システム移行編

FXシリーズで自計化を推進し経営支援につながる事務所体制を

システム移行座談会

とき:平成24年5月18日(金) ところ:TKC東京本社

TKCシステムへの移行を進めた3名の会員がTKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会フォロー部会担当副委員長の甲賀伸彦会員の司会で、事務所経営の変化や関与先の反応等を語った。

出席者(敬称略・順不同)
 羽野誠一会員(中国会広島県東部支部)(47歳)
 長谷川哲也会員(中部会尾張支部)(37歳)
 松井明則会員(関東信越会埼玉中央支部)(53歳)

司会/TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会
 副委員長 甲賀伸彦会員(北海道会)

座談会

業務の流れを整理しきれいに体系化することを目指す

 ──本日はTKCシステムへの移行を進めた経緯について、お話しいただきたいと思います。まずは、皆さんの自己紹介からお願いします。

 松井 私の事務所は、埼玉県さいたま市(旧浦和市)にあります。職員は私の他に3人、それからパートが1人で、私を除いて4人体制です。関与先数は、法人が52件と、個人が26件。平成10年8月の開業から14年ほど経ち、あっという間にいまに至ります。私は、よく見た目から攻撃型に見られるのですが(笑)、実はアットホームな事務所です。翌月巡回監査率は約90%弱。いまは書面添付に力を入れていて、今年は去年の倍増を目指しています。

 羽野 広島県の東の端にある福山市からまいりました。職員が7人で、そのうち税理士資格者が1人と、社会保険労務士1人の事務所です。科目合格者の職員もいて、資格取得を目指しています。
 私は、平成元年から会計事務所に勤務し、実務を勉強させていただきながら、13年がかりで平成18年に税理士試験に合格しました。その後、平成19年4月にお世話になった事務所を親族外承継し開業しました。
 開業から5年経ち、関与先は、法人122件、個人31件です。まだシステム移行の道半ばで、事務所業務の標準化が徹底できていないため、1年間の業務を通じて決算を終えるまでの流れを整理し、きれいに体系化することを目指しています。以前喫茶店だった建物を事務所にしていて、コーヒーが一番美味しい事務所というのが売りです(笑)。

 長谷川 愛知県小牧市にある北斗中央税理士法人は、父の創業から今年で40周年という節目を迎えました。税理士法人としては、今年で6年目になります。現在、父が相談役、兄が代表を務め、所長の私がTKCの活動に参加させていただいています。
 事務所の構成は、公認会計士2名を含む税理士4名です。科目合格者が2名、正社員が11名、パートが6名で、計23名の事務所です。資格者が多く専門性を高めているためこの手のご相談から顧問契約に繋がることが多く、相続のご相談も多くいただいていることが特長です。
 代表曰く、「何でも食らいついてチャレンジする事務所。例えるならダボハゼ会計だ」と(笑)。確かにTKCに入る前から書面添付、電子申告に試行錯誤しながら取り組んでいましたし、構成員も若いので、頭でっかちにならずにまずは行動するという方針があります。

継続MASに一目惚れして入会を決意

 ──TKCに入会した動機とシステムの移行を進めた経緯を教えてください。

松井明則会員

松井明則会員

 松井 私は、開業から3年ほど経過した平成13年11月にTKCに入会しました。3年目に渡辺忠会員(関東信越会)からニューメンバーズフォーラムに誘われ、そこで飯塚毅全国会初代会長の講演DVDを見てとても感動し、入会を決めました。実は、TKCシステムのことはその後に知りました。最初はなんて面倒なシステムなのかと思いましたが(笑)、操作に慣れてしまえばそれは問題ではありませんでした。

 羽野 入会の動機は、職員時代に参加した「会計EXPO」のブースで継続MAS(経営計画)システムの「経営者への5つの質問」を見つけたことでした。当時、仕事の進め方を暗中模索していた最中で、まさに一目惚れの美人が現れて恋い焦がれたと(笑)。
 職員として勤務していた事務所ではその思いが叶わず、悶々とした日々を過ごしました。税理士試験に合格し、いよいよTKCとのご縁があり、平成19年8月に入会できました。

 ──TKC入会後に、すぐに継続MASを使いましたか?

 羽野 まずは財務システムの導入をしないと、継続MASに連動できませんから、入会してすぐには使えませんでした。ほとんどの関与先に対して、月次巡回監査体制にはほど遠く、年に2、3回訪問する程度のケースもありました。3月決算法人の申告時期に訪問すると、「いつきてくれるのか分からないなら、巡回監査なんてしなくていい」と言われてしまい、謝りながら訪問をしたこともありましたね。そのような仕事をする中で、本来あるべき会計指導とは何かと考え、それにはきちんとした月次巡回監査が必要だと考えるようになりました。

