注目の判例

民法(家族法)

2024.04.16
犯罪被害者給付金不支給裁定取消請求事件new
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LEX/DB25573429/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 3月26日 判決 (上告審)/令4年(行ツ)第318号   等 
上告人(昭和50年生まれの男性)が、平成6年頃に本件被害者(昭和37年生まれの男性)と交際を開始し、同居生活をしていたところ、同人は、平成26年12月22日、第三者の犯罪行為により死亡した。そこで、上告人は、平成28年12月22日、本件被害者の死亡について、上告人は犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(犯給法)5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当すると主張して、遺族給付金の支給の裁定を申請した。愛知県公安委員会から、平成29年12月22日付けで、上告人は上記の者に該当しないなどとして、遺族給付金を支給しない旨の裁定を受けたたため、上告人が、被上告人(愛知県)を相手に、上記裁定の取消しを求め、原審は、犯給法5条1項1号が憲法14条1項等に反するとはいえないとして、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告及び上告受理申立てをした事案で、犯罪被害者と同性の者は、犯給法5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得るとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決を破棄し、上告人が本件被害者との間において「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当するか否かについて、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例(反対意見及び補足意見がある)。
2024.04.16
損害賠償請求控訴事件new
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LEX/DB25598384/札幌高等裁判所 令和 6年 3月14日 判決 (控訴審)/令3年(ネ)第194号 
同性愛者である控訴人らが、民法及び戸籍法が同性者間の婚姻を許容していないのは憲法24条、13条、14条1項に違反すること、国会は必要な立法措置を講じるべき義務があるのにこれを怠っていること(立法不作為)、これにより控訴人らは婚姻することができず、精神的苦痛を被っていることを主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、各人につき100万円等の支払を求めたところ、原審は、民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定(本件規定)が同性者間の婚姻を許容していないことは、憲法24条と13条には違反しないものの、憲法14条1項には違反するとしたが、そのことを国会において直ちに認識することは容易ではなかったから、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けないとして、控訴人らの請求を棄却したため、控訴人らは、これを不服として控訴をした事案で、本件規定は、異性間の婚姻のみを定め、同性間の婚姻を許さず、これに代わる措置についても一切規定していないことから、個人の尊厳に立脚し、性的指向と同性間の婚姻の自由を保障するものと解される憲法24条の規定に照らして、合理性を欠く制度であり、少なくとも現時点においては、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っていると認め、本件規定は、憲法24条に違反するとし、また、国会が立法裁量を有することを考慮するとしても、本件規定が、異性愛者に対しては婚姻を定めているにもかかわらず、同性愛者に対しては婚姻を許していないことは、現時点においては合理的な根拠を欠くものであって、本件規定が定める本件区別取扱いは、差別的取扱いに当たり、本件規定は、憲法14条1項に違反するとしたうえで、同性婚立法の在り方には多種多様な方法が考えられ、設けるべき制度内容が一義的に明確であるとはいい難いこと、同性婚に対する法的保護に否定的な意見や価値観を有する国民も存在し、議論の過程を経る必要があること等から、国会が正当な理由なく長期にわたって本件規定の改廃等の立法措置を怠っていたと評価することはできないとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.04.09
遺言無効確認等請求事件
LEX/DB25573418/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 3月19日 判決 (上告審)/令4年(受)第2332号 
