注目の判例

「LEX/DBインターネット」の詳細は、こちらからご確認いただけます。

2020.06.16
過失運転致傷被告事件
LEX/DB25565650/東京高等裁判所 令和 2年 5月 8日 判決 (控訴審)/令和1年(う)第1029号
被告人は、夜間、普通乗用自動車(被告人車両)を運転し、越谷市内の信号機により交通整理の行われている交差点をさいたま市方面からα方面に向かい直進するに当たり、同交差点の対面信号機の信号表示に留意し、これに従って進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、同信号表示に留意せず、同信号機が赤色の灯火信号を表示しているのを看過したまま漫然時速約40キロメートルで進行した過失により、折から左方道路から信号に従い進行してきたV運転の中型貨物自動車(V車両)に気付かず、同車前部に自車左前部を衝突させ、同人に加療約15日間を要する頚椎・腰椎捻挫の傷害を負わせたとして、原判決は、赤色信号看過の過失があったと認定し、有罪判決をしたため、被告人が控訴した事案において、目撃者であるW及びVの各原審証言に依拠して本件信号機の信号表示を認定するだけの信用性を認めることはできず、原審証拠によって、被告人の赤色信号看過の過失を認定するには、合理的な疑いが残るというべきであり、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるとして、原判決を破棄し、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、被告人に対し、無罪を言渡した事例。
2020.06.09
終局決定変更申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25570886/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 4月16日 決定 (許可抗告審)/令和1年(許)第14号
抗告人、相手方及び両名の子は、ロシアで同居していたが、本件子(当時9歳)が平成28年5月に、抗告人が同年8月に、日本に入国した。相手方は、平成28年11月、本件子について、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(ハーグ条約実施法)26条の規定による子の返還の申立てをし、同申立てに係る事件は家事調停に付され、平成29年1月、抗告人と相手方との間で、抗告人が同年2月12日限り本件子をロシアに返還する旨の合意及び養育費、面会交流等についての合意が成立し、これらが調書に記載された。本件子は、平成29年2月12日の経過後も、日本にとどまっている。本件は、抗告人が、本件調停の成立後に、事情の変更により本件返還条項を維持することが不当となったと主張して、ハーグ条約実施法117条1項の規定に基づき、本件返還条項を変更することを求め、原審は、抗告人の本件申立てを却下したため、抗告人が許可抗告した事案で、子の返還申立事件に係る家事調停において、子を返還する旨の調停が成立した後に、事情の変更により子の返還条項を維持することを不当と認めるに至った場合は、ハーグ条約実施法117条1項の規定を類推適用して、当事者の申立てにより、子の返還条項を変更することができると解するのが相当であり、抗告人の本件申立てを却下すべきものとした原審の判断には法令の違反があるとして原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2020.06.09
懲戒免職処分等取消請求事件
LEX/DB25565396/新潟地方裁判所 令和 2年 4月15日 判決 (第一審)/平成30年(行ウ)第5号
地方公共団体である被告新潟市の職員として勤務していた原告が、所属する課の課長の印鑑を無断で押捺して時間外勤務命令票を偽造し時間外勤務手当を詐取し又は詐取しようとしたことを理由として、新潟市長から懲戒免職処分、退職手当支給制限処分をそれぞれ受けたことに関し、本件各処分には事実誤認の違法があり、また、仮に事実誤認がなかったとしても処分権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があると主張して、本件各処分の取消しを求めた事案で、本件非違行為に対し、違法支払等の例に該当するものとして特に軽微な処分をもって臨むのではなく、詐取の例に該当するものとして本件懲戒免職処分をしたことについて、処分行政庁に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められないから、本件懲戒免職処分は適法であるとする一方、本件非違行為が原告の退職手当の受給権すべてを否定するに足りる程度の重大性を有するということは困難であり、退職金の全部の支給を制限する旨の本件支給制限処分については、本件非違行為の内容及び程度と不利益処分との間の均衡を欠き、原告に対して過度に重大な処分を課すものとみるのが相当であるから、本件支給制限処分は、社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法な処分であると認められるとして、退職手当支給制限処分を取り消し、原告のその余の請求を棄却した事例。
