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MX2活用事例 「安全・安心・信頼」を理念に医療の質の向上に努める

医療法人社団藤松会耳鼻咽喉科すがわらクリニック 

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理事長・院長 菅原 公明 

耳鼻咽喉科すがわらクリニック(栃木県宇都宮市)は2001年に開業し、来年20周年を迎える。「安全・安心・信頼」を理念に掲げ、その実現を目指し、医療の質の向上に努めている。

的確でわかりやすい説明を心がけているのもその一環。そうした取り組みが奏功し患者満足度が高まり、経営も順調に推移している。経営管理においては「TKC医業会計データベース」(MX2)を活用する。特に自己資本比率を重視し、スタッフ1人あたり収益や人件費、経常利益などを毎月確認し、財務体質の強化で安定した経営を行っている。

DATA
所在地 栃木県宇都宮市平松本町1204−2

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診療科目

耳鼻咽喉科

診療時間

月、火、水、、木、金
9:00〜12:30 14:30〜18:00

9:00〜12:00
休診日
第3・5木曜、日曜祝日

患者数の増加にともない移転 子どもの比率が約5割

――貴院のこれまでの歩みを教えてください。

菅原 当院は2001年、現在地とは別の宇都宮市内のビルの1階で開業しました。ただ、患者数の増加にともない駐車場が足りなくなったため、2005年に今の場所に移転しました。駐車場は現在22台分あります。

 開業前は大学病院や民間病院に勤務するなか、地域医療に関わりたいという気持ちとともに、自ら先頭に立って医療に取り組みたいという思いが強くなり独立しました。というのは、病院を受診される患者さんのほとんどは開業医からの紹介で、より専門性の高い医療を受けに来られる。そうした患者さんを診るなかで、その前の段階から自分で治療したいと思うようになってきたのです。自分でなるべく完結させたい、もう少し深く治療して患者さんの役に立ちたいという気持ちが年齢とともに強くなってきました。

 もう1つは、小児医療にもっと関わりたいという思いがありました。勤務医時代も小児科から診療の依頼に対応するなかで、苦しんでいる子どもたちを楽にしてあげたいという気持ちがありました。開業医になれば小児もより多く診られると思ったのです。

――子どもの患者の割合は多いのですか。

菅原 多いです。全患者数は季節によって変動があり、平日で150~220人。そのうち乳幼児から小中学生までの子どもが占める割合は5割弱です。もともと耳鼻咽喉科は子どもが多いですが、特にこの地域は新興住宅地のため比較的若い世代が住んでおられます。

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待合室。患者の約半数は乳幼児から小中学校の子どもが占める

専門用語をできるだけ使わず、わかりやすい説明を心がける

――子どもの場合は親への対応が大事ですね。

菅原 心がけているのは、正確に診断して、どういう状態なのかを難しい言葉をなるべく使わずに伝えることです。子どもにも理解力に合わせてなるべくわかりやすく説明します。

 耳鼻咽喉科の疾患は子どもも大人も基本的に同じで、不調をきたしている主な原因は副鼻腔炎と、口を閉じにくい閉口不全の2つです。

 たとえば副鼻腔炎ですが、鼻腔の周りにある副鼻腔が炎症を起こす病気で、耳鼻咽喉科的な諸悪の根源といえます。中耳炎もそうですし、のどを腫らす、声が出にくくなる、聴覚が低下するなど、かなり高率に副鼻腔炎が基礎となっています。副鼻腔炎を説明するためには、まず副鼻腔の説明をしなければなりませんが、副鼻腔というのは名前が難しいので理解しにくい。なじみも薄いのでピンときません。

 そこで説明に工夫をします。鼻腔というのは鼻のなかの空間のことで、その周りに副鼻腔があります。簡単にいうと両方の頬の内側および両眼の間にある空間で、そのなかには空気が入っていて、小さな穴で鼻腔とつながっている。この構造の説明に図や画像を使う医師もいますが、副鼻腔などの耳鼻咽喉科の図は複雑で患者さんが見てもわかりにくく、逆に混乱させてしまうので、私は口頭で説明します。まず副鼻腔の「副」というのは「2番目」の意味、「社長、副社長の副ですよ」という国語的な説明から入り、そして身振り手振りも交えながら鼻のなかの状態を簡単な言葉で説明する。そうすると大抵の人は理解できる印象です。

――専門用語はできるだけ使わないのですね。

菅原 もちろん患者さんによってより詳しく説明するときには図を使うこともあります。耳鼻咽喉科的な語彙力、知識がある程度ついた人には専門用語も使います。ただ、そうした知識のない人に一気にすべてを説明しても、半分も理解できないでしょう。これは慣れの問題です。たとえば私がある機械の専門的な話をされても異分野なのでわからないのと同じです。だからちょっとずつ噛み砕いて簡単なところから入っていく。そうやってコミュニケーションを取るなかで、相手の希望や性格などもわかってきます。

リスクマネジメントを意識し、常に細心の注意を払う努力をする

――わかりやすい説明が患者満足度を高め、集患につながっているのでしょうね。

菅原 そうだと嬉しいです。また、当然ですが、医療の質の向上も常に意識しています。当院は「安全・安心・信頼」を理念に掲げています。言葉にすると当たり前のことですが、実践するのは容易ではありません。「安全」面では、耳鼻咽喉科は道具を使うことが多いので非常に気を配ります。特に小さな子どもはよく動くために危険をともないます。リスクマネジメントの視点で、必ず何か起きるということを念頭においています。ですから看護師にも繰り返し説明しています。