被上告人が、上告人らに対し、本件不動産について、上告人らの被上告人に対する上告人Y1及び原審控訴人Aへの持分移転登記請求権が存在しないことの確認等を求めた事案の上告審において、相続回復請求の相手方である表見相続人は、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができるものと解するのが相当であり、このことは、包括受遺者が相続回復請求権を有する場合であっても異なるものではないとして、被上告人は、本件不動産に係る上告人Y1及びAの各共有持分権を時効により取得することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2024.03.19
性別の取扱いの変更申立事件(性別の取扱いの変更申立て訴訟)
LEX/DB25597294/静岡家庭裁判所浜松支部 令和 5年10月11日 審判 (第一審)/令3年(家)第335号 
生物学的な性別は女性であるが心理的な性別は男性である申立人が、生殖腺除去手術を受けていないため、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の定める性別の取扱いの変更の要件のうち、同法3条1項4号の規定の定める要件(「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」)を満たさないものの、本件規定は、性同一性障害者(同法2条)が性別の取扱いの変更を認められるために、その意思に反する場合でも生殖腺除去手術を余儀なくされる点で、性同一性障害者について憲法13条の保障する性自認のとおり性別を尊重される権利、身体への侵襲を受けない権利、家族を維持形成する権利を侵害するほか、性自認と生物学的性が不一致の性同一性障害者をそれが一致している者に比して不合理に差別するものである点で、性同一性障害者について憲法14条1項の保障する平等権を侵害し、違憲無効であるなどと主張して、特例法に基づき、性別の取扱いを女性から男性に変更することを求めた事案で、本件規定の立法目的のうち親子関係等に関わる問題の発生とこれに伴い社会に混乱を生ずるおそれに配慮するという目的を踏まえても、本件規定の定める要件を不要とした場合に生じ得る親子関係に関わる問題発生の可能性や程度は限定的なものであって、それを理由に性同一性障害者の意思に反して身体への侵襲を受けない自由を一律に制約することは、人権制約の手段・態様として必要かつ合理的なものとは言い難いこと、また、本件規定の立法目的のうち社会の急激な変化に配慮するという目的を踏まえても、社会的状況は、国内外の動向に沿って変化が進んできているところであって、現在、上記のような配慮の必要性は相当小さくなっているといえること等を総合較量すると、本件規定の目的を達成するために本件規定による制約を課すということは、もはやその必要性・合理性を欠くに至っているというべきであるから、本件規定は、憲法13条に違反し、違憲無効であると解するのが相当であるとして、申立人の性別の取扱いを女から男に変更するとした事例。
2023.12.05
特別の寄与に関する処分申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 
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LEX/DB25573121/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月26日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第14号
亡Aの親族である抗告人が、Aの相続人の1人である相手方に対し、民法1050条に基づき、特別寄与料のうち相手方が負担すべき額として相当額の支払を求め、原審は、相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料について、民法900条から902条までの規定により算定した相続分(法定相続分等)に応じた額を負担するから(同法1050条5項)、遺言により相続分がないものと指定された相続人は特別寄与料を負担せず、このことは当該相続人が遺留分侵害額請求権を行使したとしても左右されないと判断して、本件申立てを却下したため、抗告人が許可抗告をした事案において、遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.11.07
性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件 
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LEX/DB25573119/最高裁判所大法廷 令和 5年10月25日 決定 (特別抗告審)/令和2年(ク)第993号
生物学的な性別は男性であるが心理的な性別は女性である抗告人が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)3条1項の規定に基づき、性別の取扱いの変更の審判を申し立て、原審は、抗告人について、性同一性障害者であって、特例法3条1項1号から3号までにはいずれも該当するものの、特例法3条1項4号(本件規定)に該当するものではないとした上で、本件規定は、性別変更審判を受けた者について変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば、社会に混乱を生じさせかねないなどの配慮に基づくものと解されるところ、その制約の態様等には相当性があり、憲法13条及び14条1項に違反するものとはいえないとして、本件申立てを却下すべきものとしたため、抗告人が特別抗告した事案において、本件規定は憲法13条に違反し無効であるところ、これと異なる見解の下に本件申立てを却下した原審の判断は、同条の解釈を誤ったものであるとして原決定を破棄し、原審の判断していない5号規定に関する抗告人の主張について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例(反対意見、補足意見がある)。
