2025.09.09
消極的確認請求事件、損害賠償請求反訴事件
★「新・判例解説Watch」知的財産法分野 解説記事の掲載を予定しております
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LEX/DB25574340/東京地方裁判所 令和 7年 5月15日 判決(第一審)/令和5年(ワ)第70527号 他
本訴は、原告製品を製造販売する原告が、発明の名称を「環状タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤」とする発明に係る本件特許の特許権者である被告に対し、存続期間の延長登録を受けた本件特許権の効力は、原告製品の生産、譲渡及び譲渡の申出に及ばない旨を主張して、主位的にはその旨の確認を求めると共に、予備的に、被告が原告に対して本件特許権に基づく差止請求権及び本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権をいずれも有しないことの確認を求め、反訴は、被告が、本件特許権侵害の不法行為による損害賠償を求めた事案において、原告の本訴請求に係る訴えはいずれも確認の利益を欠くとして却下し、原告製品は、「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」によって特定された「物」たるスプリセル錠と医薬品として実質同一であると認めることはできないから、延長登録された本件特許権の効力が原告製品の製造等に及ぶとはいえないとして、被告の反訴請求を棄却した事例。
2025.09.09
否認請求認容決定に対する異議請求事件
★「新・判例解説Watch」倒産法分野 令和7年11月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
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LEX/DB25623074/大分地方裁判所 令和 6年10月25日 判決(第一審)/令和4年(ワ)第179号
破産者株式会社Zが有していた電子記録債権の窓口金融機関である原告・銀行は、破産者に対する破産手続開始決定がされた後、当該電子記録債権の決済のために破産者の普通預金口座宛てに送金された各支払金を破産者の普通預金口座に入金せず、原告の別段預金に入れて保管し、銀行取引約定書に基づき自らの破産者に対する破産債権に充当したところ、破産者の破産者管財人である被告が、本件行為は破産法162条1項1号ロ所定の否認事由に該当すると主張して、同法174条に基づく否認の請求をし、原告に対して充当額及びこれに対する遅延損害金の支払を求めたところ、大分地方裁判所は、上記請求を認容する旨の決定をしたことから、原告が、被告に対し、原決定の取消し及び否認の請求の棄却を求めて破産法175条1項に基づく異議の訴えを提起した事案で、本件各でんさいには別除権たる商事留置権が成立しているとはいえず、また、原告による相殺権の行使には理由がなく、そして、原告は、本件行為について悪意の受益者に当たるといえるから、被告による破産法162条1項に基づく否認権の行使には理由があり、被告は、原告に対し、同法167条1項ないし寄託金返還請求権及び履行遅滞に基づく損害賠償請求権に基づき、本件行為による充当額につき支払を求めることができるとともに、これに対する遅延損害金の支払を求めることができるものと認められるとして、大分地裁がした否認の請求を認容する決定を認可した事例。
2025.09.02
遺留分減殺請求事件
LEX/DB25574428/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 7月10日 判決(上告審)/令和6年(受)第2号
被上告人らが、亡Aの遺言により亡Aの遺産を相続した上告人に対し、民法(平成30年法律第72号による改正前)1031条の規定による遺留分減殺請求権の行使に基づき、亡Aの遺産のうち、不動産について持分移転登記手続等を求めるとともに、預貯金等について金員の支払を求めた事件における上告審の事案で、遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受けた受遺者が民法1041条1項の規定により遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をした場合において、遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をしたときは、遺留分権利者は、遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権を遡って失い、これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得するが、遺留分権利者が上記意思表示をするまでは、遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権のみを有するものと解するのが相当であるとしたうえで、本件各持分について、上告人が価額を弁償する旨の意思表示をしたのに対して、被上告人らが価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をしたことはうかがわれないから、被上告人らは、価額弁償請求権を確定的に取得したとは認められず、共有持分権及び共有持分権に基づく現物返還請求権のみを有するものであるから、本件各持分の価額の支払を命じた原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を変更した事例。