注目の判例

行政法

2024.03.12
生活保護基準引下げ処分取消等請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年5月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25597542/名古屋高等裁判所 令和 5年11月30日 判決 (控訴審)/令2年(行コ)第31号 
〔1〕原審第1事件原告らが、原判決別紙処分一覧表1の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁から、「処分の名宛人」欄記載の各原審第1事件原告を名宛人とする各保護変更決定処分(本件各処分1)は、憲法25条の理念を受けた生活保護法3条、8条等に違反し、生活扶助を健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りない水準とするものであるから違法であるなどと主張して、本件各処分1の取消しを求め(原審第1事件・取消訴訟)、〔2〕原審第2事件原告らが、原判決別紙処分一覧表2の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁から、「処分の名宛人」欄記載の各原審第2事件原告を名宛人とする各保護変更決定処分(本件各処分2)には本件各処分1と同様の違法事由があるなどと主張して、本件各処分2の取消しを求め(原審第2事件・取消訴訟)、さらに、〔3〕原審原告らが、本件各処分の根拠となった生活扶助基準の改定は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと主張して、被控訴人国に対し、それぞれ損害賠償金の支払等を求め、原審は、原審原告らの請求をいずれも棄却したため、控訴人ら(原審原告らの一部)が、これを不服として控訴した事案(なお、なお、控訴人13(原審第2事件原告)は、控訴状によれば、当審において、被控訴人国に対する損害賠償請求についての附帯請求の起算日を、原審における平成26年4月1日から平成25年8月1日に変更しており、当審において附帯請求の拡張をしたものと解される。)で、控訴人らの原審における請求はいずれも理由があり、これらを棄却した原判決は相当でなく、本件各控訴はいずれも理由があるから、原判決を取消し、控訴人らの上記請求をいずれも認容し、また、控訴人13の当審における拡張請求は、理由がないとして棄却した事例。
2024.02.20
出席停止処分差止め請求事件 
LEX/DB25596863/奈良地方裁判所 令和 6年 1月16日 判決 (第一審)/令4年(行ウ)第14号 
香芝市議会は、市議会議員である原告の香芝市教育福祉委員会における発言が懲罰事由に当たるとして、原告に対して陳謝の懲罰を科したが、原告は、陳謝文の朗読を拒否した。市議会は、その朗読拒否を懲罰事由として新たに原告に陳謝の懲罰を科したが、原告が陳謝文の朗読を拒否し、市議会が更に原告に陳謝の懲罰を科すということが繰り返された。市議会は、合計5回の陳謝の懲罰を原告に科した後の令和4年12月5日、5回目の陳謝の懲罰に係る陳謝文の朗読拒否を懲罰事由として、原告に対し、4日間の出席停止の懲罰の処分をした。本件は、原告が、本件出席停止処分が違法であると主張して、被告(香芝市)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案で、陳謝の拒否を理由にした出席停止処分について、市議会が裁量権の範囲を逸脱し、または濫用したもので違法であるとして、請求額を減額した内容で一部認容した事例。
2024.02.13
裁決取消請求事件 
LEX/DB25573296/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 1月30日 判決 (上告審)/令5年(行ヒ)第2号 
上告人(原審原告)が、職務上の過失によって海難を発生させたとして門司地方海難審判所から裁決をもって小型船舶操縦士の業務を停止する懲戒を受けたため、被上告人(原審被告。海難審判所長)を相手に、裁決の取消しを求めたところ、原判決は本件裁決の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、原審は、上告人が、甲船が海上衝突予防法所定の灯火を表示し、乙船の動静を監視していれば衝突を回避することができたことを認定説示していないものといわざるを得ず、上記灯火を表示せずに甲船を進行させ、乙船を視認した後にその動静を十分に監視することなく甲船を左転させるなどした行為をもって、本件事故に係る海難につき上告人に職務上の過失があるものということはできないとして、原判決を破棄し、本件事故に係る海難が上告人の職務上の過失によって発生したものであるか否か等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2024.02.06
国家賠償請求事件 
LEX/DB25596682/東京地方裁判所 令和 5年12月27日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第23302号 