2023.10.24
損害賠償請求事件 
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LEX/DB25573070/札幌地方裁判所 令和 5年 9月11日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第1175号
被告北海道の職員であった原告が、在職中、同性パートナーであるAが北海道職員の給与に関する条例9条2項1号の「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として同号の「配偶者」に該当し、また、地方公務員等共済組合法2条4項の「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として同条1項2号イの「配偶者」に該当するとして、被告道に対し、Aを扶養親族とする扶養手当に係る届出及び寒冷地手当に係る世帯等の区分の変更の届出を行うとともに、被告共済組合に対し、Aを被扶養者とする届出を行ったが、北海道知事及び被告共済組合の北海道支部長が、Aが原告と同性であることを理由に、上記各「配偶者」に該当しないとして、上記各届出に係る扶養親族又は被扶養者の認定を不可としたことはいずれも違法であると主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被告道及び被告共済組合に対し、それぞれ損害賠償金等の支払を求めた事案で、本件各規定における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」には、同性間の関係は含まれないと解するのが現行民法の定める婚姻法秩序と整合する一般的な解釈であるところ、扶養手当の支給や共済組合法の各種給付等は公的財源を基盤としていることからすると、婚姻制度や同性間の関係に対する権利保障の在り方等について様々な議論がされている状況であることや、一部の地方公共団体において、柔軟な解釈や運用を試みる例があることを踏まえても、本件各規定における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性間の関係を含むと解釈しなければならないという職務上の注意義務を個別の公務員に課すことはできないというべきであるとして、原告の請求を棄却した事例。
2023.09.12
独立当事者参加、相続人たる地位にあること等の確認反訴請求控訴事件 
LEX/DB25595618/東京高等裁判所 令和 5年 7月18日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第8号 
本件被相続人の子である控訴人(1審参加人・反訴被告)と本件被相続人の母である被控訴人(1審反訴原告)が、いずれも自身が本件被相続人の単独相続人であると主張して、控訴人と被控訴人との間において、〔1〕本件被相続人の相続人たる地位を有するのは自身のみであることの確認を求めるとともに、〔2〕本件被相続人の遺産に係る原判決別紙供託金目録記載の各供託金につき、自身がそれぞれその還付金請求権を有することの確認を求めたところ、原判決は、控訴人は父である本件被相続人を殺意をもって死亡させたものであるから、民法891条1号の類推適用により、本件被相続人の相続において相続人になることができないとして、第2順位の相続人である被控訴人の控訴人に対する請求をいずれも認容し、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人は、これを不服として控訴した事案で、控訴人の被控訴人に対する請求はいずれも理由がなく、被控訴人の控訴人に対する反訴請求はいずれも理由があると判断し、控訴人の請求をいずれも棄却し、被控訴人の反訴請求をいずれも認容した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.07.04
国家賠償請求事件
LEX/DB25595224/名古屋地方裁判所 令和 5年 5月30日 判決 (第一審)/平成31年(ワ)第597号
同性カップルである原告らが、同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定(本件諸規定)は、憲法24条及び14条1項に違反するにもかかわらず、被告が必要な立法措置を講じていないため、婚姻をすることができない状態にあると主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被告(国)に対し、慰謝料等の支払を求めた事案で、本件諸規定が、同性カップルに対して、その関係を国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていないという限度で、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるというべきであるから、その限度で、憲法24条2項に違反すると同時に、憲法14条1項にも違反するものといわざるを得ないとしたうえで、本件諸規定の改廃を怠ったことは、国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとはいえず、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとして、原告らの請求を棄却した事例。
