導入事例 CASE STUDY
株式会社キツタカ 様

右端が財務部財務課の辻麻美課長、右から2人目がキツタカ子会社のテクノミストの廣野駿介代表取締役
統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例
緻密な部門別業績管理の実践で
限界利益率が10%以上アップ
主に賃貸住宅の畳の張替えを行う業務で首都圏における高いシェアを獲得しているキツタカ。『FX4クラウド』の本格的な活用で限界利益率が10%超向上したという。橘髙勝人社長、橘髙太聡専務、顧問税理士の加藤ルミ子氏らに話を聞いた。
強固な営業ネットワーク構築し首都圏2万6,000社超と取引
──創業から事業承継に至るまでについてご説明ください。

橘髙勝人社長
橘髙勝人社長 当社は、かつて畳表の生産日本一だった広島県出身の父親が1955年に創業した会社です。7坪の作業場と軽トラック1台、職人ひとりを抱える小さな町の畳屋として細々と事業を営む父の姿を間近で見ていた長男の私は、当初家業を継ぐつもりはまったくありませんでした。しかし18歳のときに父が病に倒れてしまい、その後母親が体力的にも精神的にも大変な思いをしながら事業を継続していたのを間近で見ていたので、大学卒業後に私が後を継ぐことを決めました。
──「町の畳屋さん」が飛躍的に成長したターニングポイントは?
社長 大規模新築マンションへ畳を一括納入しはじめたのが、転換点になりました。マンションの建設現場をみかけたらとにかく飛び込みで宣伝のため声をかけるなど、地道な営業活動を積み重ねた結果、ゼネコンとの取引が次第に増えていったのです。
──新築向けの好調は持続しましたか。
社長 いいえ。全業務の9割が大手ゼネコン、大手ハウスメーカーの新築住宅向けが占め、年商が約3億円に達するようになったころ、資金繰りが非常に悪化するようになったのです。その頃の私は、取引先の信用金庫の支店長から「社長なんだからもっと数字を意識して経営しないと」とダメ出しをされるほど利益について関心が薄く、売り上げを伸ばすことばかり考えていました。その反省に基づき、人件費の比率や原材料費の比率などをタイムリーに把握し、利益を意識したビジネスモデルへ徐々に転換していくことを決断しました。

──具体的に何を行いましたか。
社長 同業他社の事例などを参考にし、利幅の薄い大手企業相手の新築マンション、新築一戸建て向けの比率を下げ、利益率の高い賃貸住宅向けの張り替えの仕事を増やしていったのです。張り替え業務は新築の案件のように大量の仕事が一度に受注できるわけではないので、徹底的なDM送付活動などコツコツとリフォーム企業の新規開拓を行いました。
その結果、クライアント数は現在、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県のエリアで約2万6,000社を数えるまでになっています。リフォーム会社の商圏を侵さないよう、あくまで黒子に徹するBtoBに特化したことで得意先が増え、関東近辺でいえば、畳と言えばキツタカと言っていただけるようなネームバリューがある会社になれたのではないでしょうか。
──「関東にキツタカあり」を可能にした強みは何でしょう?
社長 当社グループでは1都3県に11の支店・工場を設置し、強固な営業網を構築しています。そしてそれが他社の追随を許さないフットワークの良さを実現しているのだと考えています。さらに現在では北海道札幌市にコールセンター業務を担う子会社を設立、お客さまの注文を100%取りこぼさない体制を整えました。
全社的なクレーム防止対策で発生率が3分の1以下に減少
──加藤ルミ子先生と顧問契約を結んだ経緯を教えてください。