2020.06.09
法人税更正処分等取消請求事件
LEX/DB25570858/東京地方裁判所 令和 2年 3月11日 判決 (第一審)/平成28年(行ウ)第395号
内国法人である原告が、原告と米国法人との間で、医薬品用化合物の共同開発等を行う本件JVを形成する契約を締結し、同契約に基づき、英国領ケイマン諸島において、特例有限責任パートナーシップであるCILPを設立し、そのパートナーシップ持分を保有していたが、その後本件JVの枠組みの変更に際し、上記持分全部を原告の英国完全子会社に対し、現物出資により移転したことについて、本件現物出資は、平成28年改正前法人税法施行令4条の3第9項に規定する「国内にある事業所に属する資産」を外国法人に移転するものではなく、適格現物出資に該当すると主張して、法人税等にかかる本件各更正処分等の各取消しを求めた事案において、本件現物出資の対象財産であった本件CILP持分は、「国内にある事業所に属する資産」には該当しないから、本件現物出資は、適格現物出資に該当するとして、原告の請求を一部認容した事例。
2020.06.02
損害賠償請求(株主代表訴訟)事件、共同訴訟参加事件
(みずほフィナンシャルグループ元取締役らに対する株主代表訴訟事件)
LEX/DB25565315/東京地方裁判所 令和 2年 2月27日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第7784号 等
株式会社Mフィナンシャルグループ(MFG)の株主である原告及び原告共同訴訟参加人が、MFGの取締役であった被告らに対し、MFGの完全子会社である株式会社M銀行(MBK)と株式会社O社との提携ローンにおいて、融資先に、MFGの内部の基準によれば反社会的勢力に該当する者が含まれていることを認識したにもかかわらず、MFGの取締役として、〔1〕新たに反社会的勢力との取引が発生することを防止するための体制を構築する義務及び〔2〕MBKに対し、認識した当該反社会的勢力との取引を解消するために具体的な措置を講じるよう求める義務を負っていたにもかかわらず、これを怠ったという善管注意義務違反によって、MFGが業務停止や信用毀損等の合計24億1419万3419円の損害を被ったなどと主張して、会社法423条1項、同法847条3項に基づき、被告らに対し、連帯して、MFGに同損害に相当する額の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、本件提携ローンにおける取引先に反社会的勢力が結果的に入っていたとしても、MFGやMBKが政策的な観点から非難され、あるいは改善を求められることは格別、そのような結果のみをもって、MFGの取締役であった被告らについて、法的義務違反として責任追及をすることができるものでもないとして、原告及び原告共同訴訟参加人の請求をいずれも棄却した事例。
2020.05.26
覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25565331/佐賀地方裁判所 令和 2年 4月14日 判決 (第一審)/令和1年(わ)第211号
被告人が、法定の除外事由がないのに、令和元年11月2日から同月10日までの間、佐賀県内、福岡県内、山口県内、広島県内、岡山県内、香川県内又はその周辺において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン又はその塩類若干量を自己の身体に摂取し、覚せい剤を使用したとする覚せい剤取締法違反の罪で、懲役4年6月を求刑された事案で、被告人が自らの意思で覚せい剤を使用したことを疑わせる特段の事情がないとはいえず、合理的な疑いが残るというべきであるとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2020.05.26
遺族補償給付等不支給処分取消請求控訴事件
LEX/DB25565296/高松高等裁判所 令和 2年 4月 9日 判決 (控訴審)/令和1年(行コ)第20号
