注目の判例

労働法

2024.03.26
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25596756/札幌高等裁判所 令和 5年12月26日 判決 (控訴審)/令5年(ネ)第216号 
賃貸物件の管理業務等を業とする控訴人(原告)会社が、元従業員である被控訴人(被告)に対し、退職後の競業禁止を合意していたところ、退職直後に競業会社に就職し、退職前後に顧客に虚偽の事実を述べるなどして、当該顧客と控訴人の管理委託契約を解約させ、競業会社との間で同契約を締結させたとし、競業避止義務違反の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償金等の支払を求め、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、被控訴人は控訴人に対し、本件合意のうち、控訴人が本店を置く市内において、退職後6か月の間、競業会社に就職して控訴人在職時に担当していた顧客に対して営業活動を行わないとの範囲で競業避止義務を負っていたと認められるところ、被控訴人にはそれに違反する行為があったといえるから、控訴人の請求は、被控訴人の競業避止義務違反による債務不履行と相当因果関係のある損害賠償を求める限度で認容すべきであるとして、原判決を変更した事例。
2023.08.01
地位確認等請求事件
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和5年10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572945/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 7月20日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1293号
上告人(一審被告。自動車学校)を定年退職した後に、上告人と有期労働契約を締結して勤務していた被上告人(一審原告)らが、上告人と無期労働契約を締結している労働者との間における基本給、賞与等の相違は労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条に違反するものであったと主張して、上告人に対し、不法行為等に基づき、上記相違に係る差額について損害賠償等を求め、原判決は、被上告人らの基本給及び賞与に係る損害賠償請求を一部認容すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、正職員と嘱託職員である被上告人らとの間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違について、各基本給の性質やこれを支給することとされた目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮しないまま、その一部が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断には、同条の解釈適用を誤った違法があるなどとして、原判決中、被上告人らの基本給及び賞与に係る損害賠償請求に関する上告人敗訴部分は破棄し、被上告人らが主張する基本給及び賞与に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否か等について、更に審理を尽くさせるため、上記部分につき、本件を原審に差し戻すこととし、上告人のその余の上告については却下した事例。
2023.07.25
行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件 
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LEX/DB25572932/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 7月11日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第285号
一般職の国家公務員であり、性同一性障害である旨の医師の診断を受けている上告人(一審原告)が、国家公務員法86条の規定により、人事院に対し、職場のトイレの使用等に係る行政措置の要求をしたところ、いずれの要求も認められない旨の判定を受けたことから、被上告人(一審被告。国)を相手に、本件判定の取消し等を求め、第1審判決は、上告人の請求を一部認容したが、原判決は、本件判定部分の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件判定部分に係る人事院の判断は、本件における具体的な事情を踏まえることなく他の職員に対する配慮を過度に重視し、上告人の不利益を不当に軽視するものであって、関係者の公平並びに上告人を含む職員の能率の発揮及び増進の見地から判断しなかったものとして、著しく妥当性を欠いたものといわざるを得ないとし、本件判定部分は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとして、原判決中、人事院がした判定のうちトイレの使用に係る部分の取消請求に関する部分を破棄し、同部分につき被上告人の控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2023.07.11
懲戒免職処分取消、退職手当支給制限処分取消請求事件 
LEX/DB25572914/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 6月27日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第274号
