注目の判例

民法(財産法)

2024.04.02
共通義務確認請求事件
LEX/DB25573400/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 3月12日 判決 (上告審)/令4年(受)第1041号 
特定適格消費者団体である上告人が、被上告人らが本件対象消費者に対して虚偽又は実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調した説明をして商品を販売するなどしたことが不法行為に該当すると主張して、被上告人らに対し、平成29年法律第45号による改正前の消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律3条1項5号又は同改正後の同項4号に基づき、被上告人らが本件対象消費者に対して上記商品の売買代金相当額等の損害賠償義務を負うべきことの確認を求め、同法2条4号所定の共通義務確認の訴えをしたところ、原審は、本件訴えを却下したため、上告人が上告した事案で、過失相殺及び因果関係に関する審理判断を理由として、本件について、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断には、同項の解釈適用を誤った違法があり、他に予想される当事者の主張等を考慮し、個々の消費者の対象債権の存否及び内容に関して審理判断をすることが予想される争点の多寡及び内容等に照らしても、本件対象消費者ごとに相当程度の審理を要するとはいえないとして、原判決を破棄し、第1審判決を取消し、更に審理を尽くさせるため、本件を第1審に差し戻した事例(補足意見がある)。
2024.04.02
損害賠償請求事件
LEX/DB25597024/神戸地方裁判所 令和 5年12月14日 判決 (第一審)/令3年(ワ)第1804号 
原告は、被告・兵庫県が設置運営する病院の整形外科において、同病院のd医師により診療を受けた者であるが、原告が、上記診療のために実施されたミエログラフィー(脊髄造影検査)により、原告に脊髄損傷に伴う左下肢麻痺等の障害が残存した事故に関して、d医師には、〔1〕本件ミエログラフィーの際に、脊髄損傷の高度の危険性がある第1腰椎第2腰椎間レベル(L1/2)の穿刺を行った過失がある、〔2〕脊髄損傷の高度の危険性があることについて説明することなく、L1/2の穿刺を行ったことにつき、説明義務違反があるなどと主張して、使用者責任又は診療契約の債務不履行に基づき、損害賠償金等の支払を求めた事案で、d医師は、L1/2の穿刺にあたって、本件ミエログラフィーの必要性と、L1/2の穿刺による危険性との衡量や代替手段の有無等について、熟慮することなく、その必要性についての判断を誤ったものであり、その判断に過失があったといえるうえ、当初予定していなかったL1/2に穿刺する前に、その方法による脊髄損傷のリスクなどに関する具体的な説明を何らしていないのであるから、説明義務を尽くしたということはできないところ、原告の請求は、本件事故と相当因果関係のある損害賠償を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容した事例。
2023.12.26
取立金請求事件 
LEX/DB25573172/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月27日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1620号 
建物の根抵当権者であり、物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえた上告人が、賃借人である被上告人に対し、当該賃料債権のうち2790万円の支払を求める取立訴訟で、原審は、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案において、被上告人は、物上代位権を行使して本件将来賃料債権を差し押さえた根抵当権者である上告人に対し、本件相殺合意の効力を対抗することはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決を破棄し、本件将来賃料債権(2790万円)の支払を求める上告人の請求は理由があるから、これを棄却した第1審判決を取消し、請求を認容した事例(補足意見及び意見がある)。
2023.11.21
損害賠償請求事件 
LEX/DB25573116/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月23日 判決 (上告審)/令和3年(受)第2001号