香川県高松市所在の本件会社の支社で勤務していた亡q7の父である亡q5において、q7がくも膜下出血を発症して死亡したのは業務上の事由に起因するものであると主張して、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ、高松労働基準監督署長がいずれも不支給とする旨の各決定(本件不支給決定)をしたことから、上記請求後に死亡したq5の権利義務を相続により承継した控訴人が、本件不支給決定の取消しを求め、原審は、q7のくも膜下出血の業務起因性を否定して、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が、原判決の取消しと自己の請求認容を求めて控訴した事案で、q7の業務と本件疾病との間には業務起因性が認められるから、本件不支給決定は違法であり、その取消しを求める控訴人の請求を認容すべきところ、これを棄却した原判決は失当であるとし、原判決を取消し、本件不支給決定を取り消した事例。
2020.05.19
損害賠償請求控訴事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和3年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25565316/仙台高等裁判所 令和 2年 3月12日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第164号
福島県南相馬市、双葉郡浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町、川内村等に居住していた1審原告らが、福島第一原発を設置・運営していた1審被告(東京電力ホールディングス)に対し、平成23年3月11日に発生した東日本大震災により福島第1原発の事故によって、居住用不動産及び家財に係る財産的損害を被るとともに、避難生活を余儀なくされ、また、地域社会が喪失・変容したことによって精神的損害を被ったと主張し、主位的に民法709条に基づき、予備的に原子力損害の賠償に関する法律3条1項に基づき、各1審原告に係る別紙6「原告基本情報等」「第3表」の「総計」・「原告主張額」欄記載の各金員及びこれらに対する遅延損害金の支払を求め、原告らの原賠法3条1項に基づく予備的請求について、一部認容したため、これに不服の双方が控訴した事案で、1審判決は古里喪失と避難を総合評価して慰謝料を算定したが、控訴審判決は古里喪失の慰謝料を明確に認めた上、避難の発生、継続に関する慰謝料と合わせて計算し、原判決の認容額を増加した内容で一部変更した事例。
2020.05.19
監護者性交等被告事件
(令和1年7月18日福岡地方裁判所判決(平成30年(わ)第716号)の控訴審)
LEX/DB25565259/福岡高等裁判所 令和 2年 3月11日 判決 (控訴審)/令和1年(う)第282号
被告人は、養女である被害者A(当時14歳)と同居してその寝食の世話をし、その指導・監督をするなどして、同人を現に監護する者であるが、同人が18歳未満の者であることを知りながら、平成30年1月中旬頃から同年2月12日までの間に、被告人方(当時)で、被害者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交をしたとして、懲役9年を求刑されたが、原判決は、被告人を無罪としたため、検察官が控訴した事案で、原審は、被害者の原審供述の補充立証として、被害者が母親に被害を告白してから児童相談所へ行って被害の具体的内容を詳細に申告した経緯等について、検察官に立証を促し、必要に応じて職権で証拠調べをし、場合によっては、さらに、性的虐待を受けた児童の供述特性等に関する専門家証人について、検察官に立証を促し、必要に応じて職権で証拠調べをするなど審理を尽くした上で、関係証拠を総合して被害者の原審供述の信用性を吟味すべきであったとして、原判決を破棄し、更に原審において審理を尽くさせ、改めて本件公訴事実の有無を判断させるため、本件を地方裁判所に差し戻した事例。
2020.05.19
監護者性交等被告事件
(令和2年3月11日福岡高等裁判所判決(令和1年(う)第282号)の原審)
LEX/DB25565178/福岡地方裁判所 令和 1年 7月18日 判決 (第一審)/平成30年(わ)第716号
被告人は、養女であるA(当時14歳)と同居してその寝食の世話をし、その指導・監督をするなどして、同人を現に監護する者であるが、同人が18歳未満の者であることを知りながら、被告人方において、Aを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交をしたとして、監護者性交等の罪で懲役9年を求刑された事案で、A証言は、本件公訴事実に係るものを除く性交被害に関し、にわかに信用し難い内容を含むうえ、本件性交被害自体についても、その信用性に疑いを抱かせる内容が含まれ、被告人に不利益な虚偽供述の動機も否定し難いことから、これを根拠として本件公訴事実を認定できるだけの信用性を備えるものとまで評価することはできず、また、その他の証拠を検討しても、被告人が本件公訴事実の期間内にAと性交をしたことを認めるに足りる証拠は見当たらないから、本件公訴事実については、合理的な疑いを超えた証明がされたとはいえないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2020.05.12