上告人(一審被告。宮城県)の公立学校教員であった被上告人(一審原告)が、酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、職員の退職手当に関する条例12条1項1号の規定により、退職手当管理機関である宮城県教育委員会から、一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分を受けたため、上告人を相手に、上記各処分の取消しを求め、原審は、本件懲戒免職処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとした上で、本件全部支給制限処分の取消請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、本件全部支給制限処分に係る県教委の判断は、被上告人が管理職ではなく、本件懲戒免職処分を除き懲戒処分歴がないこと、約30年間にわたって誠実に勤務してきており、反省の情を示していること等を勘案しても、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、本件全部支給制限処分にその他の違法事由も見当たらず、その取消請求は理由がなく、上告人の控訴に基づき、第1審判決中、上告人敗訴部分を取消し、同部分につき被上告人の請求を棄却する内容で、原判決を変更した事例(反対意見がある)。
2023.05.02
各威力業務妨害、強要未遂被告事件 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和5年10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25594774/大阪高等裁判所 令和 5年 3月 6日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第469号
被告人P1はA支部の書記次長、被告人P2及び被告人P4はいずれも執行委員、P5は組合員であるが、被告人3名及びP5は、他のA支部組合員らと共謀の上、大阪市α区所在のA支部事務所周辺に和歌山県内から元暴力団員らが来ていたことから、B協の実質的運営者であるP6を脅迫するなどして、P6が元暴力団員らを差し向けたなどと認めさせて謝罪させようと考え、B協の業務を妨害することをいとわず、和歌山県海南市所在のB協事務所前において、P6らに対し、本件各発言を言うとともに、他の組合員らが、B協事務所周辺に集結し、P6を誹謗中傷する演説を大音量で繰り返し、元暴力団員をA支部事務所に差し向けた旨認めて謝罪するよう要求して、P6らにその対応を余儀なくさせて約4時間30分間にわたりB協の業務の遂行を不能にするとともに(威力業務妨害)、前記要求に応じなければP6の身体、自由、名誉等に対し危害を加える旨告知してP6を脅迫し、P6に義務のないことを行わせようとしたが、P6がこれに応じなかったためその目的を遂げなかった(強要未遂)として起訴され、原判決は、被告人らに威力業務妨害罪及び強要未遂罪が成立するとして、被告人P1を懲役1年4月・執行猶予3年に、被告人P2を懲役10月・執行猶予3年に、被告人P4を懲役1年・執行猶予3年にそれぞれ処したため、これに不服の被告人3名が控訴した事案で、被告人らの行為の強要未遂罪及び威力業務妨害罪の各構成要件該当性の判断、さらには、正当行為に当たるか否かという判断において、原判決は、事実の認定やその評価を誤ったものであり、各構成要件の該当性に疑問が残るとともに、被告人らの行為が労働組合法1条2項、刑法35条の正当行為となることも否定できない以上、上記事実誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、被告人らの行為は、正当行為として罪とならないから、刑事訴訟法336条により被告人らに対し無罪の言渡しをした事例。
2023.04.04
未払賃金等請求事件
LEX/DB25572682/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月10日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1019号
被上告人に雇用され、トラック運転手として勤務していた上告人が、被上告人に対し、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する賃金並びに付加金等の支払を求めたところ、原審は、上告人の各請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、被上告人の上告人に対する本件時間外手当の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたものとした原審の判断には、割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った違法があり、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、不服申立ての範囲である本判決主文第1項記載の部分を破棄し、上告人に支払われるべき賃金の額、付加金の支払を命ずることの当否及びその額等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき、本件を原審に差し戻した事例(補足意見がある)。
2022.11.01
労働委員会命令取消請求事件(セブン-イレブン・ジャパン事件)
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和5年1月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25593425/東京地方裁判所 令和 4年 6月 6日 判決 (第一審)/令和1年(行ウ)第460号
