2025.10.14
損害賠償請求事件
★「新・判例解説Watch」民事訴訟法分野 令和8年2月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
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LEX/DB25574518/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 9月 9日 判決(上告審)/令和5年(受)第2207号
上告人が被上告人Y1に対しその占有する不動産の明渡しを求めて提起した本件明渡訴訟において、被上告人Y1に対し本件不動産の明渡しを命ずる判決が確定したところ、被上告人Y1は、弁護士である被上告人Y2を代理人として、京都地方裁判所に対し、本件確定判決による強制執行の不許を求める請求異議の訴えを提起し、同年4月、これを本案とする民事執行法36条1項の強制執行の停止の申立てをし、同裁判所は、本件執行停止の申立てに基づき、被上告人Y1に担保を立てさせたうえ、本件確定判決による強制執行の停止を命ずる決定をしたうえで、被上告人Y1の請求を棄却する判決をしたことから、上告人が、被上告人Y1が本件執行停止の申立てをしたことは不法行為に当たるなどと主張して、被上告人らに対し、強制執行の遅延により生じた損害等の賠償を求め、控訴審が、上記事実関係の下において、本件執行停止の申立てに係る損害賠償請求につき、被上告人らが損害賠償責任を負うものではないとして、上告人の被上告人らに対する請求をいずれも棄却したため、上告人が上告した事案で、債権者が事実上又は法律上の根拠を欠くにもかかわらずされた強制執行の停止の申立てにより上記利益を侵害されることを受忍しなければならない理由はないのであって、強制執行の停止の申立てをする者は、上記利益が不当に侵害されることがないように、異議の事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査、検討する注意義務を負うものというべきであるところ、本件において上記注意義務違反があったか否かなどについて更に審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻すこととするとして、原判決中、被上告人らに対する強制執行の停止の申立てに係る損害賠償請求に関する部分を破棄し、本件を控訴審に差し戻すとともに、上告人のその余の上告を棄却した事例。
2025.10.14
各地位確認等請求控訴事件(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター事件)

LEX/DB25623311/東京高等裁判所 令和 7年 3月27日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第1537号
被控訴人(被告)が設置運営する本件病院において看護師又は保育士として勤務する控訴人ら及び原審相原告A6が、被控訴人に対し、特定の病棟に勤務する従業員らに対して支払われてきた特殊業務手当を、年20%ずつ段階的に減額し、令和3年度をもって完全に廃止する旨を定めた部分の就業規則(給与規程)の変更は無効であると主張して、〔1〕別各特殊業務手当の支払をそれぞれ受けるべき労働契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、〔2〕特殊業務手当の段階的廃止がなければ支払われたはずの金員及び遅延損害金の支払を求めたところ、原審が、〔1〕の訴えを確認の利益を欠くとしていずれも却下し、〔2〕の請求をいずれも棄却したため、控訴人らが控訴した事案で、本件特殊業務手当の廃止変更によって、控訴人らは、給与の性質を有する特殊業務手当が廃止されるという不利益を被ることになり、これによる不利益の程度は小さいとはいえないところ、本件においては、このような不利益を労働者に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性までは認められず、労働組合等との交渉も施行日までに時間的余裕がなかったために十分なものであったとは認め難いというべきであって、本件特殊業務手当の廃止変更は5年間かけて段階的に廃止するという経過措置が設けられていたこと、本件特殊業務手当の廃止変更と同時に、国家公務員給与法の改定率に準じた基本給及び月例年俸の引上げ(0.2%)、地域手当の引上げ(14%から16%に)、夜間看護等手当の増額等が実施されたことなどを踏まえても、それらは代償措置とは言えないことからすると、本件特殊業務手当の廃止変更が、労働契約法10条にいう合理的なものとは認められないものと言わざるを得ず、本件特殊業務手当の廃止変更に基づく賃金に係る労働条件の変更の効力は控訴人らには及ばないから、控訴人らには旧給与規程のとおり、特殊業務手当が支給されるものと認めるのが相当であるとして、原判決のうち〔2〕の請求を棄却した部分を取り消し、請求を一部認容した事例。
2025.10.07
婚姻費用の合意無効確認請求事件
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LEX/DB25574514/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 9月 4日 判決(上告審)/令和6年(受)第239号
上告人と被上告人は、婚姻後別居し、平成29年1月、上告人が被上告人に対し婚姻費用として同月以降月額16万円を支払う旨の本件合意をし、以後、上告人は、令和4年8月までの間、被上告人に対し、毎月同額を支払っていたが、被上告人は、令和2年11月、上告人を相手方として、婚姻費用分担審判の申立てをし、東京家庭裁判所立川支部は、本件合意は上告人の当時の年収につき実際の額よりも低廉な額を前提としていたところ、このことは本件合意に基づく婚姻費用の分担額を変更すべき事情に当たるとして、変更後の分担額と既払額との差額及び令和4年9月以降月額29万円の婚姻費用の支払を上告人に命ずる旨の審判をしたことから、被上告人が、上告人に対し、上告人の年収について錯誤があったとして本件合意の無効確認を求め、第一審が本件訴えを不適法として却下したため、被上告人が控訴し、控訴審が第一審判決を取り消し、本件を第一審に差し戻したところ、上告人が上告した事案で、本件合意の無効を確認することは、当事者間の現在の権利又は法律的地位を直接に決することにならないことはもとより、前提事実記載の本件の経過も踏まえると原告の権利又は法律的地位についての現在の危険ないし不安を除去するために有効適切であるとも解されないから、本件訴えは確認の利益を欠くものとして却下することが相当であるとして、原判決を破棄し、被上告人の控訴を棄却した事例。