原告会社の代表取締役であったP1ら3名は、共謀の上、原告会社の業務に関し、外国為替及び外国貿易法の規制物件である噴霧乾燥器を経済産業大臣の許可を得ずに中華人民共和国及び大韓民国に輸出したとの外為法違反の容疑で、警視庁公安部の警察官及び東京地方検察庁所属の検察官により逮捕・勾留請求及び公訴提起されたが、その後、検察官により公訴が取り消された。本件は、原告らが、被告都及び被告国に対し、警視庁公安部の警察官による逮捕及び取調べ、並びに検察官による勾留請求及び公訴提起に違法があったなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、連帯して、〔1〕原告会社について名誉及び信用毀損に係る損害等総額2億8005万9104円の損害賠償等の支払を、〔2〕原告P1について慰謝料等総額5325万円の損害賠償の支払等を、〔3〕原告P2(原告会社の取締役であった者)について慰謝料等総額5596万5000円の損害賠償の支払等を、〔4〕亡P10(原告会社の顧問であった者)の相続人である原告P3について慰謝料等の損害賠償金の相続分等7700万円の支払等を、〔5〕亡P10の相続人である原告P4及び原告P5についてそれぞれ慰謝料等の損害賠償金の相続分等4950万円の支払等を、それぞれ求めた事案で、警視庁公安部の逮捕前の任意聴取で、機器の設計担当者ら複数の従業員が、機器には殺菌に必要な温度に達しない箇所があると具体的に説明しており、その確認は「犯罪の成否を見極める上で、当然に必要な捜査だった」と指摘し、実験をしていれば殺菌できないことは容易に明らかになったにもかかわらず、実験をせずに逮捕したことは違法であると認め、また、地検の検察官も、起訴前に同様の報告を受けており、確認していれば要件に該当しないことは、容易に把握できたと指摘し、勾留請求や起訴が違法と認め、被告国と被告都に約1億6000万円の賠償を命じた事例。
2024.02.06
地方自治法第245条の8第3項の規定に基づく埋立地用途変更・設計概要変更承認命令請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年4月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25596603/福岡高等裁判所那覇支部 令和 5年12月20日 判決 (第一審)/令5年(行ケ)第5号 
沖縄防衛局が、普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古沿岸域に設置するための公有水面の埋立てに関し、公有水面埋立法42条3項において準用する同法13条ノ2第1項に基づき、埋立地の用途及び設計の概要に係る変更の承認の申請をしたところ、被告(沖縄県知事)が変更を承認しない旨の処分をし、原告(国土交通大臣)からこれを取り消す旨の裁決や本件変更申請に係る変更の承認をするよう是正の指示を受けた後も本件変更承認をしないことから、原告が、被告に対し、地方自治法245条の8第3項に基づき、本件変更申請を承認すべきことを命ずる旨の裁判を求めた事案で、法定受託事務である本件変更申請に係る沖縄県の事務についての被告の管理等は法令の規定に違反するものであり、地方自治法245条の8所定の代執行以外の方法によってその是正を図ることが困難であり、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるから、本件訴えに係る原告の請求は理由があるとして、沖縄防衛局がした令和2年4月21日付け沖防第2056号による普天間飛行場代替施設建設事業に係る埋立地用途変更・設計概要変更承認申請につき、被告がこの判決の正本の送達を受けた日の翌日から起算して3日以内に承認することを命じた事例。
2024.01.30
損害賠償請求権行使請求控訴事件 
LEX/DB25596605/名古屋高等裁判所 令和 5年12月20日 判決 (控訴審)/令和5年(行コ)第33号 
愛知県の住民である控訴人が、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に関し、県が要綱に基づいてあいちトリエンナーレのあり方検証委員会及び同検討委員会を設置したことは、地方自治法138条の4第3項に規定するいわゆる附属機関条例主義に違反するとともに、被控訴人の組織編成権に係る裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであり、本件各委員会の委員に対する本件報償費等及び検証作業等に要した費用に係る支出負担行為等は違法であると主張して、県の執行機関である被控訴人を相手に、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、〔1〕本件各支出当時の県知事であるA知事に対し、不法行為に基づく損害賠償請求を、〔2〕本件各支出の専決権者である本件職員に対し、地方自治法243条の2の2に基づく賠償命令をすることを求める住民訴訟で、原審が、本件訴えのうち一部却下、、一部棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案で、本件訴えのうち、原判決別紙検証費目録記載の「流用費目」欄の費目に係る「金額」欄の金員の支出、並びに原判決別紙報償費等目録記載の「報償費」欄及び「旅費」欄の金員のうち令和元年9月25日から同年11月26日までにされた支出負担行為及び支出命令について、Aに対し損害賠償請求を、Zに対し賠償命令をそれぞれ行うことを求める部分についてはこれを却下し、控訴人のその余の請求についてはこれらをいずれも棄却するのが相当であり、これと同旨の原判決は結論において正当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.01.23
