注目の判例

刑事訴訟法

2024.02.20
再審請求棄却決定に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告事件(名張毒ぶどう酒殺人事件第10次再審請求特別抗告棄却決定) 
LEX/DB25573300/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 1月29日 決定 (特別抗告審)/令4年(し)第206号 
申立人の兄である被告人(当時35歳。事件本人)は、妻(当時34歳)と愛人(当時36歳)との三角関係の処置に窮し、両名を殺害してその関係を清算しようと考え、昭和36年3月28日、事件本人及び両名らが所属する生活改善クラブの年次総会と懇親会が開催される三重県名張市内の公民館に女子会員用のぶどう酒を運び入れた上、公民館に誰もいなくなった隙に、女子会員らが死亡するかもしれないことを十分認識しながら、本件ぶどう酒を開栓して、竹筒に入れて忍ばせて持参していた有機燐テップ製剤である農薬ニッカリンTを4ないし5cc注入し、替栓(内蓋)を元どおりかぶせるなどし、同日午後8時頃、懇親会に出席した女子会員20名に提供させ、これを飲んだ17名につき、有機燐中毒により、妻と愛人を含む5名を死亡させて殺害し、12名に傷害を負わせ、3名については飲ませるに至らなかったとする殺人、殺人未遂事件につき、事件本人は、確定審において、犯人ではないと主張したが、確定判決は、事件本人に対し無罪を言い渡した第1審判決を破棄し、事件本人が犯人であると認定して、事件本人を死刑に処した。事件本人が上告を申し立てたが棄却され、上記確定判決は確定した。事件本人は、これまで9回にわたり再審請求に及んだが、確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生じさせるものではないと判断され、いずれの再審請求も棄却された。本件は、事件本人(平成27年10月4日死亡)の妹を申立人とする第10次再審請求で、再審請求棄却決定に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告した事案で、本件再審請求において提出された各新証拠を併せ考慮してみても、確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生ずる余地はないというべきであり、新証拠はいずれも確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではないという原々決定を是認した原決定は正当であるとして、本件抗告を棄却した事例(反対意見がある)。
2023.12.12
仮拘禁許可状の発付に対する特別抗告事件 
LEX/DB25573136/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月 6日 決定 (特別抗告審)/令和5年(し)第735号 
東京高等裁判所裁判官がした仮拘禁許可状の発付は、逃亡犯罪人引渡法に基づき東京高等裁判所裁判官が行った特別の行為であって、刑事訴訟法上の決定又は命令でないばかりか、逃亡犯罪人引渡法には、これに対し不服申立てを認める規定が置かれていないのであるから、本件発付に対しては不服申立てをすることは許されないとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.07.11
(大崎事件第4次再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定) 
LEX/DB25595222/福岡高等裁判所宮崎支部 令和 5年 6月 5日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和4年(く)第25号
請求人の母親であるAに対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日鹿児島地方裁判所が言い渡した有罪判決(Aに対する確定判決)及び請求人の父親であるB(平成5年10月2日死亡)に対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日同裁判所が言い渡した有罪判決(Bに対する確定判決)に関し、A及びBに対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したから、請求人は、刑事訴訟法439条1項4号に該当する者として、同法435条6号により各再審開始請求(いわゆる大崎事件第4次再審請求)をしたところ、各再審請求を棄却したため、請求人が即時抗告した事案で、S鑑定及びQ・R鑑定はH及びIの各供述を減殺するものとはいえず、また、N鑑定は、各確定判決が証拠の標目に掲げたJ旧鑑定の信用性を減殺するものではあるが、各確定判決の事実認定においてJ旧鑑定が占める重要性からすれば、各確定判決の事実認定に合理的疑いを生じさせるものとはいえず、H及びIの各供述の信用性、B、C及びFの各自白並びにGの供述の信用性を減殺するものとはいえないとし、弁護人の提出する新証拠は、確定判決の事実認定に合理的疑いを差し挟むものとはいえないと判断した原決定に誤りはないとして、本件各即時抗告を棄却した事例。
