更新日 2023.04.03
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 副代表幹事
公認会計士・税理士 岸田 泰治
2016年にIFRS会計基準、米国会計基準で、リース取引に関する会計基準が公表され、日本でも2019年3月から、新リース会計基準の開発に着手しています。
新リース会計基準の公表前に、現行の会計基準とIFRS基準について解説していきます。
当コラムのポイント
- リース会計基準の概要
- リース会計の税務
- IFRS基準の概要
- 目次
-
はじめに
今回は、リース会計の消費税およびその他の税目における取り扱いをみていきます。また、新リース会計基準が適用された場合の影響についても触れてみます。
1.売買があったものとされるリース取引の消費税の取り扱い
(1) リース取引の賃借人における処理
リース取引による資産の譲受けが課税仕入に該当する場合には、その課税仕入を行った日はそのリース資産の引渡しを受けた日となります。したがって、その課税仕入については、そのリース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間において仕入税額控除の規定の適用を受けることになります。
リース取引の賃貸人が上記リース取引の賃貸人における処理の「リース譲渡に係る譲渡等の時期の特例の適用」を受ける場合であっても、そのリース取引の賃借人の課税仕入の時期はそのリース資産の引渡しを受けた日となります。
なお、リース取引の契約においてリース料のうち利子に相当する部分とそれ以外の部分に区分表示されている場合には、利子に相当する部分は非課税となります。
(2) リース取引の賃貸人における処理
- ①原則的な処理方法
- 法人税法の規定により売買があったものとされるリース取引については、原則として、賃貸人が賃借人にその取引の目的となる資産(リース資産)の引渡しを行った日に資産の譲渡があったことになります。したがって、事業者が行った譲渡が課税資産の譲渡等に該当する場合には、そのリース資産の譲渡対価の全額がその引渡しを行った日の属する課税期間における資産の譲渡等の対価の額に含まれます。
- ②リース資産の引渡しに係る譲渡等の時期の特例
- 事業者がリース取引について法人税法の所得金額の計算において、延払基準の方法により経理することによりリース資産の引渡しに係る資産の譲渡等の時期の特例の適用を受けている場合には、消費税についてもこの特例の適用を受けることができます。
つまり、リース資産の引渡しの賦払金の額でその譲渡をした日の属する課税期間にその支払の期 日が到来しないもの(その課税期間に支払を受けたものを除く。)は、その課税期間に資産の譲渡等を行わなかったものとみなして、その課税期間におけるその譲渡に係る対価の額から控除することができます。控除した残額は、延払基準の方法による経理が継続される限り、賦払金の支払期日が到来する各課税期間(その課税期間前に既に支払を受けたものはその課税期間前の各課税期間、また、翌各課税期間以後に支払期日が到来するものでその課税期間中に支払を受けたものはその課税期間)において資産の譲渡等が行われたものとみなされます。
なお、この特例の適用を受けようとする事業者は、確定申告書(期限後申告書を含む。)にその旨を付記しなければなりません。
2.所有権移転外ファイナンス・リース取引について、賃借人が賃貸借処理をしている場合の消費税の取り扱い
所有権移転外ファイナンス・リース取引は売買があったものとされますので、リース資産の引渡しの日の属する課税期間において仕入税額控除の対象となりますが、賃借人が賃貸借処理をしている場合には、経理実務の簡便性の観点から賃貸借処理に基づいて分割控除により仕入税額控除を行うことも認められています。
3.リース取引に関係する消費税の経過措置
改正消費税法により2019年10月1日以降の取引から10%の税率の適用が始まっています。
しかし、10月1日以降であっても税率10%を適用することができない取引については、旧税率8%を適用する経過措置が設けられています。リース取引に関連する経過措置は以下のとおりです。
(1) 売買処理の場合
所有権移転ファイナンス・リース取引、所有権移転外ファイナンス・リース取引で売買処理を行った場合、「資産の売買」であることから消費税の経過措置の対象とはなりません。
(2) 賃貸借処理の場合
所有権移転外ファイナンス・リース取引のうち、2014年4月1日から2019年9月30日までに引渡しを受けたリース資産について賃貸借処理を行った場合には、2019年10月1日以後の支払リース料についても旧税率である8%が適用されます。
また、オペレーティング・リース取引については、資産の貸付に係る経過措置が適用されます。資産の貸付に係る経過措置は、「2013年10月1日から2019年3月31日までの間に締結した資産の貸付に係る契約に基づき、2019年10月1日前から同日以後引き続き貸付を行っている場合における、2019年10月1日以後に行う資産の貸付は、旧税率を適用する」というものです。
4.新リース会計基準適用が消費税実務へ与える影響
新リース会計基準のベースとなるIFRS16号では、ファイナンス・リース、オペレーティング・リースの区分が廃止され、原則すべてのリース取引を使用権資産としてオンバランス処理することになっています。
この点、現行制度では支払の都度、費用を計上して仕入税額控除すればよかった不動産の賃借料についても、新リース会計基準ではオンバランスされることになりますので、仕入税額控除の時期について影響があると思われます。
5.リース関連のその他の税目の論点
(1) 固定資産税(償却資産)
償却資産を他に賃貸している場合、所有者である賃貸人が固定資産税(償却資産)の申告を行いますが、リース取引に係る取り扱いは、以下のようになります。
- ①所有権移転ファイナンス・リース取引
- 償却資産を所有しているのは借主と考えられますので、借主が自己の資産として申告を行います。
- ②所有権移転外ファイナンス・リース取引
- 所有権移転外ファイナンス・リース取引で売買処理を行っていても、リース資産の貸主が法的な所有者とみなされ、貸主が自己の資産として申告を行います。
- ③オペレーティング・リース取引
- リース資産の貸主が自己の資産として申告を行います。
(2) 事業税(外形標準課税・付加価値割の構成要素)
- ①純支払利子
- リース取引の目的となる資産の売買があったものとされるリース取引に係るリース料の額の合計額のうち利息相当額は、契約書等において当該リース資産の賃貸人における取得価額と当該利息相当額とが明確かつ合理的に区分されているときは、支払利子及び受取利子として取り扱われます。
金銭貸借とされるリース取引に係る各事業年度のリース料の額のうち通常の金融取引における元本と利息の区分計算の方法に準じて合理的に計算された利息相当額は支払利子及び受取利子として取り扱われます。この場合において、リース料の 額のうちに元本返済額が均等に含まれているものとして利息相当額を計算しても差し支えないとされています。 - ②純支払賃借料
- 土地又は家屋に係る取引であっても、資産の売買があったものとされるリース取引及び金銭貸借とされるリース取引に係るリース料は支払賃借料及び受取賃借料として取り扱わないことされています。
6.新リース会計基準適用がその他の税目に与える影響
不動産賃借料の支払いは、新リース会計基準では賃借料処理ではなくなることから、純支払賃借料の把握について影響があると思われます。
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