コンビニエンスストア加盟店で組織する労働組合である原告が、全国においてコンビニエンスストアのフランチャイズ・チェーンを運営している参加人が原告による団体交渉の申入れに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、これに対する救済を申し立て、岡山県労働委員会が救済命令(本件初審命令)を発したところ、参加人がこれを不服として再審査を申し立て、中央労働委員会が初審命令を取り消したうえ、救済申立てを棄却する命令を発したことについて、原告が、本件命令の取消しを求めた事案で、参加人と本件フランチャイズ契約を締結する加盟者は、参加人との交渉上の対等性を確保するために労働組合法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるかという観点からみて、同法上の労働者に当たるとは認められないところ、本件各団交拒否は同法7条2号所定の不当労働行為に当たるとはいえず、本件命令は適法であるとして、原告の請求を棄却した事例。
2022.09.27
分限免職処分取消請求事件
LEX/DB25572318/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 9月13日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第7号
普通地方公共団体である上告人(被告・控訴人)の消防職員であった被上告人(原告・被控訴人)が、任命権者である長門市消防長から、地方公務員法28条1項3号等の規定に該当するとして分限免職処分を受けたのを不服として、上告人を相手に、その取消しを求め、第一審は、本件処分を取消し、控訴審も第一審を維持したため、上告人が上告した事案で、免職の場合には特に厳密、慎重な判断が要求されることを考慮しても、被上告人に対し分限免職処分をした消防長の判断が合理性を持つものとして許容される限度を超えたものであるとはいえず、本件処分が裁量権の行使を誤った違法なものであるということはできないとし、本件処分が違法であるとした原審の判断には、分限処分に係る任命権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決を破棄し、事実関係等の下においては、本件処分にその他の違法事由も見当たらず、被上告人の請求は理由がないから、第1審判決を取消し、同請求を棄却した事例。
2022.06.21
懲戒処分取消等請求事件
LEX/DB25572187/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 6月14日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第164号
上告人(被控訴人・被告。氷見市)の消防職員であった被上告人(控訴人・原告)は、任命権者であった氷見市消防長から、上司及び部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分(第1処分)を受け、さらに、その停職期間中に正当な理由なく上記暴行の被害者である部下に対して面会を求めたこと等を理由とする停職6月の懲戒処分(第2処分)を受けことにより、被上告人が、上告人を相手に、第1処分及び第2処分の各取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたところ、原判決は、第1処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとする一方、第2処分の取消請求を認容し、損害賠償請求の一部を認容したため、上告人が上告した事案で、停職6月という第2処分の量定をした消防長の判断は、懲戒の種類についてはもとより、停職期間の長さについても社会観念上著しく妥当を欠くものであるとはいえず、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできないとし、原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、第2処分に関するその他の違法事由の有無等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととした事例。
2022.06.14
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和4年8月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572164/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 6月 3日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1125号 等
建物の解体作業等に従事した後に石綿肺、肺がん等の石綿(アスベスト)関連疾患にり患した者又はその承継人である被上告人らが、建材メーカーである上告人らに対し、当該疾患へのり患は、上告人らが、石綿含有建材を製造販売するに当たり、当該建材が使用される建物の解体作業等に従事する者に対し、当該建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等(本件警告情報)を表示すべき義務を負っていたにもかかわらず、その義務を履行しなかったことによるものであるなどと主張して、不法行為等に基づく損害賠償を求め、原判決は、被上告人らの不法行為に基づく損害賠償請求を一部認容したため、上告人らが上告した事案において、上告人らが、石綿含有建材を製造販売するに当たり、当該建材が使用される建物の解体作業従事者に対し、本件警告情報を表示すべき義務を負っていたということはできないとして、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、被上告人らの請求に関する上告人ら敗訴部分は破棄し、上記破棄部分のうち、被上告人X1の請求に関する部分については、原審の確定した事実関係によれば、同被上告人が石綿含有建材を使用する建設作業に従事していた時期があることから、損害の額等について更に審理を尽くさせる必要があるので、本件を原審に差し戻すこととし、また、その余の被上告人らの請求は、第1審判決は結論において正当であり、上記破棄部分のうち、同被上告人らの請求に関する部分につき、同被上告人らの控訴を棄却し、同被上告人らの原審で拡張した請求を棄却した事例。