2023.06.27
警察庁保有個人情報管理簿一部不開示決定取消等請求控訴事件 
LEX/DB25595169/東京高等裁判所 令和 5年 5月17日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第31号
控訴人(原告)は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律4条1項に基づき、警察庁長官に対し、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律10条2項1号、2号又は11号に該当する個人情報ファイルの数及び名称、同ファイルに含まれる個人情報の概要等が分かる行政文書の開示請求をしたところ、同長官は、本件開示請求の対象となる文書を保有個人情報管理簿126通と特定した上で、そのうち同項11号に該当する個人情報ファイルに係る4通の管理簿を開示し、その余の122通の管理簿については、それぞれの項目を示す部分のみを開示し、各項目の内容を記載した部分はいずれも不開示とする旨の決定をしたことで、控訴人が、被控訴人(被告。国)に対し、本件処分の取消し及び本件各文書のうち本件不開示部分についての開示決定の義務付けを求め、原審は、原判決別表1の各記載欄に「○」を付していない部分は、情報公開法5条3号所定の情報(3号情報)又は同条4号所定の情報(4号情報)に該当すると認められる一方、その余の部分はこれらの該当性を認めることができず、情報公開法6条1項に基づいて開示されなければならないなどと判断して、本件処分のうち、原判決別表1記載の各部分は違法であるとしてこれを取消し、警察庁長官に対して同部分を開示する旨の決定をするよう命じ、本件処分のうちその余の取消請求については棄却し、本件訴えのうちその余の義務付け請求に係る部分は不適法として却下したため、これを不服とする控訴人が、控訴した事案において、本件不開示部分につき一律に不開示情報該当性を認めることはできず、本件各文書の記載欄ごとに不開示情報該当性を検討すべきところ、全10項目のうち3項目の記載欄についてはいずれも3号情報又は4号情報に該当すると認められ、7項目の記載欄については,そのうち分類A及び分類Bの情報については3号情報又は4号情報に該当すると認められる一方、分類Cの情報についてはこれらの該当性を認めることができないとし、7項目の記載欄のうち分類Cに係る部分は、情報公開法6条1項に基づき、開示しなければならないとして、原告の請求中、本件処分のうち本件各文書中別表1記載の各部分を不開示とした部分の取消しを求め、同部分につき開示決定の義務付けを求める部分については認容し、その余の取消請求については棄却し、本件訴えのうち、その余の義務付け請求に係る部分については却下した事例。
2023.06.20
弁護人選任権侵害等国家賠償請求事件 
LEX/DB25595142/前橋地方裁判所 令和 5年 3月24日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第259号
脅迫罪の被疑事実で逮捕され、弁解録取手続し、罰金5万円の略式命令を受けた後、原告が正式裁判の請求をし、本件請求1は、〔1〕被告群馬県の公権力の行使に当たる公務員である警察官が、原告の逮捕の際の弁解録取手続において、原告の弁護人選任権を阻害する言動をしたこと、〔2〕被告群馬県の公権力の行使に当たる公務員である留置担当の警察官が、原告の逮捕中、原告が弁護人選任の申出をしたにもかかわらず、弁護士に対してその申出があったことの通知を怠ったこと及び〔3〕被告国の公権力の行使に当たる公務員である副検事が、原告の勾留請求前の弁解録取手続の際に、原告が弁護人選任の申出をしたにもかかわらず、弁護士に対してその申出があったことの通知を怠ったことにつき、被告らに対し、精神的損害と弁護士費用等の連帯支払を求め、本件請求2は、被告群馬県の公権力の行使に当たる公務員である警察官が、原告の逮捕中、原告の真意に基づく承諾や捜査の必要性がなかったにもかかわらず、本件採尿及び本件DNA型資料採取を行ったことにつき、被告群馬県に対し、精神的損害と弁護士費用等の支払を求め、本件請求3は、被告国の公権力の行使に当たる公務員である副検事が、原告が正式裁判の請求をして原告刑事被告事件の審理期間中、原告に対し、同請求を取り下げるように強要し又はこれを迫り、あるいは原告において同請求を取り下げるように要求をされたと受け取るような行為につき、被告国に対し、精神的損害と弁護士費用等の支払を求めた事案で、本件請求1は、被告国の副検事による勾留請求前の弁解録取手続における原告の弁護人選任権に係る行為について国家賠償法上違法な点があるとは認められないとして、棄却し、本件請求2は、被告群馬県の警察官らによる本件DNA型資料採取は、警察官らが負っている職務上の注意義務に違反するものとして、国家賠償法上違法なものであり、また、担当した警察官らに過失があることも明らかであり、被告群馬県には、当該行為によって原告が被った損害賠償責任があるとして、一部認容し、本件請求3は、副検事の原告に対する各発言は、その内容やこれらが複数回にわたって行われたことに加え、各発言がされた時の状況や原告と副検事との関係性などに照らせば、原告の裁判を受ける権利を侵害するものというべきであるから、副検事の当該行為は、職務上の注意義務に違反するものとして、国家賠償法上違法なもので、副検事に過失があることも明らかであり、被告国には、原告が被った損害賠償責任があるとして、一部認容した事例。
