流通株式会社 様

後列右から江原剛社長、廣田和幸顧問税理士、岩田将人監査担当

後列右から江原剛社長、廣田和幸顧問税理士、岩田将人監査担当

統合型会計情報システム『FX4クラウド』 ユーザー事例

「地域の課題解決」を合言葉に
多種多様なビジネスを仕掛ける

鳥取県倉吉市に本社を置く流通株式会社は、物流やイベント運営、人材紹介など10以上の多彩な事業を展開している、地域を代表するリーディングカンパニーだ。そんな同社の多角経営を下支えしているのが『FX4クラウド』による緻密な計数管理である。同社の経営・財務戦略の要諦を江原剛社長、廣田和幸顧問税理士、岩田将人監査担当に聞いた。

物流の枠にとらわれない多彩なサービスを提供

──「地域密着サービス業」を標榜(ひょうぼう)しておられるとか。

働きやすい職場環境も重視

働きやすい職場環境も重視

江原 はい。当社は1977年に創業して以来、貨物運送、倉庫、送迎バス、旅行サービス、イベントの企画・運営、人材紹介サービスなど、「地域密着」を旗印にさまざまな事業を手がけています。商号にも表れているように当社のルーツは物流業ですが、われわれのコア技術である「高品質で安全な輸送」から派生して団体向けの送迎バス事業に参入し、今では物流の枠を超えたサービスにも挑戦するようになりました。

──ここまで幅広く事業を展開している理由は何でしょう。

江原 業績悪化のリスクを少しでも小さくするためです。例えば、少子高齢化の進むスピードはますます速くなることが予想されており、当社が拠点を置く鳥取県でも都心部への人口流出が著しい。また、この1年でデジタル化や環境問題への関心が一気に高まるなど、産業構造にも変化の兆しが見えている。このような状況のなか、たった1つの事業に依存していると市場が縮小したときに共倒れになる可能性があります。経営上のリスクを分散しつつ環境変化のスピードに対応するには、消費者のニーズを敏感に察知し、ビジネスにつなげる必要がある……というのが私の考えです。
 特に昨年来のコロナ禍で旅行サービスやイベント企画・運営の需要がまたたく間に蒸発しました。その影響で今期の最終業績は赤字になる可能性もありますが、他事業の奮闘もあり、減収幅は小さく抑えることができそうです。多彩な事業展開が奏功したと少しほっとしています。

──新しいサービスを立ち上げる上で念頭に置いていることは?

江原 そのサービスが「地域の人々にとって本当に必要なのか」ということは常に問い続けています。単にはやっているから、儲(もう)かりそうだからといって安易に手は出しません。手前味噌(みそ)ですが、現在ほとんどの事業が軌道に乗っているのも、「地域貢献」という軸がしっかりしているからだと自負しています。

廣田 かつて事務所を移転したときには流通さんの引っ越しサービスを利用しました。作業のスピードや手際の良さもさることながら、スタッフの人柄も素晴らしい。改めて、江原社長を頼って良かったです。

──そのほか、地域の困りごとから生まれたサービスにはどのようなものがありますか。

江原 お客さまのご自宅の整理収納サービスやペットのお葬式、ハチの巣の駆除など、枚挙にいとまがありません。

──ハチの巣の駆除ですか……。

江原 当社ではかつて領収書に「困りごとはなんでも相談してください」というメッセージを載せていて、これを目にしたお客さまから「家にハチの巣があるので処理してほしい」と依頼を受けたのです。詳しく聞くとさまざまな業者をたらい回しにされた挙句、当社に相談したそうで、「それならウチでやるか」と。必要な準備や正しい処理方法を入念に調べた上で駆除作業に臨みました。
 ハチの巣駆除の依頼は毎年のように寄せられるのでスタッフの手際も年々良くなり、今では職種にかかわらず多くの社員が高い駆除技術を身につけています。

──福利厚生制度もしっかりと整備されておられます。

江原 当社はサービス業ですから、土・日・祝日も営業しています。こうしたなかで、少しでも家族サービスに時間を費やしてもらおうと始めた取り組みが、2週間連続で休暇がとれる「わくわくホリデー」です。対象は2年目以上の正社員で休暇中は会社から連絡を取ることは一切ありません。この制度を設けたことで社員が気兼ねなく休みを取れるようになり、最近は男性社員の育児休暇の取得率がアップするなど副次的な効果も表れつつあります。