 長谷川 当事務所は、平成18年6月にTKCに入会しました。それまでは、職員の間で「重要な決算をする人が仕事ができる人」という風潮があり、決算以外にも経営支援という大事な仕事があることを知らせたいという思いがありました。それから、TKCの経営理念がはっきりしていたことが長年の付き合いがあったシステム会社を変える決め手となり、システム移行に向けて舵を切るきっかけになりました。
 はじめは、法人税の申告システムから決算ごとに切り替えたので、会計は従来システムで、申告はTKCシステムでという併用の時期もありました。その頃は、申告書の作成にそれまでの倍近い時間をかけ、試行錯誤の時期で、法人のお客様の会計システムを変えた後に、個人の申告業務をTKCに切り替えるまでには2年かかりました。ただ、ちょうどその時、事務所は父との世代交代がありました。職員の半分が入れ替わっていたことから、トップダウンで移行を進めやすい状況ではありました。

座談会

FX2導入に向けて提案の際のロールプレイングを行う

 ──皆さんが、移行を進めたプロセスを教えてください。また、システムを導入する際は、関与先に対してどのようにアプローチをしていますか。

 松井 既存の関与先に自計化(FX2)を進める場合とシステム変更の際は、こちらが主導権を握って進めました。それから、新規のお客様には最初からTKCシステムを導入していることもあり、現在事務所のFX2による自計化率は7割くらいです。
 既存の関与先に自計化をすすめた時のエピソードがあります。ある社長が、銀行の担当者の目の前で、「自分の借り入れがいくらあるか分からない」と私に電話をかけてきたのですが、借り入れがあるか分からなくて、お金を借りに来るのはおかしいですよね。ですから、「いまお金が足りないから、とりあえず借りればいいというのでは、信用問題にもなりかねない。きちんと自分のところで管理しないとだめだ」と伝えて、FX2導入につなげました。自計化をする理由として「決算書の中身は自社で入力すればわかるようになります」と伝えるとクレームはでませんし、「自計化して良かった」と言っていただけます。
 システム導入後に工夫している点は、少しずつ使用方法に付加価値をつけること。1年目は入力に慣れる。2年目から部門別を入れる。その後、振り込みが多いところは、ネットで振り込めるようにする等その関与先の現状にあわせて、段階的に細かく掘り下げていくようにしています。
 小規模の関与先が圧倒的に多いので、これからは、「e21まいスター」をすすめることを検討しています。特に、入り口となるアイコンがとても分かりやすいところがいいですね。

羽野誠一会員

羽野誠一会員

 羽野 新しい関与先にはもちろん、自計化をしていない関与先にもFX2をご提案しています。例えば、決算予測と計画を立てて、目標に対してどれくらいの達成状況なのかを説明するとよく分かっていただけます。
 事務所全体で自計化を進めるうえで大事なことは、まずは職員の意識を変えることでした。職員が「入力をしないと、仕事をしていない」と見られることに恐れを感じていたので、まず職員には「入力作業をして、汗をかいて見せることで仕事をした感覚になっているが、それは本来の仕事ではないぞ」と伝えました。実際には、自計化が理由による値下げ申し入れは一度もありません。自計化をすれば過去の入力作業に追われることなく、未来経営の話ができる。こんなカッコいい仕事は他にないと思います(笑)。
 まずは私がFX2を操作することから始めました。次に、あるお客様にシステム導入の第1号になっていただき、1件目はすぐに決まりましたが、2件目以降の導入がしばらく続かず苦労しました。

 松井 職員の意識に加え、所長が自計化推進を恐れてはいけない。特に、既存の関与先に対しては、職員が入力もしないで大丈夫かと心配していると、いつまで経っても自計化は進みません。実際は私のところも、自計化したところから、値段を下げてくれと言われたことは一度もないですし、「先生のところ暇そうだね」と言われたことももちろんありませんよ(笑)。
 それから、ある金融機関からの話で、「決算書が2つも3つも出てきて困りました」と聞いたことがあります。その際に「TKCの税理士さんはそういうことがないですね」と言われました。赤字を黒字にと言われても、遡及的な訂正・追加・削除の処理ができませんから、我々も気持ちがすっきりしています。

業績検討会を行う関与先の満足度は高い

 ──皆さん、新規の方が移行を進めやすいとのことですが、他の財務システムからFX2への切り替えはどうでしたか。

長谷川哲也会員

長谷川哲也会員

 長谷川 実は、既存のお客様の記帳代行からFX2への移行、あるいは他のシステムからFX2への移行に悩みながら取り組んでいるところです。
 1年目は、FX2の良さを中心にアピールし、2年目は、お客様の実情を踏まえて「このままだとこうなります」という具体的な財務数値を提示してFX2導入まで進めました。
 特に2年目は、スタッフ全員が自信を持ってシステムを使えるようにできるだけ業績検討会をするようにしたところ、スタッフもだんだんと自信がついてきたようでした。また、SCGからの提案で、導入に向けてロールプレイングを行い、提案書の内容がニーズとマッチしているか、響く言葉なのか、業績検討会の写真を撮って、ビジュアルで見せて説明しました。
 3年目に確実に変わったことは、「毎月お客様と何を話せばいいのか分からない」と言っていたスタッフが、お客様の困っている内容を理解し、そのニーズを確実に掴めるようになったことです。これは大きな収穫でした。
 また、アンケートを実施したところ、業績検討会を実施したお客様の満足度が高いことが分かりました。入社2年目のスタッフが担当する会社では経営計画、行動計画を立てて進めていますが、私あての報告書に「社長様から『北斗さんの目指すことがわかってきたよ』という言葉をいただきました」とあり、とても頼もしく思いました。

