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病医院訪問・MX活用事例 高度な検査用機器を活用し 地域医療への貢献目指す

医療法人ODIC 大分先端画像診断センター

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理事長・院長 友成 健一朗(ともなり・けんいちろう)

日豊本線別府大学駅から徒歩約3分の場所にある「医療法人ODIC 大分先端画像診断センター」(大分県別府市)は、PET/CT装置をはじめとして、大分県内でも数台しかないような高度な検査用機器を取り揃えており、各医療機関と連携して地域医療への貢献を目指している。運営面でも、TKC医業会計データベース(MX2)を活用し、経営の打ち手検討に活かしている。友成健一朗理事長に話を伺った。

DATA医療法人ODIC 大分先端画像診断センターimg_b0291_02.jpg

所在地大分県別府市上人ヶ浜9組
TEL:0977-66-4116
https://www.odic.or.jp/
診療科目

放射線科・神経内科 

診療時間月~土曜日  8:30~17:30
神経内科
隔週土曜日  9:00~13:00 

民事再生申請のクリニックを第三者承継 「3つの目」で高度な検査を実現

――まず、こちらのクリニックで理事長に就任されるまでの経緯についてお聞かせください。

友成 もともとこのクリニックは、私が他の医療法人から第三者承継しました。クリニック自体は、県内初のPET(陽電子放出断層撮影)を備えた施設として2004年に開業しています。私とこのクリニックとの関わりは、2008年の施設長就任がきっかけです。
 もとのクリニックの開業当時は各地にPET施設が誕生していた時期で、ここでも健康診断やがん検診といった自由診療をメインに行っていたと伺っています。そのためなのか、建物のつくりも地上2階・地下1階建てと、クリニックとは思えないような広々としたデザインになっています。
 ところが開業後の経営はなかなか思わしくなかったようです。しかし希少な機器があるために、廃業するというわけにもいかず、最終的には民事再生申請へと至りました。その再建の取り組みのなかで、私のところに施設長就任の打診があったのです。
 私は大学病院の勤務医を経て、遠隔で読影を行う会社を立ち上げて活動していました。全国的な傾向ではありますが、大分県内でも、撮影された画像をもとに診断する放射線科医の人数が多いわけではないので、必要な場合にすぐに読影することが難しい、という状況がありました。そこで、離れたところからでもネットを通じて遠隔で画像データを送ってもらい、集中して診断するような会社を設立しました。そうしたなかで、放射線科の専門医であったのと、どの病院にも所属していなかったということもあってか、私にお声がかかったようです。2015年には第三者承継することとなり、今に至ります。
 同じ写真を診るのでも、かつて病院で行ってきた検診では診断するところまでは至りません。加えてクリニックでは患者さんに直接お会いできるので、患者さんに寄り添って診断を出していることにやりがいを感じています

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――こちらのクリニックには高度な検査機器があると伺っていますが、具体的にはどのような機器があるのですか。

友成 主な検査機器として、PET/CTと3T–MRIがあります。
 そもそもPET検査とは、核医学検査のひとつで、がん細胞がブドウ糖を多く必要とする性質を利用した検査です。ブドウ糖に放射性同位元素を「目印」としてつけた上で、患者さんに投与して、その目印が体のどこに集まるかを追跡することで、がんの発見につなげられます。
 PET/CTとは、このPETに加え、CTの検査機器が一体化した機器です。MRIも、3テスラという、一般的なMRIよりも磁場の力が強い装置を入れており、とても鮮明な画像を得られます。
 PET、CT、MRIは、それぞれ得意・不得意があります。これら「3つの目」を組み合わせて、苦手な部分を補い合いつつ、利点を生かすことによって、より高い精度での検査を実現できます。
 また、PET検査用の薬剤をつくるための装置「サイクロトロン」も備えています。

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大分県内でも数台しかないというPET/CT

紹介による受診が8割 高齢社会を見据えて神経内科も開設

――現在の患者数やスタッフの体制はどのようになっていますか。

友成 今は1か月平均で約340人の患者さんが来院されます。このうちおよそ8割は大学病院や中核病院、近隣医療機関からの紹介で、保険診療で受診されます。残り2割は検診などの自由診療です。人数の推移としては、昨今のコロナ禍で若干減った時期もありましたが、基本的には承継して以降増えています。
 スタッフ数は、医師は常勤が私1人、非常勤が5人と、看護師が4人、放射線技師が6人、臨床検査技師が1人、事務員などが8人います

――紹介が8割とのことでしたが、何施設くらいの病医院から紹介を受けているのですか。

友成 数でいえば200施設ほどとなりますが、そのうち、がん拠点病院など、上位の5~6施設で7~8割を占めているような状況です。基本的には、がんの患者さんをいま診ていらっしゃる病院から検査依頼が来るかたちですね。