旅券不発給処分無効確認等請求事件 
LEX/DB25596481/福岡地方裁判所 令和 5年12月 6日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第25号 
原告は、日本国籍を有する父の子として日本において出生し、日本国籍を取得したが、2004年(平成16年)頃、自己の志望により米国の国籍を取得し、原告は、平成29年12月、外務大臣に対し、日本の旅券発給申請をしたが、外務大臣は、平成30年8月、国籍法11条1項により日本国籍を喪失していることを理由として、原告の上記旅券発給申請につき旅券不発給とする処分(本件処分)をした。本件は、原告が、国籍法11条1項は憲法の規定(憲法10条、22条2項及び13条、98条2項、14条1項)に反し無効であるとして、被告(国)に対し、本件処分の無効の確認請求、原告が日本国籍を有することの確認請求、原告が精神的苦痛を受けたことを理由として、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料3億円の一部請求として、慰謝料及び弁護士費用合計22万円等の支払請求をした事案で、国籍法11条1項が、憲法10条、13条及び22条2項並びに14条1項に違反せず、国籍法11条1項を改正しなかった立法不作為をもって、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められないとして、原告の請求をいずれも棄却した事例。
2024.01.04
不当利得返還請求事件 
LEX/DB25573204/最高裁判所第三小法廷 令和 5年12月12日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第317号 
上告人が、市会議員であった被上告人に対し、本件有罪判決が確定したため、被上告人の当選は公職選挙法251条の規定により無効となり、被上告人は遡って市会議員の職を失ったなどとして、本件議員報酬等相当額及び本件政務活動費相当額の不当利得の返還等を求めたところ、原審は、上告人は本件会派の唯一の所属議員であった被上告人に対し本件政務活動費相当額の不当利得返還請求権を有するなどとした上で、被上告人の相殺の抗弁を一部認めて、上告人の不当利得返還請求を相殺後の残額の限度で認容したため、上告人が上告した事案で、上記市会議員の職を失った当選人は、上告人に対し、市会議員として行った活動に関し、不当利得返還請求権を有することはないとし、被上告人は、上告人に対し、相殺の抗弁に係る不当利得返還請求権を有するものということはできないとし、相殺の抗弁は全部認められないところ、これを一部認めた原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を変更した事例(反対意見及び補足意見がある)。
2023.12.19
助成金不交付決定処分取消請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573159/最高裁判所第二小法廷  令和 5年11月17日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第234号 
映画製作会社である上告人(原告・被控訴人)が、被上告人(被告・控訴人)の理事長に対し、「宮本から君へ」と題する劇映画の製作活動につき、文化芸術振興費補助金による助成金の交付の申請をしたところ、理事長から、本件助成金を交付することは公益性の観点から適当でないとして、本件助成金を交付しない旨の決定(本件処分)を受けたため、被上告人を相手に、本件処分の取消しを求めたところ、第1審判決は、上告人の請求を認容したため、被上告人が控訴し、原判決は、本件処分は適法であるとして、本件処分の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案において、本件処分は、理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとし、これと異なる原審の前記判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、本件処分の取消請求を認容した第1審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.11.28