 事務スタッフも同じです。安全管理として、待合室の子どもの動きも注意して見るように指導しています。時々、椅子から転げ落ちて、頭を打ったりする子どもがいます。常に見ているわけにはいきませんが、物音などに気を配るように言っています。また、当院の内装は柱や窓枠のふちなどの角をとって丸くしています。子どもがケガをしないための配慮です。これもリスクマネジメントの一環です。そのほか、体調の悪そうな患者さんがいないか、辛そうにしているようであれば声をかけるように伝えています。つまり患者さんをよく見るということです。待合室の安全管理は診察室にいる職員にはできないので、忙しくても注意を払うように事務職員に指導しています。

 「安心」とは、私自身がわからない時は、わからないと正直に言うことです。診た段階で「中耳炎は起きていませんね」などわかったことだけを言い、所見が明確でない場合には「様子を見て、もう一度診ましょう」と伝えます。

 また、子どもの耳垢を取っている時に、急に子どもが動いて血がにじむことがあります。その時には謝った上で、「これは皮膚からの出血なので止血をしますから、心配ないですよ」とか、「数日続くこともありますが、大丈夫ですよ」などと説明する。とにかく心配させないようにすること。そして、「何かあったら電話をください」と。「診療中でもかまわないから、遠慮せずに電話してください」とも伝えます。そうして納得してもらい、安心してもらうように心がけています。それが結果的に「信頼」につながると考えています。

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菅原公明院長が重視するのは財務体質の強化

自己資本比率を重視し財務体質の強化に力を入れる
 菅原院長は、開業と同時にMX2を導入、財務体質の強化を意識して健全経営に努めてきました。自己資本比率を重視しながら、スタッフ1人あたり収益と付加価値、人件費比率などの指標も確認しています。また、経営面を担当する菅原事務長はコスト意識が高く、全国の耳鼻咽喉科のさまざまな平均値を参考にしながら、院内処方する医薬品の仕入れ価格を見直すなど経営改善に余念がありません。

※TKC医業会計データベース(MX2)画面サンプル(取材病院とは関係ありません)

 

――スタッフの役割が重要になりますが、教育やマネジメントはどのようにされているのですか。

菅原 スタッフは、常勤とパートを合わせて看護職員4人、事務職員5人が在籍し、診療日は看護職員2人、事務職員3人が入るようにシフトを組んでいます。

 教育は、キャリアアップを目指したい看護職員には講習会への参加などを支援しています。

 課題は接遇です。これは私も含め、全員にとっての課題です。レベルアップが必要ですが、忙しいこともありなかなか手が回らないのが実状です。

 スタッフのマネジメントは、基本的に事務長である妻に任せています。私以外はすべて女性なので女性同士の方が話しやすいのではないかと考えています。問題点などは、事務長を通じて私に伝わります。また、先輩・後輩の関係はありますが、なるべく上下関係はつくらずフラットな組織にしています。風通しのよい職場環境を意識しています

財務内容の改善に注力 院内処方で患者の利便性図る

――管理においては「TKC医業会計データベース」(MX2)を活用されているとお聞きしています。

菅原 MX2は開業時に導入しました。経営管理も基本的には事務長に任せており、その報告を私が受けて問題点や対策を一緒に考えています。なかでも、医業収益、限界利益、経常利益は毎月、注視しています。確認したい数値を毎年同月、前月と簡単に比較できることも便利だと感じています。

 また、日頃から重視しているのが財務体質の強化で、特に経営分析における自己資本比率を重点的に見ています。その際、労働生産性も見るためにスタッフ1人あたり収益と付加価値、人件費比率などの指標も確認しています。耳鼻咽喉科は季節要因が与える経営への影響が大きいので、たとえばインフルエンザが終わった後はどういう経営をすべきかなど、そうした数値を見ながら検討しています。これが結果的に自己資本比率を高くすることにつながると考えています。

 また、「TKC医業経営指標」(M-BAST)のデータと比較しながら改善に努めています。たとえば医薬品などの仕入れに関して、顧問の荻原会計事務所から耳鼻咽喉科の標準値に比べて少し原価率が高いという指摘を受け、なぜ高いのかを調べ、仕入れ先を変更しました。当院は院内処方ですから、そうした指摘はとてもありがたいです。

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右から荻原 英美税理士、菅原 公明院長、荻原由希子税理士

――貴院は院内処方をされているのですね。

菅原 開業時から院内処方です。理由は患者さんの利便性に尽きます。病気の子どもやその兄弟姉妹を連れたお母さんが、院外薬局に行くのは大変です。院内で薬を処方すればそのまま帰れるので楽です。また、価格(医療費)も院内処方のほうが安いです。クリニックとしては薬の在庫管理や仕入れなど面倒なことはありますが、患者さんの利便性を優先しています。

 他に、患者さんの利便性に関しては、初診はネット予約がとれるようにしています。ただ、ホームページの作成に関しては私が消極的であるがゆえに時代に遅れている点を否定できません。

――地域での今後の役割、展望をお聞かせください。

菅原 この地域は、今は若い世代が多いですが、いずれ高齢化が進んでいきます。子どもたちが巣立ったあと、戻ってくる人は少ないと思います。そうした地域情勢の変化にうまく対応しながら、今後も地域医療に貢献していきたいと考えています。

会計事務所からの一言

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荻原会計事務所

 会長・税理士・医業経営コンサルタント 荻原 英美

開業準備段階から関与 今後も経営改善を積極的にサポート

     耳鼻咽喉科すがわらクリニック様は、開業準備からお手伝いさせていただいています。
菅原院長の説明能力の高さは素晴らしいものです。わかりやすく、シンプルに相手に伝える。特に小さいお子さんにも優しくわかりやすく話すことが増患につながっていると考えます。
また菅原院長の医療に対する真面目な姿勢は尊敬の念を抱くとともに、今後も、MX2を活用して財務、経営面での改善のサポートをしていきたいと思っています。

(2020年3月14日/TKC医業経営情報2020年5月号より)