山口自動車様

山口自動車の皆さんと久保田弘顧問税理士

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

2段階の部門階層管理が正確な業績判断を促す

神奈川県相模原市に本社を置く山口自動車は、車両整備・物流事業を手がけている会社だ。来年3月末の圏央道市内区間全線開通を見据え、自社の整備工場の再編に乗り出している。今年8月にTKCの『FX4クラウド』の導入に踏み切った山口誠志社長(43)と、経理参謀として活躍する佐藤広一課長に、きめ細かい業績管理の重要性などを語ってもらった。

車に関するトータルサービスを会社の強みにする

──車両整備サービスが主力とお聞きしました。

山口誠志社長

山口誠志社長

山口 トラック、バス、特装車(消防車など)を中心に大型車両の一般整備、車検整備をおこなっています。主に運送業者さんや官公庁の仕事を請け負っています。
 また整備以外にも、自社が保有するトラック(大型貨物車から2トン貨物まで)を使って依頼された荷物を運搬する「物流事業」と、運転手付きで貸し切りバスを用意する「観光バス事業」も手がけています。学校の遠足や団体旅行といった観光バスとしてのサービスのほか、部活動や企業向けの送迎(団体輸送)などにも利用してもらっています。地元のプロサッカーチーム「SC相模原」の選手の移動に使われることもあるんですよ。

──会社のPRポイントを教えてください。

山口 トラックから乗用車にいたるまで、クルマに関する「トータルサービス」が提供できる点でしょうか。価格の安い車両をマーケットから見つけてきて、それをお客さまのリクエストに応じてカスタマイズしたうえで販売することもしています。
 それと、自分たちで保有するバスやトラックの整備を自社工場で行えるところも、当社の持ち味といえます。外注せずに済むため、その分のコストをお客さまに還元することができています。

──創業は1953年だとか?

山口 今年でちょうど60周年を迎えました。会社を立ち上げたのは私の祖父で、本社の目の前を通る国道16号線がまだ砂利道だったと聞いています。その後祖父は、橋本台(相模原市緑区)に「峡の原工場」を建設し、2工場体制で父に事業を引き継ぎました。父はあまり体が丈夫ではなく、事業拡大に向けて積極的には動けなかったものの、整備組合の支部長などの要職を歴任していました。しかし、57歳のときに他界。そのとき私は27歳で力不足が明白だったため、伯父(父親の弟)が3代目社長を引き受けてくれました。その後、私が30歳になったときに、社長の座をバトンタッチされました。

山口自動車

──会社が大きく発展したのはいつごろだったのでしょう。

山口 03年の排ガス規制のときです。首都圏自治体の条例により、ディーゼルトラック・バスのマフラーに排ガスの減少装置を取り付けることが義務化されましたが、そのとき市内ではおそらく一番、関東近郊でも5本の指に入るくらいの仕事量をこなしました。夜中の2時くらいまで作業を続けることもしばしばで、従業員にはだいぶ無理をさせてしまいましたが、そのときに得た利益をもとに観光バスを購入するなどして事業の多角化を進めたところ、うまく成長軌道に乗ることができました。

──現在、新たな拠点作りを進めているそうですね。

山口 約2,100坪の土地を確保し来年、新たに「相模原サービスセンター」を開設する予定です。そこに整備事業の中核となる部分を集約するとともに、既存の三つの工場(本社工場、峡の原工場、宮下工場)にはより一層の専門性を持たせていこうと考えています。要は、相模原サービスセンターを軸に、工場の再編成を計画しているのです。
 いま相模原市では、圏央道の開通を呼び水に、企業や物流倉庫、研究施設の誘致を積極的に進めています。これはうちにとって間違いなく追い風となる。こうした経営環境を踏まえて新たな投資を行い、車両整備サービスのさらなる向上を目指していきます。

「損益科目」と「資産科目」の数字が部門単位でわかる

──久保田会計に税務顧問を依頼するようになったいきさつを教えてください。

山口 まえの税理士に物足りなさを感じていたことから、経営指導をきちんと行ってくれる会計事務所に変えたいとメーンバンクに相談したところ、久保田先生を紹介してくれました。

久保田弘顧問税理士

久保田弘顧問税理士

久保田弘税理士 山口自動車さんの税務顧問に就任したのは05年5月のことでした。当時はいわゆる「現金主義」の会計で、正確な期間損益計算ができる「発生主義」ではありませんでした。まずはそのあたりを改善することから着手しました。
 タイムリーな業績管理ができる体制が整ってきたのは、他の会社で経理を担当していた佐藤課長が入社してからで、その後、財務会計システムを『FX2』から『FX3』に移行。そして今年8月に『FX4クラウド』に切り替えました。

山口 以前はまさにドンブリ勘定の経営でした。どの事業がどれくらいの利益を会社にもたらしてくれているかなどは大雑把にしか分からなかった。それが今では、リアルタイムに正確な数字が得られるようになった。"経営の精度"は間違いなく高まりました。

──『FX4クラウド』の導入に踏み切った理由は?

