を伸ばすトリガーとなったのが、2007年12月のASP(共同利用型)サービスの開始だった。翌年スタートした公的年金からの住民税の特別徴収制度の導入に伴い、電子申告サービスの提供団体が急増。以来、順調に利用件数を伸ばし続け、いまや法人市町村民税の電子申告利用率は62%(電子申告等の利用率等の調べ/総務省自治税務局)に達している。
 今回、打ち出された各種施策はASPサービスの導入を上回るインパクトとなるだろう。
 その筆頭が、資本金1億円を超える法人等に対する電子申告の義務化だ。「紙での申告は無申告とみなす」など、そこには国の“本気度”も見てとれる。加えて、中小法人についても電子申告利用率70%という目標が掲げられた。
 では、対象法人数はどれぐらいあるのだろうか。
 財務省資料によれば、16年度実績で資本金1億円超の法人数は1万9885社ある。これを総務省資料の法人市町村民税(均等割)の納税者数で見ると対象法人は一気に17万6314件にまで膨らむ。なぜならば地方税の申告先は1団体とは限らないためだ。例えば、資本金10億~50億円未満の法人では平均で11団体以上に申告している。一方、資本金1億円以下の中小法人の数は約266万社あり、対象法人数は大幅に増加することが見込まれる。近い将来、これらの法人が確実に電子申告を利用するようになる。
 また、共同収納の仕組みが整備されることで電子納税の利用ニーズも確実に高まる。
 事業者にとって特に煩雑なのが、従業員の給与から特別徴収した住民税の納付だ。例えばTKCの場合、約2300名の従業員の居住地は全国263市区町村にもなり、それぞれに毎月住民税を納付している。これにかかる手間と時間、コストたるや相当なものだ。それが一度の手続きで済むようになる。加えて今後はダイレクト納付も可能となる。これにより、事業者にとって今後は電子納税が“当たり前”になるといっても過言ではないだろう。
 さらに、法定調書・給与支払報告書の電子的提出義務が1000枚以上から100枚以上に引き下げられた。自民党税調資料では、紙で提出された17年分の法定調書・給与支払報告書約2100万枚のうち、約1100万枚が電子化されると見込んでいる。

地方公共団体の実施項目とスケジュール(事務の整理等)

いまこそ業務改革のチャンス

 事業者がこれらを利用するには、システムの導入・改修など対応準備が必要だ。だが、申告から納付まで一連の処理を“一気通貫”で行えるようになれば、その負担を上回る時間と手間、コストの削減メリットが十分期待できる。実際、TKCが中堅・大企業向けに提供する電子申告関連システムの商談が今春以降目に見えて増えてきた。
 事業者の利用が進めば市区町村側にも業務効率の向上など多くのメリットがもたらされる。だが、それは全ての団体が対応して初めて実現するものだ。市区町村には、一時的に紙と電子が混在することへの負担増を懸念する声もあるが、それを乗り越えデジタル化に対応することが求められている。
 いま市区町村がなすべきことは、人口減少社会を見据え“未来視点”で行政サービスのあり方を考えることではないだろうか。
 今年4月、自治体戦略2040構想研究会は第一次報告を公表した。その中で、30年代には団塊ジュニア世代の職員が退職期を迎え、40年頃には現在よりもさらに少ない職員数での行政運営が必要になる可能性がある──と指摘する。これまでと同じやり方で業務を遂行していくことは、もはや困難と言わざるを得ないのだ。
 今回の税務手続きの電子化の推進は、業務プロセス全体を抜本的に見直す絶好の機会となる。
 そのためには、単に電子データを受け取れるようにするといった対応で満足してはいけない。受け取った電子データは、人手を介さず基幹システムなどとデータ連携できる仕組みを構築するとともに、福祉関係事務など必要な部署とのデータ活用をも考慮することが欠かせないといえよう。
 目指すべきゴールは社会の変化に対応した〝持続可能〟な住民福祉の向上だ。そのために何をなすべきか、じっくり考えるチャンスを与えられたと前向きに捉えたい。

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