導入事例 CASE STUDY
滋賀県森林組合 様

左から中村栄一本所総務部長、川井尚子税理士、家森茂樹組合長、上杉恵一顧問税理士、堀学巳本所総務部会計処理推進室長、
長坂博史本所加工販売事業部長
統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例
収支をタイムリーに把握し
「永続する組織」を目指す
県下の森林組合の合併を経て発足した滋賀県森林組合は、組合員数、組合員が所有する森林面積で全国有数の規模を誇る。複数拠点で利用できるクラウド型の会計システムにより、経理業務を統一化。「独自の分析資料を柔軟に設計でき、毎月の収支を確認しやすくなった」と家森(やもり)茂樹組合長は語る。
森林の機能を守るべく主伐、再造林に注力

──6月に設立して丸1年を迎えられたそうですね。
家森 滋賀県下にある8つの森林組合のうち、6つの組合(滋賀南部、滋賀中央、東近江市永源寺、びわこ東部、滋賀北部、長浜市伊香)が合併し、発足しました。本所を含め県内7カ所の事業所に、110名の職員が在籍しています。
──森林組合として全国有数の規模と聞いています。
家森 組合員数は1万9,207名(2024年6月3日時点)で全国2位、組合員の所有する森林面積は10万7,578ヘクタールにのぼり全国1位です。合併前には、資金繰りが厳しく、赤字決算に陥っていた組合もありました。森林経営管理制度において、所有者が不明の森林について、市町村が公的に管理することが定められています。市町村が管理を委託する先の大半は、各地の森林組合です。そのため、われわれも組織として存続していかなければなりません。今回の合併が組織運営の安定化に寄与するものと期待しています。
──業務内容を教えてください。
家森 中核は森林整備事業です。森林に求められる大切な機能として、二酸化炭素(CO2)の吸収があります。ただ、一般的に樹齢が50年をこえると、CO2吸収量と排出量は同等レベルになるので、樹木を定期的に植えかえる必要があります。
滋賀県内では、樹齢50年超の樹木が半数超を占めます。従来の間伐主体の業務から、成熟した木を伐採して資源として活用する「主伐」と、伐採後に植林する「再造林」業務へ転換を図っているところです。
──植林する木の種類は?
堀 スギとヒノキが多いですね。ヒノキはかつて日本建築に欠かせない木材として重宝されてきましたが、建売住宅が増え、需要は徐々に減少しています。
──複数の事業部を置かれています。
堀 森林整備事業部では、組合の使命である森林整備、搬出間伐を担っています。樹木の間伐に際して、森林の所有者を調べたり、伐採許可等の手続きを行ったりする「プランニング業務」が主です。伐採、搬出に関しては、職員が直接行う現場と、外部の業者に委託する現場があります。搬出量は増加傾向にあり、搬出木材をできるだけ単価の高い取引先へ販売することで、森林所有者さまへの利益還元に努めています。
長坂 加工販売事業部は県内3カ所の工場で、伐採した丸太を用いた製品を製造、販売しています。具体的には、「びわ湖材」を原料とする学校向け教材、木工品等の生産、あずまやなどの建設を請け負っています。びわ湖材とは、滋賀県内の森林で伐採した原木による製材品です。こうした活動を通して、森林所有者さまに還元を図っています。
──IT技術を積極的に活用されているとか。
中村 森林所有者さまの高齢化にともない、境界が不明確な森林が増加し、深刻な問題になっています。森林の境界明確化事業で、ドローンで撮影した写真を地図アプリ上に重ね合わせるなどして、境界の確定に役立てています。
「クラウド」への一本化で経理業務の効率化を実現

