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病医院訪問・MX活用事例 手術のクオリティの高さで他院と差別化 地域の人々の眼の不安を解消

医療法人たかやま眼科 

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理事長・院長 髙山弘平(たかやま・こうへい)

2016年に大阪府吹田市の南千里駅前で開業した「医療法人たかやま眼科」は、手術のクオリティの高さが口コミで広まり、いまでは1日150人の外来患者が来院する。「飛び込み患者の不安を解消させたい」という想いから完全予約制などの業態をとらず、医師・スタッフの増員を図り、対応する。そこには、「TKC医業会計データベース」(MX2)による確かな経営判断があった。院長の髙山弘平先生に話をうかがった。

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所在地大阪府吹田市佐竹台1丁目4-1 クリニックモール3階
TEL:06-6871-5200
https://takayama-eye-clinic.com/
診療科目

眼科

診療時間午前   9:00~12:00
午後 15:00~18:00
休診日
水曜日午後、土曜日午後、日曜日、祝日

「大阪のベッドタウン」で開業 1日150人の患者に3診体制で対応

――まずは貴院の概要をお聞かせいただけますでしょうか。

髙山 当クリニックの開業は2016年です。京都大学医学部を卒業後に、倉敷中央病院、岸和田市民病院と、地域の基幹病院で勤務医として多くの治療に携わってきました。その後、京都大学大学院で、緑内障を専門に研究を行いました。大学院を修了後、大阪赤十字病院等の勤務を経て、地元である南千里で開業しました。
 
理念は、「正確な診断・的確な治療・不安を取り除く説明」です。「正確な診断」と「的確な治療」は医師として当たり前ですが、当クリニックでは、患者さんが抱えている不安を取り除く説明に力を入れています。特に、患者さん本人が納得して治療を受けてもらう、患者さんにとってベストな治療を患者さん本人に理解してもらった上で選んでもらうということは常に強く意識しています

――クリニックがある南千里は「大阪のベッドタウン」というイメージがあります。この地域の特徴や医療提供体制はどのようなものでしょうか。

髙山 この付近の団地は「千里ニュータウン」といって、高度経済成長期に建設されました。吹田市全体の人口は上昇傾向が続いていますが、「千里ニュータウン」は1975年をピークに減少傾向が続きました。高齢化率についても非常に高く、2020年の時点で30.1%です。都市部であるにもかかわらず日本全体の高齢化率の平均である28%を超えています。一時期は、全国平均よりも7ポイント以上高く、急速に高齢化が進んだ地域と言っていいでしょう。
 一方で、近年は世代交代の波が押し寄せており、若い世代が流入しています。それもあって、人口はここ10年で上昇傾向ですし、高齢化率も僅かですが減少しました。
 医療提供体制は大変充実しています。当クリニックのような開業医も多く、大きな病院でいえば、大阪府済生会千里病院、大阪大学医学部附属病院、国立循環器病研究センターもあります。

――現在のクリニックの1日の平均患者数、患者層についてはいかがでしょうか。

髙山 当クリニックでは、1日あたり150名前後の患者さんを診ています。患者層は、地域のお子さまと高齢者の方が大半を占めています。ベッドタウンで開業しているということもあり、現役世代の男性の患者さんは少な目です。この辺りの町を平日の昼間に歩いていると、お子さま連れのお母さん、高齢者の方がほとんどですが、それがそのまま患者層に反映されています。
 
お子さまが来院されるのは、大抵が小学校の健康診断で近視と診断されたケースで、高齢者の方は白内障などの加齢性疾患が中心です

――1日で150人という数は大変驚きですが、どのように診療をこなしているのでしょうか。

髙山 当クリニックでは、医師・スタッフの数をそろえることによって対応しています。昨今、診療は完全予約制にして患者さんの人数を事前に把握し、業務の効率化を図ることで、少人数でクリニックを経営する流れが主流なのかもしれません。
 しかし当クリニックでは、特殊な検査や手術は予約制になっていますが、基本的に外来患者さんはいつでも受け付けています。むしろ、そうした飛び込みの患者さんこそ対応してあげたい。
 眼の病気というのは、かかった側からすると大変恐ろしいものです。万が一失明してしまっては、これまで通りの生活ができなくなってしまう。患者さんからすれば、一刻も早く、症状を改善したいわけです。一方で、完全予約制にしてしまうと、そうした飛び込みの患者さんに対応することができなくなってしまいます。
 だからこそ、十分な医師・スタッフをそろえています。現在は、平日午前は3診体制をほぼ維持しており、検査員はこの春から5名になります。看護師も常勤・パートを含めて5名、事務スタッフが11名います。
 一方で、予約制でないことによって、当然のことながら待ち時間は発生してしまいます。一時期は、来院してから診療を終えるまでに1時間以上かかっていたこともありましたが、スタッフの数が増えて、少しずつオペレーションを改善したことによって、これを半分以下にまで削減することができました。
 とはいっても、まだまだ改善の余地はあります。今後も待ち時間の削減という点については引き続き努力していきたいと思います。

――スタッフの採用については、苦労しているという話をよく聞きます。

髙山 もちろん、これは当クリニックでも同様です。長い時間をかけて少しずつ増員してきました。特に、眼科の診療においては、視能訓練士の重要度が非常に高い。視力・斜視・弱視・色覚などの眼科検査全般を行ってもらいます。しかし、この視能訓練士の採用が大変難しい。募集をかけても何の反応もない時期もありました。
 また人事面では、スタッフの定着率・教育体制についても課題があります。今ではようやく落ち着きましたが、開業当初はスタッフのケアが十分できていなかったと思います。現在、スタッフの数という面では充実してきていますが、今後は今いるスタッフをしっかりとフォローすることで、少しでも長く働いてほしい。スタッフが幸せに長く働いてくれる職場は、それだけ患者さんも幸せになると思うからです。

