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病医院訪問・MX活用事例 事業承継を見据えて めまい・耳鳴り治療に新たに取り組む

医療法人優尚会 かみむら耳鼻咽喉科 

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院 長 上村正行(かみむら・まさゆき)写真右
副院長 上村弘行(かみむら・ひろゆき)写真左 

戦後すぐに開業した「かみむら耳鼻咽喉科」は、70年以上にわたり地域の人々に医療を提供し続けてきた。令和元年にリニューアルオープンし、現在は、上村正行院長から上村弘行副院長への事業承継に向けて準備を進めている。承継にあたっては設備等を新調するだけでなく、めまい・耳鳴りの治療を新たに取り入れることで、さらなる発展を目指している。正行院長と弘行副院長に事業承継の準備を含め話をうかがった。

DATAかみむら耳鼻咽喉科img_b0291_02.jpg

所在地福岡県大牟田市明治町1-2-1
TEL:0944–52–4426
https://www.kamimura-ent.jp/
診療科目

耳鼻咽喉科

診療時間午前   9:00~12:30
午後 14:30~18:00
休診日
水曜日・土曜日午後、日曜日、祝日

「地域貢献」を意識した医療を提供 事業承継を見据えて準備を進める

――まずは貴院の概要をお聞かせいただけますでしょうか。

上村正行院長(以下、正行) クリニックとしては、70年以上の歴史があります。私の父である先代の院長が戦後すぐに大牟田市旭町で開業しました。それから10年ほどして、現在の位置に移り、私が38年前に継承しました。現在は、弘行副院長への承継に向けて準備を進めており、令和4年に医療法人化しました。理念は「地域貢献」です。地域の「かかりつけ医」として、少しでも患者さんの役に立ちたいと思っています。

上村弘行副院長(以下、弘行) 私がこのクリニックに戻ってきたのが3年前です。それまでは、久留米大学病院、大牟田市立病院などで勤務をしていました。研修医時代は、小児科医を目指しており、このクリニックを継承するつもりはありませんでした。しかし、正行院長が患者さんと接する姿を見るうちに、クリニックを継承することを心に決めました。

――大牟田は炭鉱で栄えた町ですが、地域の高齢化率や医療提供体制はどのようなものでしょうか。

正行 炭鉱の閉鎖とともに、人口減少と高齢化が進んでいます。一時は20万人近くいた人口も、今では半減しています。また、高齢化率は37.6%で、全国平均の29.1%を大きく上回っています。
 地域の医療提供体制として特徴的なのが、クリニックの数が人口に対して多すぎるという点です。というのも、炭鉱に活気があった40年近く前にクリニックが数多く設立されて、それが減ることなくそのまま続いてきているからです。その一方で、当院を除いて事業承継は進んでいません。継ぎ手がいないため、今後一気にクリニックが消滅してしまう恐れがあります

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――現在のクリニックの1日の平均患者数、患者層についてはいかがでしょうか。

弘行 当院では、1日あたり110名前後の患者さんを診ています。正行院長が以前から診ている方やそのお子様など、患者層は幼児から高齢者まで幅広いです。また、私が勤務医時代から継続して診ている方も一定数います。私が3年前に戻ってからは、患者数も顕著に増えました。それまで、正行院長の1馬力のみだったのが、私も加わって2馬力になったのはとても大きかったと感じています

――現在、スタッフの体制については、どのようになっていますか。

正行 当院には、事務のスタッフが5名いるのみで、看護師も準看護師もいません。事務のスタッフが受付以外の業務を行っている状況です。しかし、診療を行うにあたり大きな問題はありません。当院ではあまり注射や採血を行うことがないためです。
 勤務体制には特に注意を払っており、現在の人数は、2名余分に採用しています。これは、人数を多めに採用することで、休みを取りやすくし、スタッフに少しでも長く働いてもらうためです。スタッフの入れ替わりが激しくなるとそれだけトラブルも起こりやすくなります。当院では、有給休暇は全て消化してもらい、コロナ感染した場合は公休としています

2診体制の強みを生かし、めまい・耳鳴りの治療に新たに取り組む

――今後、弘行副院長が事業承継をされるにあたって、準備はどのように進められているのでしょうか。

弘行 まず、クリニックに戻る前のことでいえば、大牟田市立病院での勤務が挙げられます。これは、「クリニックを継承するのであれば、大牟田市立病院で勤務すると、今後に役立つ」とのアドバイスをもらったからです。承継後にスムーズな病診連携が取れるように、積極的に様々な診療に取り組んでいました。
 また、クリニックに戻ってくる少し前には、クリニックを大きく改装し、その際にレントゲン機器などの医療機器も新しく導入しています。
 ちなみにその時に新調したロゴデザインのコアラは、「視力が弱く、耳と鼻を頼って生きている」そうで、耳鼻咽喉科のモチーフとしてピッタリだと感じて採用しました。
 患者さんの分担に関しては、基本的には半分ずつ分担していますが、以前から正行院長が診ている方はそのままお願いし、めまい・耳鳴りなどの専門的な分野については私が担当しています。
 現在は2診体制で診療を行っていますが、連携は非常にスムーズです。正行院長は私が提案した新しい方法を拒むことなく、受け入れてくれます。事業承継にあたり、親子間でトラブルに発展した話を聞くことがありますが、そうした心配をすることなく、診療にあたれることはとても大きいと感じています。