2022.03.29
山形大学不当労働行為救済命令取消請求事件
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和4年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572036/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 3月18日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第171号
労働組合である上告補助参加人から、使用者である被上告人の団体交渉における対応が労働組合法7条2号の不当労働行為に該当する旨の申立てを受けた処分行政庁が、上告補助参加人の請求に係る救済の一部を認容し、その余の申立てを棄却する旨の命令を発したところ、被上告人が、上告人を相手に、本件命令のうち上記の認容部分の取消しを求め、第1審判決は、処分行政庁による本件命令は、その命令の内容において、処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱したものとして、被上告人の請求を認容し、原判決もこれを維持したため、上告人が上告した事案で、本件認容部分は、被上告人が誠実交渉義務に違反する不当労働行為をしたとして、被上告人に対して本件各交渉事項につき誠実に団体交渉に応ずべき旨を命ずる誠実交渉命令であるところ、原審は、本件各交渉事項について、被上告人と上告補助参加人とが改めて団体交渉をしても一定の内容の合意を成立させることは事実上不可能であったと認められることのみを理由として、本件認容部分が処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱したものとして違法であると判断したものであり、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、本件各交渉事項に係る団体交渉における被上告人の対応が誠実交渉義務に違反するものとして不当労働行為に該当するか否か等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2021.11.30
障害補償給付不支給決定等取消請求控訴事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和4年1月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25590917/札幌高等裁判所 令和 3年 9月17日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第10号
回転寿司店の事業所に勤務していた控訴人が、本件事業所内のトイレに散布された殺菌剤の原液を拭き取る業務に従事した際、当該業務に起因して化学物質過敏症を発症したとして、労働者災害補償保険法による障害補償給付の請求をしたところ、処分行政庁から、〔1〕これを支給しない旨の処分、〔2〕療養補償給付の支給決定を取り消す旨の変更決定処分、及び〔3〕同日付けで休業補償給付の支給決定を取り消す旨の変更決定処分を受けたため、本件各処分の取消しを求めたところ、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した事案で、控訴人の化学物質過敏症は、本件拭き取り作業に起因したものと認められるから、これは、労基則別表第1の2第4号9ないし第11号に該当する業務上の疾病ということができ、控訴人の化学物質過敏症の発症及びこれと本件拭き取り作業との相当因果関係を否定したうえでされた本件各処分は違法であるとして、原判決を取り消し、本件各処分をいずれも取り消した事例。
2021.08.03
地位確認等請求控訴事件
LEX/DB25569736/札幌高等裁判所 令和 3年 4月28日 判決 (控訴審)/令和1年(ネ)第310号
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業所としての指定を受けた施設において勤務していた控訴人ら(従業員であるb及び同aと本件施設で勤務していた施設利用者ら8名)が、本件施設を運営していた被控訴人会社及びその代表取締役である被控訴人cによる控訴人らの解雇は無効であり、被控訴人らの不法行為に当たるほか、被控訴人cには任務懈怠があったなどと主張して、被控訴人らに対し、地位確認及び損害賠償金等の連帯支払を求め、原審が、被控訴人らに対し、施設利用者ら8名にそれぞれ1人につき損害賠償金の連帯支払を求める限度で請求を一部認容し、施設利用者らのその余の請求並びに控訴人b及び同aの請求をいずれも棄却したところ、控訴人b及び同a並びに施設利用者らのうち4名(控訴人利用者ら)が控訴した事案で、控訴人らに対する本件解雇については、本件施設の閉鎖、これに伴う人員削減の必要性及び人選の合理性については肯定することができるものの、控訴人利用者ら及び控訴人bらのいずれに対する解雇についても、その解雇手続は相当とはいえず、控訴人らに対する解雇は、いずれも客観的に合理的な理由を欠き、無効であると言わざるを得ず、本件解雇は控訴人らに対する不法行為に当たり、被控訴人らは、本件解雇によって控訴人らが受けた損害を賠償すべき責任を連帯して負担すべきであるとされるところ、これと異なる判断をした原判決は相当ではないとして、原判決を変更し、控訴人b及び同aの請求を一部認容し、控訴人利用者らへの支払額を増額した事例。
