注目の判例

民法(財産法)

2019.04.23
損害賠償等請求事件 
「新・判例解説Watch」財産法分野 6月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25506542/東京地方裁判所 平成31年 3月22日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第4826号
知的障害者dが、被告の福祉型障害児入所施設を出て行方不明となり死亡するに至ったのは、被告の本件施設の利用契約上の債務不履行(入所利用者に対する安全配慮義務違反)又は被告自身若しくは被告の職員の過失によるものであると主張して、亡dの両親である原告らが、被告(社会福祉法人)に対し、債務不履行又は不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき、包括的慰謝料の支払等を求めた事案で、自閉症で重度の知的障害者であるdにおいても、一般就労を前提とした平均賃金を得る蓋然性それ自体はあったものとして、その逸失利益算定の基礎となる収入としては、福祉的就労を前提とした賃金や最低賃金によるのではなく、一般就労を前提とする平均賃金によるのが相当であるとしたうえで、逸失利益を算定し、原告らの請求を一部認容した事例。
2019.04.16
固定資産評価審査決定取消請求事件
LEX/DB25570173/最高裁判所第三小法廷 平成31年 4月 9日 判決 (上告審)/平成30年(行ヒ)第262号
三重県志摩市所在の2筆の土地に係る固定資産税の納税義務者である上告人が、各土地につき、志摩市長により決定され土地課税台帳に登録された平成27年度の価格を不服として志摩市固定資産評価審査委員会に対し審査の申出をしたところ、これを棄却する旨の本件各決定を受けたため、被上告人を相手に、その取消しを求め、原審は、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件商業施設に係る開発行為に伴い本件各土地が調整池の用に供されており、その調整機能を保持することが上記開発行為の許可条件になっていることを理由に、本件土地の面積の80%以上に常時水がたまっていることなど、本件各土地の現況等について十分に考慮することなく、本件各土地は宅地である本件商業施設の敷地を維持するために必要な土地であるとして、本件各登録価格が評価基準によって決定される本件各土地の価格を上回るものではないとした原審の判断は、固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、本件各土地のそれぞれの現況、利用目的等に照らし、本件各登録価格が評価基準によって決定される本件各土地の価格を上回らないか否かについて更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2019.04.16
謝罪広告等請求事件
LEX/DB25562521/東京地方裁判所 平成31年 1月21日 判決 (第一審)/平成25年(ワ)第16925号
近現代日本経済史の研究を行う歴史学者・経済学者が30余年以前に出版した著作に対して、同分野の歴史学者・経済学者から大学の最終講義及び著作の中で自己の論文等を剽窃・盗用したものであると指摘されたことが名誉毀損に当たるとして不法行為に基づき慰謝料及び謝罪広告等を求めた訴えについて、剽窃・盗用の事実に関する真実の証明はなく、また、真実と信じたことに相当の理由もないとして、名誉毀損の訴えが認容され、慰謝料請求が認められた事例。
2019.04.09
保有個人情報開示請求事件
LEX/DB25570114/最高裁判所第一小法廷 平成31年 3月18日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1908号
被上告人が、銀行である上告人に対し、被上告人の亡母が提出した本件印鑑届書の情報は個人情報の保護に関する法律2条7項に規定する保有個人データに該当すると主張して、同法28条1項に基づき、本件印鑑届書の写しの交付を求め、原審は、被上告人の請求を認容したため、上告人が上告した事案において、相続財産についての情報が被相続人に関するものとしてその生前に個人情報保護法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるものであったとしても、そのことから直ちに、当該情報が当該相続財産を取得した相続人等に関するものとして「個人に関する情報」に当たるということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼす明らかな法令の違反があり、原判決を破棄し、被上告人の請求を棄却した第1審判決は結論において正当であるから、被上告人の控訴を棄却した事例。
2019.04.09
損害賠償請求事件
LEX/DB25562457/福島地方裁判所いわき支部 平成31年 2月19日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第176号
福島第一原子力発電所(本件原発)の従業員である原告Aの家族らが、被告(東京電力)に対し、平成23年3月11日に本件原発で発生した事故により避難を余儀なくされたと主張して、原子力損害の賠償に関する法律3条1項に基づき、慰謝料、避難帰宅費用の支払等を求めた事案において、原告Aの被告での異動は本件事故に起因するものと推認するのが相当であり、本件事故がなかったとしても被告が原告Aに同様の異動を命ずる業務上の具体的必要性があったことを基礎付ける事情を認めるべき証拠はなく、他にこの推認を妨げる事情を認めるべき証拠はないとし、原告らが、本件事故の発生から平成29年5月31日までの間、居住できず、原告らが有する生活地域内における居住を継続する利益が侵害されたことと本件事故との間には相当因果関係が認められるとして、原告らの請求を一部認容した事例。