M社からマンションの建築工事を請け負った被上告人が、上告人会社においてM社から上記マンションの敷地を譲り受けた行為が被上告人のM社に対する請負代金債権及び上記マンションの所有権を違法に侵害する行為に当たると主張して、上告人会社に対しては、不法行為に基づき、その代表取締役である上告人Y1に対しては、主位的に不法行為、予備的に会社法429条1項に基づき、被上告人の損害の一部である1億円及び遅延損害金の連帯支払を求め、原審は、被上告人の上告人らに対する不法行為に基づく損害賠償請求を認容すべきものとしたため、上告人らが上告した事案で、マンションの建築工事の注文者から上記マンションの敷地を譲り受けた行為は、自ら上記マンションを分譲販売する方法によって請負代金債権を回収するという請負人の利益を侵害するものとして本件債権を違法に侵害する行為に当たらないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、本件行為は、被上告人の権利又は法律上保護される利益を侵害するものではなく、被上告人の上告人らに対する請求は、いずれも理由がないことが明らかであるから、第1審判決中上告人らに関する部分を取り消し、被上告人の上告人らに対する請求をいずれも棄却した事例(反対意見がある)。
2023.10.31
損害賠償請求事件 
LEX/DB25573103/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月16日 判決 (上告審)/令和4年(受)第648号 
交通事故によって死亡したAの配偶者又は子である上告人らが、加害車両の運転者である被上告人らに対し、民法709条、719条等に基づき、損害賠償を求め、原審は、上告人X1の民法709条、719条に基づく請求を357万9854円及び遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容すべきものとし、上告人子らの各請求をそれぞれ105万0761円及び遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容したため、上告人らが上告した事案で、人身傷害保険の保険会社(参加人)が上告人らに対して人身傷害保険金額に相当する額を支払った場合において、上告人らの被上告人に対する損害賠償請求権の額から上記の支払額を全額控除することはできないとして、原判決を一部変更し、その余の上告人らの請求を棄却した事例。
2023.10.10
損害賠償請求事件  
LEX/DB25595973/那覇地方裁判所 令和 5年 8月23日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第899号 
企業向けの衣類クリーニング業を営む原告が、被告会社から購入した本件システムの使用中に事故が発生して損害を被ったなどと主張して、被告会社に対し、製造物責任又は債務不履行責任に基づく損害賠償請求として(選択的請求)、被告会社の取締役であるその余の被告らに対し、会社法429条1項に基づく損害賠償請求として、連帯して、賠償金等の支払を求めた事案において、原告は、各被告に対して、それぞれ請求する損害額全額を請求することができ、このうち被告B、被告C及び被告Dが負う各債務は連帯債務となり(会社法430条)、もっとも、被告Bら3名の責任は、特別の法定責任と解するのが相当であって、被告会社の責任について、不法行為責任の特則と解される製造物責任法3条に基づく製造物責任を選択しても、債務不履行責任を選択しても、被告会社と被告Bら3名が不真正連帯債務を負うことにはならないとした事例。
2023.09.05
国家賠償請求控訴事件 
LEX/DB25595642/札幌高等裁判所 令和 5年 6月22日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第202号 
被控訴人らが、札幌市内で実施された第25回参議院議員通常選挙の候補者のための街頭応援演説に対し、路上等から「P1辞めろ」、「増税反対」などと声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕などをつかまれて移動させられ、あるいは長時間にわたって付きまとわれるなどしたと主張して、北海道警察を設置する地方公共団体である控訴人に対し、それぞれ国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金330万円等の支払を求め、原審は、警察官らが被控訴人らに対して違法な有形力の行使等を行ったものと認め、警察官らによるこれらの違法行為によって、被控訴人らの表現の自由のほか、被控訴人2の移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権が侵害されたとして、被控訴人らの請求のうち、被控訴人1につき33万円、被控訴人2につき55万円の各損害賠償金等の支払を求める限度で認容し、その余の請求はいずれも理由がないとして棄却したため、控訴人が控訴した事案において、被控訴人1の控訴人に対する請求は理由がなく棄却すべきであるから、被控訴人1の請求を一部認容した原判決は一部失当であり、控訴人の被控訴人1に対する控訴は理由があるから、原判決主文第1項を取消し、同部分につき被控訴人1の請求を棄却することとし、被控訴人2の控訴人に対する請求を一部認容した原判決は相当であり、控訴人の被控訴人2に対する控訴を棄却した事例。
2023.08.15
損害賠償請求事件(那須雪崩事故遺族側勝訴判決) 
