2022.05.06
横領被告事件
LEX/DB25572096/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 4月18日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第131号
被告人は、Aが取締役を務める有限会社BがC所有の茨城県の本件土地を購入するに当たり、本件土地の農地転用許可を得るために本件土地の登記簿上の名義人を一旦被告人とし、農地転用等の手続及び資材置場として使用するための造成工事終了後にBに本件土地の所有権移転登記手続をする旨Aの兄であるDと約束し、被告人が代表理事を務めるE組合に前記Cが本件土地を売却する旨の合意書を作成し、その際、Dに土地代金500万円を支払わせ、同組合を登記簿上の名義人として本件土地をBのために預かり保管中、D及びBに無断で本件土地を売却しようと企て、株式会社Fに、本件土地を代金800万円で売却譲渡した上、本件土地について同社への所有権移転登記手続を完了させ、横領したとして起訴され、第1審判決は、本件土地の買主はBであるとして被告人の主張を排斥し、訴因変更後の公訴事実どおりの犯罪事実を認定して被告人を懲役1年6月に処したため、被告人が控訴し、事実誤認を主張したところ、原判決は、職権で、農地を転用する目的で所有権を移転するためには、農地法所定の許可が必要である以上、この許可を受けていないBに本件土地の所有権が移転することはないから、本件土地に関してBを被害者とする横領罪は成立し得ず、第1審判決には、横領罪の解釈、適用を誤った点について判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるので、第1審判決を破棄して被告人を無罪としたことに対し、検察官が上告した事案で、農地の所有者たる譲渡人と譲受人との間で農地の売買契約が締結されたが、譲受人の委託に基づき、第三者の名義を用いて農地法所定の許可が取得され、当該第三者に所有権移転登記が経由された場合において、当該第三者が当該土地を不法に領得したときは、当該第三者に刑法252条1項の横領罪が成立するものと解されるとして、原判決を破棄し、高等裁判所に差し戻した事例。