茨城県民生活協同組合様

茨城県民生活協同組合様の皆さんと田代顧問税理士

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

「共済」「医療」の財務を一括管理し
地域住民の“安心”を創り出す

茨城県民生活協同組合は、生協法に規定された「最大奉仕の原則」の理念の下、共済と医療の2つの事業で地域社会に貢献してきた。いま同組合が、住民の一層の「安心」実現のために取り組んでいるのが、徹底した財務管理による経営基盤の強化である。横塚安吉理事長、加藤奨一常務理事(友愛記念病院院長)と、同組合を顧問する田代祐一税理士に話を聞いた。

「最大奉仕の原則」を理念に共済、医療の2事業を運営

横塚安吉理事長

横塚安吉理事長

――「共済」と「医療」の2つの事業を手掛けていますが、まずは共済事業の内容から説明してください。

横塚 都道府県民共済の普及促進や加入手続きなどを行っています。都道府県民共済とは、全国生活協同組合連合会(全国生協連)が元受け団体となり、都道府県民共済グループが運営する共済です。「共済」とは、協同組合などが行う“保障制度”のことで、加入者一人ひとりが出資者となって参加する非営利事業です。
 都道府県民共済の特長は、“一律掛け金一律保障”です。2006年に有名ビジネス誌が行ったアンケートでは、生保・共済部門のアフターサービス満足度で1位にランク付けされるなど、高い評価をいただいています。現在、全国39の都道府県で運営されており、共済加入者合計は1897万人(件)で、受け入れ掛け金総額は5193億円ほどです。茨城県民共済では、加入者合計が約54万人(件)で、受け入れ掛け金総額は約161億円となっています。

――共済事業と一般的な営利事業とでは、どのような経営上の違いがあるのでしょうか。

横塚 消費生活協同組合法(生協法)に則って運営しなければならないのですが、この生協法第9条に「最大奉仕の原則」というのがあって、利益を目的とした事業を行えないことになっています。
 具体的には、お預かりした掛け金から給付した共済金と運営のための事業費を引いたものがいわゆる利益、県民共済ではこれを剰余金といいますが、それを割戻金として加入者に還元しています。割安な掛け金で質の高い保障内容を実現することが県民共済の理念であり、競争優位の条件になるので、当組合としては事業費の割合をできるかぎり下げて、「割戻率」(割戻金÷掛け金)を高めることが重要となります。
 2010年度の割戻率実績は、例えば「総合保障型」で27.03%でした。総合保障型は18歳から65歳までの方が対象で、月々2000円の1年掛け捨てタイプなので、割戻金は6487円(2万4000円×27.03%)となります。
 共済金の給付率(55%)とこの割戻率を合わせた「還元率」を85%(現状82%)にすることを、当面の目標に掲げています。

――還元率を向上させるための鍵は何ですか。

横塚 一番は、まずもって加入者を増やすことです。加入者が増えれば規模の効果で相対的に事業費率が小さくなります。
 2つ目として、加入者を増やすことに加えて、事業費そのものを低く抑えることです。一例を挙げると広告費です。県民共済では広告費を極力かけずに折り込みチラシや普及員制度で加入者を増やしています。私自身も若い頃は、普及のためにチラシをもって1日に5、600件のお宅を回って歩きました。

――もう一つの事業である医療事業の概要についてお聞かせください。

友愛記念病院

友愛記念病院の外観。地域有数の規模を誇る

横塚 古河市内にある友愛記念病院という病院を経営しています。一般病床でベッド数は319床です。医療圏人口は約25万人です。
 この医療圏内には、同規模の急性期病院がほかに2つあります。それらの病院とともに地域医療の一角を担っていると同時に、経営においては競合関係にあるわけです。

加藤 行政の方針で平均在院日数の短縮化が進められていまして、当院では現在、13日程度となっています。在院日数が短縮化された分、稼働率が下がるので、これを補うためには提供できる医療機能を拡充し、地域住民の要望に応えられるようにする必要があります。そのためには医師の増員も必要で、この辺が経営上、苦労するところですね。

――昨年の東日本大震災の際には、意外な影響もあったとか……。

加藤奨一常務理事

加藤奨一常務理事

加藤 これは、近隣の医療機関に共通の傾向であったことが後に分かったのですが、当院では患者数が昨年度比で3月の震災以降、6月ごろまで減少しました。震災直後から自粛ムードとなり、多くの業界で来客数の減少が言われていましたが、医療機関も同様だったのかもしれません。昨年の10月以降はそのような傾向から復調し、診療報酬としては堅調に推移するようになりました。

――医療収入は「患者数×診療単価」で求められますが、診療単価の方はどういった状況になっているのでしょうか。

加藤 病院経営では、DPC(診断群分類別包括制度)といって病気の種類と診療内容であらかじめ単価が決められているんです。で、当院は非常に単価が低い。これは、方針として単価の高い患者を中心に集めるなどといったことをしていないためです。