2023.06.13
(プレサンス事件付審判請求) 
LEX/DB25595157/大阪地方裁判所 令和 5年 3月31日 決定 (第一審)/令和4年(つ)第14号
請求人が大阪地方検察庁検事の職にあった被請求人Bを特別公務員暴行陵虐罪で同庁に告発したところ、同庁検察官が、被請求人を不起訴処分にしたが、その処分に不服があるから、事件を大阪地方裁判所の審判に付することを求めた事案において、威迫を上回る脅迫について特別公務員暴行陵虐罪の実行行為から除かれた立法経緯、被請求人の身上関係やこれまでに前科等がないことなども総合すると、被請求人を不起訴処分とするのが相当であり、嫌疑不十分を理由に検察官が行った不起訴処分は結論において正当であるとして、本件請求を棄却した事例(なお、本件においては刑事処分として不起訴処分が相当であると判断したというにとどまり、被請求人の行為を許容したわけではないことを付言した。)。
2023.05.30
勾留理由開示に対する特別抗告事件 
LEX/DB25572838/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 5月 8日 決定 (特別抗告審)/令和5年(し)第270号
裁判官が勾留理由開示期日において告知した勾留理由に関し不服を申立てた事案の特別抗告審において、勾留理由の開示は、公開の法廷で裁判官が勾留の理由を告げることであるから、刑事訴訟法433条1項にいう「決定又は命令」に当たらないとし、本件抗告の申立ては不適法であるとしとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.05.16
DNA型、指紋及び写真データの抹消等請求事件 
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LEX/DB25594817/名古屋地方裁判所 令和 5年 2月17日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第3808号
愛知県あま市内の立入禁止の用水路の護岸に入って釣りをしていた原告が、愛知県津島警察署に任意同行され、警察官から軽犯罪法違反の被疑事実で取調べを受け、顔写真撮影、指掌紋及びDNA型鑑定試料の採取をされたところ、当該任意同行、取調べ、顔写真撮影、指掌紋及びDNA型の情報の採取行為は原告の人身の自由及びプライバシー権を侵害する違憲違法なものであり、また、被告国が法律に基づかずに同情報を保管することが原告の情報自己決定権を侵害する違憲違法なものであるなどと主張して、被告国に対し、人格権に基づき、原告の顔写真、指掌紋及びDNA型の記録の削除を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求め、また、被告県に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案において、原告に係る被疑者写真記録、指掌紋記録及び被疑者DNA型記録について、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由が侵害されたということはできず、原告の人格的利益(人格権)の侵害があったということはできないとして、原告の請求を棄却した事例。
2023.04.18
再審開始決定に対する即時抗告申立事件(袴田事件再審開始決定に対する即時抗告棄却決定) 
LEX/DB25594670/東京高等裁判所 令和 5年 3月13日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(く)第14号
住居侵入、被害者4名の強盗殺人、放火被告事件につき、死刑に処する旨の有罪判決を受け、控訴及び上告はいずれも棄却され、一審判決が確定したため、再審請求人(有罪の言渡を受けた者の保佐人)が、地方裁判所に第2次再審請求をしたところ、地方裁判所は再審開始の決定をしたため、検察官が即時抗告の申立てをした事案で、原決定は、5点の衣類等のDNA型鑑定に関する証拠(とりわけP1鑑定)及び5点の衣類の色に関する証拠(とりわけ、各みそ漬け実験報告書等)を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当すると認めたものであるところ、DNA型鑑定に関するP1鑑定について再審開始を認めるべき証拠に該当するかどうかを改めて判断するまでもなく、原審において提出された、みそ漬け実験報告書等の新証拠は、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当するとして、みそ漬け実験報告書等について、刑事訴訟法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」であると認めた原決定の判断には誤りはなく、本件再審を開始するとした原決定は、その結論において是認できるとし、本件即時抗告を棄却した事例。