橘髙太聡専務
橘髙太聡専務取締役 2015年に大阪府豊中市にある子会社「関西キツタカ」の顧問税理士になっていただいたのが最初です。私は16年にリフォーム事業を手掛ける関連会社のリフォームプランに入社したのですが、その時に加藤先生が関与先企業向けに開催している「経営者塾」に参加。一般論だけでなく、本当に突っ込んだところまで相談できる、いわゆるコンサル的な指導をしていただけるところにとても魅力を感じ、リフォームプランの顧問税理士になっていただきました。
加藤ルミ子税理士 その後20年9月に、グループ全体の責任者を集めた月1回の経営会議の開催を提案しました。そして翌年5月からキツタカさまの関与もさせていただいたという流れです。
──『FX4クラウド』の活用の実際について教えてください。
専務 まず取り組んだのが、部門別の業績管理です。売上高の把握だけでなく、変動費、人件費、固定費などを各支店・工場別で細かく管理することにしました。部門別業績管理の導入によって、改善のための打ち手をそれぞれの支店や工場で別々に講じることができるようになりました。
──限界利益率上昇のための具体的なアクションを教えてください。
専務 変動損益計算書と部門別業績を読み解いていくと、目に見えないことが見えてきました。それはクレームの発生が利益率を大きく押し下げていたということです。そこで各支店でクレームの発生件数やその種類、対応にかかったコストなどの実態を可視化し、クレームが発生しないような対応を徹底的に強化しました。
その結果、例えば福島県いわき市にあるいわき工場では、製作ミスや寸法間違いなどによるクレームの発生率が一昔前の約5%から1.29%まで減少しました。また下請け任せだった在庫管理を自社で責任をもって管理し整理整頓を徹底、無駄がでないような仕組みを整備したほか、品質向上を目的とした内製化の推進で外注比率も低下しました。こうした積み重ねの結果、5年間で限界利益率がなんと10.3%も上昇しました。
──支店間の内部振替も緻密に管理されているとお聞きしました。

加藤ルミ子税理士
加藤 福島県いわき工場や茨城県関本工場で生産した畳や襖を各支店に振り分ける際に、売価(内部振替価格)を設定。そうすることによって、製造部門・各支店部門それぞれの部門損益と採算性が把握できるようになりました。
──人事面の改革もされたとか。
専務 外部のコンサルタントと協力し、評価制度を一新したのに加え、体系的な研修制度を導入し、働くことの意義の再確認や自立性を身に着けるような意識改革を促しました。ボトムアップの意識付けを定着させるために『FX4クラウド』の画面の一部を公開する「役職者報告会」を月に1回開催し、現場責任者に現状の課題に対する解決策を自ら提案してもらっています。
銀行信販データ受信機能で仕訳入力時間が大幅に削減
──業務効率の改善という側面ではいかがでしょう?
辻麻美財務部財務課課長 「銀行信販データ受信機能」は便利ですね。取引の内容を記憶して次回に自動で提示してくれるので、後は確認してチェックを入れるだけで済みます。仕訳入力では摘要を入れたり科目を選んだりする作業が本当に多いので、この時間を単純に削減できるのが大きなメリットです。
加藤税理士 関連会社も含め全ての取引で「証憑保存機能」を使っており、すべての仕訳に証憑書類が紐づいている状態です。そのため遠隔で事前確認を行うことができ、効率的な巡回監査の実施が可能になっています。
──取引金融機関への情報開示の現状について教えてください。
加藤税理士 「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)を通じ、主要な取引金融機関に対し決算書と月次試算表をタイムリーに開示しています。決算書の提供についてはグループ会社すべてでローカルベンチマーク、税理士法第33条の2第1項に規定する書面(添付書面)、中期経営計画の資料を添付しています。ローカルベンチマークは各関連会社の社長が毎年見直して更新しているほか、経営計画については銀行からの要望に応え10カ年のものも提出しています。その際、5カ年の経営計画を中小企業再生支援協議会の10カ年のフォームに転換する『継続MASシステム』の機能を活用しています。
──今後の抱負を教えてください。
専務 当社の売上高は現在グループ全体で約60億円ですが、これを100億円規模まで成長させることを目指しています。中小企業庁が推進している「100億宣言」(『戦略経営者』2025年6月号P37※2参照)を行うため、現在経営計画の策定準備を進めているところです。
企業情報

ショールームが併設された
キツタカ京浜島店
株式会社キツタカ
- 業種
- 畳、襖、障子の製造・販売・設置、内装工事業
- 創業
- 1955年10月
- 所在地
- 東京都大田区南蒲田2-16-2-11F
- 売上高
- 約60億円(グループ全体)
- 社員数
- 210名(グループ全体)
- URL
- https://kitsutaka.co.jp
顧問税理士 加藤ルミ子
未来へつなぐ税理士事務所
- 所在地
- 大阪府高槻市天神町1-6-24天神ビル402号
- URL
- https://rumiko-kato.tkcnf.com
(『戦略経営者』2025年6月号より転載)