経営・労務・法務

TKC全国会 医業・会計システム研究会 創設10周年記念大会 基調講演

医療・介護の連携と真の「地域包括ケア」 今後の医療機関の果たす役割とは

厚生労働省老健局介護保険指導室長 千田 透

 TKC全国会医業・会計システム研究会(医会研)は平成24年10月2日、「創設10周年記念大会」を開催した(場所:ホテルグランドパレス)。その模様を2回にわたり連載する。今号では、「医療・介護の連携と真の『地域包括ケア』~今後の医療機関の果たす役割とは~」をテーマとした厚生労働省老健局介護保険指導室長の千田透氏による基調講演の要旨を紹介する。

人口減少社会のなかでいかに体制をつくるか

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厚生労働省老健局介護保険指導室長 千田 透

 本日は、「真の地域包括ケア」をテーマとさせていただきました。何が“真”の地域包括ケアなのかは、地域によって概念が異なります。国がナショナルスタンダード化したからといって、同じシステムを地域でつくっても機能しません。各地域の特性に合わせて構築していかなければならないのです。

 そのなかで、まず前提として認識していただきたいのが、日本の人口の将来推計です。2007年の75歳以上の人口は約1,200万人ですが、30年には約2,200万人になると予測され、約1,000万人の増加です。この75歳以上は医療・介護保険のリスクが高く、要介護認定を受ける方の数は、74歳以下と比べて約6倍に跳ね上がります。

 他方、生産年齢人口は、約8,300万人から30年には約6,700万人まで減少すると見込まれています。14歳以下の人口にも着目してほしいのですが、約1,700万人から約1,100万人に減ってしまう。今、出生率は約1.4人で、少しずつ伸びているといわれていますが、まったく楽観視はできません。

 日本の高齢化、少子化の問題が想像以上に深刻化するなかで持続可能な社会保障制度をつくらなければなりません。実際、社会保障費で注目すべきは、1990年から2005年で、国民所得額は348兆円から367兆円と19兆円しか伸びていませんが、給付費総額は約47兆円から約87兆円まで増大しているのです。これを人口減少社会のなかでいかに賄っていくかが、これからの論点となります。

様々な視点からの施策とともに保険者機能の強化が必要

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 今後の社会保障制度の展望と今後の視点についてですが、1つは、働き方の改革や子育て支援などの「少子化への対応」です。2つ目は「高齢化への対応」。医療や介護を必要としない高齢者をいかに増やすか、これは予防の観点です。また、年金に依存しない高齢者をいかに生み出すかという観点も必要です。そして、3つ目は「人口減少への対応」です。若者や女性、高齢者の就労支援。同時に海外からの労働力の活用も必要です。

 「社会保障・税一体改革」でも、医療・介護だけでなく、高齢化・少子化対策、雇用基盤の変化、家族形態・地域の変化などにも対応する方向です。バックグラウンドの変化に対応しなければ、社会保障制度の永続は困難だからです。

 一体改革のポイントとしては、機能の充実と給付の重点化・効率化を同時に実施、消費税の充当先を年金・医療・介護・子育ての4分野に拡大、そして、消費税率の段階的引き上げによる財源確保などがあげられます。

 消費税の5%引き上げ分については、使い道が決まっています。社会保障制度の機能強化に3%相当(約3.8兆円)を、あとは将来世代の負担を減らすために1%相当、社会保障への国・地方の消費税負担増のために1%相当という内訳です。制度の機能強化に約3.8兆円分を充てるわけですが、同時に約1.2兆円分の効率化も進めます。医療・介護の関係でいうと、病院・病床機能の分化・強化と連携、在宅医療の充実などに財源が充てられる一方で、平均在院日数の縮減や外来機能の適正化で効率化を図る計画です。

 また、充実する項目に保険者機能の強化があげられています。つまり、政策的に医療・介護を充実させても、今の保険者では効果があがらないということです。

各々の機能強化と連携が効果的なシステムをつくる

 医療・介護機能の再編の方向性についてですが、一般病床では機能分化・強化が進められ、高度急性期、一般急性期、亜急性期とわけていく方向です。そして、それ以外の入院医療については今後、介護や在宅医療が役割を担うことを想定しています。

 ただ、急性期病院や施設からいきなり在宅に移行するのは難しい。そこで重要になるのが連携で、包括的なマネジメントを行う在宅医療連携拠点や地域包括支援センター、ケアマネジャーがカギを握ります。在宅医療連携拠点となる在支診・在支病は現在1万3,000件ほどありますが、機能しているのはわずかなので、その機能強化が必要です。また、ケアマネの役割も重要で、ケアマネが制度やそれぞれの機能を理解していなければ、スムーズな連携はできません。その育成も課題です。

 いずれにしても保険者、地域包括支援センター、ケアマネが機能しなければ、病院、施設から在宅には移行できません。医会研会員の皆様には、コンサルタント機能を発揮し、その強化への働きかけをお願いしたいと思います。

保健・医療・福祉は生活の質確保のサブシステム

 今後の医療と地域連携の必然性については、50年には65歳以上の高齢者率が人口の40%を超えると予測されているわけですから、必然的に65歳以降の人生に重点を置くライフモデルの展開が普遍化していきます。医療も単一疾患・治療から、複数疾患の継続治療・予後管理にシフトせざるを得ませんし、人生を支えるための治療やコミュニティでのケアが重要視されます。つまり、「生活の質」を考えると、あらゆる職種が連携するしかないのです。そう考えると、専門職の連携は“連携”に留まらず、統合・融合も視野に入れていかなければなりません。 ここからは個人的な見解ですが、今後の保健・医療・福祉は、生活の質の確保と継続のための“サブシステム”と認識することが必要です。それぞれの事業活動モデルは、地域住民の生活を基本に考えていかなければなりませんし、それぞれの専門職には、地域社会の一員として「市民生活を支える」という自覚が求められます。そうしなければ多職種連携も、包括的なケアも実現できません。

 これからの地域医療・介護機能は、生活の質を追求していくことが大切なのです。そして、医療、介護だけでなく、低所得者や孤立世帯の支援、住まいの提供など複合的な視点が重要になるのです。

 地域包括ケアの構築では、住まいやインフォーマルサービスを医療・介護・福祉とトータル的にコーディネートすることが重要です。その役割を担う保険者、地域包括支援センター機能を強化し、地域医療連携拠点や在支診、介護事業者、ケアマネなどをマネジメントしていく。こうしたシステムを構築することが、今後の社会の要請だと考えています。

Toru Chida 厚生労働省老健局介護保険指導室長
1982年、厚生省入省。国立身障リハセンターケースワーカー、内閣官房障害者施策推進本部参事官補佐、厚生労働省老健局介護報酬専門官、社会・援護局地域福祉課長補佐、福岡県保健福祉部監査保護課長などを経て、現職。「このまちでともに暮らそう」(筒井書房)、「高齢者介護と地域福祉の将来展望」(生協総合研究所)など著書多数。

 

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