2019.04.02
発信者情報開示請求事件
LEX/DB25562304/東京地方裁判所 平成30年12月10日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第18743号
中学時代にいじめを受けた原告は、氏名不詳者において、被告S社、同N社、同K社(いずれも電気通信事業等を営む株式会社)を経由プロバイダとしながら、電子掲示板に原告が上記いじめの被害者である旨の記載を含む各記事を投稿したことにより、原告のプライバシーを明白に侵害されたとして、被告らに対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、上記投稿をした者の氏名又は名称等、別紙発信者情報目録1ないし3記載の各情報の開示を求めた事案で、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、原告の被告S社に対する請求は、別紙発信者情報目録1記載1及び2の各情報の開示を求める限度で理由があるとして、一部認容し、原告の被告N社に対する請求及び原告の被告K社に対する請求は、いずれも理由があるとして、認容した事例。
2019.03.26
損害賠償請求事件
LEX/DB25570097/最高裁判所第三小法廷 平成31年 3月12日 判決 (上告審)/平成30年(受)第269号
統合失調症により精神科の医師である上告人の診療を受けていた患者が、中国の実家に帰省中に自殺したことについて、本件患者の相続人である被上告人らが、上告人には本件患者の自殺を防止するために必要な措置を講ずべき義務を怠った過失があるなどと主張して、上告人に対し、債務不履行又は不法行為に基づき損害賠償を求め、原審は、被上告人らの不法行為に基づく損害賠償請求を一部認容したため、これに不服の上告人が上告した事案で、上告人が、抗精神病薬の服薬量の減量を治療方針として本件患者の診療を継続し、これにより本件患者の症状が悪化する可能性があることを認識していたことを考慮したとしても、被上告人X1からの本件電子メールの内容を認識したことをもって、本件患者の自殺を具体的に予見することができず、上告人に、本件患者の自殺を防止するために必要な措置を講ずべき義務があったとはいえないとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人らの請求を棄却した第1審判決は結論において是認することができるとし、上記部分に関する被上告人らの控訴を棄却した事例。
2019.03.19
損害賠償等請求事件 
「新・判例解説Watch」財産法分野 5月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25570072/最高裁判所第三小法廷 平成31年 3月 5日 判決 (上告審)/平成30年(受)第234号
被上告人(団地建物所有者)が、同じ団地建物所有者である上告人らがその専有部分についての個別契約(電力会社との電力供給契約)の解約申入れをすべきという本件決議又は本件細則に基づく義務に反して上記解約申入れをしないことにより、本件高圧受電方式への変更がされず、被上告人の専有部分の電気料金が削減されないという損害を被ったと主張して、上告人らに対し、不法行為に基づく損害賠償を求め、原審は、被上告人の請求を認容すべきものとしたため、上告人らが上告した事案において、上告人らは、本件決議又は本件細則に基づき上記義務を負うものではなく、上告人らが解約申入れをしないことは、被上告人に対する不法行為を構成するものとはいえないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、第1審判決を取消し、被上告人の請求を棄却した事例。
2019.03.05
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 7月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25570039/最高裁判所第三小法廷 平成31年 2月19日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1456号
被上告人が、上告人に対し、上告人が被上告人の妻であったAと不貞行為に及び、これにより離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為に基づき、離婚に伴う慰謝料等の支払を求めたところ、原審は、被上告人の請求を一部認容すべきものとしたため、これに不服の上告人が上告した事案において、上告人は、被上告人の妻であったAと不貞行為に及んだものであるが、これが発覚した頃にAとの不貞関係は解消されており、離婚成立までの間に特段の事情があったことはうかがわれないとし、被上告人は、上告人に対し、離婚に伴う慰謝料を請求することができないとした。これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決を破棄し、被上告人の請求は、第1審判決中上告人敗訴部分を取消し、同部分につき被上告人の請求を棄却した事例。
2019.02.12