LEX/DB25595542/宇都宮地方裁判所 令和 5年 6月28日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第83号 
被告高体連主催の平成28年度春山安全登山講習会において、平成29年3月27日雪崩が発生し、県立高等学校の部活動の一環として参加していた生徒及び教師が死亡した雪崩事故について、被告県の公務員であり、かつ、本件講習会の講師であった被告P1、被告P2及び被告P3並びに被告高体連が、雪崩の発生を予見し、本件講習会を中止すべき義務があったのにこれを怠ったことによって生じたものであるとして、本件被災者らの遺族である原告らが、被告三講師及び被告高体連に対しては民法709条に基づき、被告県に対しては国家賠償法1条1項に基づき、各損害賠償金等の連帯支払を求めた事案で、被告県及び被告高体連に対する請求について、本件事故により各原告らに対し、別紙認容額一覧表の記載額の範囲内で賠償責任を負うとして認容し、原告らの被告県及び被告高体連に対するその余の請求並びに被告三講師に対する請求については、いずれも棄却した事例。
2023.07.18
ウイルス性肝炎患者の救済を求める全国B型肝炎訴訟広島訴訟損害賠償請求控訴事件 
LEX/DB25594965/広島高等裁判所 令和 5年 3月17日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第221号
B型慢性肝炎の患者である控訴人らが、乳幼児期に被控訴人・国が実施した集団予防接種又は集団ツベルクリン反応検査を受けた際、注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルス(HBV)に感染し、その後、成人になって慢性肝炎を発症し、いったんは沈静化した後に、更に慢性肝炎(HBe抗原陰性慢性肝炎)を再発したとして、従前の慢性肝炎の発症による損害とは区別される別個の損害が発生した旨主張して、上記再発後に発生した損害の包括一律請求として、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金等の各支払を求め、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したことから、控訴人らが控訴した事案で、本件においては、被控訴人の集団予防接種等と控訴人らのHBV感染との間の因果関係を肯定するのが相当であり、控訴人らのHBe抗原陰性慢性肝炎の発症に係る肉体的・経済的損害及び精神的損害は甚大なものがあるというべきであるから、控訴人らの請求は、本件の同法上の違法行為と相当因果関係のある損害賠償を求める限度で理由があるとして、原判決を取り消し、控訴人らの請求をいずれも認容した事例。
2023.06.27
損害賠償請求事件 
LEX/DB25595221/大阪地方裁判所堺支部 令和 5年 5月16日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第1255号
原告が、東京証券取引所市場第一部に上場されていた被告U社の株式を公募増資に応じて取得し、その後同株式を買い増ししたところ、公募増資の際に提出された有価証券届出書には重要な事項について虚偽の記載があり、後日粉飾決算の事実が発覚して株価が暴落したために売却損等の損害を被ったなどとして、(1)被告U社に対しては、金融商品取引法18条1項(発行市場における取得株式関係)又は同法21条の2第1項(流通市場における取得株式関係)に基づき、(2)上記有価証券届出書に係る連結財務諸表の監査証明をした被告S監査法人に対しては、金商法21条1項3号(発行市場における取得株式関係)又は金商法22条1項(流通市場における取得株式関係)に基づき、(3)上記公募増資の元引受契約を締結した金融商品取引業者である被告M証券に対しては、金商法21条1項4号(発行市場における取得株式関係)に基づき、それぞれ損害賠償を求めた事案において、原告の、(1)被告U社に対する請求は、請求額を減額した内容で一部認容し、その余は理由がないとして棄却し、(2)〔1〕被告S監査法人に対する請求及び〔2〕被告M証券に対する請求はいずれも理由がないとして棄却した事例。
2023.05.30
3番所有権抹消登記等請求事件 
LEX/DB25572855/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 5月19日 判決 (上告審)/令和4年(受)第540号
Aの遺言執行者である被上告人が、本件土地はAの相続財産であり、本件土地につきAの遺言の内容に反する登記がされているなどと主張して、本件土地につき本件登記を受けた上告人らに対し、本件登記の抹消登記手続等を求めた事案の上告審において、上告人の本件登記の抹消登記手続請求のうち、上告人らの持分合計3分の2(上告人Y1の持分150分の23、上告人Y2の持分150分の42及び上告人Y3の持分150分の35)に関する部分については、同部分に係る訴えを却下すべきであり、上記持分合計3分の2を除くその余の持分に関する部分については、上告人らの持分を合計6分の5(上告人Y1の持分120分の23、上告人Y2の持分120分の42及び上告人Y3の持分120分の35)とする所有権一部移転登記への更正登記手続を求める限度で認容し、その余の請求を棄却すべきであるとし、原判決を一部変更した事例。