「不安を取り除く説明」に時間をかけ、手術のクオリティの高さで他院と差別化

――他方で1日あたり150名を集患するためには、それなりの苦労があったと思います。増加に成功した要因についてはどのようにお考えですか。

髙山 時間をかけて徐々に認知され、来院してもらえるようになりました。増患要因の1つは手術のクオリティの高さだと思っています。
 手術件数は、開業初年は手術を開始したのが6月ぐらいからだったこともあり200件程度でしたが、翌年には600件近くまで上昇しました。コロナ禍の2021年は受診控えも起きて多少減少しましたが、その反動もあってか、昨年は大きく増加しました。今では、1日あたり10~15件程度、年間1,000件近くの手術を行っています。

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 当クリニックにおいて、手術の技術面は、私自身、勤務医時代からかなりの研鑽を積んできているので、自信を持っています。加えて、私の他にも手術を担当できる医師がもう1名います。その医師も非常に腕が良いこともあって、クリニック全体での手術のクオリティは非常に高いと思っています。 
 また、最新の手術用機材等を積極的に導入していることも大きいでしょう。患者さんからすると、大学病院と同等のクオリティの手術が、待ち時間も少なく、心理的な抵抗も少なく受けられると感じられているのではないでしょうか。
 そうしたことが口コミで少しずつ広がり、他院と差別化できたことが、増患の大きな要因になっていると感じています

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大学病院などで導入されている最上位の手術機器を備える手術室

――たかやま眼科で行っている年間1,000件の手術ですが、その内訳はどのようなものでしょうか。

髙山 およそ8割が白内障の手術で、残りが硝子体、緑内障、眼瞼下垂等の手術です。白内障とは眼のレンズの役割を持つ「水晶体」という部位が、濁ってしまい視力が低下するという病気です。特に40歳以降の方に多く見られ、年齢を重ねるごとに発症リスクが高まります。
 白内障の手術自体は10分程度で行うことができます。とはいえ、患者さんからすると自分の眼にメスが入るわけです。当然、非常に強い恐怖心を覚える方もいらっしゃいます。ですので、当クリニックでは、理念にもなっている「不安を取り除く説明」に時間をかけています。手術までに手術説明日を設けて、時間をかけて丁寧に説明することで、患者さんの不安を和らげています。

MX2によるシミュレーションが経営を支える 今後も患者さんの笑顔のためにさらなる努力を

――現在、貴院では「TKC医業会計データベース」(MX2)を導入し、日々の業績管理等に活用されているとお聞きしました

髙山 医業収益や医業利益、患者1人あたりの単価などについて、前月と比べてどうかなどのグラフを一目で確認できる点が特に気に入っています。
 入力業務は、事務スタッフが日々行っており、私自身も可能な限り内容を確認するようにしています。特に、当院ではスタッフの数が多いため、必然的に固定費が多くなります。ですから、スタッフをもう1名増やす際などはしっかりと収支のシミュレーションをしています。なかでも着目している数値は手術件数です。当クリニックでは、手術の件数に応じて歩合給が発生しているからです。とはいえ、まだまだ、すべての機能を使いこなしているわけではありません。榎崎税理士に助言いただきつつ、今後も有効に活用することで、経営の意思決定に役立てていきたいと思います

――では、今後どのようなことが課題になってくるとお考えでしょうか。

髙山 院内のスペースの確保が大きな課題になってくると思っています。1日150名という患者さんの数に対処するためには、医師・スタッフの数を増やすことで対処できましたが、そもそも検査室のスペースには限りがあります。
 クリニックの引っ越しも視野には入れていますが、ニュータウンという土地柄上、団地がほとんど。クリニックに適した土地がありません。
 しばらくは、今あるスペースを有効に活用し、どう患者さんに対応するかしっかりと考えていかねばならないと思っています

――最後に今後の展望について教えてください。

髙山 南千里のかかりつけ眼科として、少しでも地域の方々に貢献したいと思っています。
 繰り返しになりますが、眼病患者さんは大きな不安を抱えています。その不安を少しでも早く取り除いてあげたい。そのためにも、しっかりとクリニックにスタッフを定着させ、連携を深めていくことで診療をスムーズにし、当クリニックでしかできない手術をこなしていきたいと思っています。

 眼科は治療の成果がただちに出ます。すぐに症状が改善されることで、非常に患者さんが喜んでくれます。そして、その笑顔を見ることが私自身の診療を続ける原動力にもなっています。今後も1人でも多くの患者さんの笑顔を見るためにさらなる努力をしていきたいと思います

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左から髙山弘平院長、榎崎洋税理士

会計事務所からの一言

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榎崎洋税理士事務所
 所長 榎崎 洋

確かな手術の技術が南千里の方々の心をつかむ

髙山弘平院長とは、2016 年の開業当初からのお付き合いとなります。手術のクオリティの高さが口コミで広がり、クリニック内の体制も整ったことで、想定をはるかに超えるスピードで業績を上げられています。今後、私の出番となってくるのは、「TKC医業会計データベース」(MX2)の活用のサポート、そして、患者数の伸びが止まったときです。ここでいかに早くアラートを出すかがカギになると考えています。これからも地域医療に貢献できるよう会計・税務・経営面から全力でご支援いたします。

(2023年2月22日/TKC医業経営情報2023年4月号より)