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院長先生必見!新人スタッフを戦力化するための5つのポイント(後編)

教え上手・教わり上手になって、効果的な教育を

株式会社ビー・プランニング 人材育成部門代表 磯部裕子

後編では、効果的な教育を実践するための具体的なノウハウと、モチベーションを維持しながら明るく元気に仕事に取り組むために必要な、メンタルヘルスケアについて解説します。

  

戦力化のポイント3  “教え上手”になる

 新人スタッフをクリニックの真の戦力にするためには、効果的な教育の実践において、教える側の心構えが大切になります。

①新人スタッフの心を開き信頼を得る

新人スタッフの心を開き、信頼や尊敬に値する人であることを表現することで、聞く耳と学ぶ心を持たせます。心を開くカギは、安心感を与える笑顔で自分から先に挨拶をすることです。挨拶は先手必勝ともいわれます。挨拶をするときには、相手の目を見て、相手のためだけに考えた一言を続けると、より効果的です。

〈挨拶の4か条〉 
 ・あかるい笑顔と温かな眼差しで  
 ・いつでも誰にでも
 ・さきに自ら進んで
 ・つづける一言で心を開く※

つづける一言は、相手を思いやる一言、労う・励ます・感謝する一言などが良い。

 

また、身だしなみをはじめ仕事などにおいては、自らが凡事徹底や率先垂範することで信頼を得るよう努めましょう。

②「知っている」「分かる」「できる」「教える」の違いを理解する

新人スタッフが、「知っています」「分かりました」と言ったとしても、できることをきちんと確認する必要があります。

また、新人スタッフが自分と同じようにできるようになるためには、教え方の工夫が必要です。自分ができるからといって、人に教えられるとは限りません。例えば、算数を知らない人に1+1や21を教えるときは、指やおはじきを使い、足し算や引き算の考え方を教えると思います。

新人スタッフが知っていることや経験してきた範囲のことを応用しつつ、新たな学びにつなげる工夫が必要です。

 

③必ずしも自分が考えているとおりに伝わらないことを理解する

人はそれぞれのものの見方や捉え方が違います。これは、他人とのコミュニケーションにおける大原則として心得ておくべきことです。ましてやベテランと新人スタッフとでは経験値が違うため、互いに同じように考え発想し理解できるとは限りません。これを心得ておくことで、相手のものの見方や考え方に合わせてコミュニケーションができます。

また、自分の伝えたいことは、必ず明確な言葉で伝えます。例えば、「明日の朝はスタッフの人数が少ないから、いつもより少し早めに来てね」と言ったとします。この言葉で、あなたは指示が伝わったと思うかもしれませんが、あなたの「少し早め」と相手の「少し早め」は違います。確実に伝えるには、きちんと時間を指示する必要があるということです。

効果的な教育の実践には、教わる者の心構えも大切です。この心構えは、新人スタッフにとって最大の武器になるといえます。

 

戦力化のポイント4 “教わり上手”になる

 

①自ら進んで、一言続ける挨拶をする

例えば、朝一番に「おはようございます。今日も一日よろしくお願いいたします」。一日の終わりに「お疲れ様でした。今日も一日ありがとうございました」と進んで挨拶をすることで、教える側との信頼関係が深まります。

 

②事前準備と一日の振り返りをする

受け身の姿勢ではなく、積極的な学びを実践します。翌日の仕事をシミュレーションし、どのような準備や知識の整理が必要かを確認します。また、学んだことは早めに振り返って疑問点を確認し、知識の定着を図ります。

 

③指導を受けたことはメモを取り行動に移す

例えば、電子カルテで新患登録の操作方法を習ったときには、操作方法をメモするとともに、「やってみてもよろしいでしょうか」と積極的に意欲を示します。このような行動が、教える側には教えがいのあるスタッフとして映ります。また、仕事の習熟度が確認できることにより、間違っていたとしても早い段階で修正できます。

 

④指示や注意の受け方を心得る

指示を受けたらすぐに相手の方を向いて「はい!」と返事をします。また、指示内容をその場で復唱し、間違いがないか確認します。 注意を受けたときには、言い分がある場合でも、まずは「申し訳ありませんでした」と伝え、自分の足りなかった点を認めた上で話をします。

 

⑤報告・連絡・相談は怠らない

報告・連絡・相談をするときには、相手の都合を確認してから行います。「○○についてご報告があります。急ぎではありませんが、10分程よろしいでしょうか」というように、用件の概要と時間、急ぎかどうかを伝えます。

相談したことは必ず結果を報告します。また、失敗をしたときには、どんな小さなことでも速やかに報告をします。

 

戦力化のポイント5 メンタルヘルスケア

 

新人の場合は周りが気付いてあげることも大切ですが、自分自身でストレスに気付き対処する、早めのセルフケアが重要です。

①医療業特有のストレスの要因を知る

厚生労働省発表「過労死等の労災補償状況(平成29年度)」によると、看護職を含む医療・福祉(医療業)が、精神障害の労災請求件数の多い業種の第2位です(図表)。

人命に関わる仕事に対する緊張感、チーム医療における立場の違いや相互理解などに対するストレス、時間に追われる仕事や仕事量、時間外勤務やシフト勤務での不規則な生活に関する労働環境へのストレス、患者さまやご家族との関係など、さまざまなことが要因となっています。

 

 

②ストレスのサインに気付く

心理面のストレスのサインは、不安や気分の落ち込み、イライラ、意欲や集中力の低下などです。身体面では睡眠障害、疲労感や倦怠感、食欲低下や下痢などさまざまな体調の変化が、行動面では飲酒量の増加や食欲亢進、欠勤や遅刻の増加、仕事でのミスやヒヤリハットの増加などがあります。

 

③ストレスに上手く対処する

1)人と話をする

一人で抱え込まずに身近な家族や同僚、友人に不安や悩みを話すと気持ちに整理がつきストレスを発散できます。話すことで頭の中が整理され、解決の方向性に気付くこともあります。

2)3つのR”で対処する

次の“3つのR”を心掛けます。

Rest(レスト):十分な休息をとり、心身ともにオンとオフを切り替えて気分転換を図ります。

Recreation(レクリエーション):運動や趣味や娯楽でストレスを発散します。

Relax(リラックス):音楽を聴いたりアロマセラピーを受けたりなど、リラクゼーションがストレス発散には効果的です。

 

この他にも、家族や友人との団らんや愛犬との散歩など、自分にふさわしいストレスへの対処法を見つけるとよいでしょう。

3)健康的な生活を送る

アメリカのカリフォルニア大学教授のブレスロー氏は、生活習慣と身体的健康の関係性を調査した結果、下記のような健康的なライフスタイルが、ストレスの解消につながると提唱しています。

・7~8時間の睡眠

・朝食は必ず取り、間食は控える食生活

・適正な飲酒

・適度な運動

・体重管理

・禁煙

全2回を通して、人材不足の医療業界において、真の戦力となる新人スタッフを育てるヒントをお伝えしました。経営陣、新人スタッフをはじめスタッフ全員で情報を共有し、クリニックの経営に活かしていただければ幸いです。

(「TKC医業経営情報」2019年2月号より)