株式会社オートベル様

株式会社オートベルの皆さんと望月光男会計事務所の皆さん

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

“絞り込み”の戦略を支える
階層的な部門別管理

静岡県下を地盤に「中古車の買い取り専門店」を展開するのがオートベルだ。もともとは社員だった金指忠男社長(46)が代表取締役に就任したのは2007年のこと。以来、「地域」と「業務」を絞り込んで一点突破を図る経営戦略の強化に努めてきた。

「地域」「業務」を絞り込む“弱者の戦略”

――自動車の買い取り専門店を展開されているそうですね。

金指忠男社長

金指忠男社長

金指 簡単にいえば、中古車を一般ユーザーや自動車販売店から買い取り、それをオークション市場を通じてクルマ屋さんに売る商売です。私たちにとっては、中古車を売ってくれる一般ユーザーや自動車販売店が直接のお客さま。比率としては約6割が一般ユーザーで、残り4割が自動車販売店といった感じです。

――オートベルブランドの現在の店舗数は?

金指 静岡県下に16店舗あります。

――買い取りの流れを教えてください。

金指 査定受け付け→査定→「査定五本柱」(5日間で名義変更、自動車税の完全返還など)の説明→金額の提示といった流れで進みます。買い取り価格に関しては、本部が全国の相場をリアルタイムで調査し、それに基づきながらできるだけ高額での買い取りを目指しています。

――大手を含めた競合店と差別化するための戦略としては……。

金指 フランチャイズで全国展開する大手競合店の場合、買い取り業務のほか、中古車の小売り販売に加えて、車検・修理などその他周辺サービスなどにも業務の幅を広げています。しかし、体力面で劣る中小企業がそれと同じことを目指すのはあまり得策とはいえません。だから現時点においては、「静岡県」という場所と、「買い取り」という業務に絞り込んで経営資源を集中する“弱者の戦略”をとっています。ただし、そうした絞り込みをするぶん、地元のお客さまへのサービスには徹底的に磨きをかける。そこが当社の差別化の部分です。そして、レベルの高いサービスを提供するうえでカギを握るのは何といっても「ヒト」。新卒採用や社員教育に注力しているのは、まさにそのためです。会社の理念やビジョンに賛同してくれる人材を採用し、社内研修などを通じて育成に努めています。

―オートベルならではのサービスとしては、例えばどんなものがあるのでしょうか?

株式会社オートベル外観・内観

金指 一般的な買い取り専門店の場合、査定のあとに買い取り金額を提示して「はい、終わり」というのが多いと思いますが、うちではただ値段を提示するだけでなく、車を手放す理由を聞いたうえでそのお客さまにとって有益な情報を提供するように心がけています。たとえば仮に、子どもが大きくなったのでワンボックスカーに乗り換えたいという目的で来店したお客さまがいたとします。でも、うちが出した査定金額では当初購入を考えていたトヨタのワンボックスカーを買うには少し予算が足りない。その場合、「日産なら、同サイズのワンボックスカーが予算の範囲内で買えますよ」といった、お客さまによって異なる最適な情報を店のスタッフが教えたりするわけです。一番の目的がワンボックスカーへの乗り換えだったとしたら、この情報提供は非常に喜ばれる。こうした“感動体験”を通じてオートベルのファンになってくれれば、つぎの買い替えの際にもまたうちに車を持ってきてくれるのではないでしょうか。

―なるほど。

金指 一般ユーザーのお客さまは、「まったくはじめての方」と「過去に取引のある方」の2つに大別できます。前者については、テレビCMを流すなどしてオートベルの存在を知ってもらうことで来店を促しますが、後者については来店時のサービスが重要となります。それと、アフターサービスを充実し、車を売ってもらった後にも継続した関係を保てるように努めていくことも大事だと思っています。各種イベント(餅つき大会等)を開催し、過去に車を売ってくれたお客さまを招待しているのはその一貫。生涯のうちに何回オートベルを利用してくれるか──そんな視点を大切にしています。

サーバー不要の「クラウド」に切り替え

――絞り込みの戦略を極めていこうと意識するようになった背景は、なんだったのでしょうか。

金指 実は、今から10年ほど前に手痛い失敗をした経験があるんです。「500店舗構想」「店頭公開」という目標を当時の社長が掲げ、積極的な出店攻勢をかけたものの、じきにキャッシュフローが行き詰まり、会社がつぶれそうになった。店舗数の増加にともない価値観やビジョンを共有できない人でも大量にかき集めたことや、外部コンサルタントを入れての予算計画づくりが大雑把だったことなどが要因としてあります。