2023.03.28
強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対する異議申立て事件
LEX/DB25572679/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 7日 決定 (異議審)/令和5年(す)第14号
強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対し、被告人が弁護人を介して被告人本人作成の上告趣意書を提出したはずであり、原決定には被告人本人の上告趣意について判断遺脱があるとして、異議申立てをした事案で、弁護人が上告棄却決定後に、被告人作成の上告趣意書を裁判所に提出した事実につき、原審がした上告棄却決定に何ら判断遺脱はないとして、本件申立てを棄却した事例。
2023.03.28
(日野町事件第2次再審請求開始決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25594460/大阪高等裁判所 令和 5年 2月27日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成30年(く)第251号
P3(平成23年3月18日死亡。事件本人)に対する強盗殺人被告事件について、同人を犯人と認め、無期懲役に処した大津地方裁判所の確定判決につき再審の開始を認めた原決定に対し、弁護人が提出した証拠等の証明力を検討しないまま、新規性のある新証拠である限り、その証明力にかかわらず全て旧証拠との総合評価に立ち入った点、及び旧証拠に対する再評価を各証拠の立証命題とは関係なく行った点において、その判断は極めて違法・不当であり、確定判決の心証形成にみだりに介入した違法があるから、これを取消し、請求人らの再審請求を棄却する旨の裁判を求め、検察官の抗告人が、即時抗告をした事案で、事件本人を本件の犯人と認めた確定判決等の事実認定には合理的な疑いが生じており、原審で取り調べられた各新証拠は、無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠に当たり、無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠があらたに発見されたとし、刑事訴訟法435条6号、448条1項により、事件本人について再審を開始した原決定の結論は正当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.02.14
検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25572567/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 1月30日 決定 (特別抗告審)/令和4年(し)第594号
申立人が、東京簡易裁判所の略式命令により終結した政治資金規正法違反被告事件に係る刑事確定訴訟記録(本件保管記録)の閲覧請求をしたのに対し、本件保管記録の保管検察官が、閲覧を一部不許可とした(本件閲覧一部不許可処分)ため、申立人が東京簡易裁判所に準抗告を申し立てたという事案の特別抗告審において、本件閲覧一部不許可処分は、検察庁法12条、関係通達に基づき、東京地方検察庁に属する検察官が東京区検察庁の検察官の事務を取り扱ってしたものであると認められ、地方検察庁に属する検察官が区検察庁の検察官の事務取扱いとして保管記録の閲覧に関する処分をした場合、当該区検察庁の対応する簡易裁判所は、刑事確定訴訟記録法8条1項にいう「保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所」に当たるというべきであり、東京簡易裁判所は本件準抗告の管轄裁判所でないとして、本件閲覧一部不許可処分の当否を審査しないまま、本件準抗告を棄却した原決定を取消し、本件を東京簡易裁判所に差し戻すことを命じた事例。
2022.08.09
検察官がした押収物の還付に関する処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25572270/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 7月27日 決定 (特別抗告審)/令和4年(し)第25号
司法警察員が申立人から差し押さえた申立人所有の携帯電話機等について、申立人が、刑事訴訟法222条1項が準用する同法123条1項に基づき、東京地方検察庁検察官に対して還付を請求したところ、同検察官がこれに応じず還付をしない処分をしたため、同法430条1項の準抗告を申し立てたが、棄却されたことから、特別抗告を申し立てた事案で、申立人が本件各不還付物件の還付を請求することは、権利の濫用として許されないというべきであり、本件において、これと同旨の理由により検察官のした本件各処分を是認した各原決定は相当であるとして、本件各抗告を棄却した事例。