情報不開示決定取消等請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年3月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573120/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月26日 判決 (差戻上告審)/令和4年(行ヒ)第296号
東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた被上告人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(令和3年法律第37号による廃止前のもの)に基づき、東京矯正管区長に対し、被上告人が収容中に受けた診療に関する診療録に記録されている保有個人情報の開示を請求したところ、同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、その全部を開示しない旨の決定を受けたことから、本件決定は違法であると主張して、上告人を相手に、その取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第1審及び第1次控訴審は、本件情報は、行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たり、同法12条1項の規定による開示請求の対象から除外されるから、本件決定は適法であるとして、被上告人の請求をいずれも棄却したが、第1次上告審は、刑事施設に収容されている者(被収容者)が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないとし、本件情報は同法12条1項の規定による開示請求の対象となる旨判断して、第1次控訴審判決を破棄し、本件を原審に差戻した。その後の第2次控訴審は、本件訴えのうち本件決定の取消請求に係る部分につき、訴えの利益を欠くとして却下する一方、本件決定は行政機関個人情報保護法に反し違法であるとした上で、損害賠償請求を一部認容したため、上告人が上告した事案で、第2次上告審は、本件決定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の損害賠償請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は結論において正当であるから、上記部分につき被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.09.19
地方自治法第251条の5に基づく違法な国の関与(是正の指示)の取消請求事件  
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和5年11月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573025/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月 4日 判決 (上告審)/令和5年(行ヒ)第143号 
沖縄防衛局は、普天間飛行場の代替施設を沖縄県名護市辺野古沿岸域に設置するための公有水面の埋立てに関し、公有水面埋立法42条3項において準用する同法13条ノ2第1項に基づき、埋立地の用途及び設計の概要に係る変更の承認の申請(本件変更申請)をしたところ、上告人(原告・沖縄県)は変更を承認しない旨の処分(本件変更不承認)をした。被上告人(被告・国土交通大臣)は、沖縄防衛局の審査請求を受けて、本件変更不承認を取り消す裁決をし、その後、地方自治法245条の7第1項に基づき、沖縄県に対し、本件変更申請に係る変更の承認(本件変更承認)をするよう是正の指示をした。上告人は、本件指示を不服として、国地方係争処理委員会に対し、地方自治法250条の13第1項に基づく審査の申出をしたが、本件指示は違法でないと認める旨の審査結果の通知を受けたたため、上告人は、これを不服として、同法251条の5第1項1号に基づき、本件訴えを提起し、原判決は、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件裁決は本件変更不承認が本件各規定に違反することを理由として本件変更不承認を取消したものであるところ、上告人は本件変更不承認と同一の理由に基づいて本件変更承認をしないものといえるから、そのことは地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるものに該当するとし、本件指示は適法であるとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.08.29
懲罰決議取消等請求事件
LEX/DB25595611/大阪地方裁判所 令和 5年 7月14日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第154号 