――そこからどうやって立ち直っていったのですか。

金指 望月会計の指導のもとに、いちからやり直しを図りました。借入金の返済計画を策定してもらい、不採算店のリストラに着手。20数店舗を14店舗にまで減らしました。それでも従業員のリストラはあえて避けていたのですが、固定給を歩合制にしたのを機に、これまで仕事のスキルを高めることを怠ってきた社員や、ビジョン・価値観を共有できなかった社員については自分から辞めていきました。でも残った社員が一丸となって必死で頑張ったことで、1年半ぐらいでどうにか立ち直ることができたのです。

望月光男顧問税理士

望月光男顧問税理士

望月光男顧問税理士 その復活劇のなかでオートベルさんが業績管理に活用していたのが、TKCの『FX4』でした。「日々決算」によって業績の変化をタイムリーに把握し、そのときどきに応じた有効な打ち手を講じていくことで経営改善を進めていったのです。拡大志向をやめて、絞り込みの戦略を実践するようになった結果、オートベルさんはその後、優良企業へと変貌をとげました。

――『FX4』については、おととし9月に『FX4クラウド』に切り替えたそうですね。

滝村(経理担当者) 自社でサーバーを持たなくていいというのがクラウドにした大きな理由でした。データの定期的なバックアップや最新プログラムへの更新など、サーバーを運用管理するのは意外と手間がかかります。東日本大震災のときは静岡県東部のお店が計画停電の影響を受けましたが、そうしたBCP(事業継続計画)対策の観点からもやはりクラウドだと思いました。

――部門別管理はどのようにされていますか。

金指 各店舗を部門にみたてて業績管理するとともに、「地域別」の業績もわかるようにしています。静岡県東部(沼津市等)、中部(静岡市等)、西部(浜松市等)といったエリアごとに部門分けしたあとに各店舗をぶら下げる階層的な部門別管理を行っています。

「MR設計ツール」で独自の経営資料を作成

――《365日変動損益計算書》はご覧になっていますか。

金指 ええ、会社全体あるいは部門ごとの売上高や限界利益の推移などを確認するのに役立てています。「1年前の今日」といつでも業績比較できるというコンセプトはいいですね。昨年に比べて今年がどうなっているかは、経営者として当然気になるところです。

――『FX4クラウド』には、自社独自の帳表を簡単に作れる「マネジメントレポート(MR)設計ツール」の機能がありますが、どのように活用されていますか。

滝村 じつは清水インター店と静岡流通通り店については、「オートベル21」という別会社が管理しており、財務会計システムは『FX2』を使っています。その2店舗も含めた形でオートベルグループ全体の損益を知りたいときに便利なオリジナル帳表をMR設計ツールを用いて作成しています。

――他の業務システムとのデータ連携が容易にできる点も『FX4クラウド』の特徴です。

滝村 各店舗にある現金出納用の社内システムと、在庫管理システムのデータを連携するために「仕訳テンプレート」機能を使っています。2つのシステムから吸い上げたデータを簡単に『FX4クラウド』に取り込めるため、データを二度打ちする無駄が省けます。

――今後の展望はいかがでしょう。

金指 いま追いかけている目標は静岡県内で自動車買い取り業におけるシェアナンバーワンの会社になることですが、その上のさらなる目標として、買い取り業のエリアを県外にも広げたり、修理や小売りなど買い取り以外の領域にも業務の幅を広げることも考えています。ただしそれは、あくまでいまの目標をある程度達成したうえでの話。階段を一段のぼったら、また一段上を目指すイメージです。過去の失敗を再び繰り返さないためにも、堅実性をもった成長路線を歩んでいこうと考えています。

企業情報

株式会社オートベル

株式会社オートベル

所在地
静岡県沼津市岡宮1266-87
TEL
055-922-6007
売上高
約60億円(今期見込み)
社員数
120名
URL
http://www.autobell.co.jp/

監査担当 松永尚晃
望月光男会計事務所

所在地
静岡県静岡市駿河区谷田4-1
TEL
054-264-6101
URL
http://www.motizuki.com/

『戦略経営者』2013年2月号より転載)