2022.08.02
営利略取、逮捕監禁致傷、大麻取締法違反被告事件についてした上告棄却決定に対する異議申立て事件
LEX/DB25572262/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 7月20日 決定 (異議審)/令和4年(す)第428号
営利略取、逮捕監禁致傷、大麻取締法違反事件につき、上告趣意書の差出最終日に弁護人が辞任し、上告趣意書の提出がなく、刑事訴訟法414条、376条、刑事訴訟規則266条、236条、252条により定めた期間内に上告趣意書を差し出さなかったことから、刑事訴訟法414条、386条1項1号により、上告棄却の決定がされたことに対して異議申立てをしたところ、上告趣意書の差出最終日には被告人に弁護人がなかったとしても、上告趣意書差出最終日までに上告趣意書を差し出さなかったことを理由に被告人の上告を棄却したことは正当であり、本件申立てには理由がないとして、本件申立てを棄却した事例。
2022.07.19
大崎事件第4次再審請求棄却決定
LEX/DB25592704/鹿児島地方裁判所 令和 4年 6月22日 決定 (再審請求審)/令和2年(た)第1号
請求人の母親であるA(事件当時の氏名はA’)に対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日鹿児島地方裁判所が言い渡した有罪判決(Aに対する確定判決)及び請求人の父親であるB(平成5年10月2日死亡)に対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日同裁判所が言い渡した有罪判決(Bに対する確定判決)に関し、A及びBに対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したから、請求人は、刑事訴訟法439条1項4号に該当する者として、同法435条6号により各再審開始の決定を求めた事案(いわゆる大崎事件第4次再審請求)で、本件各再審請求において弁護人が提出したN鑑定、S鑑定及びQ・R鑑定を含む新証拠は、他の全証拠と併せて総合的に評価しても、各確定判決の事実認定に合理的な疑いを抱かせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠とはいえず、刑事訴訟法435条6号にいう、無罪を言い渡すべき明らかな証拠には当たらないとして、本件各再審請求をいずれも棄却した事例。
2022.05.24
情報不開示決定取消等請求控訴事件
LEX/DB25592204/東京高等裁判所 令和 4年 4月 7日 判決 (差戻控訴審)/令和3年(行コ)第171号
東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた控訴人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(令和3年法律第37号による廃止前)に基づき、処分行政庁である東京矯正管区長に対し、控訴人が収容中に受けた診療に関する別紙記載の保有個人情報の開示を請求したところ、同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、本件情報の全部を開示しない旨の決定を受けたことから、本件決定が違法であると主張してその取消しを求めるとともに、本件決定により精神的苦痛を受けた等として、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料及び弁護士費用相当額の支払等を求め、第1審は、被収容者の医療情報である本件情報は、開示等に係る規定の適用除外となる行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たるとし、これを開示しない旨の本件決定は適法であるとして、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人は控訴し、差戻し前の控訴審も控訴を棄却したが、上告審は、被収容者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は、行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないと解するのが相当であるとし、本件情報は上記保有個人情報に当たらないから、同法12条1項の規定による開示請求の対象となるとし、これと異なる差戻前の控訴審を破棄し、更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻しを命じた。その後、差戻後の控訴審の事案において、控訴人の請求のうち、本件決定の取消しに係る部分の訴えは訴えの利益を欠き不適法であるから却下し、国家賠償請求については一部認容し、その余の請求を棄却した内容で、第1審判決を変更した事例。
2022.05.17
退院の許可の申立て棄却決定及び入院を継続すべきことを確認する旨の決定に対する各抗告棄却決定に対する再抗告事件
LEX/DB25572117/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 2月 8日 決定 (再抗告審)/令和3年(医へ)第27号
