TKC法律事務所実務セミナー2016 刑事弁護の実務を「基本と最新技術」から学びます 開催のご報告

 平成28年2月16日(火)、3月4日(金)の計2回、趙誠峰先生(早稲田リーガルコモンズ法律事務所)を講師にお招きし、「TKC法律事務所実務セミナー2016」を開催しました。趙先生は多くの刑事事件、裁判員裁判を担当されており、東京法廷技術アカデミー(TATA)でインストラクターも務められている、現場の第一線でご活躍の弁護士です。
 好評いただいた昨年に引き続き、今回は「接見」と「主尋問」をテーマに刑事事件を担当する弁護士に必要な心構えや技術・技法を、受講者の参加を交えた実演とともにご講演いただきました。

接見の技法 ~初回接見のポイントと取調べへの方針選択~

早稲田リ―ガルコモンズ法律事務所 趙誠峰 弁護士

 初回接見では、①依頼人との信頼関係を築くこと②事件の全体像を把握すること③取調べへの方針を定めることが必要です。

 まず、依頼人との信頼関係を築くために重要なのが、初回接見時に①“普通に”挨拶をして“普通に”礼儀を守ること、②弁護人の役割を理解してもらうこと、③秘密を守ることをきちんと伝えることです。その際、依頼人は非常に不安な状態ですので、弁護人は「誰がなんと言おうと、私はあなたの味方です」という姿勢を伝えて依頼人を安心させてください。これは刑事弁護をやる上で一番重要なこととなります。弁護人は“判断者”であってはならず、徹底的に偏った存在でなければなりません。

 そして事件の全体像を把握するために、依頼人の話はオープンに聞きましょう。重要な事実が予想外のところに隠れていることもあるので、勾留状の被疑事実にとらわれず依頼人の話に最後まで耳を傾けて、事件の全体像を物語で把握してください。

 また、取調べへの方針を定めるために、取調べ経過の事情聴取はクローズ(具体的)に聞きましょう。弁護人は逮捕から勾留されるまでの刑事手続がどう進むのかを理解していますので、場面を特定して具体的に確認してください。取調べへの方針選択に際しては、「供述する」=「相手に証拠を与える」という発想を持つことが重要です。このあとの手続きにおいて「依頼人のために有利になる方法」を考えて、取り調べへの方針を依頼人に明確に伝えなくてはなりません

尋問の技術 ~良い主尋問のために~

実演の様子

 主尋問では、「事実認定者に法廷で理解してもらう」という心構えが一番重要です。

 法壇上の人々にとってはその場で聞く話が全てですので、法廷では尋問者が聞きたいことを聞くのではなく、事実認定者に「どう聞こえているのか」を常に意識して尋問してください。

 裁判官が聞きたいのは”証人が語る”物語であり、弁護人の語る物語は望んでいません。そのためには誘導をせずに物語の主役である証人に語ってもらうことが重要です。

 そして、事実認定者が証人の言葉だけから物語の場面を想像できるように、①情景を思い浮かべられるような舞台設定をすること、②一度始めた動作は途中で途切れないように尋問を進めること、が大切です。また、尋問者が聞き忘れたことを後から聞き返すようなことは避け、印象付けたいフレーズの繰り返し(ループクエスチョン)や、重要な場面は行動の「理由」やその時の「感情」を織り交ぜて尋問をすることで、物語をより豊かに伝えることができます。

 事実認定者は、公判で初めて証人の語る物語を聞きます。それは初回接見の弁護人と同じ立場です。初回接見時の意識で主尋問が出来たとき、事実認定者が「聞きたい」と思うような理想的な主尋問が生まれるでしょう。

参加者の声

  • 接見・尋問の基本的な講義を受けられ、すぐに実務に活かせる内容でした。
  • 尋問時に第三者である裁判官や裁判員が全く事情を知らないことを前提として、場面設定と動作をしっかりと意識する、という点を特に参考にしたいと思います。
  • 具体的な実演を交えながら講演いただいたので、自分の接見や尋問のどこが良くてどこが悪かったか理解できるようになりました。
  • 接見については詳しく取り上げたセミナー等がなかったのでとても参考になりました。
  • 尋問の際の視点についても新たな発見がありました。特に弁護士が被疑者被告人の言いたいことを先にまとめてしまう危険性について認識しました。
【サブテキスト】「刑事弁護ビギナーズ2」(現代人文社刊・定価3,000円/税別)

【サブテキスト】
「刑事弁護ビギナーズ2」
(現代人文社刊・定価3,000円/税別)