2023.06.20
婚姻費用分担審判に対する抗告事件 
LEX/DB25594978/東京高等裁判所 令和 5年 4月20日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和4年(ラ)第2609号
抗告人(原審相手方)と相手方(原審申立人)は、長女(現在3歳)をもうけた別居中の夫婦であるところ、妻であり長女を監護する相手方が、夫である抗告人に対し、婚姻費用の分担を求める調停を申し立てたが、調停が成立しなかったことから審判に移行し、原審は、抗告人に対し、令和2年3月から令和4年9月までの未払婚姻費用84万4033円を直ちに、同年10月から当事者が離婚又は別居状態の解消に至るまで、毎月末日限り、1か月当たり11万5000円を相手方に支払うよう命じる審判をしたため、これに不服の抗告人が即時抗告した事案において、原審と異なり、抗告人が相手方に対して令和2年3月から令和5年7月までに支払うべき婚姻費用の全額及び同年8月に支払うべき婚姻費用のうち1万2867円が既払であり、抗告人に対し、令和5年8月末日限り同月分残金8万7133円を、同年9月から当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで、毎月末日限り、1か月当たり10万円を相手方に支払うよう命じるのが相当と判断し、原審判を変更した事例。
2023.06.06
婚姻費用分担申立て却下審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25572858/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 5月17日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第17号
相手方が、その夫である抗告人に対し、婚姻費用分担審判の申立てをした事案の許可抗告審において、本件子は、戸籍上抗告人と相手方の嫡出子とされているが、相手方が抗告人との婚姻の成立の日から200日以内に出産した子であり、民法772条による嫡出の推定を受けないとすると、本件は、抗告人の本件子に対する本件父子関係に基づく扶養義務の存否を確定することを要する場合に、裁判所が本件父子関係の存否を審理判断することは妨げられないとし、原審は、本件父子関係の存否は訴訟において最終的に判断されるべきものであることを理由に、本件父子関係の不存在を確認する旨の判決が確定するまで抗告人は扶養義務を免れないとして、本件父子関係の存否を審理判断することなく、抗告人の本件子に対する本件父子関係に基づく扶養義務を認めたものであり、この原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして原決定を破棄し、原決定後に抗告人から提出された判決の正本及び同判決の確定証明書によれば、本件父子関係が存在しないことを確認する旨の判決が確定したことが認められるから、抗告人が本件子に対して本件父子関係に基づく扶養義務を負うということはできず、その他、抗告人と相手方が分担すべき婚姻費用に本件子の監護に要する費用が含まれると解すべき事情はうかがわれず、本件の事実関係の下において本件申立てを却下した原々審判は正当であり、原々審判に対する抗告を棄却した事例。
2023.02.28
仮の地位を定める仮処分申立事件(面会交流)
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LEX/DB25594097/福岡家庭裁判所 令和 4年 6月28日 審判 (第一審)/令和3年(家ロ)第1045号
別居中の夫婦間において、父である申立人が、母であり、未成年者らを現に監護している相手方に対し、未成年者らとの面会交流を求め、その時期、方法等を定めるよう申し立てた事件を本案として、仮に面会交流を認めることを求めた事案(なお、相手方は、未成年者の長男が申立人の行為に起因してPTSD再燃との診断を受けていること、申立人から生活の監視や精神的いじめ等のDVを受け、別居後も非開示を希望していた住所を探索されるなどし、当事者間に面会交流を実施するための協力関係を築くことが困難であること等を理由に、申立人と未成年者らの面会交流を認めるべきでない旨の意向を有している。)において、実施された申立人と未成年者らとの面会交流の状況を踏まえると、その後の未成年者らに関する診療経過等をもって、面会交流の実施が未成年者の利益に反するものということはできないから、申立人と未成年者らの面会交流を実施するのが相当であるとして、相手方は、申立人に対し、申立人が未成年者らと面会交流することを仮に許さなければならないと命じた事例。
2023.01.10
離婚等請求本訴、同反訴事件
LEX/DB25572509/最高裁判所第二小法廷 令和 4年12月26日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1115号
