2019年10月号Vol.116

【デジタル・ガバメント ここがポイント!!】デジタル化に必須! オンライン申請システム

株式会社TKC 地方公共団体事業部 システム企画本部 部長 松下邦彦

 前回は、行政手続きのオンライン化原則を定めたデジタル手続法をご紹介しました。
 自治体も手続きのオンライン化を進める努力義務があります。そこで今回は、デジタル手続法に基づいてオンライン化を実現するために必要となる「オンライン申請システム」の動向をご紹介します。
 なお、本稿で「オンライン化」とはインターネットからスマートフォンやパソコンで手続きを申請できるようにすること、「デジタル化」は手続きにかかる業務全体の効率をICTによって向上させること──と定義します。

マイナポータルぴったりサービス

 デジタル手続法によってオンライン化が義務とされた国の機関では、申請件数が年間1万件以上の手続きをオンライン化の対象に選定する見込みです。自治体でも、住民の要望が多く、費用対効果が高い手続きから優先的にオンライン化する必要があります。
 総務省は、以前から『地方公共団体オンライン利用促進指針』でオンライン化を促進する手続きを示してきました。オンライン化する手続きを選定するにあたっては、この指針が参考になります。
 オンライン化する手続きを増やす場合、あるいはオンライン申請をまったく導入していない自治体がオンライン化に着手する場合、国は「マイナポータルぴったりサービス」の利用を勧めています。
 ぴったりサービスは〈手続きを案内する機能〉と〈申請フォームからオンライン申請する機能〉を持っており、「子育てワンストップサービス」や「介護ワンストップサービス」が実現されています。ぴったりサービスは、ワンストップサービス以外の自治体手続きでも利用可能で、サービス利用料は不要です(LGWANから職員向けの機能を利用するための民間接続サービス利用料を除く)。
 ぴったりサービスがカバーする領域は、手続き案内と申請に限られており、自治体が申請データを受け取った後は、それを印刷して従来同様に紙で業務を運用することが一般的です。この場合、自治体の業務は従来と変わりません。
 また、ぴったりサービスの申請は、現状の事務で使っている紙の申請様式をそのまま電子的な申請様式にしているケースが大半です。申請者は、氏名や住所といった入力項目をすべて手作業で入力しなければなりません。こうした手入力された文字列はコード化されておらず、申請データを基幹システムに取り込むには工夫が必要です。

汎用的なオンライン申請システム

 平成14年から自治体に導入されてきた「汎用的な電子申請システム」は、手続き案内と申請だけでなく、〈入力内容のチェック〉〈審査状態の管理〉〈申請者からの審査状況の確認〉〈交付書類の作成〉といった手続き業務に関わる機能をカバーしています。
 こうした汎用的な電子申請システムは、昨今のデジタルガバメント関連の動向を反映して機能を強化する必要があります。例えば、マイナンバーカードや法人共通認証基盤による認証、スマートフォンで使いやすい画面、電子的な交付、窓口来庁予約等の機能が望まれます。
 ぴったりサービス、および汎用的なオンライン申請システムでは、デジタル手続法が掲げる「デジタル三原則」の一つであるワンスオンリー原則を実現することが重要です。マイナンバー制度の情報連携によって他の情報機関の情報を取得可能となっています。紙の申請様式をそのまま電子化するのではなく、申請システムや業務システムが保持する情報、あるいは情報連携により取得できる情報を申請者に入力させないように、新たに申請様式を作成する必要があります。

申請システムと
業務システムの一体的整備

 汎用的なオンライン申請システムは、申請者が入力した申請データを自治体の業務システムに連携させていました。逆に、業務システムのデータをオンライン申請で活用すれば、申請者に使いやすく、かつ、自治体の業務効率を向上する高度なオンライン申請が実現できます。
 手続き案内では、業務システムのデータを利用することによって申請者に質問する項目を減らすとともに、必要となる手続きを判定する精度を高めることができます。
 申請ではワンスオンリーを実現して申請者の手間と職員の業務負荷を減らすとともに、入力操作を容易にする工夫が可能です。例えば、世帯構成員を選択肢で入力することや、前年度の受給状況を表示するといったことが可能になります。申請を受け付けた後の審査でも、業務システムの審査状況をオンライン申請システムに反映すれば、申請者が確認できるようになります。
 なお、オンライン化の対象外となる住民基本台帳の手続きと、それに付随する社会保障関連の手続きは、従来どおり窓口で実施する必要があります。
こうした窓口業務をデジタル化するために導入する〈手続き案内〉や〈申請書作成〉といったシステムは、機能としてはオンライン申請システムと同様です。また、窓口業務を補完する〈事前申請〉や〈来庁予約〉といった機能はオンライン申請そのものです。このように、業務をデジタル化にするにあたっては、「オンライン申請システム」「窓口業務のデジタルを支援するシステム」「基幹システム」の三つを三位一体で整備する必要があります。

◇   ◇   ◇

 従来、手続きをオンライン化するにあたっては、住民満足度の向上と業務効率の向上を同時に実現することが求められました。ところが、自治体が直面しつつある人口減少と職員数減少という大きな課題を考えると、手続きのオンライン化やデジタル化は、まずは業務効率向上を主たる目標にすべきと考えられます。
 業務効率が向上できれば、それによって確保できた時間を相談が必要な業務に回すことができ、これが結局は住民満足度を向上することにつながります。また、業務効率向上は職員の業務負荷を減らすことでもあり、職員が積極的にデジタル化を進めるためのインセンティブとなりうるでしょう。

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