株式会社日興商会様

株式会社日興商会の皆さんと小泊監査担当

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

「顔の見える」営業に強み持つ
関西屈指のオフィスサプライ

会社の日常業務にとってもはや欠かせない、オフィス用品のカタログ注文。この分野で日本でも草分け的存在として知られているのが、兵庫県尼崎市に本社を置く日興商会だ。大手通販会社の攻勢にも負けず関西で確固たる地盤を築き上げている同社の藤縄健一社長(64)に、『FX4クラウド』導入の経緯などを聞いた。

得意先への訪問営業に注力しいち早く顧客ニーズをつかむ

――オフィスサプライというと現代的なイメージがありますが、創業は1946年と歴史がありますね。

藤縄健一社長

藤縄健一社長

藤縄 鳥取県の製紙工場に出資していた先代社長が、戦後に資金が必要となったため工場側に株式を買い取るよう要求したことから当社の歴史がはじまりました。当時は工場側にも現金がなく、生産した紙を現物支給することで話がまとまったそうです。しかし、手にした紙は換金しなければなりません。そこで尼崎市の工場などに紙を売り歩いたところ、「ペン先もってこい」「インキがほしい」などの要望が集まるようになりました。こうして次第に、お客さまからの注文を受けて文具や事務用品を届ける事業を営むようになったのです。店舗を持たず、定期的に得意先を訪問することで文具の受注販売をするこの形態は、日本の草分け的存在だと自負しています。

――営業活動に特徴はありますか。

藤縄 基本的にはメーカーのカタログを配布して、その中から事務用品やOA商品などを電話やファックス、ネット上で発注していただくのですが、営業スタッフが定期的に得意先を訪問する訪問営業のスタイルをとっているところに当社の特徴があります。フェース・トゥー・フェースでの対話を重ねることによってお客さまが探しているもの、欲しいものを一緒に見いだしていくことができるからです。従って、カタログに掲載されていない商材も要望に応じてお届けしています。

――得意先とのコミュニケーションに生命線があるわけですね。

藤縄 訪問回数と対話の量はどこにも負けません。顔が見えれば信頼関係も深まり、浮気をされるようなこともありませんから。また人と人との関係を構築することによって移転の情報なども早く入手することができますので、最近ではオフィスレイアウトや引っ越し作業など事務所移転に伴うさまざまなサポート業務も手掛けています。「日興商会に言えば無理がきく」と思ってもらえるようなコミュニケーションを重要視した営業活動を続けていきたいと考えています。

――印刷事業も展開されています。

自社カタログ

オフィスに必要な品が
数多く掲載されている自社カタログ

藤縄 事務用品を発注する担当者は、印刷物関連の発注も兼ねているケースがほとんどです。そこにチャンスを見いだし、早くから印刷事業にも乗り出しました。帳票類の印刷を中心に複写印刷を得意としており、本社工場とコンピューター用の連続伝票専用ラインがある鳥取工場の2カ所に印刷工場を保有しています。しかし印刷事業は斜陽産業なので非常に厳しい状況が続いています。会社全体の売り上げ構成からいえば文具が44%、印刷が18%、家具関係が22%、その他OA関連が16%という割合になっています。

―商圏はどのあたりまででしょう。

藤縄 創業当初は尼崎市内を中心に伊丹市や西宮市までで商売していましたが、その後中央環状線の整備とともに摂津、八尾、堺などに支店網を拡大、その後神戸や京都などにも進出し、関西圏はほとんど商圏になっています。現在では広島、東京、名古屋にも拠点を設け、支店数は20を数えるまでになりました。

「自社サーバー不要」で長年の懸案事項が解消

――『FX4クラウド』は2012年6月に導入されたと聞いています。決定に至るまでの経緯を教えていただけますか。

鳥取印刷工場

鳥取印刷工場

藤縄 これまで他社システムを使用していたのですが、経年劣化のためサーバーを交換する必要が生じました。さらにそのソフトが古いバージョンだったため、サーバーの更新とともに新たなバージョンも購入しなければならなくなったのです。サーバーとソフトの二重費用が発生するそうしたタイミングに、ちょうど荒巻先生から『FX4クラウド』の提案を受けたのです。

――導入の決め手はなんでしょう。

山田俊和経理部長 当社でサーバーを準備する必要がないということは大きな要因ですね。それと財務データの「見える化」を図りたいという思いもありました。もともと当社では「NOEL(ノエル=ニッコー・オーダー・エントリー・システム・フォー・ロジスティックス)」という販売管理システムを自社開発し、現場の各営業員がそれぞれの端末から受発注データを操作できる体制を整えていました。ところが財務データは経理にあるパソコン1台でしか見ることのできない完全なスタンドアローン型。役員や部門責任者がすぐに数字を確認できない状況でした。これをクラウドによるシステムに切り替えることで経営幹部それぞれの端末からデータにアクセスすることを可能にしたかったのです。