『FX4クラウド』の導入で部門別原価管理に挑戦

――と、いうことは収入を大きく増やせる状況にはないということですね。そうすると費用の管理が大切になるのではないですか。

友愛記念病院のロビー

友愛記念病院のロビー

加藤 病院経営における費用管理の理想は、部門別原価管理です。当病院でも以前、公認会計士の方に部門別原価管理体制の構築をお願いしたことがありました。それが結局、「無理だ」ということで、現状、部門別原価管理体制の構築には至っていません。収入の部分は医療報酬明細のシステムがあるので、例えば医師ごとの報酬額とかを把握できるのですが、支出は病院全体でしか見られない。フロア別・診療科別に支出の把握ができなくなると利益管理も厳しくなります。
 また別な課題として、経営判断も迅速にできていません。そのためには月次決算の短縮が必要となります。

――そういった医療事業の課題の解決を期待して07年から田代税理士に顧問をお願いしているわけですね。

横塚 医療事業の課題はそうですが、ほかにも茨城県民生協としての課題があります。それは、合理的な経理処理の仕組みが整理されてこなかったことです。当生協では、以前、共済事業に加えてマンション分譲事業や物販事業などまで手掛けていました。この多角経営は失敗が多くて結果的に医療と共済に事業を集約したんですが、いまだに分譲ローンの回収事業などは残っています。こうした背景があるため経理処理が複雑化しているんです。この辺の改善を田代先生にお願いしています。

田代税理士 経理処理の合理化のため、08年に共済事業に『FX3』、医療事業に『医業会計データベース(MX3)』という会計システムをそれぞれ導入いただきました。さらに昨年からは、自然災害対応やデータ・セキュリティーに対するリスク回避、そしてコストの低減を目的として『FX4クラウド』にリプレースしていただいています。

横塚 一般的に会計ソフトは業種別になっていまして、当組合も『FX3』と『MX3』をそれぞれ活用していました。これを『FX4クラウド』に一本化し、さらなる合理化を図ろうと考えています。
 それと『FX4クラウド』なら、新しくサーバーを購入する必要がない(比較的導入コストが低い)ことも導入の大きな理由でした。

――当面の優先課題は、医療事業のほうの「月次決算の短縮化」と「部門別管理体制の構築」ということになるのでしょうか。

田代 次の決算を機に医療事業の『FX4クラウド』移行を進める予定です。加藤先生から原価管理の要望をいただきましたので、『FX4クラウド』を活用し、その実現を目指してご支援していきます。

田代顧問税理士

田代顧問税理士

加藤 病院経営で原価管理が難しい理由は、医薬や設備を複数の部門が共有しているからなんです。
 例えば「どこ」が「どの機器」を「どれくらい利用しているか」を正確に把握しようとするとすごい労力がかかってしまいます。ですから原価管理体制の構築においては、得られるメリットに対し、どこまで現場の作業負荷を許容するのかを判断しないといけません。
 さらに何を原価単位にするかも難しい。フロアごとか医師ごとか、といったことです。

田代 私は医業経営コンサルタントでもあるのですが、どの病院でも部門ごとの原価計算をどうするかが大きなテーマです。共通費用が多いので、それをどうフロア別・診療科別に配賦するかが鍵になっています。加藤先生によくお話をお聞きしながら原価管理体制の構築を進めていければと思います。

顧問税理士の支援をうけ月次決算の短縮化に着手

――月次決算の短縮化についてはどのような策を?

田代 ボトルネックになっているのは費用の処理です。これは、毎月の請求書の入手に時間がかかるといったことが原因です。
 ただ、すでに発生主義で日々の経理処理を行っていますので、経営管理に必要なオリジナル帳表を概算で作成することは可能です。

加藤 月次業績が早く確認できるようになればたいへん助かります。
 私は何十年と医者をしてきましたが、経営者としては10年もたっていません。財務管理について田代先生にいろいろとアドバイスをいただけたらたいへんありがたいです。

――最後に、今後の抱負をお聞かせください。

横塚 共済も医療も地域の方々の安心を担う事業です。これまでも堅実経営を心がけてきましたが、田代先生のご支援を受けながらさらに経営基盤を強化し、一層の地域貢献をめざしていきます。

企業情報

茨城県民生活協同組合

茨城県民生活協同組合

代表者
横塚安吉
所在地
茨城県古河市東本町1-22-26
TEL
0280-32-1911
売上高
72億1000万円
社員数
614名
URL
http://www.ibaraki-kyosai.jp/

顧問税理士 田代祐一
田代祐一会計事務所

所在地
東京都中野区野方5-19-13
TEL
03-3223-1158
URL
http://tashiro-yuichikaikei.tkcnf.com/

『戦略経営者』2012年3月号より転載)