TKC法律事務所実務セミナー2016 ケースに学ぶ税務判例の実務への活かし方 開催のご報告

 平成28年11月15日(火)、木山泰嗣教授(青山学院大学法学部)を講師にお招きし、「税務判例」をテーマとして、2016年第7弾となる「TKC法律事務所実務セミナー2016」を開催しました。木山先生はこれまで弁護士として税務訴訟に携わってこられて、現在では税法研究者としてご活躍されています。当日は、税務訴訟の重要事例をケースとして木山先生のご経験を踏まえ、税務問題にどのように弁護士が取り組むべきかについてご講演をいただきました。

税務の特殊性を理解する

青山学院大学法学部 木山 泰嗣 先生

 私は弁護士になって最初に担当した「ストックオプション事件」をきっかけに税法を初めて勉強しましたが、そこで最初に感じた違和感は「自分がこれまで勉強してきた法解釈とは全く異なる世界だ」ということです。
 税務判例は、①法解釈を争うものが多い②先例がない法律問題が多いので、日々新たな先例が作られている③法令等の定めが本法だけでなく施行令や通達の規定まで見なければならず、複雑である④判例の射程を争うものが多い⑤憲法84条に定められている「租税法律主義」との関係で解釈論が問われているという5つの特徴を持っています。
 弁護士の皆さんは、普段法解釈よりも事実認定を意識されるかと思いますが、税務判例では常に憲法84条「租税法律主義」との関係で法解釈が問われます。この憲法84条「租税法律主義」は①納税者に対する課税の予測可能性を保証し、②法的安全性を確保すべきという2つの趣旨があり、税法の解釈は厳格解釈が原則であるとされています。ここでいう厳格解釈とは文理解釈を意味し、文理解釈以外は認めらないと考えられているため、原則の度合が極めて強いです。なぜなら、文言通りに読み取れない内容で課税した場合、納税者の利益が守られず、「租税法律主義」に違反するからです。これこそ、税法解釈において独特で特殊な考え方であり、弁護士の皆さんにも知っておいて欲しい考え方です。参考として「武富士事件」の最高裁判決で須藤裁判官の補足意見が大変興味深いものですので、法廷意見ではありませんが、ぜひ一度読んでみて下さい。

「誰と誰の間の法律関係」で「誰の課税が問題になるのか」

法人なのか、個人なのかが変わるだけで
適用される税法や条文が異なるため、正確な理解が必要になります。

税務判例を読む際の注意点

「税務判例を読もう!」(ぎょうせい刊・定価2,000円/税別)

【サブテキスト】
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 税務判例を読む際は、①税法解釈の特殊性を意識する②価値判断の重きがどこに置かれているのかを見る③法令等の定めを1つ1つ丁寧に読む誰との誰との間の法律関係で、誰の課税が問題となっているのかを正確に捉える⑤通達の取扱いに気をつけることに注意してください。

 税法の場合は、法令等の定めを沢山読まなければなりませんが、実務では通達の規定が相当大きな力を持っています。ここで問題となるのは、裁判所に持ち込まれた場合の「通達の取扱い」です。憲法84条では、「租税法律主義」との関係で、「納税義務の成立要件である課税要件は法律で定めなければならない」とされています。そこで、この条件に当てはめてみると国税庁長官が発遣している通達は該当せず、課税要件の根拠になり得ません

 税務判例を読む、あるいは実務的に税務の案件を取扱う際に、税理士等と相談して進めていくと税理士は通達の規定等を持ち出してくると思います。しかし、通達の規定には法源性の規定は全く存在しません。法律の規定、もしくは憲法84条「法律の定める条件」には法律の委任のある施行令が該当します。そこで、弁護士の皆さんは、「税務署もしくは国税局の見解は、法律の規定や法律の委任のある施行令等から読み取れるか」という視点で考える必要があります。ただし、相続税の場合のみ、相続税22条の時価評価に関する規定で、「通達の規定に合理性があると判断された時に通達の計算を採用する」という考えが構築されている特殊な事例もありますので、「通達の取扱い」は十分注意しながら1つ1つ丁寧に読み進めるようにしてください。

参加者の声

  • 税務判例を読むに当たり、ポイントとなる視点をわかりやすく示していただいた。今後は自分で読むに当たり、足掛かりになると思う。
  • 税法の解釈の指針を教示いただき大変参考になりました。
  • 租税法律主義等、通常の民事訴訟との違いがよく理解できた。信義則のことも勉強になった。
  • 実際に訴訟となる際の請求の趣旨や「正当理由」の主張、立証責任の問題など大変参考になりました。
  • ポイントを絞ってわかりやすく講義して頂いたので、今後、自分で勉強を進めていくときのよい指針となりました。