損害賠償請求事件
LEX/DB25562111/東京地方裁判所 平成31年 1月16日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第35518号
被告は、報道機関に対し、被告のタクシーに乗車中の「P3」の名で音楽活動等を行っている原告を撮影したドライブレコーダーの動画(本件映像)が収録された記録媒体を、原告に無断で提供した行為は、原告の人格的利益及びプライバシー権を侵害するものであり、本件映像がテレビ番組で放映され、また、インターネット上でも拡散したことにより、精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、不法行為による損害の賠償として、慰謝料及び弁護士費用の合計1100万円の支払等を求めた事案において、本件提供行為の目的に公益性が認められず、本件映像が必ずしも秘匿性・プライバシー性の低い情報とはいえず、本件提供行為に至る経緯にやむを得ない事情が認められないことからすれば、本件提供行為が正当行為として違法性を阻却されることはないとし、原告の請求額を減額して一部認容した事例。
2019.01.08
損害賠償請求事件 
LEX/DB25449864/最高裁判所第一小法廷 平成30年12月17日 判決 (上告審)/平成30年(受)第16号 等
Aが所有し運転する普通乗用自動車(本件自動車)に追突されて傷害を負った上告人らが、本件自動車の名義上の所有者兼使用者である被上告人に対し、自動車損害賠償保障法3条に基づき、損害賠償を求めた上告審において、被上告人は、Aからの名義貸与の依頼を承諾して、本件自動車の名義上の所有者兼使用者となり、Aは、上記の承諾の下で所有していた本件自動車を運転して、本件事故を起こしたもので、Aは、当時、生活保護を受けており、自己の名義で本件自動車を所有すると生活保護を受けることができなくなるおそれがあると考え、本件自動車を購入する際に、弟である被上告人に名義貸与を依頼したというのであり、被上告人のAに対する名義貸与は、事実上困難であったAによる本件自動車の所有及び使用を可能にし、自動車の運転に伴う危険の発生に寄与するものといえ、被上告人とAとが住居及び生計を別にしていたなどの事情があったとしても、被上告人は、Aによる本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあり、被上告人は、本件自動車の運行について、運行供用者に当たると判示し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決を破棄し、上告人らの被った損害について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2018.12.25
旧取締役に対する損害賠償、詐害行為取消請求事件
LEX/DB25449860/最高裁判所第二小法廷 平成30年12月14日 判決 (上告審)/平成30年(受)第44号 等
Aに対して約37億6000万円の損害賠償債権を有する被上告人が、詐害行為取消権に基づき、上告人Y1に対しては、Aが上告人Y1から株式を代金1億6250万円で購入する旨の契約の取消し並びに受領済みの上記代金相当額及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求め、上告人Y2に対しては、Aが上告人Y2に1億2000万円を贈与する旨の契約の取消し並びに受領済みの上記贈与金相当額及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求め、詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は、詐害行為の取消しを命ずる判決の確定により生ずるから、その確定前に履行遅滞に陥ることはないのに、上告人らの被上告人に対する各受領金支払債務につき各訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を命じた原審の判断には、法令の解釈適用の誤りがあるなどとし、上告人が上告した事案で、詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものと解するのが相当であるとし、被上告人は、上告人らに対し、訴状をもって、各詐害行為の取消しとともに、各受領済みの金員相当額の支払を請求したのであるから、上告人らの被上告人に対する各受領金支払債務についての遅延損害金の起算日は、各訴状送達の日の翌日ということになるとし、上告を棄却した事例。
2018.12.18
不当利得返還等請求事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 2月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449849/最高裁判所第二小法廷 平成30年12月 7日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1124号