上告人が、本訴として、被上告人に対し、離婚を請求するとともに、これに附帯して財産分与の申立てをするなどし、被上告人が、反訴として、上告人に対し、離婚を請求するとともに、これに附帯して財産分与の申立てをするなどしたところ、第1審は、本訴及び反訴の各離婚請求をいずれも認容するなどしたほか、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の全部につき、財産分与についての裁判をし、上記分与を求める財産には、上告人及び被上告人が婚姻後に出資して設立した医療法人の持分(本件出資持分)が含まれていたとし、これに対し、被上告人は財産分与等に関する第1審の判断に不服があるとして控訴をし、上告人は附帯控訴をし、控訴審は、本件出資持分については、現時点で、上告人の上記医療法人に対する貢献度を直ちに推し量り、財産分与の割合を定め、その額を定めることを相当としない特段の事情があるから、財産分与についての裁判をすることは相当ではないと判断したため、上告人が上告をした事案で、離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において、裁判所が離婚請求を認容する判決をするに当たり、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき、財産分与についての裁判をしないことは許されないと判示し、これと異なる見解に立って、本件出資持分につき、財産分与についての裁判をしなかった原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中、財産分与に関する部分は破棄し、更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例。
2023.01.10
独立当事者参加事件(本訴)、相続人たる地位にあること等の確認請求反訴事件
LEX/DB25593737/東京地方裁判所 令和 4年11月15日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第28328号 等
被相続人は、その子である参加人に殺害され、死亡したところ、本件被相続人の実母である原告と参加人が、いずれも自身が本件被相続人の単独相続人であると主張して、原告と参加人との間において、〔1〕本件被相続人の相続人たる地位を有するのは原告のみ又は参加人のみであることの確認を求めるとともに、〔2〕本件被相続人の遺産に係る各供託金につき、原告及び参加人がそれぞれその還付金請求権を有することの確認を求めた事案で、参加人は、本件被相続人が父親であることを認識したうえで、殺意をもって本件被相続人を死亡させて殺害しており、民法891条1号所定の「故意に被相続人(中略)を死亡するに至らせ」たものと認めることができ、参加人につき、家庭裁判所は、上記の本件被相続人を殺害した行為を非行事実として認定したうえで、少年院送致の保護処分に付しており、その処遇意見等に鑑みると、参加人については、殺人罪の違法性、責任及び処罰に関する阻却事由があるものと認めるに足りず、「刑に処せられた」場合に相当するものと認めるのが相当であるから、参加人は、民法891条1号の類推適用により、本件被相続人の相続において相続人となることができないものと認められるとして、参加人の本訴請求をいずれも棄却し、原告の反訴請求を認容した事例。
2023.01.04
国家賠償請求事件
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LEX/DB25593967/東京地方裁判所 令和 4年11月30日 判決 (第一審)/平成31年(ワ)第3465号
同性の者との婚姻を希望する原告らが、婚姻を異性間のものに限り同性間の婚姻を認めていない民法第4編第2章及び戸籍法の諸規定(本件諸規定)が憲法14条1項、24条1項及び2項に違反しているから、国会は民法及び戸籍法の諸規定が定める婚姻を同性間でも可能とする立法措置を講ずべき義務があるにもかかわらず、これを講じていないことが国家賠償法1条1項の適用上違法であると主張して、慰謝料の支払等を求めた事案で、婚姻を異性間のものに限り同性間の婚姻を認めていない本件諸規定が憲法に違反するとはいえないとし、また、国会が同性間の婚姻を可能とする立法措置を講じないことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとはいえないとして、原告らの請求を棄却した事例。
2022.12.13
間接強制決定に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25572452/最高裁判所第三小法廷 令和 4年11月30日 決定 (許可抗告審)/令和3年(許)第17号
抗告人が、その夫である相手方に対して両名の長男を抗告人に引き渡すよう命ずる審判を債務名義として、間接強制の方法による子の引渡しの強制執行の申立てをしたところ、原決定は、原々決定を取消し、本件申立てを却下したため、抗告人が許可抗告をした事案において、本件申立てが権利の濫用に当たるとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとし、原決定を破棄し、本件申立てが間接強制決定をするための要件を満たさない旨の相手方の主張に理由がないことも明らかであり、本件申立てに基づき間接強制決定をすべきものとした原々審の判断は正当であるから、原々決定に対する相手方の抗告を棄却した事例(補足意見がある)。