びわ湖材を使用した木工品
──顧問税理士の上杉先生とは、長年お付き合いされていると聞きました。
家森 滋賀県下の森林組合はこれまで合併を繰り返しており、上杉先生には前身の組合のころからお世話になっています。
上杉 40年超のお付き合いです。今回、6つの森林組合が合併を計画しているとうかがったとき、これは大変なことになると直感しました。経理方法が組合ごとに異なるのに加え、滋賀県内に点在する拠点間の移動に時間を要すると見込んだためです。一方で、『FX4クラウド』を活用すれば、これらの課題を一挙に解決できると考えました。それで新組合の発足に合わせて『FX4クラウド』の活用を提案するよう、担当の川井税理士に所長命令を出したわけです。
川井 もともと旧滋賀中央森林組合さまで『FX4クラウド』を3年間ほど利用されていました。滋賀県森林組合さまでの利用を決断いただいた背景として、経理業務の省力化など、クラウド型システムならではのメリットを評価されていた点が大きかったです。
──具体的には?
堀 TKCシステムを利用する前は会計ソフトが組合ごとにバラバラで、VPNでデータをやり取りしていました。ちょうど従来使用していたソフトの更新が近づいていた時期に、川井先生から『FX4クラウド』という便利な会計システムがあるよと。データを切り出して加工できたり、他のTKCシステムと仕訳連携できたりするところが便利ですね。
──他のTKCシステムとは……。
堀 旧滋賀中央森林組合では合併前から『SX4クラウド(戦略販売・購買情報システム)』を利用して、木工品の販売に関わる請求データを入力していました。売り上げや仕入れ等の仕訳を『FX4クラウド』に連動できるので、同じ仕訳を二度入力する必要がなくなり、業務が効率化されました。
──『FX4クラウド』を利用している事業所は?
堀 現在は6カ所の拠点でシステムを運用しています。従来の会計ソフトを前期末まで併用し、今期から『FX4クラウド』に一本化したところです。
──システムの切り替えはスムーズに行えましたか。
中村 合併前に籍を置いていた組合では、森林組合向けのソフトを利用していました。移行後、上杉会計さんに勉強会などでサポートいただいたおかげで、操作方法を早期にマスターできました。
独自の業績分析シートで月次の収支額をつかむ
──運営状況の確認に独自の資料を活用されているそうですね。
堀 「マネジメントレポート(MR)設計ツール」を用いて、損益計算書シートを毎月作成しています。販売品売上や森林整備収入等の勘定科目を設定し、年度計画額と比べてどの程度進捗しているか、科目別に支出率もしくは利益率がわかるようになっています。月単位で発生した費用および収益を、事業所別にひと目で把握できるのが便利です。
損益計算書シートは毎月開催している所長会議でも分析資料として配布しています。会議資料作成に要する労力は、「MR設計ツール」を活用して以降格段に減りました。
──その他、システム移行で変わった点は?
中村 クラウド型のシステムですから、他の事業所の状況がわかるし、特定の担当者しかシステムを起動できないといった状況がなくなりました。いわゆる属人化した業務が減り、内部けん制にも役立っています。
──月次巡回監査ではどんな点に留意されていますか。
川井 事業所ごとにカンパニー制を採用されているため、各事業所の監査を迅速に行うことを心がけています。あわせて、会計処理が統一されているかも入念に確認しています。
──抱負をお聞かせください。
家森 職員の平均年齢が45歳となっており、新たな人材の確保が目下の課題です。人手不足をカバーする意味でも、合併によるスケールメリットを生かしながら、若手職員の教育に注力していきたいと考えています。TKCシステムの運用が軌道に乗り業務効率がより高まれば、会計担当のスタッフにプランニング部門に回ってもらうといった施策も考えられるでしょう。これからも「森林よし、組合員よし、組織よし」をモットーに、主伐、再造林を推進し、地域に貢献していきます。
企業情報

甲賀市にある土山支所・工場
滋賀県森林組合
- 設立
- 2024年6月
- 所在地
- 滋賀県大津市大萱4-17-30
- 職員数
- 110名
- URL
- https://shiga-forest.jp
顧問税理士 上杉恵一
税理士法人上杉会計事務所
- 所在地
- 滋賀県甲賀市水口町北秋葉203
- URL
- https://uesugi-kaikei.com
(『戦略経営者』2025年9月号より転載)