2025.03.18
道路交通法違反被告事件 
★「新・判例解説Watch」刑法分野 令和7年5月上旬頃解説記事の掲載を予定しております★

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LEX/DB25574057/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 2月 7日 判決(上告審)/令和5年(あ)第1285号
被告人が、交通整理の行われていない交差点において、普通乗用自動車を運転中、同交差点に設けられた横断歩道上を歩行中の被害者(当時15歳)に自車を衝突させて、同人を右前方約44.6メートル地点の歩道上にはね飛ばして転倒させ、同人に多発外傷等の傷害を負わせる交通事故を起こし、もって自己の運転に起因して人に傷害を負わせたのに、直ちに車両の運転を停止して、同人を救護するなど必要な措置を講じず、かつ、その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかったとして、道路交通法違反で起訴され、第一審が被告人を懲役6か月の実刑に処したところ、被告人が控訴し、控訴審が、被告人の救護義務を履行する意思は失われておらず、一貫してこれを保持し続けていたと認められるとして、第一審判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡したことから、検察官が上告した事案で、被告人は、被害者に重篤な傷害を負わせた可能性の高い交通事故を起こし、自車を停止させて被害者を捜したものの発見できなかったのであるから、引き続き被害者の発見、救護に向けた措置を講ずる必要があったといえるのに、これと無関係な買物のためにコンビニエンスストアに赴いており、事故及び現場の状況等に応じ、負傷者の救護等のため必要な措置を臨機に講じなかったものといえ、その時点で道路交通法72条1項前段の義務に違反したと認められるところ、原判決は、本件において、救護義務違反の罪が成立するためには救護義務の目的の達成と相いれない状態に至ったことが必要であるという解釈を前提として、被害者を発見できていない状況に応じてどのような措置を臨機に講ずることが求められていたかという観点からの具体的な検討を欠き、コンビニエンスストアに赴いた後の被告人の行動も含め全体的に考察した結果、救護義務違反の罪の成立を否定したものであり、このような原判決の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した事例。