 ──FX2の導入を進める際、職員さんへの所内教育はどうされましたか。

 松井 うちはまず1件、私が最初に使って指示を出しました。それから、職員には事務所で2カ月くらい入力させながら操作方法に慣れてもらいました。いまでは職員の方が私の分からない使い方をするほどです。回数を重ねれば操作に慣れてくるので、FX2を導入して、どんどん使わせることが大事だと思います。
 むしろ、私はシステムの操作に慣れてきた頃の「マンネリ化」に注意しています。最初は目新しいからいいけれど、「自分で作業をしているのにお金だけ払っている」という思いを持たせないように、便利な機能を少しずつご紹介して、段階的に取り入れてもらうようにしています。

 羽野 移行の際は、職員の無言の抵抗をどう崩すかが一番の問題でした。直接反対の言葉があれば、言い返す言葉はたくさん用意していましたが、無言だとこちらも言い返すこともできません。ですから、私は、常にシステムを移行する理由を伝え続けました。職員の意識を変えると、職員がシステム移行する理由を関与先に伝えられるようにもなります。事務所全体で移行を進めるためには、職員が関与先に対して、なぜシステムを変えなければならないのか、未来を見せて説明すると理解を得られるので、移行のメリットや理由をきちんと言えるようにすることが大事だと思います。その際、職員には、他社システムの更新期限を伝えて、その後はいっさい使えなくなるよと宣言しておきました。
 それから、うちの事務所では、禁止している言葉があります。それは、「なかなか」という言葉で、この言葉から始まると最後に「できません」などと否定の言葉が続くことが多かったのです。移行に限らず、新しいことを始めるときには後ろ向きではうまくいきませんからね。支部で開催される勉強会に職員を参加させるようにしてからは、研修で得たFX2の操作方法などを事務所にフィードバックしてくれるなど活発な意見がでるようになって、職員の意識も変化してきたと思います。

 長谷川 自計化を進めたことで、社長とのコミュニケーションが増えますので「人間力」の養成は重要なポイントだと思います。所内教育では、職員に謙虚な姿勢で、きちんとした話し方をして、専門的な知識を付けた「人間力」を備えた人材になってもらいたいということに重点を置いています。代表は毎年、事務所の経営計画書を職員全員に渡し、なくすと罰金3万円の規定にしています。事務所の理念を浸透させる目的で、毎月の経営計画書の業績発表とお客様の増減、顧問料の実績を職員と共に共有しています。
 システム操作に対する事務所の課題は、本来使える機能を十分使いこなせていないことです。自計化しているところにも深く掘り下げて、使っていくことが今後のテーマです。システム専任講師に選出された職員を中心に操作方法を事務所にフィードバックしてもらいたいですね。

初期指導の進め方が今後の課題

甲賀伸彦副委員長

司会/甲賀伸彦副委員長

 ──巡回監査支援システムOMSの活用は進んでいますか。

 松井 巡回監査支援システムは全社導入を目標にしていますが、いまはまだ3割ほどです。これは、FX2導入と一緒に進めています。
 OMSは昨年レベルアップされましたが、特に「関与先カルテ」の機能はとても便利でいいと思います。TPSの関与先マスタ・データから情報を取得すると「財務情報」として、5年間の売上高、税引前損益、役員報酬、借入金が確認できます。TKCシステムは、日々進化しているので、我々はそれをきちんと把握し、活用してお客様に伝えていかないといけません。

 長谷川 巡回監査支援システムは全社を対象として1年くらい導入を進めています。このシステムを導入して、お客様が何で困っているか、職員が気付いていないリスクを私たちもキャッチできるようになりました。『巡回監査報告書』は、作成の精度にどうしても個人差がでてしまうので、ニーズを絞り全員が標準化できるように、ノウハウ共有にも努めています。

 ──ニューメンバーズ会員に向けて、システム移行の際の注意点をお聞かせください。

 松井 FX2導入が上手く進まないときは、途中まで入力を手伝う時もあります。ある関与先では、社長が入力を外部の人に頼み、いつの間にか他社システムまで入ってしまっていたことがありました。社長の話では、押しに弱くて断りきれずに入れられてしまったということで、やはり、短期間のうちに初期指導をきっちりとやらなければいけませんね。

 羽野 私は初期指導がうまくいかず、半年くらいそのままになってしまった経験があります。入会間もない頃は、十分な認識と導入に向けたプッシュが弱く、他のシステムを選ばれてしまいました。お客様に選択してもらう際には、信念を持って、当然TKCシステムを選択してもらう方向に進める必要性を実感しました。

 ──ありがとうございました。皆さんの今後の事務所経営の一助として、ぜひニューメンバーズ委員会作成の『TKCニューメンバーズ実務セミナーテキスト』等も活用していただきたいと思います。

(構成/TKC出版 益子美咲)

(会報『TKC』平成24年7月号より転載)