2023.04.11
共有持分移転登記手続請求事件
LEX/DB25572742/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月24日 判決 (上告審)/令和4年(受)第324号
上告人は、被上告人に対し、遺留分減殺を原因とする不動産の所有権一部移転登記手続を求める訴えを提起したが、被上告人は、適式な呼出しを受けたにもかかわらず、第1審の第1回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかったため、第1審で、一人の裁判官によって審理されていたところ、同裁判官は、上記期日において口論弁論を終結し、判決言渡期日を指定し、上記の指定に係る判決言渡期日において、上記口頭弁論に関与していない裁判官が、民事訴訟法254条1項により、判決書の原本に基づかないで上告人の請求を全部認容する第1審判決を言い渡したが、上告人は、本件第1審判決には民事訴訟法249条1項に違反する判決手続の違法があり、これは再審事由(同法338条1項1号)にも当たるなどとして、本件第1審判決を取消し、改めて上告人の請求を全部認容する旨の判決を求めて控訴をし、原判決は、本件控訴は不適法であるとして却下したため、上告人が上告した事案で、第1審において、事件が一人の裁判官により審理された後、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が民事訴訟法254条1項により判決書の原本に基づかないで第1審判決を言い渡した場合、その判決手続は同法249条1項に違反するものであり、同判決には民事訴訟の根幹に関わる重大な違法があり、また、上記の違反は、訴訟記録により直ちに判明する事柄であり、同法338条1項1号に掲げる再審事由に該当するものであるから、上記の第1審判決によって紛争が最終的に解決されるということもできないとして、上告人は、本件第1審判決に対して控訴をすることができるとし、本件控訴を不適法であるとして却下した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、改めて審理をさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2023.02.21
根抵当権実行禁止等仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25572582/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 2月 1日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第16号
抗告人所有の不動産について相手方を根抵当権者とする根抵当権の実行としての競売の開始決定がされたところ、抗告人が、上記根抵当権の被担保債権が時効によって消滅したことにより上記根抵当権は消滅したと主張して、相手方に対し、上記競売手続の停止及び上記根抵当権における実行禁止の仮処分命令の申立てをしたところ、原審は、本件破産管財人がした認識の表示は本件各被担保債権についての債務の承認(民法147条3号(平成29年法律第44号による改正前のもの))に当たり、本件各被担保債権の消滅時効を中断する効力を有するから、本件各被担保債権の消滅時効は完成していないとして、原審は、本件申立ての却下決定に対する抗告棄却決定をしたため、抗告人が許可抗告をした事案において、破産管財人が、別除権の目的である不動産の受戻しについて上記別除権を有する者との間で交渉し、又は、上記不動産につき権利の放棄をする前後に上記の者に対してその旨を通知するに際し、上記の者に対して破産者を債務者とする上記別除権に係る担保権の被担保債権についての債務の承認をしたときは、その承認は上記被担保債権の消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当であるとし、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.02.14
発信者情報開示請求事件
LEX/DB25572563/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 1月30日 判決 (上告審)/令和3年(受)第2050号