雇用契約上の地位確認等請求事件
LEX/DB25570794/福岡地方裁判所 令和 2年 3月17日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第1904号
原告が、原被告間で、昭和63年4月から、1年毎の有期雇用契約を締結し、これを29回にわたって更新、継続してきたところ、本件有期雇用契約は、労働契約法19条1号又は2号に該当し、被告が原告に対し、平成30年3月31日の雇用期間満了をもって雇止めしたことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、従前の有期雇用契約が更新によって継続している旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、賃金等の支払を求めた事案において、原告が本件雇用契約の契約期間が満了する日までの間に更新の申込みをしたのに対し、被告が、当該申込みを拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことから、被告は従前の有期雇用契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされるとして、原告の請求を一部認容した事例。
2020.05.12
損害賠償請求事件(元社長に賠償命令、東京地裁 偽メール信じ3億円損害)
LEX/DB25565139/東京地方裁判所 令和 2年 1月30日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第13489号
著名な高級ファッションブランドを展開する企業の日本法人である原告が、その代表取締役の地位に在った被告が善管注意義務に違反して任務を懈怠し、当該企業の幹部を名乗る人物から送信された偽の電子メールに基づいて部下に指示をして合計280万米ドルを送金させたため、同額の損害を被った旨を主張して、被告に対し、会社法423条1項(平成17年法律第86号)の規定に基づく損害賠償請求として当該280万米ドルを当該送金の時における為替相場によって邦貨に換算した額及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、被告は、原告に対し、被告の善管注意義務違反を内容とする任務の懈怠が認められる本件送金によって生じた原告の損害を賠償すべき責任があることになり、本件送金によって銀行の原告の預金口座から280万米ドルが現実に送金されたのであるから、原告には、同額(3億0727万円)の損害が生じたものと認め、原告の請求を一部認容した事例。
2020.05.07
損害賠償請求控訴事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 6月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25565230/東京高等裁判所 令和 2年 2月27日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第4448号
鉄骨造2階建ての本件建物を使用し又はこれに居住していた1審原告らが、本件建物の2階ベランダに設置されていた1審被告の製造に係る家庭用ルームエアコンの室外機がその欠陥に起因して発火し、本件建物に延焼して2階部分の大半が焼損した(本件火災)、本件建物内にあった什器備品等の動産も焼損し又は消火活動によって水損したと主張して、1審被告に対し、製造物責任法3条に基づき、本件火災によって被った財産的損害及び精神的損害に係る賠償金の支払等を求め、これに対し、1審被告は、上記の室外機は本件火災の発火源ではなく、同室外機に製造物責任法2条2項所定の欠陥があったとはいえないなどと主張して、1審原告らの請求を争い、原審は、ルームエアコンの室外機が本件火災の発火源であると認められ、これは1審被告の製品である同室外機の欠陥によるものであるとして、製造物責任法3条に基づき、1審原告らの請求を原判決主文第1項ないし第6項の限度で認容したところ、1審被告がその敗訴部分を、1審原告らがその敗訴部分の各一部をそれぞれ不服として双方が控訴した事案で、1審原告への賠償額について原判決を一部変更した事例。
2020.05.07
賃金支払請求事件
LEX/DB25565229/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 3月30日 判決 (上告審)/令和1年(受)第1922号