上告人(控訴人・原告。中小企業等への融資等を主たる事業とする金融機関)が、被上告人(被控訴人・被告。自動車部品等の製造、販売等を主たる事業とする会社)に対し、金属スクラップ等の引揚げ及び売却が上告人に対する不法行為に当たるとして5000万円の損害賠償金及び遅延損害金の支払を請求し、選択的に、これによって被上告人が得た利益は不当利得に当たるとして同額の不当利得金の返還及び民法704条前段所定の利息の支払を請求し、上記の不法行為及び不当利得の成否に関して、本件動産につき、上告人が被上告人に対して本件譲渡担保権を主張することができるか否かが争われ、1審判決は上告人の請求を棄却したため、これを不服として上告人が控訴し、控訴審判決は、本件動産譲渡担保の範囲は、目的物の種類、数量及び保管場所により特定されており、被上告人自認超過部分(一部の各品目を除いたもの)について留保所有権の消滅が認められる以上、その品目及び数量に係る損害が発生したものと認め、上告人に対する不法行為を構成するとして、1審判決を変更し、上告人の請求を一部認容した。しかし、上告人は、本件売買契約で、目的物の所有権は、上記代金の完済をもって、被上告人からM社に移転するという本件条項に基づき被上告人が本件動産の所有権を留保することは本件動産の所有権を被上告人からM社に移転させた上でM社が被上告人のために担保権を設定したものとみるべきであるにもかかわらず、本件動産につき、その所有権が被上告人からM社に移転しておらず、上告人が被上告人に対して本件譲渡担保権を主張することができないとした原審の判断には、法令解釈の誤り、判例違反がある旨を主張し、上告した事案において、本件動産の所有権は、本件条項の定めどおり、その売買代金が完済されるまで被上告人からM社に移転しないものと解するのが相当であるとして、本件動産につき、上告人は、被上告人に対して本件譲渡担保権を主張することができないとし、本件上告を棄却した事例。
2018.12.11
損害賠償請求事件(東住吉女児焼死事故 車メーカへの請求棄却)
LEX/DB25561588/大阪地方裁判所 平成30年10月26日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第724号
原告が、平成7年に原告の自宅で発生した火災により原告の子が焼死した事故に関し、本件火災の原因は、被告会社が設計・製造し、販売した軽乗用自動車が通常備えるべき安全性を備えておらず、同車から漏出したガソリンに原告宅の風呂釜の種火が引火したものである旨主張して、被告会社に対し、不法行為に基づく損害賠償として、原告が相続した子の損害(逸失利益及び死亡慰謝料の各2分の1に相当する3237万1578円)、原告固有の損害(慰謝料1500万円)及び弁護士費用の合計5210万8735円の支払等を求めた事案において、原告が本件被害者から相続した損害賠償請求権について、除斥期間の経過により権利行使をさせないことが著しく正義・公平の理念に反するとは未だ認められないというべきであり、本訴請求権は、いずれも除斥期間の経過により消滅したと認められ、原告の請求を棄却した事例。
2018.12.04
損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 1月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25561484/東京高等裁判所 平成30年 9月12日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第1183号 等
被控訴人(原告)は、控訴人(被告)とペアを組んでバドミントンのダブルス競技を行っていた際に控訴人のラケットが被控訴人の左眼に当たった事故について、控訴人に過失があると主張して、控訴人に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害1534万1527円の支払等を求め、原審は、被控訴人の請求を789万3244円の支払等を求める限度で認容し、その余の請求を棄却したところ、控訴人がその敗訴部分につき本件控訴を提起し、被控訴人がその敗訴部分につき本件附帯控訴を提起した事案で、控訴人の控訴を棄却したうえで、被控訴人の附帯控訴に基づき、原審の認容額を1319万0378円に増額した内容で一部認容し、その余の請求を棄却した事例。
2018.12.04
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25561483/東京高等裁判所 平成30年 7月19日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第1024号
控訴人(原告。身長159cm、体重50kg程度の体格の40歳代の女性)が被控訴人(被告。身長180cm、体重85kg程度の体格の40代の男性)に対し、A地区合同運動会における自転車リングリレー競技中に発生した衝突事故は被告の注意義務違反によるものであるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、休業損害90万4512円及び通院慰謝料119万円の合計209万4512円の支払等を求めたところ、原審は、被控訴人が、本件事故について、控訴人に対し、道義的責任を負うことは明らかというべきであるが、法的責任があるということはできないとし、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した事案で、原判決を変更し、競技者が対向して走行する方式である本件競技の下でも、被控訴人が本件事故を回避することは十分可能であったといえ、主催者の責任と競技者の責任とは、一方のみが成立して他方が成立しないといった択一的な関係にはないから、主催者の損害賠償責任の有無にかかわらず、本件事実関係において、加害者である被控訴人は、その責任を免れないというべきであるとして、原判決を変更し、控訴人の請求を一部認容した事例。
2018.12.04
