2024.03.19
性別の取扱いの変更申立事件(性別の取扱いの変更申立て訴訟)
LEX/DB25597294/静岡家庭裁判所浜松支部 令和 5年10月11日 審判 (第一審)/令3年(家)第335号
生物学的な性別は女性であるが心理的な性別は男性である申立人が、生殖腺除去手術を受けていないため、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の定める性別の取扱いの変更の要件のうち、同法3条1項4号の規定の定める要件(「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」)を満たさないものの、本件規定は、性同一性障害者(同法2条)が性別の取扱いの変更を認められるために、その意思に反する場合でも生殖腺除去手術を余儀なくされる点で、性同一性障害者について憲法13条の保障する性自認のとおり性別を尊重される権利、身体への侵襲を受けない権利、家族を維持形成する権利を侵害するほか、性自認と生物学的性が不一致の性同一性障害者をそれが一致している者に比して不合理に差別するものである点で、性同一性障害者について憲法14条1項の保障する平等権を侵害し、違憲無効であるなどと主張して、特例法に基づき、性別の取扱いを女性から男性に変更することを求めた事案で、本件規定の立法目的のうち親子関係等に関わる問題の発生とこれに伴い社会に混乱を生ずるおそれに配慮するという目的を踏まえても、本件規定の定める要件を不要とした場合に生じ得る親子関係に関わる問題発生の可能性や程度は限定的なものであって、それを理由に性同一性障害者の意思に反して身体への侵襲を受けない自由を一律に制約することは、人権制約の手段・態様として必要かつ合理的なものとは言い難いこと、また、本件規定の立法目的のうち社会の急激な変化に配慮するという目的を踏まえても、社会的状況は、国内外の動向に沿って変化が進んできているところであって、現在、上記のような配慮の必要性は相当小さくなっているといえること等を総合較量すると、本件規定の目的を達成するために本件規定による制約を課すということは、もはやその必要性・合理性を欠くに至っているというべきであるから、本件規定は、憲法13条に違反し、違憲無効であると解するのが相当であるとして、申立人の性別の取扱いを女から男に変更するとした事例。