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院長先生の税務相談(4) 「青色事業専従者給与」

病医院に従事している院長の配偶者及び親族に支払われる給与などの対価は、原則として必要経費とは認められません(所得税法56条)。しかし、「所得税法57条(1)」「所得税法57条(3)」の適用要件を満たすことで、必要経費として認められます。青色事業専従者の要件などを的確に理解しましょう。

Q1    青色申告を行うと、妻や子どもに対して支給する給与を必要経費とできますが、白色申告でも専従者控除が認められています。「青色専従者給与」と「白色専従者控除」の違いは何ですか。

A1  青色申告者が家族に給与を支給する場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署長に提出しなければなりません。届出書の記載事項については図表(1)、提出期限等については図表(2)のとおりです。

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 青色専従者に支給する給与額は、届け出た範囲内で適正な金額であれば、たとえ病医院の所得金額が赤字であっても、使用人として、雇用している職員の給与と同じように必要経費にすることが可能となります。給与を受け取った青色専従者の収入金額は給与所得となります。また、その青色専従者が他にも収入がある場合は、他の収入と合算して確定申告を行わなければなりません。

 一方、白色申告の場合は、事業専従者にいくら多額の給与を支払っても一定額しか控除されません。それは、給与の支給の有無ではなく、その年の控除額として、配偶者は最高86万円、その他の事業専従者50万円しか認められていないからです。

 このように青色専従者給与は、白色専従者控除と比較するとかなり有利な制度となっています。
 ちなみに白色申告者の所得限度額の計算は図表(3)のとおりです。

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Q2    妻の父親が経営する医療法人で、妻は理事として報酬を受けていますが、私の病医院の事務も手伝ってもらっているので、私の病医院でも、給与を支払ってもよいのでしょうか。

A2    支払えます。青色申告者で青色事業専従者給与に関する届出書を提出し、届け出た範囲内の給与額で、その年を通じ6か月を超える期間、専ら業務に従事していれば青色事業専従者と認められ、支給された給与は、その年分の必要経費とすることができます。青色事業専従者は「他に収入があるかどうか」ではなく、「事業主の事業に専ら従事しているかどうか」が適用要件となります。

Q3    長女が大学(薬学部)をこの3月に卒業して、4月から私の病医院で薬剤師として勤務することになりました。年の途中からの勤務ですが、青色専従者として給与を支給しても必要経費として認められますか。

A3    認められます。ただし、当該事業に従事することができると認められる期間(9か月)を通じて、その2分の1に相当する期間を何らかの事由で従事していない場合は、認められないことになります。年の途中で青色専従者になる場合は、2か月以内に届出を出すことを忘れないようにしてください。

Q4    年の半ばが過ぎ、予想以上に収益が増加しているので、前年より相当の所得及び税額が増えることが見込まれます。日頃、少ない給与で医療事務及び経理を手伝う三女の賞与を、この機会に増額したいと考えています。しかし、届出書に記載した金額が少額だったので、届出以上の賞与を支払うことになってしまいますが、必要経費として認めてもらうにはどのような方法がありますか。

A4   青色専従者給与の額は、届出書に記載されている方法に従い、その範囲内の金額を実際に支払った額が必要経費となります。届出書に記載された金額以上の額は、たとえ実際に支払ったとしても必要経費とは認められません。しかし、届出書の記載事項を変更して、遅滞なく所轄の税務署長に提出すれば、変更前の賞与よりも多く支払うことができます。

 ただし、支払額は労務の対価として相当と認められる金額でなければなりません。他の使用人の給与等と比較して、適正な金額を決める必要があります。

 また、届出書に記載された金額は青色専従者給与の限度額となるものですから、下回った金額を支給する場合は、変更届出書を提出する必要はありません。

Q5    資金繰りの計画が遅れ、青色専従者給与分の支給金額が不足したため、未払いにしています。未払金額は正確に記帳していますが、必要経費として計上してもいいでしょうか。

A5    原則として、未払分は必要経費とはなりません。

 もともと、生計を一にする親族等に支払った給与は、事業主の所得とみなされ(みなし事業主所得)、その親族は当該事業による所得を得ていないものとして、単に扶養控除の適用を認めるに過ぎなかったという経緯があるからです。

 個人事業者が家族に支払った給与のみが必要経費として認められなかったのは、法人とは異なり、事業と家計との分離が十分ではなかったからです。青色申告者には、正規の複式簿記で日々の取引を正確に記録することを求めています。

 したがって、質問のように資金繰りの関係で、「たまたま支払日に未払いとなったこと」は、相当の理由があり、また正確に記帳されていることから、その後、確実に支払われるのであれば、一時的に未払いの状態であっても、必要経費として認められると考えられます。しかし、相当の期間、未払いのまま放置されているようなケースでは、必要経費としては、認められないものと考えられます。

<参考>事業から対価を受ける親族がある場合、事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例

所得税法56条「居住者(医院長)と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者(医院長)の営む……事業所得(病医院所得)……を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業からの対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は事業所得の金額の計算上、必要経費に算入しない………」

所得税法57条(1)「青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者(医院長)と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢十五歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず……その居住者のその
    
給与の支給に係る年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入し………」所得税法57条(3)「居住者(第1項に規定する居住者を除く。)と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢15歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色専従者」という。)がある場合には、その居住者のその年分の当該事に係る事業所得の金額の計算上、各事業専従者につき、次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を必要経費とみなす。

次に掲げる事業専従者の区分に応じそれぞれ次に定める金額
イ. その居住者の配偶者である事業専従者・・・・86万円
ロ. イに掲げる者以外の事業専従者・・・・・・・50万円
―― 以下略 ――」

(医業経営コンサルタント 税理士 有浦 勲/TKC医業経営情報2006年1月号)