2024年4月号Vol.134

【スマート行政最前線】システム標準化、最新動向と留意点

株式会社TKC自治体システム標準化対応プロジェクト 井上 伸

 2月5日、総務省は『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画 第2・3版』を公表し、七つの重点取組事項を示しました。「自治体の情報システムの標準化・共通化」は〝筆頭〟項目ではなくなったものの、依然、重要なテーマであり、新年度を迎えて、その対応は一段と加速していくことと思われます。

*本内容は、2024年3月5日時点で公表されている情報に基づきます。

法制度改正が、移行の足かせに

 昨年9月に改定された『地方公共団体情報システム標準化基本方針』において、〈移行の難易度が極めて高いと考えられるシステム〉は標準化期限後の移行を認める方針が示されました。
 デジタル庁と総務省は、市区町村に「移行困難システムの把握に関する調査」を実施。その結果、市区町村の約1割で移行困難システムを抱えていることが判明しました。また、50団体・487システムが判定保留とされ、今後の精査でその多くが〝移行困難〟となることも想定されます。さらに今年になってから新たに移行困難を表明したシステム事業者もあるようです。
 加えて、振り仮名の法制化や異次元の少子化対策など〝政策上必要と判断〟される要件の追加・変更は、すでに相当量に上っています。これらの制度改正は、標準準拠システムだけでなく、現在稼働しているシステムの改修にも大きく影響します。こども・子育て支援金など大規模なシステム改修を伴う法制度改正が続くことで、事業者のリソース不足による〝移行困難リスク〟が一段と高まります。この問題はデジタル庁や総務省も認識しており、対策の検討も進んでいるようです。

契約も支払いもデジタル庁経由

図表1 ガバメントクラウド利用契約の枠組み

 今年1月に開催された「ガバメントクラウド利用料の支払い方法に関する説明会」では、デジタル庁からガバメントクラウド利用に関する契約の枠組み(図表1)と、利用料の請求プロセスの案が示されました。
 これによれば、デジタル庁がAWS等のクラウドサービス事業者(CSP)と契約し、市区町村はデジタル庁からガバメントクラウドの利用権を付与されます。これに伴い、利用料の支払いもデジタル庁へ行うため、市区町村ではCSPとの接点を持ちません。また、システム事業者もCSPと接することなく、市区町村との契約に基づいてガバメントクラウド上に環境を構築し、システムを運用します。
 このようにデジタル庁が一括してCSPと契約することで、これまで示されていた利用料のボリュームディスカウントが実現するものと思われます。
 本件に関する意見照会では、団体やシステム事業者からさまざまな意見・質問が寄せられました。これらについては、市区町村のガバメントクラウド利用料の負担開始を25年度以降に先送りし、今後1年間をかけて枠組みを固めていくことになります。

ネットワーク運用補助に留意を

 第五次LGWANは今年10月中旬の運用開始が予定され、地方公共団体情報システム機構(J–LIS)から技術仕様や費用など各種情報が発信されています。また、昨今ではガバメントクラウドへの接続回線として、ネットワーク事業者による商用回線の提案活動も活発となっています。
 接続回線としてLGWANを検討する団体も多いと思いますが、その場合いくつかの留意点があります。
 図表2に概要を示しました。
 ガバメントクラウドへ接続するには、ネットワークの構築、運用・保守などを担う「ネットワーク構築・運用補助事業者」の調達が必要となります。商用回線・広域ネットワークを選択した場合、回線の提供事業者が全体をカバーして受託すると思われます。しかし、LGWANの場合は、J–LISが構築・運用・保守を担当する範囲と、システム事業者が担当する範囲の間に〝隙間〟が発生し、市区町村ではこの部分をカバーするネットワーク構築・運用補助事業者を別途調達する必要があります。
 LGWANを検討する団体からは、「事業者が見つからない」といった声も聞かれ、複数事業者の参入が待たれるところです。

図表2「ネットワーク構築・運用補助業務」イメージ(AWSの場合)

◇   ◇   ◇

 なお、文字要件では大きな方針転換がありました。標準準拠システムが保持する文字セット「行政事務標準文字」(いわゆるMJ+)について、デジタル庁が「行政事務標準文字基本フォントファイル」を作成し、提供することになったものです。
 行政事務標準文字は約7万文字あるため、複数のフォントファイルに分かれることが課題となっていましたが、デジタル庁が提供する基本フォントは業務システムで使用が見込まれない文字を削除して文字数を減らし、一つのファイルに収まるよう整備されます。また、英数字や記号などは等幅フォントで作成されるとのことです。
 基本フォントは今年9月の提供が予定されています。そのため標準準拠システムに当初からの採用は難しいかもしれませんが、解決策が示されたことは大きな前進といえるでしょう。

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