TKC法務実務セミナー2017 事例から学ぶIT法務入門 ~今更聞けない、知ったかぶりで失敗しない法~ 開催のご報告

 平成29年11月10日(金)、影島広泰弁護士(牛島総合法律事務所)を講師にお招きし、「IT法務」をテーマとして、「TKC法務実務セミナー2017」を開催しました。影島先生はこれまで弁護士として多くのIT法務案件に携わってこられた他、約30万ダウンロードのiPhone/iPadアプリ「e六法」を開発されるなど、多岐にわたり活動されていらっしゃいます。当日は、事例から理解しておくべきIT用語の意味・内容、法令・判例などから実務ではどのような判断がされているのか、直面する問題にどのように対処するのかについて、影島先生のご経験を踏まえご講演をいただきました。白熱したご講演の内容の一部をお伝えします。

投稿削除と発信者情報開示

牛島総合法律事務所 影島 広泰 弁護士

 顧問先が匿名掲示板で誹謗中傷を受けた場合、投稿者の特定や投稿削除の請求をするよう求められることがあります。

 投稿削除を請求する場合には、まずプロバイダに対する任意の削除請求をするのが通常です。プロバイダはプロバイダ責任制限法により、「送信防止措置が技術的に可能かつ、権利侵害を知っている又は知ることができる」場合のみ損害賠償責任を負うので、プロバイダへ「送信防止措置」を任意で要求し、「権利侵害を知っている」状況を作り出す必要があります。なお、その際にプロバイダへ送付した文書は、発信者本人へ照会する可能性があるという前提で作成しなければならない、ということは実務的に極めて重要なポイントです。
 また、サイト運営者に対して削除を求める裁判を提起することもできますが、一般不法行為では差止請求が認められないので工夫が必要です。なお、外国の法人に対する削除請求は送達が必要なため、翻訳が必要となることや時間とコストもかかる点から、泣き寝入りする事業者も多いのが実情です。ただ、サイト運営者に対する投稿削除の仮処分は投稿者本人に連絡がいかないため、初めから地裁に仮処分の申立をしたほうが良い場合もあります。

 本人に対する責任追及をするために投稿者を特定したい場合には、プロバイダ責任制限法により、「権利侵害が明らかかつ、正当な理由」があれば発信者情報の開示請求ができます。発信者情報の開示請求は、コンテンツプロバイダと接続プロバイダに対する複数の申立てを組み合わせて行い、住所・氏名等の開示については原則本案での判決を求めることとなるため、本人に対する損害賠償請求までには多くの関門があります。

Ad-Techの仕組みと個人情報保護法

「法律家・法務担当者のためのIT技術用語辞典」(商事法務刊・定価2,500円/税別)

【サブテキスト】
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 行動ターゲティング広告のために「Cookie」をDSP事業者に提供したいという場合は、個人情報保護法の適用はあるのでしょうか。

 「Cookie」とは、Webサイトを閲覧した際にパソコンのWebブラウザに保存される情報であり、これを用いることでユーザーの閲覧履歴に合わせた広告を表示させることができます。
 そして個人情報の定義は、個人情報保護法により、「特定の個人を識別することができる情報」だけでなく「他の情報と容易に照合することができ、」それにより特定の個人を識別することができるものを含む(容易照合性)とされています。なお、容易照合性とは「通常の業務における一般的な方法で」他の情報と容易に照合することができる状態にあることをいいます。

 ここで、Cookieのやりとりは個人情報の提供にあたるのかというところですが、広告主ではCookie情報と会員IDを紐付けして管理していることが多く、その場合は容易照合性があると言えます。さらに、ガイドラインにより個人情報は当該情報の提供元である事業者において判断されるという「提供元基準」のため、広告主が提供するCookieのデータは個人情報に該当することとなりますので注意が必要です。ただし実務的には、広告主は広告出稿のため個人情報の取り扱いの一部を「委託」しているとされておりますので、Cookie情報の提供は個人情報の提供にはあたりますが、委託に該当するので本人の同意が必要ない、というのが法的な整備となります。

参加者の声

  • IT用語やIT法務自体に疎かった私でも、十分に理解できる分かりやすいセミナーでした。
  • 顧問弁護業務の案件で、今まさに類似事案を取り扱っているので、基本的な部分やより実務的な部分、
    双方非常に参考になりました。
  • 具体的な事例にまで落とし込まれた説明で大変わかりやすく有意義でした。
  • 基礎知識から実務的なノウハウまで非常に分かりやすく解説されていて理解できました。
  • ポイントを絞ってわかりやすく講義して頂いたので、今後、自分で勉強を進めていくときのよい指針となりました。

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