相続対策・遺産整理
亡くなった後のことを頼むよと言われて、お手伝いした事例
I.ポイント
遺産整理業務は相続税の申告に付帯して受託する方法と、遺産整理業務単独で受託する方法がある。
1.相続税の申告に付帯して受託する場合 一般的にこの方法が一番簡単に受託する方法であると思われる。 2.遺産整理業務を単独で受託する場合 年間100万人が死亡するそうですが相続税の申告をする人は僅か4万5千人程度とのこと。 3.遺産整理に関しては、全て会計事務所が受託して作業も行う方法と信託銀行に案件を紹介する方法がある。
Ⅱ.事案の概要
1.相続関係と生活環境
- 被相続人(甲)
- 相続開始 平成19年5月22日、相続開始時年齢74歳 無職
- 配偶者(妻、乙)
- 67歳 無職 リュウマチであるため少し不自由
- 長男(A)
- 一部上場会社勤務、マイホーム所有
- 次男(B)
- 一部上場会社勤務、マイホーム所有
- 長女(C)
- 専業主婦、マイホーム所有
以上のように、配偶者は全て死亡した甲に頼って生活をしいた。長男、二男、長女の3名はそれぞれ独立をしていて、甲の遺産の相続に関心が薄い。 最終的には、遺産は全て配偶者が相続し乙の面倒は二男が見ることとなる。
2.遺産の状況
- ➀不動産
- 自宅土地および建物 時価総額 約3千万円
- ➁金融資産
- 約2千万円
従って相続税申告は不要であるため遺産整理業務として受託した。
3.遺産整理業務受託までの経緯
依頼者は、65歳で会社役員を退任し悠々自適の暮らしをするはずであったが、体が既に病魔にむしばまれていたようである。肝硬変でもあり心臓も弱っているとのこと。被相続人が、相続人全員にもしも私が亡くなったら相続関係についてはこの税理士に全て任せなさいと口頭ではあると話していた。
Ⅲ.遺産整理の対応
1.対象財産の預かりと財産の調査
(1) どこまでを遺産整理業務とするかで、預かり財産の範囲が異なる。 信託銀行では、原則として、債務の承継、死亡保険金、通常の保険等、未払金、国民年金、厚生年金、遺族年金の手続き、社会保険手続き、自動車の名義書換、その他生活関連手続きは対象外となっている。 しかし、配偶者はリュウマチのため体が不自由であること、相続人たちも各自家を構え遠くに住んでいること。 そして被相続人がこの税理士に全て任せなさいと口頭で話してあったことにより、遺産に係る全てを対象とすることとした。 (2) 相続人が土・日しか時間がとれないためそれに会わせて毎週2から3時間ほど3週間程で遺産の確定をした。
2.財産目録の作成と遺産分割協議
遺産は全て配偶者が相続することに相続人全員が同意したため遺産分割に関してはすんなり決り、遺産分割協議書もすぐに作成することが出来た。 遺産整理業務は、この遺産分割協議書が出来ないと業務が成立しないので、相続税の申告と違い相続人間の調整が最重要となる。
3.実際の遺産整理業務
(1) 金融機関 1) 銀行
- ・遺産分割協議書はコピーで可、戸籍、印鑑証明書は原本確認
- ・委任状
- ・相続手続依頼書(銀行にてもらう)本人記入欄は住所・氏名とも自署
- ・念書(銀行にてもらう、少ない金額の時)本人の氏名だけは自署
- ・90万円を超えると本人同行を要請される。ただし、相続手続依頼書に委任される者の実印の押印と印鑑証明書の添付により同行は回避できる。
2) 郵便局
- ・遺産分割協議書から戸籍・印鑑証明書まで原本確認
(2) 市役所 1) 被相続人の未納市民税・固定資産税、都市計画税・国民健康保険税・軽自動車税等の対応
- ・現金納付が簡単です。(既に納期が過ぎているものがあるため)
- ・納期未到来の税金については相続人の口座を指定する事も出来る。
2) 新たに発生する相続人にかかる税金の対応
- ・市役所から納付書が来てからの対応となる。
(3) 社会保険事務所 1) 被相続人が厚生年金受給者の場合
- ・被相続人の未支給年金の請求手続き
- ・配偶者である相続人の遺族年金に関する手続き
2) 被相続人が国民年金受給者の場合
- ・被相続人の未支給年金の請求手続き
(4) 自動車税事務所
- ・車両の名義書換
(5) 企業年金
- ・各企業年金の事務局に電話する。
(5) その他
- ・NHK受信料、電話料、電気料、水道料、下水道料、ガス代等については各社に連絡を取り契約者変更手続きをする
- ・自動引落先の銀行に出向き預金口座振替依頼書に必要事項を記入し銀行に提出する。
- ・注意点・・・お客様番号が必要になるので領収書の原本を必ず確認のため預かる。
4.預かった印鑑・通帳等の返還
後日返してもらった、まだ返してもらってない等の行き違いが発生する畏れがあるため資料受領書を作成し署名してもらった。