2021.06.08
損害賠償請求事件
LEX/DB25571503/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第290号 等
屋外の建設現場における石綿(アスベスト)含有建材の切断、設置等の作業に屋根工として従事し、石綿粉じんにばく露したことにより、中皮腫にり患したと主張するAの承継人である被上告人らが、〔1〕上告人国に対し,建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために上告人国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、〔2〕上告人株式会社ケイミュー及び同株式会社クボタ(上告人建材メーカーら)に対し、上告人建材メーカーらが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことによりAが中皮腫にり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、上告人建材メーカーらが、平成14年1月1日から平成15年12月31日までの期間に、屋外の建設作業従事者に対し、上記石綿含有建材に当該建材から生ずる粉じんにばく露すると重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等の表示をすべき義務を負っていたということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決を破棄し、被上告人らの上告人建材メーカーらに対する請求は理由がなく、被上告人らの上告人クボタに対する請求を棄却した第1審判決は正当であるとして、原判決中、被上告人らの上告人ケイミュー及び同国に対する請求に関する部分を主文第1項のとおり変更し、被上告人らの上告人クボタに対する請求につき、同上告人敗訴部分を破棄し、同部分につき、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2021.06.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25571501/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第491号 等
〔1〕原告X1が、被告国に対し、建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために被告国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、〔2〕原告X2らが、被告積水化学工業に対し、被告積水化学工業が石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことにより、屋外の建設現場における石綿含有建材の切断、設置等の作業に従事していたBが肺がんにり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、原判決中、原告X1の被告国に対する請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻しを命じ、また、原判決中、原告X2らの被告積水化学工業に対する請求のうち、被告積水化学工業敗訴部分を破棄し、同部分につき、原告X2らの控訴を棄却した事例。
2021.06.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25571502/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第596号
建設作業に従事し、石綿(アスベスト)粉じんにばく露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患にり患したと主張する者(本件被災者)又はその承継人である上告人らが、被上告人らに対し、被上告人らが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことにより本件被災者らが上記疾患にり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、本件立証手法により建材現場到達事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には、経験則又は採証法則に反する違法があるとして、原判決中、別紙一覧表1から19までの各1項記載の上告人らの各2項記載の被上告人らに対する請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例。
2021.05.25
各損害賠償請求事件
LEX/DB25571500/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1447号 等
主に神奈川県内で建設作業に従事し、石綿(アスベスト)粉じんにばく露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患にり患したと主張する本件被災者ら又はその承継人である原告らが、被告国に対し、建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために被告国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、被告建材メーカーらに対し、被告建材メーカーらが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことにより本件被災者らが上記疾患にり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、原判決中、原告らのうち別紙一覧表1記載の者らの被告国に対する請求に関する部分、原告らのうち別紙一覧表3記載の者らの被告エーアンドエーマテリアルら、被告大建工業及び被告ノザワに対する請求に関する部分、原告らのうち別紙一覧表4記載の者らの被告太平洋セメントに対する請求に関する部分並びに原告らのうち別紙一覧表5及び別紙一覧表6記載の者らの被告ノザワに対する請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため上記部分につき本件を原審に差戻し、原告らのうち別紙一覧表7の「上告人名」欄記載の者ら(同欄記載の者の訴訟承継人を含む。)の被告エーアンドエーマテリアルらに対する請求に関する部分を主文第2項のとおり変更し、被告国及び被告エーアンドエーマテリアルらの各上告を棄却した事例。
