遠州信用金庫 様

遠州信用金庫 様

中小企業の「第4次産業革命」
対応を支援

遠州信用金庫 守田泰男理事長 鈴木靖常務理事
聞き手 小川晃司税理士 石塚啓治税理士

信用金庫で初めて「TKCモニタリング情報サービス」を採用した遠州信用金庫。中小企業の成長にはフィンテックなどの導入による生産性向上が不可欠との持論を語る守田泰男理事長と鈴木靖常務理事に、TKC会計人の小川晃司税理士と石塚啓治税理士がインタビューした。

小川 県内の経済情勢をどのようにとらえていますか。

守田泰男理事長

守田泰男理事長

守田 静岡県西部地域しんきん経済研究所が公表した7~9月期の「中小企業景気動向調査」によると、業況DIは前期に比べると若干上昇したものの依然としてマイナス14という厳しい水準です。浜松地域は自動車産業が盛んですが、消費税増税延期による駆け込み需要が見込めなくなり、軽自動車税も上がったままで業界の環境はいいとはいえません。将来的に自動運転が普及すればさらにこの状況が厳しくなることも予想され、大きな問題だと思っています。

小川 ホンダとヤマハ発動機、トヨタ自動車とスズキがそれぞれ業務提携するなど今までは考えられない出来事が起こっています。

守田 日本だと考えられないかもしれませんが、世界で考えれば当たり前です。なにせアウディやポルシェがフォルクスワーゲンの傘下に入っている時代ですから。逆に言うとこれだけグループ化されていない日本の自動車産業が遅れているのかもしれません。下請けの中小企業といえどもいや応なしに世界と競争していかなければならない状況になっています。

小川 地元浜松の産業構造自体を変えていかなければならないということですね。

守田 ものづくりに限らず、あらゆる業界でビジネスモデルが変わろうとしています。インターネットの普及で、それまで系列による仕事しか経験のなかった卸や小売り、製造業の企業が直接販売までできるようになりました。人工知能(AI)やビッグデータ、IoT技術を活用するいわゆる第4次産業革命によってさらにその形態が進化しようとしています。その先読みをどうするかがこれからの商売の秘訣(ひけつ)になるでしょう。

効率化で素早い融資が可能に

小川 TKCの金融機関向けフィンテックサービス「TKCモニタリング情報サービス」を信用金庫として全国で初めて採用しました。業務の大幅な効率化を期待されていますか。

鈴木靖常務理事

鈴木靖常務理事

鈴木 かなりのコスト削減につながると思います。全国の信金のうち190強の信金は、自己査定や格付けをする際に、「融資統合システム」という共通のシステムを利用しています。これは全国の信金がコストを分担して運営しているシステムですが、これに取引先企業の財務情報を登録するのに信金がどれだけ苦労しているかはあまり知られていません。
 まず紙の決算書のやりとりが存在します。融資している先に対し担当者が決算書をいただきにいく、あるいは経営者に金融機関にもってきてもらうという手間です。次に入手した決算書をスキャンして画像として読み込みます。その際、「1」と「7」を間違って読み込んでしまうといったミスが生じるので、それをプロの人間が必ずチェックし、訂正しなければなりません。最終的に合計が合っているかどうか確認してシステムに登録しますが、全てのチェック作業は人間が行うので、その手間とコストは実に膨大です。
 これがTKCモニタリング情報サービスを使えば、ダウンロードしたデータを融資システムに直接登録できる。これは金融機関にとってかなりの効率化につながるでしょう。また経営者も決算書や月次試算表をいちいち銀行に持参して説明する手間が省けるので、経営に専念できる時間が増えることになります。融資のスピードがはやくなることは言うまでもありません。

石塚啓治税理士

石塚啓治税理士

石塚 設備投資したいときに素早く融資が実行されるのは経営者にとって大きなメリットでしょう。また月次で試算表の情報提供をする仕組みは、常に緊張感のある経営にもつながると思います。

守田 今後は「事業性評価」の重要性がますます増していきます。事業性評価は、財務分析などを通じ「生産効率の低さは在庫管理システムに原因があるのではないか」「作業ラインでボトルネックが存在するのでは」といったことを読み取ったうえで、「この会社は投資によって生産効率をあげることができる」といった判断につなげる評価のことです。AIが今後ますます普及するなか、このような人間の判断の前段階の作業(データ入力など)は、極論をいえば人間がやらなくてもよくなる可能性があります。もっといえば、このサービスを利用することによって、正常運転資金の範囲内であれば運転資金の融資が決裁を経ることなく自動的に行われるといったことも可能になるかもしれません。

小川 フィンテックの活用は時代の流れからするとある種当然の行為で、その先に経営者が何を見据えるかが大事だということですね。

守田 事業性評価を素早くできれば、専門家派遣などの経営支援にもすぐに着手できます。過去に実施した事例では、製造工程の段取りなどを一から見直した結果、それまで1時間半かかっていた作業が20分で終わるようになったということもありました。こうした経営支援の取り組みがよりスピーディーに行えるようになります。またビッグデータの蓄積でこれまで空振りに終わることもあったビジネスマッチングの精度がより高まることも期待できるでしょう。

石塚 ちなみにTKCシステムの利用などを条件に金利を優遇した「TKC連携経営強化・応援ローン」の利用状況はいかがでしょう。

小川晃司税理士

小川晃司税理士

鈴木 巡回監査と書面添付の実施で決算書の信頼性が高いことから、この提携ローンでは0.95%まで金利を優遇しています。会計関連の提携ローンのなかでも一番人気のある商品で、現在1億1000万円程度の実績をあげています。またこのサービスを利用する企業については、現在月額1000円としているインターネットバンキングの照会サービス手数料を無償とさせていただいています。地元中小企業のなかでもTKCの知名度は着実に上昇しており、今後もお互いに協力しながら中小企業支援にしっかり取り組んでいきたいと考えています。

小川 浜松の産業について未来像をどのように描かれていますか。

守田 この地域では林業も大きな可能性を秘めています。戦後に植えたヒノキとスギが伐採時期を迎えており、市に働きかけて『浜松地域FSC・CLT利活用推進協議会』が誕生しました。CLTとは複数のひき板を互いに直交するように積層接着した厚型パネルのことで、1本の木材の85%を製品化できる優れた製品です。残りの15%を発電燃料用チップに加工すれば、循環型の新しい林業を創出することも可能です。
 浜松は農業生産高が全国で10位以内にランクインし、観光も浜名湖という世界に誇れる湖があります。農業や観光のこんな素晴らしい地域資源を使わない手はありません。万が一製造業の経済規模が今後減少してしまったとしても、観光と農業で補完できれば経済規模を維持することは十分可能でしょう。

遠州信用金庫(2016年3月末現在)
本店
 浜松市中区中沢町81-18
店舗数
 25店舗
従業員数
 349名
預金積金残高
 4,160億円
貸出金残高
 2,147億円

『戦略経営者』2016年12月号より転載