2022.11.15
各認知請求控訴事件
LEX/DB25572339/東京高等裁判所 令和 4年 8月19日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第1585号
いずれも提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた控訴人A(長女)及び控訴人B(二女)が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づき女性への性別の取扱いの変更の審判を受けた被控訴人に対し、認知を求めた事案の控訴審において、同審判前に出生した控訴人Aの認知請求を認容し、同審判後に出生した控訴人Bの認知請求は棄却した事例。
2022.11.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25593434/東京地方裁判所 令和 4年 5月16日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第10253号
原告らが、〔1〕共同親権を有する父母の親権行使に関する意見対立が生じ、子が憲法上保障されている幸福追求権、生存権及び教育を受ける権利を実質的に行使することができなくなっている場合において、子の利益のために必要な決定を司法機関等が代わって行うための制度が存在しないこと、〔2〕父母が別居し、その子が一方親と同居している場合において、他方親が、その子に対する親権の行使における意思決定から事実上排除された場合であっても、これについて救済を求める制度が用意されていないこと等が、憲法24条2項に違反すると主張して、上記制度に係る立法措置を20年以上とらなかった立法不作為の違法を理由に、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、原告らそれぞれに対し慰謝料の支払等を求めた事案で、原告Aと婚姻関係にあるが別居中のCが「親権を行うことができないとき」(民法818条3項ただし書)に該当せず、原告AとCの子である原告Bの訴えは、適法な代理権を欠くため不適法であるとして却下し、原告Aの請求は、本件立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上、違法ではないとして棄却した事例。
2022.07.12
親子関係不存在確認請求事件
LEX/DB25572213/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 6月24日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1463号
上告人(亡C及び亡Dの孫で、亡Eの戸籍上の甥であり、亡Bの法定相続人)が、検察官に対し、亡Eと亡C及び亡Dとの間の各親子関係の不存在の確認を求め、原判決は、上告人が、本件各親子関係が不存在であることにより自己の身分法上の地位に直接影響を受けることはないから、本件訴えにつき法律上の利益を有しないと判断して却下したため、上告人が上告した事案において、上告人は、本件訴えにつき法律上の利益を有するとし、これと異なる見解の下に、本件訴えを却下すべきものとした原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、第1審判決を取消し、更に審理を尽くさせるため、本件を第1審に差し戻した事例。
2022.04.12
損害賠償請求事件
LEX/DB25572056/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 3月22日 決定 (上告審)/令和2年(オ)第1413号
上告人(控訴人・原告)の夫となるべき者であるAとともに、上告人は上告人の氏を、AはAの氏をそれぞれ称するものとして婚姻届を提出したが、同婚姻届は、民法750条の規定及び戸籍法74条1号の規定に違反することを理由に受理されなかったことについて、控訴人が、本件各規定は憲法14条1項、24条1項及び2項、我が国が批准した市民的及び政治的権利に関する国際規約2条1項及び3項(b)、3条、17条1項、23条各項並びに女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約2条、16条1項(b)及び(g)に違反するものであるから、これを改廃して夫婦同氏制に加えて夫婦別氏制という選択肢を新たに設けない立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けると主張して、被上告人(被控訴人・被告。国)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として慰謝料の支払を求め、1審判決は上告人の請求を棄却し、控訴審判決も、結果として1審判決は相当であるとして控訴を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件上告の理由は、違憲及び理由の不備・食違いをいうが、その実質は単なる法令違反を主張するもの又はその前提を欠くものであり、明らかに上記各項に規定する事由に該当しないとして本件上告を棄却した事例(意見がある)。