佐藤 ひとつには、『FX3』で使っていたサーバーの保守期限が間もなく切れることから、どうせならこのタイミングでといった理由。そしてもうひとつは、各部門のリーダーに「経営者目線」を身に付けてもらううえで有効なツールになるとの判断からです。
 『FX4クラウド』の場合、それ以前のシステムとは違って、「損益科目」に加えて「資産科目」についても部門ごとの数字が出てきます。損益科目と資産科目の両方がわかってはじめて、「本当に自分たちが稼いだお金だけで部門が成立しているのか」「売り上げはあがっているが、きちんと売掛金の回収はできているか」「その回収したお金で自分たちの給料や、その他の固定費がまかなえているのか」といったことが見えてくる。それらを各部門長がいつでも把握できる仕組みを作るためにも、いずれは『FX4クラウド』にしたいと考えていました。部門長たちの計数管理能力を底上げし、独立採算制の「社内カンパニー」にちかい形にまでもっていくのが最終的な目標です。

「予算目標」の存在が従業員の奮起を促す

──部門分けはどのように?

佐藤広一課長

佐藤広一課長

佐藤 まず一つ目の階層に、(1)整備事業部(2)輸送事業部の二つの部門を設定。さらに(1)の下の階層に、「本社工場」「峡の原工場」「宮下工場」「車両販売」「フォークリフト(販売)」の5部門を置いています。そして(2)の下には、「YM交通(観光バス)」「YM物流」「派遣委託(運転手の派遣業務)」の3部門をぶら下げています。

山口 つまり2段階の部門階層管理です。自社の階層化された部門体系と一致した状態で部門別管理できるのはありがたいですね。

──《365日変動損益計算書》はご覧になられていますか。

山口 各部門の売上高や限界利益率の推移を知るためによく見ています。前年同月比や予算対比も一目でわかるので重宝しています。

──限界利益率を良くするために努力していることはありますか。

山口 とにかく予算(単年度経営計画)の達成に向けて、会社一丸となって取り組むことが不可欠ではないでしょうか。久保田先生にお世話になる前は予算計画など作ったこともありませんでしたが、今では毎年作っています。

──「どうせ計画通りに行かないのだから、予算なんか作ってもムダ」と考えている経営者もなかにはいるようですが……。

山口 それは絶対に間違った考え方ですね。毎月、目標となる数字があるからこそ「今月は予算に届かなかったから、来月はその分を取り返せるように頑張ろう」といったように、従業員たちの奮起を促すことができる。これによって生まれる差は大きいですよ。

佐藤 予算の達成に部門長も敏感になった結果、バス1台買うにしても「採算の見込みはどうか」「それによって予算は達成できるか」といった視点を持つようになりました。減価償却費などの数字も踏まえたうえでバス購入の申請があがってくるようになり、山口社長が購入の是非を判断する材料が確実に増えたといえます。こうしたきめ細かいマネジメントの積み重ねが、近年の好調な業績に結びついているのはないでしょうか。

──オリジナル帳表が作成できる「MR設計ツール」の機能は使っていますか。

佐藤 今のところまだですが、販売管理システムやバス事業のシステムから入手したデータも反映させた業績管理資料を作るうえで、いずれ活用したいと考えています。

──今後の展望をお聞かせください。

山口 横浜市内に新たに販売店を出し、特殊な重整備の仕事を引っ張ってきたいと思っています。さらにその店舗を足がかりに、神奈川県内に山口自動車の名前をとどろかせたいというのが密かな目標です。
 それを実現するためにも、従業員のモチベーション向上は重要な課題。自分たちが稼いだ利益の一部は還元されるということを知ってもらうためにも、福利厚生の充実に取り組んでいるところです。

企業情報

山口自動車

山口自動車

代表者
山口誠志
創業
1967年6月
所在地
神奈川県相模原市中央区清新4-14-7
TEL
042-772-5312
売上高
17億8,000万円
社員数
160名(パート・アルバイト含む)
URL
http://www.yamaguchi-motor.com/

顧問税理士 久保田弘
久保田弘税理士事務所

所在地
神奈川県相模原市中央区相模原3-3-15
TEL
042-768-4890
URL
http://kubota.tkcnf.com/

『戦略経営者』2013年12月号より転載)