損害賠償請求事件(神奈川県弁護士会に賠償命令 個人情報を不当漏えい)
LEX/DB25561550/横浜地方裁判所 平成30年 7月19日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第5128号
原告が、被告の弁護士法23条の2に基づく報告の請求(弁護士会照会)に際して照会先に原告の戸籍全部事項証明書等が送付されたことによって、プライバシーを違法に侵害されたなどと主張して、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料140万円の支払等を求めた事案において、原告は、被告の本件送付行為により、本件原戸籍に記載された原告の個人に関する情報が本件照会先に開示されたことにより、相応の精神的苦痛を受けたものと認められるが、一方で、情報が本件照会先以外の者に伝播したことを認めるに足りる証拠は存在せず、これらの事情を総合すると、原告の精神的苦痛に対する慰謝料の金額は、10万円とするのが相当であるとし、原告の請求を一部認容した事例。
2018.11.06
発信者情報開示仮処分命令申立事件 
LEX/DB25561324/東京地方裁判所 平成30年 9月14日 決定 (第一審)/平成30年(ヨ)第1081号
債権者(「美整顔」と呼ぶフェイスアップ、ほうれい線の解消等の施術を行っている者)が、債務者(インターネット検索サービス等を提供する法人)が管理・運営する地図情報と連動した口コミ投稿サイトに何者かが投稿した記事によって、名誉権を侵害された、ないし業務妨害を受けたと主張して、債務者に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づく発信者情報開示請求権を被保全権利として、上記侵害に係る別紙発信者情報目録記載の各情報の仮の開示を求めた事案において、本件投稿は、債権者の名誉権を侵害するものであるとは認められず、本件投稿が業務妨害に当たるということもできないとして、本件申立てを却下した事例。
2018.10.30
各放送受信料支払等請求控訴事件
LEX/DB25561275/東京高等裁判所 平成30年 9月20日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第1993号
1審原告において、(1)1審被告らに対し、1審被告らがそれぞれ運営するホテルの客室等合計3万4426か所に遅くとも平成24年1月までに設置した衛星受信機について、平成26年2月28日付け放送受信契約書が提出されたことにより、1審原告と1審被告らとの間において、それぞれ放送受信契約が成立し、1審被告らが当該受信機の設置の月から放送受信料の支払義務を負うとして、平成24年1月から平成26年1月までの期間における放送受信料合計19億2932万1040円の支払を求めた(第1請求)とともに、(2)1審被告ホテルに対し、同1審被告が平成25年10月まで運営していたホテル支店の客室114室に遅くとも平成24年1月までに設置した衛星受信機について、選択的に、〔1〕1審原告による放送受信契約の申込みが1審被告ホテルに到達した時点で、放送受信契約が成立したとして、平成24年1月から平成25年10月までの期間における放送受信料563万9580円の支払、又は,〔2〕1審被告ホテルは放送受信契約を締結しないことにより、法律上の原因なく1審原告の損失により放送受信料相当額を利得しているとして、不当利得返還請求として上記同額の支払を求めたところ、原審は、1審原告の上記(1)の請求を全部認容し、上記(2)の各請求をいずれも棄却し、1審原告及び1審被告らが敗訴部分を不服として双方が控訴した事案(なお、1審原告は、当審で、上記(2)に関する訴えを変更し、主位的に、1審被告ホテルは、放送法64条1項に基づき、1審原告からの放送受信契約の申込みを承諾する義務があるとして、当該承諾の意思表示をするよう求めるとともに、これにより成立する放送受信契約に基づく放送受信料として563万9580円の支払を求め、予備的に、上記(2)〔2〕の不当利得返還請求を維持した(第2請求))で、1審原告の第1請求を認容した原判決は相当であるとし、1審被告らの控訴を棄却し、1審原告の当審における第2請求の主位的請求を認容した事例。
2018.10.30
工作委託料等請求控訴事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 12月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449701/大阪地方裁判所 平成30年 8月29日 判決 (控訴審)/平成30年(レ)第57号
被控訴人が、控訴人に対し、被控訴人が控訴人に協力するという内容で締結された「別れさせ工作委託契約」と称する契約について、着手金として80万円、上記契約の目的が達成されたときは成功報酬として40万円を控訴人がそれぞれ支払う旨の約定があったと主張して、残金70万円等の支払を求めた本訴請求と、控訴人が、被控訴人に対し、本件契約及びこれに付随する調査委託契約が公序良俗に反し無効であるなどと主張して、不当利得返還請求権に基づき、本件契約等に基づいて支払った既払金等の支払を求めた反訴請求からなる事案の控訴審において、本件契約等の目的達成のために想定されていた方法は、人倫に反し関係者らの人格、尊厳を傷付ける方法や、関係者の意思に反してでも接触を図るような方法であったとは認められないなどとして、本件契約等が公序良俗に反するとまではいえないなどとして、原判決を相当であるとし、本件控訴を棄却した事例。