被上告人らのいずれかに雇用され、タクシー乗務員として勤務していた上告人らが、歩合給の計算に当たり売上高(揚高)等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨を定める被上告人らの各賃金規則上の定めが無効であり、被上告人らは、控除された残業手当等に相当する金額の賃金の支払義務を負うなどと主張して、被上告人らに対し、未払賃金等の支払を求めた事案(揚高が同じであれば、時間外労働等の有無やその時間数の多寡にかかわらず、原則として総賃金の額は同じとなることから、定めの効力や、残業手当等の支払により労働基準法37条の定める割増賃金が支払われたといえるか否かが争われている。)で、原審は、上告人らの請求をいずれも棄却したため、上告人らが上告した事案で、割増金及び歩合給を求めるための対象額から控除された割増金は、割増賃金に当たらず、通常の労働時間の賃金に当たるものとして、労働基準法37条等に定められた方法により上告人らに支払われるべき割増賃金の額を算定すべきであるとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決を破棄し、被上告人らが上告人らに対して支払うべき未払賃金の額等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2020.04.28
殺人被告事件(人工呼吸器外し事件再審無罪判決)
LEX/DB25565177/大津地方裁判所 令和 2年 3月31日 判決 (再審請求審)/平成24年(た)第3号
被告人は、医療法人社団a病院で看護助手として勤務していたものであるが、同病院看護師らの自己に対する処遇等に憤まんを募らせていたところ、そのうっ積した気持ちを晴らすため同病院の入院患者を殺害しようと企て、平成15年5月22日午前4時過ぎころ、同病院の病室で、慢性呼吸不全等による重篤な症状で入院加療中の患者(当時72歳)に対し、殺意をもって、同人に装着された人工呼吸器の呼吸回路中にあるL字管からこれに接続するフレックスチューブを引き抜いて同人工呼吸器からの同人への酸素供給を遮断し、同人を呼吸停止の状態に陥らせ、同人を急性低酸素状態により死亡させて殺害した。」という公訴事実の本件殺人事件の再審において、被告人の自白供述以外の証拠によっては、そもそも事件性を認めるに足りず、むしろ、患者が致死性不整脈その他の原因により、死亡した具体的な可能性があることが認められ、本件呼吸器の管を外して患者を殺害した旨の本件自白供述は、いずれも「任意にされたものでない疑」があるものとして証拠排除した以上、本件公訴事実については、被告人の犯人性以前の問題として、そもそも、患者が何者かによって殺害されたという事件性すら証明されておらず、犯罪の証明がないことに帰するとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2020.04.28
損害賠償請求事件(甲事件、乙事件)
LEX/DB25565176/東京地方裁判所 令和 2年 3月13日 判決 (第一審)/平成31年(ワ)第205号 等
被告らを雇用していた原告会社が、雇用契約期間中に被告らが業務専念義務、機密保持義務及び競業避止義務に違反して全国情報ネットワーク協同組合の指示により原告会社が管理する保険関係資料等を持ち出したとして、主位的には債務不履行に基づく損害賠償請求として、予備的には不法行為に基づく損害賠償請求として、被告Bにつき損害合計4661万円のうち200万円、被告Cにつき損害合計4656万円のうち150万円の支払等を求めた事案において、原告会社は、本件業務委託契約に基づいて書類等を管理占有していたにすぎないから、同契約が終了した以上、同書類等を使用収益する権原を失い、その返却義務を負うにすぎないから、これらの書類等の使用収益を妨げられたとしても、そのことによって損害が生じるものとは認められないとして、原告会社の請求を棄却した事例。
2020.04.21
不法行為による損害賠償請求事件
LEX/DB25570868/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 4月 7日 判決 (上告審)/平成31年(受)第606号
被上告人は、上告人らに対して本件建物部分の明渡しを命ずる仮執行の宣言を付した判決に基づく強制執行について、民事執行法42条1項に規定する強制執行の費用で必要なものに当たる合計161万3244円の本件執行費用を支出した。