市議会は、議員である原告に対し、原告の市議会の定例会の一般質問における発言について謝罪及び反省を求める旨の決議をしたことについて、原告は、〔1〕本件決議は違法な処分であるとして、被告を相手に、本件決議の取消しを求めるとともに、〔2〕本件決議並びに市議会の広報誌への本件決議の掲載及び同広報誌の頒布により原告の名誉が毀損されるなどしたとして、被告市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害金等の支払を求めた事案において、本件決議は、地方自治法135条1項1号の「公開の議場における戒告」に当たらず、また、本件決議は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に当たらないとし、本件取消しの訴えは、処分の取消しの訴えの対象とならない本件決議を対象として、処分の取消しの訴えを提起するものであるから不適法であるとして却下し、原告のその余の請求を棄却した事例。
2023.07.25
行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和5年10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和5年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572932/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 7月11日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第285号
一般職の国家公務員であり、性同一性障害である旨の医師の診断を受けている上告人(一審原告)が、国家公務員法86条の規定により、人事院に対し、職場のトイレの使用等に係る行政措置の要求をしたところ、いずれの要求も認められない旨の判定を受けたことから、被上告人(一審被告。国)を相手に、本件判定の取消し等を求め、第1審判決は、上告人の請求を一部認容したが、原判決は、本件判定部分の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件判定部分に係る人事院の判断は、本件における具体的な事情を踏まえることなく他の職員に対する配慮を過度に重視し、上告人の不利益を不当に軽視するものであって、関係者の公平並びに上告人を含む職員の能率の発揮及び増進の見地から判断しなかったものとして、著しく妥当性を欠いたものといわざるを得ないとし、本件判定部分は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとして、原判決中、人事院がした判定のうちトイレの使用に係る部分の取消請求に関する部分を破棄し、同部分につき被上告人の控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2023.07.18
ウイルス性肝炎患者の救済を求める全国B型肝炎訴訟広島訴訟損害賠償請求控訴事件 
LEX/DB25594965/広島高等裁判所 令和 5年 3月17日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第221号
B型慢性肝炎の患者である控訴人らが、乳幼児期に被控訴人・国が実施した集団予防接種又は集団ツベルクリン反応検査を受けた際、注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルス(HBV)に感染し、その後、成人になって慢性肝炎を発症し、いったんは沈静化した後に、更に慢性肝炎(HBe抗原陰性慢性肝炎)を再発したとして、従前の慢性肝炎の発症による損害とは区別される別個の損害が発生した旨主張して、上記再発後に発生した損害の包括一律請求として、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金等の各支払を求め、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したことから、控訴人らが控訴した事案で、本件においては、被控訴人の集団予防接種等と控訴人らのHBV感染との間の因果関係を肯定するのが相当であり、控訴人らのHBe抗原陰性慢性肝炎の発症に係る肉体的・経済的損害及び精神的損害は甚大なものがあるというべきであるから、控訴人らの請求は、本件の同法上の違法行為と相当因果関係のある損害賠償を求める限度で理由があるとして、原判決を取り消し、控訴人らの請求をいずれも認容した事例。
2023.06.27
警察庁保有個人情報管理簿一部不開示決定取消等請求控訴事件 
LEX/DB25595169/東京高等裁判所 令和 5年 5月17日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第31号