2021.04.06
退職金等請求事件
LEX/DB25571413/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 3月25日 判決 (上告審)/令和2年(受)第753号 等
被上告人が、母Aの死亡に関し、上告人機構に対し上記共済契約に基づく退職金の、上告人JPP基金規約に基づく遺族給付金の、出版厚生年金基金の権利義務を承継した上告人出版基金に対し出版厚生年金基金の規約に基づく遺族一時金の各支払を求め、中小企業退職金共済法、JPP基金規約及び出版基金規約において、本件退職金等の最先順位の受給権者はいずれも「配偶者」と定められており、被上告人は、Aとその民法上の配偶者であるCとが事実上の離婚状態にあったため、Cは本件退職金等の支給を受けるべき配偶者に該当せず、被上告人が次順位の受給権者として受給権を有すると主張している事案の上告審で、民法上の配偶者は、事実上の離婚状態にある場合には、中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者に当たらず、遺族給付金及び遺族一時金についても、民法上の配偶者は、その婚姻関係が事実上の離婚状態にある場合には、その支給を受けるべき配偶者に当たらないものというべきであるとし、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2021.02.24
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25568621/東京高等裁判所 令和 3年 1月21日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第2298号
故Gは、被控訴人会社の従業員であり、平成23年当時、被控訴人会社のH支社に勤務していたところ、同年8月6日に脳幹部出血である本件脳出血を発症して同月7日に死亡した。控訴人Aは故Gの妻、控訴人B及び同Cはその間の子であり、被控訴人E、同D及び同Fは、故Gの死亡当時、いずれも被控訴人会社の取締役であった。本件は、控訴人らが、故Gが本件脳出血を発症して死亡したのは被控訴人会社から長時間にわたる時間外労働を強いられたことによるものであって、被控訴人会社には債務不履行(安全配慮義務違反)が、被控訴人E、同D及び同Fの悪意又は重過失による任務懈怠がそれぞれあったと主張して、被控訴人会社に対しては債務不履行を理由とする損害賠償請求権に基づき、被控訴人E、同D及び同Fに対しては会社法429条1項に基づき、総損害額合計7695万7326円から控訴人らの自認する損益相殺をした後の残額(控訴人Aにつき2634万9030円、控訴人B及び同Cにつき各1923万9331円)及びこれらに対する遅延損害金の連帯支払を求め、原審は、故Gの死亡は被控訴人会社での長時間の時間外労働によるものであったと認定して被控訴人会社の債務不履行責任を肯定する一方、その余の被控訴人らについては、H支社の工場長であり、故Gの直属の上司でもあった被控訴人Fにつき軽過失があったにとどまり、いずれも悪意又は重過失があったとは認められないと判断して会社法429条1項所定の取締役の責任を否定した上、弁護士費用以外の総損害額について、故Gの身体的素因等を理由とする過失相殺の類推適用により7割を減じた額を控訴人らが法定相続分割合により相続し、損益相殺(遺族基礎年金及び遺族厚生年金の合計1120万7066円)をした後の残額に弁護士費用を加算した額(控訴人Aにつき495万円、控訴人B及び同Cにつき各509万9201円)及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度で控訴人らの被控訴人会社に対する請求を一部認容し、控訴人らのその余の請求をいずれも棄却したところ、これを不服とする控訴人らが本件控訴をした事案で、原判決中、被控訴人会社及び同Fに関する部分は不当であるとし、原判決の認容額を増額した内容で変更し、原判決中、控訴人らの被控訴人E及び同Dに対する請求をいずれも棄却した部分は正当であり、控訴人らのその余の控訴を棄却した事例。
2020.12.29
損害賠償請求事件
LEX/DB25567285/長崎地方裁判所 令和 2年12月 1日 判決 (第一審)/平成31年(ワ)第3号
原告において、本件労働審判事件の労働審判委員会が、原告に口外禁止条項を付した内容での調停を試みたところ、原告からこれを拒否されたにもかかわらず、労働審判法20条1項及び2項に違反して、口外禁止条項を含む労働審判を行ったことにより、原告の表現の自由(憲法21条)、思想良心の自由(同19条)及び幸福追求権(同13条)を侵害し、原告に精神的損害を生じさせたと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として、被告に対し、慰謝料140万円及び弁護士費用10万円の合計150万円及び遅延損害金の支払を求めた事案で、本件口外禁止条項は、労働審判法20条1項及び2項に違反すると認められるが、本件口外禁止条項を付した本件審判が、国家賠償法1条1項にいう違法な行為といえないとして、請求を棄却した事例。