正行 クリニックを経営していくのは、弘行副院長なので、口出しはしないようにしています。患者さんの役に立つことであれば、どんどん新しい方法を取り入れてほしい。その一環として、めまい・耳鳴りの治療があります。

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特徴的なコアラのロゴデザイン

――弘行副院長が取り入れためまい・耳鳴りの診療についての反響はいかがでしょうか。

弘行 手ごたえを感じています。現在、患者さんの1割程度がめまい・耳鳴りで来院されます。めまい・耳鳴りは、しっかり診てもらえることが少なく、症状が改善しないなかで、病院をいくつも回るということが少なくありません。当院では、なるべく診療をここで完結できるように、丁寧なめまい・耳鳴りの検査・診療をしています。どうしても、症状が改善しない場合は、とりあえず薬を出して様子を見るという中途半端な対応はせずに、久留米大学病院や九州大学病院などの大きな病院でしっかり診てもらうようにしています。
 この病診連携の部分については、勤務医時代の経験と人脈が活かせているのではないかと感じています。大牟田市立病院には、勤務医時代の後輩の医師が勤務しているので、直接電話をかけることができますし、九州大学千鳥橋病院にもめまい専門のドクターがいるので、その方と連携をとっています

――ホームページ上では、メニエール病についての解説も書かれていましたが、こちらについてはいかがでしょうか。

弘行 メニエール病は、めまいと低音域の難聴・耳鳴りを繰り返す内耳の疾患です。よく、「メニエール病と診断された」という患者さんが来院されますが、たいていは「良性発作性頭位めまい症」という動いた際にめまいが生じる別の疾患です。
 メニエール病と診断するためには、少なくとも3つの検査が必要になります。まず、めまいの症状を持つ方は目が勝手に動いてしまいます。それを確認するための眼振検査が必要になります。また、難聴かどうか診断するための聴力検査、耳鳴りを持つ人は体のバランスを崩すため、重心動揺計検査を行います。この3つの検査を行って初めてメニエール病かどうかを診断できます。

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弘行副院長による4コマ漫画。疾患について分かりやすく解説している。

――めまい・耳鳴りやメニエール病に対応できることが貴院の一番の強み、満足度向上につながっているということになるのでしょうか。

弘行 それもありますが、患者さんの満足度が高いのは正行院長のお人柄でしょうか。誰に対しても優しい診療を心掛けており、老若男女問わずファンがとても多いです。私も、研修医時代に小児科医を目指していたこともあり、子どもの患者さんの診療には慣れています。保護者の方にはそのあたりが大きいかもしれません。
 クリニックの強みという点では、当院が2診体制であることでしょう。先ほども申しましたが、めまい診療はどうしても検査に時間がかかってしまいます。そのため、医師が1人しかいなければ、そこで通常の診療はストップしてしまいます。しかし当院では、私が検査をしている間に、正行院長が診察を続けてくれるので、診療が止まることはありません。この地域で2診体制のクリニックはほとんどないこともあり、これが1番の強みになっていると感じています。
 そのため、正行院長が引退された後に現在の患者数をどう対処していくのかということが今後の課題になってくると思います

小児難聴患者の療育への取り組みのため、さらなる病診連携を模索

――現在、貴院では「TKC医業会計データベース」(MX2)を導入し、日々の業績管理等に活用されているとお聞きしました。

弘行 導入したのはつい最近です。医業収益や医業利益、患者1人当たりの単価などについて、前月と比べてどうかなどをグラフで一目で確認できる点が特に気に入っています。
 入力業務は、事務スタッフが毎日行っており、私自身も毎日必ず内容を確認しています。なかでも着目している数値は、初診患者の比率と診療単価です。初診患者の比率が高ければ、初診料や検査点数もつき、診療単価も高くなるからです。とはいえ、導入してからまだ日数も経っておらず、すべての機能を使いこなしているわけではありません。加藤田税理士に助言いただきつつ、今後も有効に活用することで、経営の意思決定に役立てて行きたいと思います。

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左から加藤田税理士、上村正行院長、上村弘行副院長

――貴院の今後の地域での役割、展望をお聞かせください

弘行 難聴の子どもたちに対する療育の充実を図るため、病診連携をよりスムーズにしていきたいと思っています。
 先天性の難聴を抱える子どもたちは、軽度のものから重度のものを含めると、先天性疾患のなかでは、最も高頻度で発生する疾患の1つです。そのため、本来であれば、その他の大規模病院や福岡県とも連携をとって療育にあたるべきなのですが、それができていません。
 今後10年単位での取り組みになるとは思いますが、少しずつ改善していければと思っています

会計事務所からの一言

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税理士法人昴
 代表社員 税理士 加藤田敏孝

2診体制の強みをいかして地域貢献を行う

上村正行院長・弘行副院長とは、弘行副院長が戻られることが決まった2018年のときからのお付き合いになります。人口減少・高齢化のエリアにおいては、なかなか後継者が戻って来ないことが多いのですが、それを逆手に取り、後継者のいる耳鼻咽喉科として成長を続けています。将来の事業承継に備え、2022年に医療法人化。それに合わせてMX2を導入しました。顧問税理士としての立場からは、5年後・10年後を見据えた長期ビジョンを設定し、安心して地域医療に貢献できるよう会計・税務・経営面から全力でご支援いたします。

(2022年12月28日/TKC医業経営情報2023年2月号より)