控訴人(原告)は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律4条1項に基づき、警察庁長官に対し、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律10条2項1号、2号又は11号に該当する個人情報ファイルの数及び名称、同ファイルに含まれる個人情報の概要等が分かる行政文書の開示請求をしたところ、同長官は、本件開示請求の対象となる文書を保有個人情報管理簿126通と特定した上で、そのうち同項11号に該当する個人情報ファイルに係る4通の管理簿を開示し、その余の122通の管理簿については、それぞれの項目を示す部分のみを開示し、各項目の内容を記載した部分はいずれも不開示とする旨の決定をしたことで、控訴人が、被控訴人(被告。国)に対し、本件処分の取消し及び本件各文書のうち本件不開示部分についての開示決定の義務付けを求め、原審は、原判決別表1の各記載欄に「○」を付していない部分は、情報公開法5条3号所定の情報(3号情報)又は同条4号所定の情報(4号情報)に該当すると認められる一方、その余の部分はこれらの該当性を認めることができず、情報公開法6条1項に基づいて開示されなければならないなどと判断して、本件処分のうち、原判決別表1記載の各部分は違法であるとしてこれを取消し、警察庁長官に対して同部分を開示する旨の決定をするよう命じ、本件処分のうちその余の取消請求については棄却し、本件訴えのうちその余の義務付け請求に係る部分は不適法として却下したため、これを不服とする控訴人が、控訴した事案において、本件不開示部分につき一律に不開示情報該当性を認めることはできず、本件各文書の記載欄ごとに不開示情報該当性を検討すべきところ、全10項目のうち3項目の記載欄についてはいずれも3号情報又は4号情報に該当すると認められ、7項目の記載欄については,そのうち分類A及び分類Bの情報については3号情報又は4号情報に該当すると認められる一方、分類Cの情報についてはこれらの該当性を認めることができないとし、7項目の記載欄のうち分類Cに係る部分は、情報公開法6条1項に基づき、開示しなければならないとして、原告の請求中、本件処分のうち本件各文書中別表1記載の各部分を不開示とした部分の取消しを求め、同部分につき開示決定の義務付けを求める部分については認容し、その余の取消請求については棄却し、本件訴えのうち、その余の義務付け請求に係る部分については却下した事例。
2023.06.06
損害賠償請求権行使請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和5年8月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25594882/名古屋地方裁判所 令和 5年 3月27日 判決 (第一審)/令和3年(行ウ)第18号
愛知県の住民である原告が、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に関し、県が要綱に基づいてあいちトリエンナーレのあり方検証委員会及び同検討委員会を設置したことは、地方自治法138条の4第3項に規定するいわゆる附属機関条例主義に違反するとともに、被告の組織編成権に係る裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであり、本件各委員会の委員に対する報償費及び旅費並びに検証作業等に要した費用に係る支出負担行為及び支出命令は違法であると主張して、県の執行機関である被告を相手に、同法242条の2第1項4号に基づき、〔1〕本件各支出当時の県知事Bに対し、不法行為に基づく損害賠償請求を、〔2〕本件各支出の専決権者である県職員Cに対し、同法243条の2の2に基づく賠償命令をすることを求めた住民訴訟の事案で、本件訴えのうち、別紙検証費目録記載の「流用費目」欄の費目に係る「金額」欄の金額の支出、並びに本件報償費等のうち令和元年9月25日から同年11月26日までにされた支出負担行為等について、B知事及び本件職員に対し、損害賠償請求等をすることを求める部分は不適法であるとして却下し、その余の請求を棄却した事例。
2023.05.23
納骨堂経営許可処分取消、納骨堂経営変更許可処分取消請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和5年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和5年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572835/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 5月 9日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第150号
大阪市長が、宗教法人であるA寺に対し、墓地、埋葬等に関する法律10条の規定により、納骨堂の経営の許可及びその施設の変更の許可をしたところ、同納骨堂の周辺に居住する被上告人らが、上告人を相手に、本件各許可の取消し(被上告人X5及び同X6にあっては本件変更許可の取消しを除く)を求め、原審は、本件納骨堂からおおむね300m以内の人家に居住する被上告人らは本件各許可の取消しを求める原告適格を有すると判断し、第1審判決のうち被上告人らの訴えを却下した部分を取消して、同部分につき本件を第1審に差し戻したため、上告人が上告した事案で、被上告人らは、いずれも、本件納骨堂の所在地からおおむね300m以内の場所に敷地がある人家に居住している者に当たるから、大阪市墓地、埋葬等に関する法律施行細則8条を根拠として、本件各許可の取消しを求める原告適格を有するものということができるとし、原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見、及び、意見がある)。