インターネット上の電子掲示板に原判決別紙2投稿記事目録記載の本件記事が投稿されたことによって自己の権利を侵害されたとする上告人が、本件記事を投稿した者にインターネット接続サービスを提供した経由プロバイダである被上告人に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項(令和3年法律第27号による改正前のもの)に基づき、上記権利の侵害に係る発信者情報として、被上告人の保有する原判決別紙1発信者情報目録記載〔5〕の本件情報(発信者の電話番号)等の開示を請求したところ、原審は、本件情報の開示を求める上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該権利の侵害が改正省令の施行前にされたものであったとしても、プロバイダー責任制限法4条1項に基づき、当該権利の侵害に係る発信者情報として、上記施行後に発信者の電話番号の開示を請求することができるとして、上告人は、上記施行前に本件記事の投稿によってされた自己の権利の侵害に係る発信者情報として、発信者の電話番号の開示を請求することができるとして、原判決中、上告人の原審における追加請求に関する部分は破棄し、原審の確定した事実関係の下においては、上記部分に関する上告人の請求は理由があるから、上記請求を認容した事例。
2023.02.14
損害賠償請求事件
LEX/DB25572561/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 1月27日 判決 (上告審)/令和3年(受)第968号
統合失調症の治療のため、上告人(被告・被控訴人。香川県)の設置する本件病院に入院した患者が、入院中に無断離院をして自殺したことについて、患者の相続人である被上告人(原告・控訴人)が、上告人には、診療契約に基づき、本件病院においては無断離院の防止策が十分に講じられていないことを患者に対して説明すべき義務があったにもかかわらず、これを怠った説明義務違反があるなどと主張して、上告人に対し、債務不履行に基づく損害賠償を求め、原審は、平日の日中は敷地の出入口である門扉が開放され、通行者を監視する者がおらず、任意入院者に徘徊センサーを装着するなどの対策も講じていないため、単独での院内外出を許可されている任意入院者は無断離院をして自殺する危険性があることを負っていたとし、これをを怠った説明義務違反を理由とする被上告人の損害賠償請求を一部認容したため、上告人が上告した事案で、上告人が、患者に対し、本件病院と他の病院の無断離院の防止策を比較した上で入院する病院を選択する機会を保障すべきであったということはできず、これを保障するため、上告人が、患者に対し、本件病院の医師を通じて、説明をすべき義務があったということはできないとし、本件病院の医師が、本件患者に対し、説明をしなかったことをもって、上告人に説明義務違反があったということはできないとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、上記部分に関する被上告人の請求を棄却した事例。
2022.12.27
消費者契約法12条に基づく差止等請求事件
LEX/DB25572479/最高裁判所第一小法廷 令和 4年12月12日 判決 (上告審)/令和3年(受)第987号
一審原告(適格消費者団体・上告人)が、一審被告(家賃債務保証会社・被上告人)に対し、一審被告がした賃貸人、賃借人等との間で、「住み替えかんたんシステム保証契約書」と題する契約書(本件契約書)13条1項前段、18条2項2号等の各条項が消費者契約法10条に規定する消費者の利益を一方的に害する消費者契約の条項に当たるなどと主張して、消費者契約法12条3項本文に基づき、上記各条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の各差止め、上記各条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙の各廃棄等を求めたところ、第1審判決は、契約書用紙の各廃棄することで一審原告の請求を一部認容、一部棄却したため、双方が控訴し、原判決は、一審原告の本件契約書13条1項前段に関する請求を棄却したことにより、一審原告が上告をした事案で、本件契約書13条1項前段、及び、本件契約書18条2項2号は、消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項に当たるとし、原判決主文第1項を破棄して、一審被告の控訴を棄却し、原判決中、本件契約書13条1項前段に係る請求に関する部分を主文第2項のとおり変更するとともに、一審原告の本件契約書18条2項2号に係るその余の請求に関する上告を棄却した事例。
2022.11.22
損害賠償請求事件
LEX/DB25593553/札幌地方裁判所 令和 4年10月19日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第295号
被告が開設し経営する被告病院において、入院治療中に死亡したP4の配偶者であるP1(令和4年7月20日に死亡し、原告がその訴訟上の地位を承継)及び子である原告が、被告に対し、〔1〕亡P4は、敗血症にり患し、急性腎不全の状態にあったから、造影剤を投与すべきではなかったにもかかわらず、造影CTを行うために造影剤を投与した注意義務違反があり、これにより急性腎不全を重篤化させるとともに、心原性ショックを生じさせ、その結果、乏尿状態となったのであるから、〔2〕大量の輸液投与をすべきではなかったにもかかわらず、これを行った注意義務違反があり、これらにより、亡P4に高カリウム血症を生じさせ、うっ血性心不全により死亡させたと主張し、被告に対し、診療契約上の債務不履行に基づき、それぞれ、損害金の支払等を求めた事案で、造影剤投与行為及び大量輸液行為によって、亡P4が死亡したとは認められず、造影剤投与行為及び大量輸液行為が注意義務違反であるとはいえないとして、原告の請求を棄却した事例。