――隔週の土曜日には神経内科の外来も開かれていると伺いました。

友成 3年ほど前に、せっかくMRIがあるので有効活用できるようにと始めました。最近ではがんも薬の進歩などから治療法が進んでいます。そうすると今後は高齢化するなかで、認知症などがより身近な問題になるのではないかと思い、大分大学医学部の神経内科にご提案し、月に2回、先生を派遣していただけることになっています。

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広々とした待合室

あくまで「人のため」の検査を意識 報告書はスピードに加え質も重視

――検査や診察をされる上で意識されていることはありますか。

友成 あくまで生身の人の体を写真で診ている、ということは意識するようにしています。こうした検査を一生懸命続けていると、検査自体が目的化してしまい、何のために検査するのか、何のために診断するのか、手段と目的がごちゃごちゃになってしまって、わからなくなってしまう場合もあり得ます。
 機械が必要だと思っても、それがなぜほしいのかといえば、よく見えるから、ではなく、よく見えることで患者さんの役に立つはずだから、とその先まで意識しようと思っています。
 また、報告書を書くときには、内容の質も重視するように意識しています。もちろんスピードは重要です。他の病院などの場合は翌日か、早ければ検査を受けたその日に結果を返すこともあります。診療報酬上も、翌日までに報告書を出せば点数の算定が高くなります。
 しかし、このクリニックに検査を依頼するようなケースでは、救急搬送されるような緊急の患者さんの場合は少ないですし、クリニック側で検査する時間にも比較的ゆとりがありますので、その分内容の質を高めるようにしています。たとえばがんの転移が3か所なのか、10か所なのかで、場合によっては治療方針が変わりますが、それを正確に判断するためには、数年前の画像データから見返して、時間をかけて1枚ずつ比較する必要があります。
 こうした画像診断は、経験や知識の差で結果が変わるのではなく、どれくらい丁寧に確認できるかによって変わってきます。そこで質とスピードを両立させつつ、決められた期間の範囲内で丁寧に確認するようにしています。

MX2で投資のタイミングを検討 患者と主治医との「通訳」になりたい

――こちらのクリニックでは、「TKC医業会計データベース」(MX2)を導入し、活用していらっしゃると伺いました。

友成 税理士法人プロスパーの梯先生とは、読影の会社を立ち上げた際に担当をお願いして以来の関係で、クリニックについてもお願いすることとなりました。
 当クリニックでは検査が大半であり、経費なども含めて変動が大きくありません。一方で、それぞれの機器類の更新時期があり、投資のスパンはある程度決まっています。そのため、主に医業収益の変動に注目し、3か月から半年先の数字を予測しつつ、どのタイミングで投資していけば影響が大きくならずに済むのか、といったことを考えています。
 また当クリニックでは定期的に、スタッフを集めて経営会議を開いており、その際の資料としてもデータを確認しています。

                         「TKC医業会計データベース(MX2)」の画面
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                                                                                    ※画面はサンプルです

――現在の課題点や今後の目標についてお聞かせください。

友成 現状では何とか回ってはいるのですが、常勤の医師が私1人で足りていないと感じています。私自身が倒れられないというのもあるのですが、1人が1日で検査する数には限りがあります。一方で機器類などの費用はかかりますから、今後のことを考えた際に、一番の課題だと感じています。
 これからの目標については、患者さんと、病院の主治医の先生との間に入る「通訳」のような存在になりたいと思っています。忙しい病院だと、なぜこの検査をするのか、今後の治療をどういった方向に進めていくのか、といった説明について、患者さんの性格に合わせて行うような余裕は少ないですし、患者さんが不安になる気持ちもわかります。
 そこで間に入って、患者さんに「そうだよね、怖いよね」と話を聞きつつ、クリニックでの画像検査結果による論理的根拠をもとにして説明していきたいと思っています。意義も含めて、何のためにするのか、という話を伝えてから検査をしたほうが、患者さんの受け入れ方などが違うように感じます。
 画像診断を専門にしたクリニックは、県内でもここしかありません。一般的なクリニックでは、機器類を整備しようとしても、検査時に取り扱う放射性物質など、ノウハウも含めてハードルが高く、なかなか手を出しにくいところがあると思います。その分、引き続き各医療機関と連携を高めて、地域医療に貢献していきたいですね。

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左から、友成健一朗センター長、梯茂之税理士

税理士事務所からの一言

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税理士法人プロスパー
 所長 梯 茂之

独自領域で医療の未来を切り開くクリニック

友成先生と知り合って約20年になります。お会いするたびに伺うお話からは、先生の読影に対する情熱を感じます。真摯な面持ちでモニターに向かう姿には使命感を感じ取ることができます。ユニークな存在として大分の医療を支える施設として存在感を増している大分先端画像診断センターをこれからも支援してまいります

(2023年11月24日/TKC医業経営情報2024年1月号より)