2023.01.17
LINEを用いたオンラインによる住民票の写し交付請求サービス適法確認請求事件
LEX/DB25593988/東京地方裁判所 令和 4年12月 8日 判決 (第一審)/令和2年(行ウ)第344号
原告は、市町村(特別区を含む)に対して、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者(住民)が当該市町村の長に対して行う住民票の写しの交付請求に係る手続につき、電子情報処理組織を使用する方法(LINEを用いたオンライン使用)によることができるサービスの提供を開始したが、〔1〕総務省自治行政局住民制度課長は、都道府県等に対し、電子署名による本人確認を行うことなくオンラインで住民票の写しの交付請求をすることは、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)12条3項、総務省関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則(平成15年総務省令第48号)4条2項等に違反する旨の通知(本件通知)を発出し、その後、〔2〕住民基本台帳の一部の写しの閲覧並びに住民票の写し等及び除票の写し等の交付に関する省令(昭和60年自治省令第28号)が令和3年総務省令第96号により改正され、本件省令22条において、住民票の写しの交付請求に当たっては、デジタル手続法総務省令4条2項ただし書の適用がない旨が規定され、電子署名及び電子証明書の併用による本人確認以外の方法によりオンラインで住民票の写しの交付請求をすることは、本件省令22条に違反することとなった事実関係の下において、原告が、〔1〕本件通知が違法であることの確認を求め(本件通知違法確認請求)、又は、〔2〕(本件通知及び)本件省令改正が違法であることを前提に、原告が(本件通知及び本件省令22条の存在にもかかわらず)本件サービスを適法に行い得る地位にあることの確認を求めた(本件地位確認請求)事案で、〔1〕本件各確認請求のうち、本件通知違法確認請求は確認の利益が認められず不適法な訴えであるが、本件地位確認請求は適法な訴えである、〔2〕本件省令22条は根拠法令の授権の範囲を超えるものとは認められないから、本件地位確認請求には理由がないものと判断し、本件訴えのうち、本件通知(総行住第55号)は違法であることを確認を求めた請求に係る部分を却下し、その余の請求を棄却した事例。
2022.12.27
処分取消等請求事件
LEX/DB25572483/最高裁判所第三小法廷 令和 4年12月13日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第120号
上告人が、本件組合の権利義務を承継した被上告人組合を相手に、上告人の妻は被扶養者に該当すると主張して、本件通知の取消しを求めるとともに、被上告人国を相手に、本件決定及び本件裁決は違法であるなどと主張して、本件裁決の取消し及び国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたところ、原審は、本件再審査請求を却下した本件裁決は適法であるなどとして、本件裁決の取消請求及び損害賠償請求をいずれも棄却したため、上告人が上告した事案で、健康保険組合が被保険者に対して行うその親族等が被扶養者に該当しない旨の通知は、健康保険法189条1項(平成26年法律第69号による改正前のもの)所定の被保険者の資格に関する処分に該当するとし、被上告人組合に対する本件通知の取消請求に係る訴えは不適法であり、同請求につき本案の判断をした原判決は失当であるから、原判決中同請求に関する部分を破棄し、同部分につき第1審判決を取消し、上記訴えを却下し、また、上告人の被上告人国に対する上告を棄却した事例(反対意見がある)。
2022.12.20
公有水面埋立承認取消処分取消裁決の取消請求事件
LEX/DB25572473/最高裁判所第一小法廷 令和 4年12月 8日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第92号
沖縄県副知事は、上告人の執行機関として、沖縄防衛局に対し、普天間飛行場の代替施設を沖縄県名護市辺野古沿岸域に設置するための公有水面の埋立てに関してされた公有水面埋立法42条1項に基づく承認につき、事後に判明した事情等を理由とする取消しをしたが、国土交通大臣は、地方自治法255条の2第1項1号の規定による同局の審査請求を受けて、本件承認取消しを取り消す裁決をしたことで、上告人が、同大臣の所属する行政主体である被上告人を相手に、本件裁決の取消しを求めたところ、原判決は上告人の控訴を棄却したため、上告人が上告した事案で、地方自治法255条の2第1項1号の規定による審査請求に対してされた本件裁決について、原処分である本件承認取消しをした執行機関の所属する行政主体である上告人は、取消訴訟を提起することができないとし、上告人が提起した本件裁決の取消しを求める本件訴えを却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。