2022.10.18
取立金請求事件
LEX/DB25572355/最高裁判所第一小法廷 令和 4年10月 6日 判決 (上告審)/令和2年(受)第1462号
補償金の支払請求権を差し押さえた上告人が、被上告人(マンション建替事業の施行者)に対し、本件補償金及びこれに対する遅延損害金を供託の方法により支払うことを求めた取立訴訟で、原審は、上告人の請求を棄却すべきものとしたため、上告人が上告した事案で、被上告人は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律76条3項に基づく本件補償金の供託義務を負うところ、本件補償金の支払請求権に対して、上告人、北おおさか信用金庫及び近畿信用保証の各申立てに基づき、複数の差押命令が発せられ、差押えの競合が生じたのであるから、被上告人は、本件補償金について、同項及び民事執行法156条2項を根拠法条とする混合供託をしなければならないとし、被上告人は、本件供託をもって上告人に対抗することができないことになり、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、これを棄却した第1審判決を取消し、上記請求を認容した事例。
2022.10.04
賃借権不存在等確認請求控訴事件
LEX/DB25593194/東京高等裁判所 令和 3年 9月 9日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第421号
被控訴人会社との間で、本件土地につき建物所有を目的として賃貸借契約を締結している控訴人会社が、被控訴人から本件賃貸借契約には同契約を更新することなく当然に終了させる旨の合意があるなどと主張されていることから、本件賃貸借契約が借地借家法5条及び6条の適用のある賃貸借契約であることの確認を求める利益があると主張して、被控訴人との間でその確認を求め、原審が、本件の確認の訴えは即時確定の利益があるとはいえず、不適法であるとして却下したため、控訴人が控訴した事案で、本件借地権が借地借家法5条及び6条の適用を受けるものであるか否かは、本件借地権及び本件受益権の現在の財産的価格並びに本件土地及び本件建物に係る控訴人の権利関係全般に影響を及ぼす権利内容ということができるのであって、本件賃貸借契約の賃貸人である被控訴人が本件借地権につき上記各規定の適用による更新の余地を否定していることに照らせば、これにより控訴人の権利及び法的地位に危険又は不安が現存するものと評価すべきであり、その危険又は不安を除去するためには、本件の確認請求について判決をすることが必要かつ適切であると認めるのが相当であるところ、控訴人の訴えを却下した原判決は相当でないとしてこれを取り消し、本件を東京地方裁判所に差し戻した事例。
2022.09.13
損害賠償請求控訴事件、損害賠償請求附帯控訴事件
LEX/DB25593003/東京高等裁判所 令和 4年 7月 6日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第5471号 等
被控訴人(原審被告)医療法人との間で診療契約を締結したP3が、被控訴人医療法人の被用者であるP4医師から、被控訴人医療法人の開設する本件病院において、患者自身のがん組織を用いて作製されたワクチンによる治療を受けた際、P4医師及び被控訴人(原審被告)C社は、共謀して、P3に対し、本件治療において必要な説明をせず、また、必要な検査を実施せず、P3を死亡させたとして、P3の相続人である控訴人(原審原告)が、被控訴人医療法人に対して民法715条1項に基づき、被控訴人C社に対して民法709条に基づき、連帯して損害賠償金等の支払を求め、原審が、P4医師の説明義務違反を認め、本訴請求のうち被控訴人医療法人に対して110万円の支払等を命じ、その余の請求を棄却したところ、控訴人が原判決中控訴人敗訴部分を不服として控訴し、被控訴人医療法人も原判決中同被控訴人敗訴部分を不服として附帯控訴した事案で、控訴人の請求(当審において請求を減縮したもの)は、被控訴人医療法人に対して270万4760円及びうち245万4760円に対する平成29年8月12日から支払済みまで年5%の割合による金員の支払を求める限度で一部認容し、その余の請求を棄却すべきであるところ、これと異なり、被控訴人医療法人に対して110万円及びこれに対する平成29年8月12日から支払済みまで年5%の割合による金員の限度で請求を一部認容し、その余を棄却した原判決は一部失当であって、控訴人の被控訴人医療法人に対する本件控訴は一部理由があるから、原判決のうち被控訴人医療法人に対する請求に関する部分を上記のとおり変更することとし(仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さない。)、被控訴人C社に対する本件控訴及び被控訴人医療法人の附帯控訴をいずれも棄却した事例。