――クラウドによるシステムということでセキュリティーも考慮に入れられたのでしょうか。

藤縄 サーバーが故障してしまった時のことを考えると、本社による一元管理をこのまま続けていってよいのだろうか、ということは長年の懸案事項でした。『FX4』導入でその心配がなくなりましたが、さらに今度は「ノエル」のデータをクラウドベースで管理することも検討しています。

――導入後約半年ですが、使ってみた感想はいかがでしょう。

藤縄 私は少し憎たらしいことを言いますよ(笑)。まず科目の名前が一般的ではなく、経理の専門用語に慣れるのが大変でした。それと作成されるデータが解説者の作る資料ではなく、評論家が作る資料になってしまっている、そこに大きな落とし穴があると感じています。これまでは「伝票に始まり伝票に終わる」で、多くの人の手を介することで経理プロセスの管理をしていましたが、今度は入力したらそれで終わり。仕組みもよく分からないまま自動的に出てきた数字は確かに正しい数字かもしれませんが、「なんで」というところが見つけにくい。分析能力が低下する懸念を心配しています。

荒巻政文顧問税理士

荒巻政文顧問税理士

荒巻政文顧問税理士 社長の厳しい指摘ですが、そうした部分はこれから改善できると思います。数字を(会社の)どの部分まで共有するか、アプローチの仕方は企業によってさまざまです。社長だけ、あるいは役員レベル、場合によっては営業スタッフも情報共有が必要になるでしょう。これまでは各層ごとで必要な数字はどの範囲で、それをどのように生かせばよいかということをきちんと整理できていませんでした。経理部との調整を重ね、そのあたりのアプローチの仕方をしっかり社長に説明できるようにしたいと考えています。

藤縄 確かに支店ごとで儲かっている支店か損している支店かというのは今までのシステムでは分かりませんでした。しかしその各支店の損益はあくまで机上論にすぎません。大切なのは「実務で何がどう変わんねん。儲かるのか儲からんのかどっちや」ということ。『FX4クラウド』は経理部に「好きにせえや」と言って導入を決めましたが、その裏には「絶えず変えていかければいけない」というメッセージがこめられています。月次損益のどこに問題点があって、その正しい数字をいかに利益管理に利用するかということが今後の課題だと考えています。

支店ごとの損益管理で利益の「見える化」に挑戦

――部門別管理はどのようにされていますか。

山田 部門は支店ごとに分けており、それぞれ利益管理表を月次で作成して現場に配布しています。各支店長には「少なくとも達成利益は黒字にしてくれ」と伝えてありますが、最終的には貢献利益の黒字を目指すような目標を立てたいですね。各部門でここが黒字になればおのずと会社全体も黒字になりますから。

――「マネジメントレポート(MR)設計ツール」の活用をご検討されているとか。

アンテナショップ「ピクニック・オン・ピクニック」

アンテナショップ「ピクニック・オン・ピクニック」
(兵庫県川西市)

山田 それぞれの支店で利益管理表を確認できるようになっていますが、売り上げの次の項目は仕入れになっています。しかし当社では昔から、売り上げの次は利益という考え方だったので、現場スタッフから「利益をすぐに確認できるようにしてほしい」という声が挙がってきました。もちろん、計算すればすぐに数字は把握できるのですが、「できるだけ当社の事情に合わせた資料を」という社長の意向もあり、MR設計ツールの活用を検討しているところです。勉強中で道半ばですが、利益率が分かりやすく把握できるようなカスタマイズ版の作成を目指しています。

――黒字経営維持のため心掛けていることはなんでしょう。

藤縄 利益率を高めるというのは口でいうのは簡単ですが、これがなかなか難しい。1%でも至難の業です。昔は売りさえすれば儲かっていましたが、原価スレスレで販売することもある現在は売っても儲からない時代。営業はどうしても「安くても早く受注したい」という方向に傾きがちですが、そうではなく1回1回の売価設定を慎重に行い、安易な値引きをいかに減らせるか、ということが非常に大切になってきます。そのためにはスタッフそれぞれが利益管理の観念を常に頭に思い浮かべる必要があります。

――今後の抱負を聞かせてください。

藤縄 やはり市場そのものを拡大していかなければなりません。そのため仮想商店街的な要素を持った、なるべく人を介在させないような事業部門の立ち上げも考えています。また現在4つの拠点がある東京での営業を活発化させ、市場を席巻していきたいですね。人員の投資も含めた新たな拠点設立も視野に入ってきています。

企業情報

株式会社日興商会

株式会社日興商会

所在地
兵庫県尼崎市東難波町5-10-30
TEL
06-6487-1401
売上高
192億円
社員数
650名
URL
http://www.bunguclub.co.jp/

顧問税理士 荒巻政文
税理士荒巻政文事務所

所在地
兵庫県尼崎市昭和通3-90-1
尼崎K.Rビルディング602
TEL
06-6413-2040
URL
http://aramakikaikei.tkcnf.com/

『戦略経営者』2013年1月号より転載)