退院の許可の申立て棄却決定及び入院を継続すべきことを確認する旨の決定に対する各抗告棄却決定に対する再抗告をした事案で、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)による処遇制度に関し、憲法14条、34条違反をいう点は、医療観察法による処遇制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)の趣旨に徴して明らかであるなどとして、本件抗告を棄却した事例。
2022.04.12
損害賠償請求事件
LEX/DB25591862/大阪地方裁判所 令和 4年 3月11日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第3251号
刑事事件(いわゆる和歌山カレー事件)の被告人であった原告が、当該刑事事件において鑑定書を提出するなどした被告らに対し、〔1〕被告らによる虚偽の鑑定書の提出等が不法行為に該当し、〔2〕被告らによる記者会見での発言が原告の名誉を毀損するなどと主張して、共同不法行為に基づき、損害賠償金等の連帯支払を求めた事案において、本件各鑑定等が虚偽鑑定ないし偽証である違法である旨の原告の主張については、鑑定人等のその行為が著しく正義に反し、刑事裁判手続の法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情が認められないし、損害及び因果関係の観点からも原告の主張は認められないとし、また、本件記者会見に係る原告の主張についても、仮に、被告らの本件記者会見における本件説明が名誉毀損に該当する違法な行為と評価されるものであったとしても、本件訴え提起までに消滅時効が完成しており、被告らの時効の援用により、原告の被告らに対する名誉毀損を理由とした共同不法行為に基づく損害賠償請求権は消滅したといえるから、原告の主張は認められないとして、原告の請求を棄却した事例。
2022.03.29
再審請求棄却決定に対する異議申立て事件(名張毒ぶどう酒事件第10次再審請求棄却決定に対する異議申立て棄却決定)
LEX/DB25591762/名古屋高等裁判所 令和 4年 3月 3日 決定 (異議審)/平成29年(け)第16号
亡被告人が、昭和36年3月28日、公民館において、地元住民らを構成員とする会の総会後に催された懇親会の席上で提供されるぶどう酒に、有機燐テップ製剤(農薬)を混入し、同ぶどう酒を飲んだ女性会員のうち5名を殺害したほか、12名に有機燐中毒症の傷害を負わせたとされる殺人及び殺人未遂被告事件(名張ぶどう酒事件)について死刑を言い渡した確定判決に対し、平成27年11月6日、刑事訴訟法439条1項4号に基づき被告人の妹として再審を請求し(第10次再審請求)、平成29年12月8日、名古屋高等裁判所がこれを棄却する決定をしたため、異議を申し立てた事案で、原審に提出された新証拠について無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たらないとして再審請求を棄却した原決定の判断は是認できるとして、本件異議の申立てを棄却した事例。
2022.03.01
準強制わいせつ被告事件
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 令和4年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571962/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 2月18日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第1026号
外科医として勤務する被告人が、自身が執刀した右乳腺腫瘍摘出手術の患者である女性Aが同手術後の診察を受けるものと誤信して抗拒不能の状態にあることを利用し、わいせつな行為をしようと考え、病室内で、ベッド上に横たわるAに対し、その着衣をめくって左乳房を露出させた上、その左乳首をなめるなどし、Aの抗拒不能に乗じてわいせつな行為をしたと起訴され、第1審判決は、被告人に無罪を言い渡したが、原判決は、第1審判決には事実誤認があるとしてこれを破棄し、準強制わいせつ罪の成立を認めて被告人を懲役2年に処したため、被告人が上告した事案で、Aの証言の信用性判断において重要となるDNAの本件定量検査の結果の信頼性については、これを肯定する方向に働く事情も存在するものの、なお未だ明確でない部分があり、それにもかかわらず、この点について審理を尽くすことなく、Aの証言に本件アミラーゼ鑑定及び本件定量検査の結果等の証拠を総合すれば、被告人がわいせつ行為をしたと認められるとした原判決には、審理不尽の違法があるとして、原判決を破棄し、専門的知見等を踏まえ、本件定量検査に関する疑問点を解明して本件定量検査の結果がどの程度の範囲で信頼し得る数値であるのかを明らかにするなどした上で、本件定量検査の結果を始めとする客観的証拠に照らし、改めてAの証言の信用性を判断させるため、本件を高等裁判所に差し戻すこととした事例。