20以上の部門を設けて緻密な業績管理を実現

──広田会計事務所と長年のお付き合いをされていると聞きました。

20超にのぼる部門の業績を即座に確認

20超にのぼる部門の業績を即座に確認

江原 1988年より税務顧問を務めていただいているので、かれこれ30年超の関係になります。先代(江原實会長)の頃からのお付き合いになるでしょうか。

廣田 江原社長はとにかく好奇心が旺盛で、日ごろから新規事業のヒントになりそうな「ビジネスの種」を探しておられます。私が関与するようになったときにはすでに多角経営を実践されていましたから、好奇心の強さは会長譲りかもしれません。

──計数管理のツールとして『FX4クラウド』を利用されていますが、導入のきっかけは?

江原 もともとは『FX2』を使っていましたが、サービスを拡大するうちに「部門ごとに細かい業績管理ができないか」と思うようになり、岩田さんに相談したところ勧められたのが『FX4クラウド』でした。『FX2』では当社の部門数に対応できず、事業ごとの正確な業績が把握できていませんでしたが、『FX4クラウド』に切り替えてからは、部門はもちろん拠点別の業績も即座に把握できるようになりました。意思決定のスピードも格段に上がり、打ち手や対策の検討もより素早く行えるようになったと感じています。

──入力拠点は?

江原 本店、鳥取店、米子店、松江店の4拠点です。これまでは各拠点の証憑(しょうひょう)書類を本店に集約し、経理担当者がまとめて入力していましたが、今では各拠点からの仕訳入力ができるようになったので、経理担当者の業務負担も軽くなりました。

岩田 入力業務の省力化で言えば、「銀行信販データ受信機能」を積極的に活用されています。流通さんでは10以上の銀行口座をお持ちで、これらを『FX4クラウド』と連携させることで預金関係の仕訳を簡単に計上できるようになりました。経理担当者も「便利すぎて手入力していた時代には戻れない」と好評です。

業績検討会を定期開催し実効性の高い戦略を策定

──巡回監査ではどのような話をされていますか。

昨年7月にオープンした自社物流センター「RYUTSU-PLEX」

昨年7月にオープンした自社物流センター
「RYUTSU-PLEX」

岩田 会計データをもとに今後どういった設備を導入するか、どのようなビジネスを展開するかといった未来志向の話を主にしています。『FX4クラウド』に移行したことで月次決算のスピードも速くなり、現在は毎月10日ごろに訪問して、社長や経理担当者とコミュニケーションを図っています。

──業績検討会も定期的に実施されていると聞きました。

江原 四半期に1回のペースで開催しています。当社の役員に加え、廣田先生と岩田さんにも参加いただき、《365日変動損益計算書》の最新業績を踏まえて予算達成に向けた具体的な打ち手・対策をディスカッションしています。
 先生や岩田さんのサポートもあり予算の精度は年々上がってきていますから、あとは実効性の高い戦略を組み立て、目標予算の達成を目指していきます。

廣田 流通さんは事業内容と社員数のバランスが良く、一人ひとりのモチベーションも高い。なので、労働生産性がさらに向上すれば、いっそうの業績アップも夢ではないと期待しています。江原社長も話されたとおり、予算の精度は良くなっていますから、あとは第1四半期からスタートダッシュが決められるよう、私どもとしても引き続きサポートしていきます。

──これからの目標をお聞かせください。

江原 地元の製造業を中心に「物流機能を請け負ってほしい」という要望が多く寄せられたことから、昨年の7月に自前の物流拠点として「RYUTSU-PLEX」を湯梨浜町にオープンしました。おかげさまで引き合いも相次いでおり、もう間もなく『FX4クラウド』でも1つの部門として損益管理を行う予定です。今後も引き続きお客さまの声やニーズに耳を傾けながら、地域の人々の力になれるようなビジネスを仕掛けていきたいですね。

企業情報

流通株式会社

設立
1977年7月
所在地
鳥取県倉吉市巌城997-3
売上高
約6億8,000万円
社員数
106名(パート・アルバイト含む)
URL
https://ryu-tsu.jp

顧問税理士 税理士 廣田和幸
広田和幸税理士事務所

所在地
鳥取県倉吉市駄経寺町2-15-1
URL
https://www.tkcnf.com/hirotakaikei

『戦略経営者』2021年7月号より転載)