本件は、被上告人が、本件執行費用を上告人らによる本件建物部分の占有に係る共同不法行為による損害として主張して、上告人らに対し、不法行為に基づき、本件執行費用及び弁護士費用相当額並びに遅延損害金の連帯支払等を求め、原審は、被上告人の上記の主張に理由があると判断し、上記連帯支払を求める請求を認容したため、上告人が上告した事案で、本件執行費用は、民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目の費用に該当するから、上告人らに対する不法行為に基づく損害賠償請求においてこれを損害とする被上告人の主張は許されず、当該主張に理由があるとした原審の判断には明らかな法令の違反があるとし、原判決中、上告人ら敗訴部分のうち、上告人らに対し本件執行費用及びこの請求に係る弁護士費用相当額並びにこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める請求に関する部分を破棄し、上記部分に関する被上告人の請求は、本件執行費用及び弁護士費用相当額の連帯支払を求める請求に関する部分については,第1審判決を取消し、被上告人の請求をいずれも棄却し、原審における追加請求である本件執行費用及び弁護士費用相当額に対する遅延損害金の連帯支払を求める請求に関する部分については、被上告人の請求をいずれも棄却した事例(補足意見がある)。
2020.04.21
賃金請求事件
LEX/DB25570841/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 3月30日 判決 (差戻上告審)/平成30年(受)第908号
被上告人に雇用され、タクシー乗務員として勤務していた上告人らが、歩合給の計算に当たり売上高(揚高)等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨を定める被上告人の賃金規則上の定めが無効であり、被上告人は、控除された残業手当等に相当する金額の賃金の支払義務を負うなどと主張して、被上告人に対し、未払賃金等の支払を求めた事案の第2次上告審において、割増金及び歩合給を求めるための対象額から控除された割増金は、割増賃金に当たらず、通常の労働時間の賃金に当たるものとして、労働基準法37条等に定められた方法により上告人らに支払われるべき割増賃金の額を算定すべきであるとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして原判決を破棄し、被上告人が上告人らに対して支払うべき未払賃金の額等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2020.04.21
仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25565004/大阪高等裁判所 令和 2年 3月 4日 決定 (抗告審)/令和2年(ラ)第80号
抗告人(債権者)が、相手方(債務者)の管理・運営するウェブサイト上に投稿された記事により債権者の人格権(名誉権)が侵害されていると主張して、相手方に対し、人格権(名誉権)に基づき、上記記事の削除を求める仮処分命令申立てをしたところ、原審は、本件記事の削除請求を基礎付ける被保全権利の存在について疎明があるとはいえないとしたため、抗告人が即時抗告した事案において、本件仮処分命令申立てを却下した原決定は相当であるとし、本件抗告を棄却した事例。
2020.04.14
文書提出命令に対する許可抗告事件
LEX/DB25570835/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 3月24日 決定 (許可抗告審)/令和1年(許)第12号
本件の本案訴訟(相手方が、JR北海道の開設する病院の看護師の過失により相手方の父であるAが転倒して頭部を床面に強打したために死亡したなどと主張して、同社に対し、使用者責任に基づく損害賠償を求めたもの)で、本件は、相手方が、上記の転倒によりAが死亡したこと等を立証するために必要であるとして、Aの死体について司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定のために必要な処分として裁判官の許可を受けてした解剖に関して作成した鑑定書等及び上記解剖に関して上記の者が受領した鑑定嘱託書その他外部の関係先から受領した資料並びにこれらの写し(電磁的記録媒体に記録される形式で保管されているものを含む。)であって抗告人が所持するもの(本件文書等)について、抗告人に民事訴訟法220条2号又は4号に基づく提出義務があると主張して、文書提出命令の申立てをし、原審は本件文書等について抗告人に民事訴訟法220条4号に基づく提出義務があるとし、本件文書等の提出を命じたため、抗告人が抗告した事案で、検察官、検察事務官又は司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定に関して作成し若しくは受領した文書等又はその写しは、刑事事件関係書類に該当すると解するのが相当であるとし、以上と異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原決定を破棄し、本件文書等について民訴法220条2号に基づく提出義務の存否を審理させるため、本件を原審に差し戻すこととした事例(補足意見がある)。