ユーザーインタビュー

日野グループ 様

日野グループ 様

森田英策HINO取締役統括部長(左)と吉田正之税理士

緻密な財務戦略で
“要注意先”から“正常先”へ転換

日野グループ 首藤昭夫社長、森田英策取締役統括部長
(株式会社HINO 日野建設興業株式会社 日野物流株式会社)
兵庫太和税理士法人 吉田正之税理士

 日野グループは、日野建材興業(現在はHINO)として、1973年に創業。当初から建築現場の仮設ハウス・トイレなどの製造・販売が主業務だった。その後、78年に日野建設興業を設立。主に大手企業の工場や倉庫の建築に特化する業態で、「攻めの営業」への転換を図る。さらに93年、今度は物流部門に進出。工場から出る廃液や汚泥など、主に産業廃棄物の物流を手がける。ちなみに、阪神・淡路大震災(95年)の際には、仮設資材だけでなく、飲食物や日用品の供給も実践し八面六臂(ろっぴ)の活躍。地元の信頼を勝ち得た。日野建設興業の首藤昭夫社長は「毎日、寝食を忘れて対応に当たりました」と述懐する。

全国どこでも配送・施工できる多彩な仮設トイレ・ハウスに強み

全国どこでも配送・施工できる多彩な仮設トイレ・ハウスに強み

 さて、こうして93年にHINO、日野建設興業、日野物流という3社そろい踏みの「日野グループ」ができあがり、シナジー効果を享受しようとしたわけだが、その狙いは結果的に成就しなかった。90年代に入ってすぐに、日本経済はバブル崩壊に見舞われてしまっていたのだ。首藤社長は言う。

「全体的にパイが萎(しぼ)んでしまい、大変厳しい状況に追い込まれました。とくに建設部門の落ち込みがひどかったですね。金融機関からの風当たりも強くなり、どうしたものかと……」

 この当時の中小建設業者は、ほぼ例外なく需要の大幅減に苦しむことになる。バブル時代が良かっただけに、その反動は厳しいものがあった。

 そんなアップダウンをリアルタイムに見ながら、同社の再建に手を貸してきた顧問税理士の吉田正之氏(兵庫太和税理士法人代表社員)は言う。

「もともと財務基盤が弱い上に、無理な受注などにも手を出していたため、ダメージが大きかったのだと思います。しかし、その後しばらくは金融機関とのタフな交渉を続け、苦しいながらも業容を維持してきました」

 吉田税理士は、日野グループの経営陣と協議しながら、自計化(企業自身で経理業務を行う取り組み)を推進し、巡回監査、月次決算体制を構築。日野建設興業には、建築業用会計情報データベース『DAIC2』を導入し、現場ごとの収益をリアルタイムに把握する体制をつくる。その上で、資金回収サイトを短くし、リースや手形の発行を抑制していく方向に転換する。キャッシュフローを潤沢にして、下請けへの支払いもきっちりと行うことで、信頼感を醸成していったのである。結果、なかなか上向かない需要に苦しみながらも、次第に上向きのトレンドへと転換していく。

 森田取締役は言う。

「約束は守る、返すあてのないものは借りない。単純ですが、経営の基本を順守していこうと考えたわけです」

クラウド上で財務情報を提供

 とはいえ、経営状態は依然として厳しかった。金融機関に返済スケジュールの変更を依頼し、小康状態を保ってはいたものの、根本的な解決にはならなかった。そこで、日野グループの経営陣と吉田税理士は、一計を案ずる。

TKCモニタリング情報サービス

「比較的健全だったHINOをグループから切り離した上で、他社からの資金援助を受けて増資を行い、ある程度の利益が出るようにしました。さらに、HINOと日野物流が、日野建設興業に貸し付けていた債権の全額を放棄。これによって日野建設興業の資金繰りが良くなり、余剰資金で、金融機関からの借入金の一部を返済したのです。結果、いまでは3社ともに債務者区分が〝要注意先〟から〝正常先〟に転換しています」(吉田税理士)

 このようなドラスティックな転換を行ったのは昨年のこと。ほかにも、HINOに『FX4クラウド』を導入して自計化システムをアップグレード。さらには、日野建設興業と日野物流には、「TKCモニタリング情報サービス」を通じて、月次試算表、年次決算書をオンラインで金融機関に送付する体制を整えた。

 TKCモニタリング情報サービスとは、TKC会員税理士が顧問先企業の依頼に基づいて、信頼性の高い財務データを金融機関に提供するクラウドサービスのこと。現在、メインバンクのみなと銀行を含めて、取引のある4金融機関との間で、このサービスが機能している。

「これまでも、毎月、紙ベースでの試算表は金融機関に提出していたのですが、自動的にクラウド上で送付されるようになって、さまざまな意味で楽になりました」と首藤社長。企業から金融機関(あるいはその逆)への訪問はもちろん、さまざまなデータ提出の催促もぴったりとなくなったという。

 最近ではメインバンクからの融資には、三つのコベナンツ(特約条項)がついているという。経営計画書の提出と、2年連続赤字をしないこと、そして、情報開示(3カ月に1度以上の試算表の提出)である。

「この三つめが金融機関の担当者にとっても、企業側にとっても意外と負担なんです。ところが、同サービスによってデータが自動送信されるようになり、その負担は解消されました。金融機関は、提出済みの経営計画書とデータで送られてくる毎月の試算表を見比べれば、経営がうまくいっているかどうかが即座に分かりますからね」(吉田税理士)

 さらに、同サービスでは、税理士が決算書の真正性を保証する書面(税理士法第33の2に基づく:書面添付)や中小会計要領のチェックリスト、記帳適時性証明書もデータとして送付されるので、データの信憑(しんぴょう)性が極めて高くなる。

 正常先へと変貌した日野グループは、今後の新規借り入れも可能となっている。いまのところその必要性はないが、将来的な安心材料となっているのは確か。

 現在、グループの総売上高は約12億円。稼ぎ頭のHINOでは、新商品開発にも熱心に取り組み、清潔感あふれるトイレやシャワーユニット、集合型ハウス、シンク、事務製品など、あらゆるニーズに応える体制を整えつつある。

〝3社とも債務者区分が正常先に戻ったが、喜んでばかりはいられない。これからが本当の勝負〟と首脳陣は考えている。

日野グループ
創業
1973年6月
所在地
兵庫県姫路市西脇851
売上高
約12億円
社員数
45名
URL
https://hino-toilet.com/
兵庫太和税理士法人
所在地
兵庫県揖保郡太子町東南737-389
URL
https://www.hyogo-taiwa.com/

『戦略経営者』2018年9月号より転載