2025.05.27
差押禁止債権の範囲変更(差押命令取消し)申立事件
LEX/DB25622399/大阪地方裁判所 令和 6年 7月 5日 決定(第一審)/令和6年(ヲ)第9088号
申立人が、本件差押命令により、継続的な業務委託契約に基づく報酬債権全額(6か月分)を差し押さえられたことについて、生活困窮等を理由に、民事執行法153条1項に基づき、本件差押命令の取消しを求めた事案で、本件差押命令により差し押さえられた報酬債権は、実質的に、民事執行法152条1項2号の「給与に係る債権」と同視することができ、そうすると、本件差押命令の一部を取り消して、差押禁止債権の範囲を別紙(申立人から4000円の入金があったため、同額につき相手方は申立てを取り下げた。)のとおり変更するのが相当であるとしたうえで、各種ローンの返済額があることを理由に差押禁止債権の範囲を変更すると、他の債務の返済を優先することを認めることになるから、本件でこれを理由に範囲変更を認めることはできず、申立人の収入・支出の状況を踏まえると、収入によって生活に要する費用を賄うことができないとまで認めることはできず、現時点における申立人の経済的困難の程度は自助努力で対応すべき範囲内のものというべきであるとして、申立人の申立てを一部認容し、その余を却下した事例。
2025.05.27
α市立保育園廃止処分取消等請求事件
★「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年6月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
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LEX/DB25574151/東京地方裁判所 令和 6年 2月22日 判決(第一審)/令和4年(行ウ)第549号
α市議会に提出された、本件保育園の令和5年度における0歳児募集の廃止及び令和9年度末をもっての廃園などを内容とする本件募集廃止条例の制定に係る議案につき、市議会が継続審査としたため、当時のα市長が、「議会において議決をすべき事件を議決しないとき」(地方自治法179条1項本文)に該当するとして、本件募集廃止条例を制定する旨の専決処分(本件専決処分)をし、また、本件保育園に第1子を通園させており、当時0歳児であった第2子につき令和5年度からの本件保育園の利用申請をした原告に対して、本件募集廃止条例の規定が有効であることを前提に、その施設利用を不可とする旨の処分(本件利用不可処分)をしたことについて、原告が、被告に対し、本件専決処分は違法であると主張して、(1)主位的請求として本件専決処分による本件募集廃止条例の制定、その予備的請求として本件募集廃止条例の制定による令和5年4月1日からの本件保育園における0歳児募集の廃止(本件各処分)の各取消しを求めるとともに、(2)本件利用不可処分の取消しを求め、さらに、(3)国家賠償法1条1項に基づき、本件専決処分及び本件利用不可処分によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金等の支払を求めた事案で、本件議案は、特定の緊急性が高い事件であるということはできず、また、何らかの事情により前市長にとって市議会の議決を得ることが不可能であったなどということもできないから、本件専決処分は、「議会において議決すべき事件を議決しないとき」の要件を充足しないものというべきであって、国家賠償法1条1項の違法及び過失があると認められ、原則としてこれに基づいて制定された本件募集廃止条例もまた無効であるといわざるを得ないところ、本件募集廃止条例の制定行為については、処分の取消しの訴えの対象となる処分に該当するとはいえないから、本件訴えのうち、本件各処分の取消しを求める部分は、いずれも不適法であるとして却下し、本件利用不可処分の取消しを求める請求を認容し、国家賠償請求については、本件専決処分と相当因果関係を有する損害賠償を求める限度で一部認容した事例。
2025.05.20
債権差押命令に対する執行抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件
LEX/DB25574163/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 3月19日 決定(許可抗告審)/令和6年(許)第12号
抗告人が、子ども・子育て支援法29条1項に規定する特定地域型保育事業者として同項に規定する特定地域型保育を行っている相手方に対し、抗告人の相手方に対する金銭債権を表示した債務名義による強制執行として、相手方の第三債務者熊谷市に対する本件被差押債権の差押えを求める申立てをし、第一審が申立てを認容したため、相手方が抗告し、原審が本件申立てを認容した原々決定を取り消し、本件申立てを却下したことから、抗告人が許可抗告をした事案で、保育事業者債権は、同法17条にいう「子どものための教育・保育給付を受ける権利」に当たらないというべきであるから、原審が、本件被差押債権は、「子どものための教育・保育給付を受ける権利」に当たり、差押えが禁止されると判断したことには、法令の解釈適用を誤った違法があり、そして、その他に保育事業者債権に対して強制執行をすることができないと解すべき理由はないから、原審の判断の上記違法は裁判に影響を及ぼすことが明らかであるとしたうえで、上記の趣旨をいう論旨は理由があり、原決定は破棄を免れないとして、原決定を破棄し、原々決定に対する抗告を棄却した事例。